子宮頸がんになりやすい人とは?子宮頸がんの症状や原因についても解説!
子宮頸がんの発生に最もかかわる要因はHPV感染です。HPVは性行為により感染するため多くの女性にとって関係のある病気です。しかし、HPVに対するワクチンがあるため予防できるがんともいえるのです。
本記事では、そんな子宮頸がんになりやすい人の特徴や、子宮頸がんの初期症状、原因について解説していきます。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がんになりやすい人とは?
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染してしまうことで発生します。ヒトパピローマウイルスは性交で感染する可能性があるため、一度でも性交経験のある女性は誰でも子宮頸がんになりえます。
その中でも子宮頸がんの発症率は20代後半から30代頃に高くなり、30代後半にはピークを迎えます。
高齢になってから発症する人もいますが、50代をすぎると子宮頸がんの発症率はだんだんと低下していきます。
子宮頸がんの罹患率
子宮頸がんの罹患率は20代後半の女性で人口10万人あたりおよそ6人程度です。そこから30代前半は10万人あたり20人、30代後半になると10万人のうち30人近くが子宮頸がんを発症すると言われています。
子宮頸がんは女性がんの中でも乳がんの次に発症率が高いがんです。特に20代から30代の女性にしぼると、その発症率は乳がんより高くなり、その他のがんを含めたすべてのがんの中で発症率が1番高いとされています。
子宮頸がんの死亡率
子宮頸がんの死亡率は、発見時のステージによって異なります。子宮頸がんはⅠ期〜Ⅳ期までの4つのステージに分類され、早い段階の発見であればそれだけ死亡率は低くなります。
各ステージの詳細、および5年後の生存率は以下の通りです。
・ステージ Ⅰ期
状態:がんが子宮頸部に留まっている。
5年生存率:92.1%
・ステージ Ⅱ期
状態:がんが子宮頸部を超えてはいるが、腟壁下1/3または骨盤壁には達していない。
5年生存率:74.2%
・ステージ Ⅲ期
状態:がんが腟壁下1/3、骨盤、または骨盤のリンパ節に転移が認められるもの
5年生存率:59%
・ステージ Ⅳ期
状態:がんが膀胱粘膜、直腸粘膜まで湿潤しているもの、小骨盤腔をこえて広がる
5年生存率:29.8%
転移がなければ死亡率は低いようです。ワクチン接種と定期的な検診をおこなっていれば、予防することのできるがんだと言えます。しかし、子宮頸がんによる死亡数は年間2500人程度で、この10年で増加傾向にあるようです。
子宮頸がんになりやすい要因とは?
性交経験がある女性なら誰でもなり得る可能性のある子宮頸がん。子宮頸がんになりやすい人とはどんな人でしょうか。
性交渉の回数やパートナーが多い
まずは性交渉の回数、もしくは性交をするパートナーが過去に多くいる人が、子宮頸がんになりやすい人と言えます。
なぜなら、ヒトパピローマウイルスは一度性交をすると必ず感染するわけではないからです。
そのため、何度も性交経験があると、必然的にヒトパピローマウイルスに感染する可能性は高くなります。
また、ヒトパピローマウイルスには200を超える種類があります。その中でも子宮頸がんを引き起こしやすいものは15種類ほどで、子宮頸がんにかかった20〜30代の女性の80%が16型、もしくは18型という種類の感染が確認されています。
つまり、ヒトパピローマウイルスに感染したとしても必ずしも子宮頸がんになるわけではないということです。人間の体には免疫力がありますので、ヒトパピローマウイルスに感染したとしても9割は免疫作用により消失し、残りの1割も必ずしもがんに発展するわけではありません。これはどのウイルスでも同じで、たとえ16型や18型も必ず子宮頸がんに発展するとは限りません。
そのため、一度の性交ではなく回数を重ねることで感染してしまう確率が高まります。
ですが、たった一度の性交で子宮頸がんになる人もいます。そのため、子宮頸がんの人=何人とも性交をしている人という方程式は決して成り立ちませんので、そのようなイメージは持たないようにしましょう。
喫煙習慣
どんな病気にも言えることですが、喫煙は免疫力が低下するため、病気の発症率を上昇させてしまいます。
子宮頸がんも例に漏れず、喫煙習慣のある人の方が子宮頸がんになりやすいことが調査により明らかになっています。
また、タバコには発がん物質が含まれています。その発がん物質が直接的に子宮頸がんの発症に影響する可能性が示唆されています。
タバコは自分で吸うだけでなく、パートナーによる受動喫煙でも影響があると言われています。
妊娠、出産の回数が多い
妊娠、出産の回数が多い人は子宮頸がんになりやすいようです。
妊娠をすると検診などで、そして出産は赤ちゃんが直接産道を通るので、子宮が刺激や傷などを負う機会が多いためです。
これを聞くと妊娠や出産が恐ろしく感じますが、逆に子宮体がんは妊娠、出産の経験が少ない人がなりやすいとされているため、なりやすい要因を排除するというよりは、定期的な検診で予防および早期発見を目指す形が理想的であると言えます。
子宮頸がんの種類
子宮頸がんの種類は大きく分けて2つに別れます。
- ・扁平上皮がん
- ・腺がん
2つの特徴について詳しく見ていきましょう。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは、子宮頸部の入り口にある扁平上皮細胞から発生するがんです。
上皮内にとどまっているがんを「上皮内がん」と呼び、発見されればほぼ治ると言われています。ただ、発見された時に既に間質という体の奥に入り込んでいると、治療方針が変わってくるようです。
子宮頸がんの約75%が扁平上皮がんです。ですが、最近は以下の腺がんの比率が上昇しているようです。
腺がん
腺がんは子宮頸部の奥の方にある腺組織の上皮細胞から発生するものです。
腺がんは検診で見つかりにくく、さらに転移しやすいので治りにくいとされています。
この2つは発症率やがんの位置、転移しやすさこそ違いますが、治療は基本的には同じです。ただ、腺がんの方がどこまで進行しているかがわかりづらいため、切除術をするとしても、切除の範囲が大きくなることがあるようです。
子宮頸がんの症状
子宮頸がんを早期発見するために、自分の体の症状から子宮頸がんを疑うことはできないのでしょうか?
