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「再発性子宮頸がん」の生存期間を延長させる治療法はご存じですか? 有効性が確認された研究結果

 公開日:2025/04/17

スペインのバルデブロン腫瘍学研究所の研究員らは、再発子宮頸がんに対するセミプリマブ(商品名:リブタヨ)の有効性について検討した第III相臨床試験「EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9」の研究結果を報告しました。研究報告は、医学雑誌「European Journal of Cancer」に掲載されています。この内容について馬場医師に伺いました。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

研究グループが発表した内容とは?

バルデブロン腫瘍学研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

バルデブロン腫瘍学研究所の研究員らが実施した試験では、プラチナ製剤を含む化学療法後に再発子宮頸がんが進行した患者を対象に、セミプリマブと医師が選択する化学療法の効果を比較しました。その結果、セミプリマブ群の生存期間の中央値は11.7カ月で、化学療法群の8.5カ月を上回りました。セミプリマブ群は、PD-L1の発現に関係なく全生存率が優れています。しかし、全身状態の指標となるパフォーマンスステータス(PS)は、PD-L1<1%において、化学療法群と比べて劣っている結果でした。

子宮頸がんは世界中で多くの女性が罹患し、死亡率も高い病気です。特に進行・再発した場合は治療選択肢が限られており、効果的な第二選択治療の必要性が指摘されていました。この試験結果は、プラチナ製剤を含む治療歴を持つ患者に対して、セミプリマブが新たな標準治療の候補となる可能性を示しています。既存の化学療法と比較して、生存率の改善が認められたことは大きな進展である一方で、試験対象者の背景や治療選択の幅など、さらなる研究が必要であると考えられます。また、長期的な安全性や費用対効果についても慎重な姿勢が求められます。実際の使用に際しては、臨床医の判断や患者の状態を考慮しながら慎重に適用されるべきでしょう。

研究テーマになった子宮頸がんとは?

今回の研究テーマに関連する子宮頸がんについて教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんで、主な原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染です。HPVは性交渉を通じて感染しますが、多くの人は自然にウイルスを排除できます。しかし、一部の人ではHPVの感染が長く続き、がん化する可能性があります。

初期の子宮頸がんはほとんど症状がなく、進行すると不正出血や性交時の出血、おりものの異常、下腹部の痛みなどが出ます。特に、奥の方にがんができると、気づかず進行してしまうこともあります。そのため、定期的な検診がとても大切です。

子宮頸がんは予防できるがんです。HPVワクチンを接種することで感染を防げることに加え、定期的に検診を受ければ早期に異常を見つけて治療することができます。少しでも気になる症状があれば、早めに婦人科を受診しましょう。

子宮頸がんに関する研究内容への受け止めは?

バルデブロン腫瘍学研究所の研究員が発表した内容への受け止めを教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

基本的に子宮頸がんの治療は、手術や放射線治療がメインであり、抗がん剤を使用した化学療法の効果は残念ながら限定的です。子宮頸がんの再発は、すでに標準治療である手術や放射線による治療をおこなった後に起こる場合がほとんどです。効果は限定的ながらも抗がん剤による治療がおこなわれるものの、残念ながら予後が悪く、治療に難渋するケースが少なくないです。今回の研究報告では、セミプリマブが再発子宮頸がんの治療の選択肢の1つとなる可能性を示しています。

子宮頸がんは予防可能ながんです。HPVワクチンや定期的な子宮頸がん検診によって予防することができますし、予防効果に科学的根拠があります。先進国において、日本はHPVワクチンの普及率は低く、子宮頸がん検診の受診率も低い状況です。個人的には子宮頸がんに関しては、治療より予防に対して力を入れるべきだと考えております。とはいえ、子宮頸がんに罹った場合は治療も重要であるため、今後の進展が期待されます。

編集部まとめ

がん治療が発展する一方で、私たちの生活においては、HPVワクチンの接種や定期的な検診を受けることが、子宮頸がんの予防と早期発見につながります。自身の健康を守るためには日頃から検診を意識し、必要な対策を講じることが大切です。

※提供元「日本がん対策図鑑」【子宮頸がん:二次治療(OS)】「リブタヨ」vs「化学療法」
https://gantaisaku.net/empower-cervical_os/

この記事の監修医師