動けないほど生理痛がつらい方へ知っておいてほしいこと
動けないほど生理痛がつらい経験はありませんか?
本記事では、動けないほど生理痛がつらい方へ知っておいてほしいことについて以下の点を中心にご紹介します!
・そもそも動けないほどつらい生理痛とは?
・月経困難症について
・月経困難症の種類
動けないほど生理痛がつらい方へ知っておいてほしいことについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
動けないほどつらい生理痛とは?
生理痛は多くの女性が経験するものですが、その中でも特に重い痛みを伴うものを「月経困難症」と呼びます。月経困難症は、日常生活に大きな支障をきたすほどの痛みを伴い、鎮痛剤を服用しないと動けないほどの状態を指します。
この痛みは、月経が始まってから数日間続くことが一般的で、鋭い痛みや鈍い痛み、痙攣のような痛みが現れることもあります。主な症状としては、下腹部痛や腰痛、頭痛が挙げられます。さらに、これらの痛みに加えて、吐き気や下痢、お腹の張り、疲労感、脱力感、気分の浮き沈みなど、身体と心の両方に影響を及ぼすことがあります。
月経困難症について
月経困難症について知っていますか?以下で解説していきます。
月経困難症の原因
月経困難症の主な原因として、機能性月経困難症が挙げられます。これは、月経の血液を排出するために子宮が収縮する際に関与する物質、プロスタグランジン(PG)の分泌が過剰となり、子宮が過度に収縮することに起因します。また、子宮の出口である頸管が狭い場合も、痛みの原因となります。この機能性の痛みは、初経後の2〜3年以内に多く現れることが一般的です。
しかし、月経困難症の背後には、子宮やその周辺組織の異常が隠れていることも考えられます。このような症状を放置してしまうと、日常生活への影響だけでなく、未発見の病気のリスクや、将来的な不妊の原因となる可能性もあります。したがって、月経困難症の症状が現れた場合は、ただの生理痛として我慢せず、医師の意見を求めることが大切です。早期の対応が、健康な日常生活を取り戻す第一歩となります。
月経困難症の症状
月経困難症の一般的な症状は、下腹部の鋭い痛みや腰痛です。この痛みは、生理の開始とともに始まり、数日間続くことが一般的です。しかし、痛みだけでなく、他の身体的・精神的な症状も伴います。例えば、お腹の張りや吐き気などです。また、頭痛や疲労、脱力感なども出る可能性があります。食欲不振や下痢になる場合もあります。
さらに、月経困難症には心理面でも変化があります。イライラや憂うつな気分は、人間関係や仕事、学業に影響を及ぼすことがあります。これらの症状は、生理の周期によって変動するため、毎月のように繰り返されることが一般的です。
月経困難症の治療法
経困難症の治療には多角的なアプローチが必要です。痛みの原因となるプロスタグランジン(PG)の産生を抑制するため、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が一般的に使用されます。痛みが始まる前に服用することで、痛みのコントロールが可能です。
しかし、鎮痛薬だけでは影響力が不十分な場合もあります。そのような状況では、ホルモン療法が考慮されます。一般的なものとしては低用量ピルで、保険適用もされています。最近の研究で、連続投与が周期投与よりも痛みの日数を減少させる可能性があるとされています。
その他のホルモン療法としては、黄体ホルモン剤やGnRHアゴニスト(卵巣の働きを抑制する薬)も使用されることがあります。これらの治療法は、それぞれ期待される効果や副作用が異なるため、患者さんが治療内容をしっかりと理解し、医師と共に選択することが重要です。
特に思春期の機能性月経困難症には、ブチルスコポラミンなどの鎮痙剤が良い場合もあります。また、漢方薬も一考されるべき治療法です。体質や症状に応じて、漢方医学的な診断を受け、適切な漢方薬が選ばれます。
さらに、機能性月経困難症で保存的な治療をしても変化がない場合、心理的、社会的要因が影響している可能性があります。このような場合には、カウンセリングや心理療法も選択肢となり得ます。
器質性月経困難症の場合、例えば子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などが原因であれば、その病気自体の治療が優先されます。その場合は薬物療法だけでなく、場合によっては手術療法も考慮されることがあります。
月経困難症の種類
月経困難症には何種類あるのでしょうか?以下で解説していきます。
機能性月経困難症
前述しましたが、「機能性月経困難症」とは、具体的な婦人科系の疾患が見当たらないにもかかわらず、重度の月経痛を伴う状態を指します。この症状は、月経に関連するホルモンの影響によるものと考えられています。
女性の体は、排卵の際に卵巣から卵胞ホルモンと黄体ホルモンを分泌します。特に黄体ホルモンは、子宮内膜に作用して、発痛物質であるプロスタグランジンの生成を促進します。このプロスタグランジンが増加すると、子宮の収縮が強くなり、腹痛や腰痛、悪心などの症状を引き起こします。