子宮頸がんは、進行してくると以下のような症状が現れます。
- ・おりものの異常(量が増える、匂いがある、茶色や黒褐色になる、水っぽくなるなど)
- ・生理期間以外の出血(不正出血)
- ・性交時の出血・痛み
- ・下腹部や腰の痛み
これらの症状が出た場合は、子宮頸がんを疑い、検査に行くとよいでしょう。
おりものの異常などは性病でもよく見られる症状のため、例え子宮頸がんでなかったとしても別の病気が発見され、治療につながるかもしれません。
しかし、子宮頸がんは初期はほとんど自覚症状が出ません。特に腰の痛みなどは、子宮外に転移した後に出てくる症状です。
そのため、厚生労働省は2年に1回の定期検診を呼びかけています。
子宮頸がんの検査
子宮がん検診では、ブラシの付いた専用の器具を使用して子宮頸部の入り口の細胞を採ります。そしてその中に異常な細胞がないか顕微鏡で検査しています。
子宮頸がん検診は自己負担がある場合でも400〜1000円程度で行えますし、検査自体の時間もかからないため手軽におこなうことができます。腟から器具を入れられるので多少違和感はありますが、ほとんどの人は痛みを感じません。
自治体によっては無料で検診をおこなうよう整備しているところもあります。一度自分が住んでいる市町村の検診制度がどのようなものになっているか確認してみましょう。
子宮頸がんの治療方法
子宮頸がんの治療方法には、手術、抗がん剤を使用する方法、放射線を照射してがんを治療する放射線療法の3種類があります。どの治療を組み合わせるかは、ステージによって異なります。ここでは、それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
手術
直接がんの部分を取り去ってしまう治療法です。ステージⅠ〜Ⅱ期は手術適応となることが多いです。進行度によっては子宮の一部のみの摘出で済むこともありますが、全摘出が進められることも少なくありません。子宮の摘出は多くの女性にとって喪失感を伴うものですが、がんを全て切除できるため、根治につながりやすいです。妊娠を望む女性の場合は、化学療法を選択するか、ステージの縛りはありますが子宮体部を残す手術を採ることもあります。
放射線治療
放射線治療とは、がんの部分に放射線を当てることによりがん細胞をやっつける治療です。放射線治療は化学療法と組み合わせて行われることが多いです。特にステージⅢでは、手術はおこなわず、放射線治療と化学療法を組み合わせて根治を目指す治療法が取られるようです。
放射線はお腹の上から当てるものと、放射線を出す機械を腟に挿入し、子宮に直接放射線治療を当てるものがあります。どちらかを選択するというわけではなく、どちらも並行しておこなうのが一般的です。
抗がん剤による化学療法
ステージⅣでは主に化学療法がおこなわれます。
化学療法とは、抗がん剤の投与でがんをやっつける治療のことです。
なぜステージⅢやⅣで手術をおこなわないのかというと、ステージⅢとⅣがんが子宮だけでなく膀胱や腟にまで広がっている状態のことを表しており、子宮を摘出しても根治に繋がらないためです。
また、肝臓や肺、骨などにも転移している場合は、症状緩和を目的とした化学療法がおこなわれることもあります。
子宮頸がんになりやすい要因に当てはまる方はワクチン接種を
子宮頸がんワクチンは性交体験がまだない時でないと効果がないと思われがちですが、実は性交の経験があっても効果があります。
なぜなら、ワクチンは現在感染しているウイルスをやっつけることはできませんが、これから感染するかもしれないウイルスの予防にはなるからです。
そのため、子宮頸がんになりやすい要因に当てはまる女性は、ワクチン接種することをおすすめします。
子宮頸がんワクチンとは
子宮頸がんワクチンはその名の通り子宮頚がんの予防のためのワクチンです。
200種類あるヒトパピローマウイルスのうち約7割のウイルスを予防できると言われており、その中には子宮頸がんの主な原因となる16型、18型のウイルスも該当します。
子宮頸がんワクチンは国を挙げて接種が推奨されているものの、2013年には副作用が問題となり、現在20代後半にさしかかる年代の女性でもワクチン接種をしていない人が多くいます。
しかし現在では、副作用によるデメリットよりも予防できるリスクの方が大きいと判断され、厚生労働省が接種を推奨しています。
特に、問題となった2013年に接種対象であった1997年4月2日〜2007年4月1日生まれの女性は、2025年3月まではお住まいの自治体で無料でワクチン接種ができるので、3回の接種を終えていない人は近くの病院でワクチンを打つと、将来のがんを予防できるかもしれません。
まとめ
本記事では、子宮頸がんになりやすい人の要因や子宮頸がんの種類、子宮頸がんの検査や治療方法、子宮頸がんのワクチンなどについて解説しました。子宮頸がんの中には、検診でも見つけづらい種類のものがあるため、定期的に検診を受けるだけでなくワクチン接種と両方で予防することが大切です。