「ナスのへた」に含まれる成分が子宮頸がんの治療薬に!? 名古屋大学研究グループが新発見
名古屋大学らの研究グループは、「ナスのへたに含まれる天然化合物が子宮頸がん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことを確認した」と発表しました。このニュースについて、前田医師に伺いました。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
研究グループが明らかにした内容とは?
今回、名古屋大学らの研究グループが明らかにした内容について教えてください。
前田先生
名古屋大学らの研究グループは、ナスのへたに含まれる天然化合物「9-oxo-ODAs」が子宮頸がん細胞に対して効果があるかどうかを調べました。研究成果は、学術誌「Scientific Reports」に掲載されています。
研究グループがなぜナスに着目したかというと、HPV関連疾患である尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)に対して、日本の民間療法でナスのへたを擦り付けたり、貼ったりしていたという背景からだそうです。すでに研究グループは、ナスのへたのエタノール抽出物が卵巣がん細胞の自然死(アポトーシス)を誘導するなどを明らかにしており、抽出物中の有効成分として9-oxo-ODAsを同定していました。今回、研究グループはヒト子宮頸がん細胞株を9-oxo-ODAsで処理し、細胞増殖やアポトーシス誘導への影響を解析したところ、ヒト子宮頸がん細胞の増殖が濃度依存的に抑制され、アポトーシス細胞数を増加させることが明らかになりました。また、マウスモデルを用いた実験では、9-oxo-ODAsを投与すると、マウスに移植した子宮頸がん細胞の転移形成や増殖が抑制されることも確認されたとのことです。これらの結果は、9-oxo-ODAsの抗腫瘍効果を示しています。
研究グループは「9-oxo-ODAsがHPV関連疾患の有望な治療薬となり得ることが示された」と結論づけており、臨床への応用に向けてさらなる検討を進めていくとのことです。
子宮頸がんとは?
名古屋大学らの研究グループが取り上げた、子宮頸がんについて教えてください。
前田先生
子宮頸がんは子宮頸部にできるがんで、一般的に子宮頸部上皮内腫瘍や上皮内腺がんという状態を経てがん化します。早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんですが、進行すると治療が難しいので、早く見つけることが重要です。日本における子宮頸がんの新規罹患者数は2019年で1万879人、2020年の死亡者数が2887人に上ります。
HPVワクチンには子宮頸がんの前がん病変を予防する効果が認められており、公費で受けられるワクチンでは、子宮頸がんを起こしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。ワクチン接種によって子宮頸がんの50~70%を防ぐことができると言われていますが、全てのHPVの感染を予防できるわけではありません。定期的に子宮頸がん検診を受けることも大事です。
今回の発表内容への受け止めは?
名古屋大学らの研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。
前田先生
現状、子宮頸がんの前がん病変に対しては、手術によって病変を取り除くか、レーザーで表面を焼く治療法があります。従来の治療法で病変を取り除くことができますが、「将来、妊娠したときに早産になりやすい」「子宮の出口が塞がってしまうなどの合併症がある」「レーザー治療は手術と比べて効果がやや劣る」「病変を取らないため、実際にどの程度病状が進行しているか確認できない」などが問題でした。今回の発見から新たな治療薬が開発されれば治療の選択肢が増えるほか、ほかの治療と併用することでよって確実で効果が高い治療、体へのダメージを抑えながら効果の高い治療をおこなえる可能性があり、今後の研究成果が期待されます。
まとめ
名古屋大学らの研究グループは、ナスのへたに含まれる天然化合物が子宮頸がん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことを確認したと発表しました。身近な食材の成分による治療薬開発に今後も注目が集まりそうです。