レーシックで老眼が治る?手術・知っておきたいことを解説
レーシックは近視・遠視・乱視などの屈折異常を矯正します。老眼は屈折異常ではなく加齢による生理現象です。
レーザーを使って角膜の形を変えることで裸眼でもはっきりと見えるようになりますが、老眼は水晶体の硬化や濁りには影響しません。
レーシックは老眼そのものを治療することは不可能です。しかし、モノビジョン・レーシックで老眼を改善するという方法はあります。
ここではレーシックで老眼が治るかという疑問にお答えし、手術のことや知っておきたいことを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
柳 靖雄(医師)
目次 -INDEX-
レーシックで老眼が治る?
レーシックで老眼を治せるのでしょうか。レーシックは眼の表面の角膜にレーザーを照射して、角膜の曲率を変えることにより視力を矯正する手術です。
人は加齢により水晶体の弾性が失われて調節力が弱まり、近くのものに焦点を合わせることが遅くなり合わせられなくなってきます。
レーシックは角膜の屈折力を変えるだけなので、調節力には影響しません。
したがって、レーシックを受けても老眼は進行していきますので、レーシックで加齢による老眼そのものを治すことはできません。
レーシックとはどんな手術?
レーシックはエキシマレーザーという特殊なレーザーを使って、眼の表面にある角膜の一部を削り、角膜の曲率を変えます。
これにより、光が網膜に正しく焦点を合わせるようになり、視力の回復が可能です。エキシマレーザー光は波長が短く、角膜の一部を正確に除去できます。
手術は約10分程度で終わり、手術中や手術後に痛みはほとんどなく、視力回復が早いという特徴があります。
老眼治療のレーシックについて知っておきたいこと
これまでは老眼を治療する方法がなかったため、老眼鏡を使うしかありませんでした。加齢が原因の老眼という現象そのものはレーシックでは治せません。
しかし、レーシックでは近視だけでなく遠視や乱視も、見え方については矯正できます。現在は老眼でも治療できる時代になりました。
- 遠近両用レーシック(プレスビーマックスハイブリッド)
- 老眼用ICL(老眼用眼内コンタクトレンズ)
- 老眼治療カメラ(リーディングアイ)
- モノビジョンレーシック・多焦点眼内レンズによる白内障手術
- 点眼薬による老眼治療(リーディングドロップ)
など、さまざまな治療法が開発されています。レーシックは国内では最もポピュラーな視力矯正手術ですが、リスクはゼロではありません。
手術を受けられないこともあり、重篤な眼疾患はその一例です。ほかに、保険適用外の施術であることなど、知っておきたいポイントを解説します。
国内では最もポピュラーな視力矯正手術
老眼治療のレーシックで最もよく知られている視力矯正手術は、遠近両用レーシックとモノビジョンレーシックです。
遠近両用レーシックは従来より進化したレーシック手術の方法で、近いところ・中間・遠いところの映像を網膜で焦点が合うように矯正して老眼を治療します。
モノビジョンレーシックは左右の眼からの見え方の差を利用して行なう老眼治療で、両眼で見た時に近くも見えさらに遠くも見えるようにする療法です。
保険適用外の施術
老眼治療のレーシックは保険適用外の自由診療になります。費用は施設や手術方法によって異なりますが、一般的にかかる金額は両眼で30万円~50万円(税込)程度です。
ただし、所得税の医療費控除の対象になるため、確定申告で税金の還付を受けられる可能性があります。
また、生命保険に加入している場合は手術給付金が支払われることもあるので、保険会社に確認してください。
リスクはゼロではない
レーシック治療によるリスクはいくつもあります。ドライアイ・グレア・ハロー・感染症・再手術の割合・角膜拡張症などです。
レーシックを受けると手術の際に角膜の神経の一部が切断され、ドライアイになることがあります。レーシックは手術した後に感染を起こすことがある外科手術です。
手術後に暗いところで光を見た両眼に、非常にまぶしく感じて見えにくくなったり(グレア)、光の周囲に別の光の輪が見えたり(ハロー)することがあります。
初回の手術で近視や乱視が残ったり時として遠視になったりする場合、再手術をすることによって裸眼視力をさらに向上させることが可能です。
発症していない円錐角膜にレーシックをすると角膜が薄くなるため、円錐角膜の進行が加速される(角膜拡張症)こともあります。
眼疾患があると受けられない可能性がある
次のような眼疾患がある両眼はレーシックを受けられません。眼疾患があると判明した場合は、レーシックを止めて別の治療法を選択することが必要です。
- 角膜拡張症(ケラトエクタジア)
- 緑内障
- 白内障
レーシックで角膜を削ることによって、角膜拡張症(ケラトエクタジア)という合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
レーシックで角膜を削ることで眼圧測定値が低くなり、緑内障の正確な診断・治療は困難です。レーシックで視力を矯正したとしても、白内障が進行すれば再び視力が低下します。
レーシックのメリットは?