機能性月経困難症は、特に月経が始まったばかりの思春期の女性に多く見られる症状です。この時期の子宮や卵巣はまだ未成熟であり、子宮内膜からのプロスタグランジンの分泌が子宮を過剰に収縮させることが考えられます。多くの場合、年齢とともに症状は軽減していきますが、ストレスや子宮内膜症の初期段階など、他の要因が関与している可能性も否定できません。
器質性月経困難症
「器質性月経困難症」とは、具体的な病気が背景に存在することにより引き起こされる月経痛を指します。この症状の原因として、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮やその周辺の炎症、卵巣の腫瘍などが挙げられます。
器質性月経困難症は、その名の通り、具体的な原因に基づく症状であるため、早期発見・早期治療が症状の改善や合併症の予防に繋がります。
月経困難症の対処法
『月経困難症の治療法』でも鎮痛剤やピルについて解説しましたが、以下で、それらの薬についてより詳しく解説します。
鎮痛剤
繰り返しになりますが、月経困難症の痛みを和らげるために鎮痛剤を利用する場合、プロスタグランジンの生成を抑える薬が特におすすめです。プロスタグランジンは、子宮の収縮を促進させる物質で、その過剰な分泌が月経痛の主な原因とされています。この物質の生成を抑制するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨されます。
鎮痛剤の服用タイミングも重要です。痛みが強くなってから服用するよりも、痛みの初めや軽い段階での服用が、痛みを抑えられます。
ただし、15歳未満の方は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用が推奨されません。その場合、アセトアミノフェンという鎮痛成分が代替として考えられます。アセトアミノフェンは、脳内の痛みを感じる部分に作用し、痛みを和らげます。月経痛に悩む方は、適切な鎮痛剤の選択と正しい服用方法で、痛みを軽減させることが可能です。
漢方薬
月経困難症において、西洋医学の鎮痛剤だけでなく、漢方薬も治療法として注目されています。漢方薬はプロスタグランジンの生成を抑制し、痛みを緩和します。特に、継続的な使用によって体質改善が期待できるとされています。
漢方医学では、体内を巡るエネルギーを「気(き)」、物質面を支える赤い液体を「血(けつ)」と呼び、これらをバランスよく保つことが健康の鍵とされています。特に「瘀血(おけつ)」と呼ばれる、血の滞りが多くの症状(不眠、精神症状、腰痛、筋肉痛、痔など)を引き起こすとされています。月経困難症も、この血の滞りが一因とされています。
具体的な漢方薬としては、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」があり、これは血行を改善します。また、症状によっては「ツムラ 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」や「ツムラ 当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)」、「ツムラ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などが処方されることもあります。
・「芍薬甘草湯」は、月経時に腹や腰が突っ張って痛む場合に用いられます。
・「当帰建中湯」は、下腹部が張って痛む症状に対応します。
・「当帰芍薬散」は、冷え性やむくみ、水様帯下などに対応します。
漢方薬の選択には専門の医師の診断が必要ですので、症状が重い場合は早めに医師に相談することをおすすめします。
ピル
月経困難症の治療として、ピルが良いと広く知られています。多くの人々がピルを避妊薬として認識していますが、実は月経困難症の治療薬としても開発されています。ピルの服用により、排卵が抑制されることで、痛みの原因となる黄体ホルモンの分泌も低下します。さらに、月経前症候群(PMS)の症状緩和が期待されています。
しかし、すべての女性にピルが適しているわけではありません。特に、子宮内膜症が進行している場合、ピルだけでは十分な痛みの緩和が得られないこともあります。そのような場合、他の治療法を検討する必要があります。
低用量ピルは、生理痛や生理不順の改善、過多月経や貧血の改善、さらには卵巣がんや子宮体癌のリスク低下などが期待されています。
ピルの服用は、体内のホルモンバランスを整えることで、月経困難症の症状を緩和します。具体的には、エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンの分泌を調整することで、月経のリズムを整えます。この結果、月経困難症の症状が軽減されるのです。
低用量ピルの服用方法は、1日1錠を毎日決まった時間に飲むことが基本です。しかし、飲み忘れると排卵するリスクが高まるため、注意が必要です。また、ピルの種類によっては、21日間の服用後に7日間の休薬期間が必要となることもあります。
動けないほどつらい生理痛には病気の可能性も
