生理痛対策によい食べ物は?飲み物・おすすめ栄養素も紹介
生理痛は多くの方が経験したことのある痛みのため、病気ではないと我慢している方も少なくないでしょう。
例えば、職場などでは「大したことのない痛みだろう」「痛み以外の症状がないなら生理くらいで仕事を休まないでほしい」と周囲から理解されにくいかもしれません。
ただ人によっては起き上がれない程の痛み・吐き気・気分の落ち込みとさまざまな症状が現れる場合があります。日常生活を送るのが辛く感じる方も少なく、このような症状では何か改善したほうが賢明でしょう。
女性は生涯7年程の生理を経験するといわれています。この長い期間を自分らしく過ごせるために、生理痛対策として身体によい食べ物や積極的に摂取したほうがよい栄養素を紹介します。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
生理痛対策によい食べ物は?
まず生理痛が起こる原因を解説します。
子宮は分厚い内膜でできていますが、妊娠しなかった場合にこの内膜が剥がれ落ち出血として排出されます。そして次の妊娠に備えて新たな内膜ができるよう準備をし始めるのです。
この一連の流れで子宮が収縮するのですが、その際にプロスタグランジンというホルモンが分泌されます。
プロスタグランジンは分娩誘発にも使われるもので、このホルモン作用が強いと子宮がぎゅっと締まり生理痛がきつくなります。
最初は痛みがないかもしれませんが、排卵周期が安定してくると痛みが出現してくるでしょう。若い方に多く、さらに冷えや血液循環が悪いと悪化してきます。
生理痛の予防や緩和には身体の冷えを予防し、血液循環をよくすることが効果的です。セルフケアとして普段の食生活を見直してみましょう。
以下に生理痛の予防・緩和によいとされる食べ物を3つ紹介するので、参考にしてください。
生姜
身体を温めるのによく知られている食べ物の1つとして、生姜を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
生姜に含まれるジンゲロールやガラノラクトンという成分は、血管を拡げて、身体の熱を身体の末端まで伝えてくれるので冷えに効果的です。
手軽に生姜を取り入れられるおすすめのレシピの1つに生姜湯があります。生姜をすってはちみつを加えたら、水と合わせて火にかけ温めましょう。片栗粉で少しとろみをつけたら完成です。
ぜひ試してみてください。
大豆製品
畑の肉とも呼ばれる栄養豊富な大豆には、女性ホルモンを安定させ、生理痛軽減の効果に期待できるなどのメリットがあります。
大豆イソフラボンはエストロゲンという女性ホルモンと似たような働きをし、生理痛を緩和させてくれます。排卵後にエストロゲンが減少すると血管が収縮し、生理時の腹痛や頭痛を引き起こすのです。
そのため、大豆を効率よく摂取することで血管収縮を抑えてくれる効果が期待できます。その他の作用は子宮内膜を厚くし受精卵の着床をスムーズにするため、妊活をしている方も積極的に摂取しましょう。
また普段洋食を好んで食べている方は、大豆を多く含む和食中心の食生活に変えてみてもよいです。お肌の調子を整え髪にツヤや潤いを与えてくれるエストロゲンに似たイソフラボンを含む大豆は、若々しさを保ち元気にしてくれる女性の味方です。
肉類
生理により血液が体内から放出されることにより起こりえるのが貧血です。貧血になるとめまい・立ちくらみ・集中力の低下と日々の生活が送りにくくなるでしょう。
その場合は鉄分の豊富な肉類を食べるのが効果的です。食品の赤い部分が鉄分で、肉類のなかでも豚肉や鶏肉より牛肉に多く含まれています。
特に赤みの強いレバーは牛肉だけでなく、豚肉や鶏肉からでも鉄分を摂取可能なので効率よく取り入れましょう。
また、鉄には肉や魚に含まれるヘム鉄と野菜などに含まれる非ヘム鉄に分かれます。ヘム鉄は身体への吸収率が高く、非ヘム鉄はビタミンCや動物性タンパク質と一緒に食べると吸収率が上がります。
一方、同時に摂取するのに避けたほうがいい食品はコーヒーや緑茶に含まれるタンニンという成分やインスタント食品です。
これらは鉄分の吸収を妨げてしまう働きがあるので注意し、摂取するとしても食事の1〜2時間前にしましょう。
生理痛対策によい飲み物は?