レーシックは近視矯正治療がよく知られていますが遠視や乱視の改善もでき、近視・乱視・遠視に悩む人の屈折異常を矯正し視力の良好な改善が可能です。
レーシックのメリットは、近視・遠視・乱視が治療可能なこと・手術時間が短いこと・手術後の回復が早いことがあげられます。
レーシック手術は約10分で完了し、手術前後の時間を含めても1時間半から2時間程度で終わる日帰り手術で、早い人でよく見られるのは手術当日からの視力改善です。
手術後にすぐ帰宅できますので、日常生活への支障が少なくて済みます。なお、手術日とは別に事前に術前の適応検査のための通院が必要です。
レーシックは保険適用外の手術ですが、視力矯正についてのほかの手術と比べ費用の負担は抑えられています。
裸眼で過ごせるようになる
手術は片眼約10分で終わり、手術直後はメガネやコンタクトレンズは不要です。レーシック手術を受けた両眼の視力の回復度合いは、約90%以上が裸眼視力1.0以上となっています。
日常生活で車の運転やテレビ鑑賞などを行なうために必要とされる、視力0.7以上への回復についてはほぼ100%です。
裸眼で過ごせないことがあるのは、術後にドライアイになる場合・角膜の厚みが不足している場合・白内障や緑内障など重篤な眼の病気がある場合などがあります。
手術時間が短い
レーシックの手術時間は両眼で約10分と非常に短いです。しかし、手術前後の検査や説明にも時間がかかり、トータルで1.5時間から2時間程度の日帰り手術となります。
手術当日の流れは、手術前の検査に1.5〜2時間・手術の説明に30分〜1時間・手術直前の検査に1時間・手術自体は10分・手術直後は20〜30分休憩・直後の検診は10分程度です。
ただし、瞳孔が小さくならない場合・角膜の形や厚みが特殊な場合・手術中に動揺や不安を感じる場合などはこれよりも長くなることもあります。
視力の回復が早い
レーシックの手術で視力の回復は早い人だと手術当日です。視力が良くなり裸眼で日常生活が送れるようになります。
仕事を行なうのは手術を受けた日の翌々日からにしてください。入浴や運転などには制限や注意点がいくつかあります。レーシックのメリットは手術後の回復が早いことです。
手術後すぐに回復しなかった場合でも、多くの人は翌日までに回復しています。ただし、一部には近視の戻りもありますので要注意です。
痛みが少ない
レーシック手術の最初に点眼麻酔を行います。レーザーが当たっている感覚はありませんので痛みを感じません。
眼を固定する器具を装着すると両眼に多少圧迫される感覚はあります。手術そのものは両眼なら20分程度で終わりストレスは感じにくいです。
ただし、手術後に点眼麻酔が切れた両眼やドライアイによる痛みを感じる場合もあります。それらは2~3時間で治まることが多く、ほとんどの場合、痛むのは翌日までです。
ICLなどほかの方法より費用が安い
レーシックとICL(Implantable Collamer Lens)は、手術方法や費用に違いがある視力矯正手術です。
レーシックは角膜にレーザーを照射し角膜の曲率を変化させ視力を回復させます。費用は両眼で約20万円から50万円(税込)程度です。
ICLは角膜を少し切開して、虹彩と水晶体の間に視力を回復するためのレンズを挿入する手術となります。
費用は両眼で約40万円から60万円(税込)程度です。レーシックとICLにかかる費用を比較すると、一般的にICLの方が少し高くなります。
レーシックのデメリットは?