前述した通り、動けないほどつらい生理痛には病気の可能性があります。以下で、考えられる病気についてより詳しく解説します。
子宮内膜症
生理痛は多くの女性が経験するものですが、日常生活に影響を及ぼすほどの強い痛みを伴う場合、それはただの生理痛ではなく、子宮内膜症の可能性が考えられます。子宮内膜症は、子宮の内側に存在する子宮内膜と同じ組織が、子宮の外部に形成される病気です。この異常な組織は、生理の際に出血し、繰り返しの出血によって痛みを引き起こします。
子宮内膜症は、生理を持つ女性の約10%に発症するとされており、症状は人それぞれ異なります。特に、生理痛が年々強くなっている場合や、腰痛、性交時の痛み、排便時の痛みなどの症状がある場合は、子宮内膜症の可能性が高まります。そのため、これらの症状に悩まされている方は、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
子宮内膜症の原因は、まだ完全には解明されていませんが、月経血の逆流が関与していると考えられています。特に、月経の回数が多い女性や、初経が早い女性は、子宮内膜症のリスクが高まるとされています。
治療方法としては、薬物療法と手術療法が主に考えられます。薬物療法では、ホルモン製剤が用いられることが多く、痛みの緩和や病変の進行抑制が期待されます。一方、手術療法では、腹腔鏡下手術が主流となっており、病変を直接取り除きます。
子宮筋腫
子宮筋腫は、女性の子宮に発生する良性の腫瘍で、30歳以上の女性の約20〜30%に見られるとされています。この筋腫は、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受けて成長する特性があり、その大きさや数、成長の速さは個人差があります。閉経後、女性ホルモンの分泌が減少すると、筋腫も自然に小さくなることが多いとされています。
筋腫の症状は、その位置や大きさによって異なります。なかでも、生理痛が増強し、生理の量が増加する場合、筋腫の存在を疑うべきです。さらに、不正出血、貧血、腰痛、頻尿などの症状が現れることもあります。しかし、筋腫が小さく、症状が出ていない場合は、特別な治療の必要はありません。
筋腫の原因は、現在のところ明確には解明されていませんが、女性ホルモンの影響が大きいとされています。筋腫の大きさは、大豆程度から握りこぶし大までさまざまで、一つだけの場合もあれば、複数存在する場合もあります。症状が出ていない場合でも、定期的な婦人科検診を受けることで、筋腫の存在や状態を確認できます。
治療方法としては、薬物療法や手術が考えられます。薬物療法では、女性ホルモンの分泌を抑制し、排卵を抑制し、子宮内膜を薄くする薬が使用されます。一方、手術療法では、筋腫のみを取り除く方法や、子宮全体を取り除く方法が選択されます。治療方法は、筋腫の大きさや位置、患者さんの年齢や妊娠希望などの状況に応じて選ばれます。
子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、症状が出ている場合や、将来の妊娠を希望する場合は、適切な治療を受けることが重要です。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮の筋肉内に子宮内膜と似た組織が形成される病気です。子宮腺筋症は、子宮内膜症と似ていますが、子宮内膜症は子宮筋以外の場所に該当組織が形成されることを指します。子宮腺筋症の組織は、女性ホルモンの影響を受けて成長し、閉経後には縮小します。
症状としては、強い生理痛、増加する生理の量、貧血、腰痛、月経期以外の腹痛、排便痛、性交痛などが挙げられます。特に、生理痛や過多月経が継続的に起こる場合、子宮腺筋症の可能性が高まります。
子宮腺筋症は、30代後半から40代の女性、特に出産経験のある人に多く見られる病気です。しかし、20代や妊娠経験のない人にも発症することがあります。病気の進行に伴い、子宮筋層が厚くなり、子宮全体が拡大することがあります。
治療方法としては、子宮筋腫などと同じように薬物療法や手術療法が考えられます。
まとめ
ここまで動けないほど生理痛がつらい方へ知っておいてほしいことについてお伝えしてきました。動けないほど生理痛がつらい方へ知っておいてほしいことの要点をまとめると以下の通りです。
・特に重い痛みを伴うものを「月経困難症」と呼び、日常生活に大きな支障をきたすほどの痛みを伴い、鎮痛剤を服用しないと動けないほどの状態を指す
・月経困難症は、子宮やその周辺組織の異常が隠れていることも考えられ、放置してしまうと、日常生活への影響だけでなく、未発見の病気のリスクや、将来的な不妊の原因となる可能性もある
・月経困難症には、「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」があり、痛みが特に強い場合や、日常生活に影響を及ぼすほどの症状が続く場合は、医師の診断を受けよう
本記事の情報が生理痛で動けない方のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。