ここまで生理痛に効果的な食べ物を紹介しました。ここからは生理痛緩和に効果が見込める以下の飲み物をお教えします。
- ハーブティー
- 豆乳
- ココア
手軽に飲めるものが多いので普段時間があまり取れない方でも、簡単に作れるものばかりです。ぜひお試しください。
ハーブティー
ハーブティーは心が安らぐような香りや味がして好んで飲んでいる女性も多いでしょう。特に、寒い時期はハーブティーを飲むと血管が拡がる作用があるため、身体がポカポカと温まりおすすめです。
ハーブは種類が豊富で、効能もさまざまです。例えばレモングラスは身体を温めるほか、抗菌・リラックスなどの効果があるといわれています。カモミールは気持ちを落ち着かせて睡眠の質を高めてくれます。
生理の周期や身体の調子を整えるのは、生理痛緩和にとって重要です。ビタミンやミネラルの豊富なハーブティーを飲んで身体の根本的な改善を図りましょう。
豆乳
先述したように、大豆は生理痛に効果があるので、同じく大豆からできている豆乳も積極的に摂取しましょう。摂取量の目安は1日40mg〜50mgが理想です。
豆乳に含まれるイソフラボンが、体内で女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするといわれているため、生理痛緩和に効果があるほか、骨粗鬆症の予防にもなります。
豆乳は手軽に飲めるので朝食や休憩時間に取り入れてみるのもよいでしょう。ぜひ温めて飲んでください。
ココア
ポリフェノールや鉄分の含有量が高いココアは、生理痛緩和に効果が期待できる飲み物の1つです。生理による痛みだけでなく、イライラや落ち込みなど心身面の不調にも対応してくれます。
ココアにはミルクココアとピュアココアがありますが、糖分などの不純物の含まれていないピュアココアを選ぶのが大切です。
糖分があるとどうしてもお菓子感覚で飲みすぎてしまい、肥満などの生活習慣病を引き起こす可能性があるからです。
ポリフェノールは緑茶やコーヒーにも多く含まれますが、これらには血管を収縮させるカフェインの含有量も高いので、生理痛対策にはおすすめできません。
ココアだとカフェイン含有量はコーヒーに比べて微量です。また、ポリフェノールは水に溶けやすい性質があります。生理痛へのアプローチ時間が短くなるので、少しずつこまめに摂取しましょう。
生理痛対策におすすめの栄養素
普段の食生活を見直すと生理痛が緩和されるので、栄養が偏っていないか、外食の回数が多くないかをあらためて考えてみましょう。
ここからは生理痛に効き目のある栄養素を3つ紹介します。肉魚・野菜・果物と含まれている栄養素が異なり、バランスよく取り入れることで健康促進にもつながるでしょう。
マグネシウム
マグネシウムが不足すると、月経困難になりやすいです。生理痛のときの頭痛や腰痛はこのことが原因である場合が多いようです。マグネシウムが多く含まれる食品は以下のとおりです。
- ナッツ類
- のりや昆布などの海藻類
どれもスーパーなどで売っていて簡単に手に入り、料理にも取り入れやすいでしょう。
加えてマグネシウムはビタミンDと一緒に摂取すると吸収率がアップし、質のよい骨の形成を助けます。ビタミンDの含有量の多い、さばやさんまと一緒に食べて生理痛軽減のほか健康維持を目指しましょう。
ビタミンB6
ビタミンB6は生理痛軽減や女性ホルモンのバランスを整える働きをします。さらに、生理前のPMS(月経前症候群)の気分の落ち込みやイライラの解消を和らげます。
ビタミンB6は以下の食品に多く含まれていて、たくさん食品を組み合わせて摂取すると、1日の理想的なビタミンB6の量になるでしょう。
- 肉や魚
- ジャガイモ
- 柑橘類を除く果物
普段からアルコールを飲む方・腎臓に持病がある方・自己免疫疾患がある方は十分な量を摂取できていない可能性があります。この場合はサプリメントで補うのもよいでしょう。
ビタミンE
ビタミンEは美容によいと知られており、意識して食事をされている方も多いかもしれません。しかし、ビタミンEは生理痛のもととなるプロスタグランジンの生成を抑える働きもするのはご存知でしょうか。
加えて冷えの改善、血行をよくするビタミンEは生理前から取ってほしい栄養素の1つです。ビタミンEは大まかにいうと以下のような食品に含まれています。
- 種実類
- 魚介類
- 豆類
特に種実類であるアーモンド(乾)は100mgあたりの成分量に対して30mgのビタミンEが含まれています。美容のため、女性らしさを保つためにも意識して毎日食べるようにしてみましょう。
生理痛がひどいときの食事の注意点
まず大事なのは、食事の取り方です。炭水化物やたんぱく質を朝に取ることで体温を上げられるので、朝ごはんはしっかりと食べましょう。
朝ごはんを抜くとエネルギー源となるカロリーや栄養素が不足してしまうため、体温が上がりにくいです。冷えは生理痛の原因となるので、朝ごはんはきちんと取ることをおすすめします。
身体を冷やす冷たい食べ物もできるだけ控えるようにしましょう。栄養バランスを考え、炭水化物・脂質・たんぱく質・野菜・くだものをバランスよくとってください。
トマトやキュウリなどの夏野菜は身体を冷やす作用があります。一方、カボチャやネギなどの冬野菜は身体を温めてくれます。ぜひ参考にしてください。
生理痛によくない食べ物や飲み物は?