レーシックは非常に安全性が高い手術です。しかし、手術である限りリスクゼロではありません。
デメリットは、復元ができないこと・極端な視力の再低下がおこりうること・ハローグレアが起こる可能性があること・一時的にドライアイになる可能性があることなどです。
レーシック手術では直接角膜を削ってしまい、再手術で調整しようとしても削った角膜は厚くできません。近視の戻りで極く稀に近視や遠視が新たに発生することもあるようです。
夜を中心に光がにじんで見えたり眩しく見えたりする「ハローグレア」が起こることもあります。原因となるのは瞳孔の開き具合や光に対する敏感さなどです。
また、レーシックでは一時的に視神経が損傷されて涙が出にくくなったり、ドライアイになったりする可能性があります。
元に戻せない
レーシックは角膜をレーザーで削る手術ですが、一度削った角膜は元に戻すことはできません。そのため、レーシックの効果は基本的に半永久的に持続するというのが定説です。
しかし、見え方に違和感を覚えて思わしくない症状が出た場合でも、元に戻すことはできない可能性があります。
この場合、再手術で調整したくても一度削ってしまった角膜を厚くできません。したがって、2回眼の矯正でどこまで適応できるかについては限界があります。
近視が戻る可能性がある
レーシック後たいていの場合は、回復した視力が維持されることがほとんどです。しかし、稀に手術した後に近視や遠視の発生が見られます。
そのようなケースは元々強度の近視・乱視だった両眼に起こったという症例が多いです。この場合、近視についてはほとんど手術した後1年以内に再発しています。
また、近いところばかり見ている生活を続けると、手術後数年経過して新たな近視が発生する場合もあります。
近くを見過ぎない・30分から60分おきに遠くを見る・休憩するなど視力のケアを意識してください。
ハローグレア現象が起こることがある
ハローグレア現象は、光にまぶしさやぎらつきを感じたり光の周囲にモヤがかかったりして見える現象です。
レーシックの手術をしたあと角膜の形状が変化して、光の屈折異常が起きるために発生することがあります。
夜間の暗がりで瞳が大きくなった両眼などに、光がにじんで見えたり信号の光などがぼやけて見えたりするのがこの現象です。
ほとんどの方は、時間が経つにつれて脳が順応し気にならなくなります。
強度の近視には対応できない
眼の調節力を表すD(ディオプトリー)の表記では、軽度の近視は-3.00D以下・中等度の近視は-3.00Dを超えて-6.00D以下・強度の近視は-6.00Dを超えた範囲になります。
一般的に、近視・遠視・乱視の眼はレーシック手術によって矯正することが可能です。しかし、強度の近視は焦点を網膜に合わせるため角膜を多く切除する必要があります。
そのため、レーシックで矯正することは困難なことが多いです。この場合、角膜を削らないICLなどの別の視力矯正手術が適応となる場合があります。
ICLは眼の角膜に非常に小さい切開創を作り眼内レンズを挿入する手術です。レーシック手術のように角膜を削りませんので、もとに戻せる特徴があります。
もし見え方が不満だったり将来別の眼の病気で手術が必要となった時は、眼内レンズを取り出すことも可能です。
安全性とともに有効性の高さも評価されています。ICLは交換や再手術の必要なく永久的に眼内に置いておき、必要な時は取り外し可能です。
見え方に違和感があったり将来眼の病気にかかって治療が必要になったりする場合には、レンズを取り出すこともできます。
レーシックで老眼が進むことはある?
老眼自体は角膜ではなく水晶体を調節している毛様体筋の筋肉の衰えによる老化現象です。レーシック手術で老眼を改善することはできません。
レーシックの手術を受けると老眼が進む時期が早まるという噂もありますが、これは誤解です。
ただし、レーシック手術時点では老眼の症状が出ていなくても、手術後に水晶体が濁って硬くなれば老眼の症状が出る可能性は十分にあります。
編集部まとめ
レーシックという手術に関して手術の概要・費用・手術に要する時間などを、メリットとデメリットを中心に解説しました。
レーシックで老眼そのものは治せませんが、老眼に伴う見え方の改善は可能であり様々な方法があります。
不安がなくメリットが多ければレーシックを受けたいという方も少なくありません。レーシックと老眼の関係について理解していただく上で、この記事をぜひ参考にしてください。
参考文献