大腸カメラの下剤が飲みきれない!下剤を口から飲まない大腸検査の方法を解説
大腸カメラは大腸の状態を確認して、がんやポリープなどがないかを高精度で確認できる検査です。
しかしながら、大腸カメラを受けるときの下剤が苦手という方もいるでしょう。味が苦手な方や大量の下剤を飲むのが苦手な方もいます。
大腸カメラの下剤が飲みきれない場合、どうしたら良いのでしょうか。実は、下剤を口から飲まない大腸検査があります。
この記事では、下剤を口から飲まない大腸検査の方法を詳しく解説します。大腸カメラの下剤が飲みきれなくて困っている方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸カメラの下剤が飲みきれない!
大腸カメラを行うときには、通常下剤を飲んで大腸の中をきれいにしてから検査をします。大腸には便があるので、検査の見落としを避けるためにきれいにする必要があります。
大抵の場合、2リットルの下剤を飲むようにといわれることが多いでしょう。加えて、下剤は短時間(2時間ほど)ですべて飲む必要があります。
しかしながら、次のような理由で下剤を飲みきれないと感じる方も少なくありません。
- 味がまずい
- 量が多すぎる
こうした場合、下剤を飲まずに大腸検査を受けることはできないのでしょうか。実は、下剤を飲まずに大腸検査を受ける方法があります。
次に、下剤を飲まずに大腸検査を受ける方法をご紹介します。
下剤を口から飲まない大腸検査の方法は?
下剤がどうしても苦手な方は、下剤を口から飲まない大腸検査の方法もあります。具体的には次のような方法です。
- 内視鏡的洗浄液注入法
- 鼻チューブ法
それぞれの検査方法について詳しく解説します。
内視鏡的洗浄液注入法
内視鏡的洗浄液注入法は、内視鏡を使用しながら、直接下剤を十二指腸に注入する検査方法です。最初に鎮静剤を使用し、眠った状態になります。
そして内視鏡を使って胃カメラの検査を行います。次に、そのまま内視鏡で確認しながら下剤を十二指腸に注入する流れです。
内視鏡装置には汚れを洗浄するための水を流すルートがあり、このルートに下剤を流すことで直接胃や十二指腸に下剤を流せます。
目が覚めたら、下剤注入後30分ほどで排便が始まり、1〜2時間ほどで便がすべて排泄され大腸検査が可能な状態になるでしょう。
鼻チューブ法
鼻チューブ法は鼻から直径5mmほどの極細のチューブを挿入し、チューブを通して下剤を胃に注入する方法です。
チューブを通して直接下剤を胃に入れるため、下剤の味や匂いを感じずに済みます。また、内視鏡的洗浄注入法と違って、胃カメラの検査を行わなくても実施することができます。
下剤の鼻にチューブを挿入する際には鼻に局所麻酔を使用しながら行うため、痛みや違和感は少ないです。ただし、チューブが喉を通るときに吐きそうになる嘔吐反射が起こる場合があるでしょう。
チューブが胃に届いたら、胃液を吸い上げて胃に届いているかを確認します。その後、時間をかけて下剤を胃に注入します。
下剤を口から飲まない大腸検査のメリット
下剤を口から飲まない大腸検査にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には次の3つのメリットが挙げられます。
- 大量の下剤を飲む必要がない
- 前処理の時間が短くなる
- 胃カメラも同時に受けられる
メリットについて一つずつ解説します。
大量の下剤を飲む必要がない
通常の大腸検査では、検査を受ける前に大量の下剤を飲む必要があります。2リットルほどの下剤を飲むため、味や量の多さのために飲みきれないと感じる方もいるでしょう。
一方で、内視鏡的洗浄液注入法や鼻チューブ法を使えば、大量の下剤を飲む必要がないのは大きなメリットです。
下剤の味・匂い・量が苦手な方でも、鎮静剤で寝ている間に内視鏡や鼻から入れたチューブを通して下剤が腸に直接届くため、苦痛を感じることなく検査が受けられます。
前処理の時間が短くなる
別のメリットとしては、前処理の時間が短くなることも挙げられます。前処理とは、検査の前に下剤を使用して腸をきれいにする処理のことです。
通常の大腸検査では自分で下剤を飲みますが、2時間ほどかけて下剤を飲む必要があります。
内視鏡的洗浄液注入法を使えば時間をかけずに下剤を注入できるため、2〜3時間は前処理の時間を短縮できます。
また、排便回数も少ない傾向があるため、お尻や体への負担も少ない方法といえるでしょう。
胃カメラも同時に受けられる
内視鏡的洗浄液注入法の場合、胃カメラを使って下剤を注入します。そのため、大腸カメラと同時に胃カメラも受けられるメリットがあります。
胃カメラ・大腸カメラの検査では前日や当日の食事制限などがありますが、両方の検査を1日で済ませられるため、負担を軽減できるでしょう。
もちろん、通院するための時間的・経済的な負担が軽減できるメリットもあります。鼻チューブ法の場合は胃カメラは行いません。
下剤を口から飲まない大腸検査のデメリット
下剤が苦手な方にはメリットの大きい下剤を口から飲まない大腸検査ですが、デメリットもいくつかあります。
すべての人が下剤を口から飲まない大腸検査を受けられるわけではありませんので、デメリットについてもしっかり把握しておきましょう。具体的には次のようなデメリットがあります。
- 検査を行える医療機関が限られている
- 自分で飲むのに比べて下剤が身体に入るペースが早い
- 通常よりも費用が高額になる
デメリットについても一つずつ解説します。
検査を行える医療機関が限られている
