「子宮頸部異形成」はどれくらいで『子宮頸がん』になるかご存じですか? がん化予防法も解説

子宮頸がんは進行するまで自覚症状がほとんどないため、早期発見が重要な病気です。その前段階とされるのが「子宮頸部異形成」。この段階で適切な治療を受ければ、がんを防げると言われています。そこで、子宮頸部異形成の治療とがん予防について「AOクリニック」の村上功先生に解説してもらいました。

監修医師:
村上 功(AOクリニック)
目次 -INDEX-
子宮頸がんは聞いたことあるけど… 子宮頸部異形成って何?

編集部
子宮頸がんについて教えてください。
村上先生
子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)に発生するがんで、主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。若い女性に発症しやすいがんで、初期は自覚症状が少ないため、検診が強く推奨されるがんです。
編集部
子宮頸がん検診でよく聞く「子宮頸部異形成」とはどんな状態ですか?
村上先生
子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階とされる状態で、HPV感染によって子宮頸部の細胞が異常を示している状態です。異形成は、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)に分類され、高度異形成になるほどがんに進行するリスクが高くなります。
編集部
子宮頸部異形成のすべてが「がん」になるのですか?
村上先生
一概にそうとは言えません。異形成のすべてががんに進行するわけではなく、特に軽度異形成は、半数以上が自然に消失すると言われています。ただし、中等度以上になると進行リスクが高まるため、定期的な検査や治療が必要になります。
編集部
子宮頸部異形成が進行すると、どのくらいの期間でがんになりますか?
村上先生
個人差はありますが、異形成からがんに進行するまでには通常数年〜十数年かかります。高度異形成だと5年ほどでがん化する可能性がありますので、早めの治療が推奨されます。
進行するとがんに!! 子宮頸部異形成の治療について教えて!

編集部
子宮頸部異形成の治療方法にはどのようなものがありますか?
村上先生
軽度異形成は、治療しなくても自然治癒(消退)することがあるため、経過観察となることも多いですが、中等度以上の場合は治療が検討されます。薬物療法では治療できないため、手術療法となります。もっとも多いのが、異形成部分を円錐形に切除する「円錐切除術」です。円錐型に子宮頸部を切除してしまうため、切迫早産のリスクが高くなると言われており、「円錐切除術」をした方の切迫早産率は25%と、通常(5%)の約5倍になるというデータもあります。
編集部
ほかにはどんな手術法がありますか?
村上先生
たとえば、当院でもおこなっているような「子宮頸部レーザー蒸散術(レーザー照射治療)」という手術があります。これは異形成の部分にレーザーを照射して病変を焼き、蒸散させる手術です。レーザー蒸散術は、手術によって子宮頸管が短くなることはなく、その後の妊娠に影響を及ぼしにくいと言われています。
編集部
子宮頸部異形成は、治療すれば子宮頸がんの心配がなくなりますか?
村上先生
適切な治療を受ければ、がんへの進行を防ぐことができます。ただし、HPVに再感染するリスクもあるため、治療後も定期的な対策や子宮頸がん検診が必要です。
編集部
HPV感染はどうやって防げますか?
村上先生
HPVワクチンを接種することで、感染のリスクを大幅に下げることができます。また、不特定多数との性交渉を避けることや、コンドームの使用も予防策のひとつです。
ワクチンのある「がん」 子宮頸がんの予防法を医師が解説

編集部
子宮頸部異形成の治療後に再発することもあるのですね。
村上先生
そうですね。HPVに再感染した場合や、残存していた異常細胞が増殖した場合に再発することがあります。そのため、定期検診を受け、異常がないかを継続的にチェックすることが大切です。
編集部
子宮頸がんを防ぐために、日常生活でできることはありますか?
村上先生
まずはHPVワクチンや定期検診をしっかり受けること。その上で規則正しい生活を送り、免疫力を高めることが大切です。バランスの取れた食事や適度な運動、ストレス管理を心がけると良いのではないかと思います。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
村上先生
子宮頸がんは、妊娠に適した年代と重なる20~30歳代に増加しています。子宮頸がんの初期やその前段階では、ほとんどが自覚症状はなく、自分で気づくことは困難です。もちろん原因となるHPVに感染しても気づくことはできません。症状が出てからでは、子宮頸がんがすでに進行している可能性があります。HPVワクチン接種と検診は役割が違うため、どちらも受けることが重要です。 自分の健康のため、家族のため、そして大切なこれからを守るために、20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
編集部まとめ
子宮頸部異形成は、適切な経過観察や治療をおこなうことで、子宮頸がんへの進行を防ぐことができます。異形成と診断されたからといって、すぐにがんになるわけではありませんが、日々を安心して過ごすためにも、医師と相談しながら適切な対応をとることをおすすめします。
参考文献:
子宮頸癌治療ガイドライン2022年版
https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/
動画アニメで婦人科がんのことを知ろう/患者さん向け動画アニメーション(日本婦人科腫瘍学会)
https://jsgo.or.jp/animationlist/1285/?doing_wp_cron=1741831978.4760940074920654296875
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