これまで生理痛に効果的な食べ物や飲み物を解説しました。ここからは反対に生理痛によくない食べ物や飲み物を紹介します。自身の生活習慣を見直すきっかけになるでしょう。
身体を冷やすもの
体が冷えると血管が収縮されて生理痛だけでなく、さまざまな病気にかかるおそれがあります。生理痛のほかには生理不順・貧血・卵巣機能低下・不妊症と女性に関しての病気が多い傾向があります。
特に冬場は気温が下がり、冷え性の方にとって辛い季節です。若い方は季節に応じた服装をしましょう。
また、温かい食べ物や飲み物を摂り、適切な運動をすると体温が上がり症状が緩和されます。
脂肪分の多いもの
脂肪分の多い食べ物も生理痛を悪化させる原因の1つです。女性ホルモンの代謝は肝機能の働きに関わりますが、脂肪分が多い食べ物を好んで食べていると肝機能の低下を招く恐れがあります。
生理痛が辛いときはコンビニのお弁当や外食はできるだけ避けて、エネルギーになるもの・身体を作るもの・身体の調子を整えるものとこの3つの栄養素をバランスよく取りましょう。
塩分の多いもの
塩分の多いものはプロゲストロンの増加で身体から水分が排出されなくなり、むくみや頭痛の原因になります。1日の平均塩分摂取量を上回らず、塩分過剰摂取にならないよう気をつけましょう。
むくみの解消も一緒に望むなら、カリウムの多く含まれる食品と合わせて食べることがおすすめです。
- 海藻類
- 芋類
- 豆類
上記の食品を普段の食事にたくさん取り入れましょう。
カフェインを含むもの
カフェインには血管を収縮させたり神経を興奮させたりする働きがあるため、生理痛やPMS時の精神的症状を悪化させてしまいます。
コーヒーやチョコレートにも多くカフェインが含まれていますが、日課のように摂取している方も多いかもしれません。そのような場合は、生理痛改善によいカルシウムマグネシウムを積極的に摂取するのがよいでしょう。
お酒
お酒もカフェインと同様、血管を収縮させたり神経を興奮させたりするため、注意が必要です。ただお酒は普段から毎日飲む方もいるでしょう。
いきなりお酒をやめるのは難しいかもしれません。しかし、生理痛がひどい場合は特に、生活習慣の見直しが必要です。
症状がひどい場合は市販薬の服用やクリニックへの相談も視野に入れる
これまで自宅や普段の生活でできる生理痛のセルフケアを説明しました。しかし、日常生活に支障の出る痛みの場合は病院を受診してください。
症状が軽くなる治療法は、自身に合ったものが選択されます。そもそも生理が起こり、女性ホルモンの作用に影響が出ることから症状が出るのが原因です。そのため排卵を抑制する低用量ピルが処方されることもあります。
また、痛みとともに精神症状も辛いなら精神安定剤や抗うつ剤が選択されることもあります。薬に抵抗があるのなら、医師・薬剤師と相談し、漢方を検討されてみてもよいでしょう。
編集部まとめ
女性特有の生理痛は毎月来るもので耐え難い方も少なくないでしょう。生理痛を緩和させるためにはセルフケアでできる食生活の見直しや規則正しい生活が基盤となってきます。
食生活が乱れていると、生理以外で体調を崩したときに適切な検査結果が得られない場合も多く、ほかの病気が潜んでいても早期発見できなくなります。
自身の健康を守るためにも症状が辛ければ病院を受診し、生活の質を高めて元気よく毎日が送れるように検討してください。
参考文献