まず、下剤を口から飲まない大腸検査を行っている医療機関は限られていることが挙げられます。残念ながら、大腸検査を行っているすべての医療機関で下剤を口から飲まない大腸検査に対応しているわけではありません。
そのため、自分で下剤を口から飲まない大腸検査を行っている医療機関を探して検査を受ける必要があります。自宅近くでそうした医療機関があれば良いですが、遠いところで行っている場合は、通院するための時間的・経済的な負担がかかるでしょう。
自分で飲むのに比べて下剤が身体に入るペースが早い
別のデメリットとしては、自分で下剤を飲むのに比べると、下剤が身体に入るペースが早いことも挙げられます。内視鏡を通して医師が下剤を入れるため、早いペースで下剤が体内に入ります。
短時間で下剤が入ることにより、頻繁に便意を催してトイレに行くことになるでしょう。年配の方の場合、体への負担になる場合があります。
鼻チューブ法の場合は、ゆっくりと下剤を注入するため、内視鏡的洗浄注入法に比べると体への負担は少ないといえるでしょう。ゆっくりと下剤を注入してほしい方は、鼻チューブ法がおすすめです。
通常よりも費用が高額になる
最後に、下剤を口から飲まない大腸検査は通常の大腸検査に比べて費用が高額になることも挙げられるでしょう。内視鏡的洗浄液注入法は、特殊な検査費着費用として通常の大腸検査より若干費用がかかります。
また、鼻チューブ法の場合も材料費が別途かかるでしょう。内視鏡的洗浄液注入法の場合は胃カメラも同時に行うため、大腸カメラだけの場合と比べると費用も高額になります。
下剤を口から飲まない大腸検査の費用の相場については、後ほど詳しくご紹介します。
下剤を口から飲まない大腸検査の流れ
下剤を口から飲まない大腸検査を行う場合、次のような流れで行います。内視鏡的洗浄液注入法の場合を見てみましょう。細かな点はクリニックによって多少異なる部分もあります。
- 事前に診察を行う
- 胃カメラ検査
- 下剤を注入
- 排便
- 検査結果の説明
下剤を口から飲まない大腸検査の流れを一つずつ解説します。
事前に診察を行う
下剤を口から飲まないで大腸検査を受ける場合、医療機関で事前に診察を行います。これは、通常の大腸検査を行う場合と同じものです。
クリニックによっては採血を行い、感染症がないか確認する場合もあるでしょう。また、腹部の診察や腸閉塞などがないか確認するための腹部エコーを行うケースもあります。
下剤を口から飲まない大腸検査を受けるうえでの注意点や、前日からの食事制限についての説明などもあるでしょう。
また、服用している薬によっては服用を一時的に中止すべきものもあります。事前診察の際に薬についての説明もあります。
胃カメラ検査
内視鏡的洗浄液注入法を行う場合、最初に胃カメラ検査を行います。クリニックに来院したら、検査着に着替えて検査を行います。
鎮静剤を用いて胃カメラの検査を行う場合が多いでしょう。血圧・血中酸素飽和度計測モニターも体に装着します。
胃カメラ検査は通常の胃カメラの検査と同じで胃の状態を観察し、10分ほどで終了するでしょう。
胃カメラには口から入れるものと鼻から入れるものがありますが、どちらの場合でも下剤を口から飲まない大腸検査を行えます。鼻チューブ法の場合は胃カメラの検査は行われません。
下剤を注入
胃カメラによる観察が終わった後、内視鏡スコープを使って、そのまま下剤の注入を行います。胃カメラには胃を洗浄するための水を通すルートが付いています。
そのルートを使って下剤を注入することが可能です。下剤はおもに胃ではなく、胃の先にある十二指腸に注入します。
十二指腸に注入する理由は、下剤は最低でも1〜1.5Lはあるため、胃の中に下剤を注入するといっぱいに膨れてしまうからです。
鼻チューブ法の場合は、チューブを通じて胃に直接下剤を注入する形になります。そのため、内視鏡的洗浄液注入法と違って、時間をかけてゆっくりと下剤を注入します。
排便
下剤を注入してからしばらくすると便意があるので、トイレに移動して排便します。人によって異なりますが、下剤を注入してから30分ほどして排便が始まります。
1〜2時間ほどで便がすべて排泄されて、大腸がきれいな状態になるでしょう。下剤を口から飲まない大腸検査の場合、通常の大腸検査の場合に比べて早めに排便が終了する場合が多いです。
腸が完全にきれいになっていないと、腸の状態の見落としなどが生じるため、看護師が便の状態を確認します。下剤によって十分な洗浄効果が得られていない場合は、追加の下剤が必要になるケースもあります。
大腸カメラ検査
便がすべて排泄されたら、大腸カメラ検査が行われます。検査室に再び入り、希望に応じて鎮静剤の投与などが行われるでしょう。
体の左側を下にして検査ベッドに横になり、血圧・血中酸素飽和度計測モニターを体に装着します。肛門に医療用ゼリーを塗ったあと、スコープを挿入し大腸の中を観察します。
検査にかかる時間は病変・ポリープの有無により異なりますが、特に問題がなければ10〜20分ほどで終了するでしょう。
ポリープが見つかった場合は、その場で大腸カメラを使って切除する場合もあります。もし、切除をその場で行った場合は検査全体で20〜30分ほどかかるでしょう。
検査結果の説明
検査が終わったら、リカバリールームなどで覚醒するまで休みます。目が覚めて着替えが終わったら、医師から検査結果の説明があります。
撮影した胃や大腸の画像などを見ながら説明があるでしょう。もし、組織やポリープの採取が行われた場合は、検査結果がわかるまでに1週間ほどかかります。
後日、電話やクリニックで結果の説明があるでしょう。ポリープの切除を行った場合は、切除した腸粘膜に傷ができます。
合併症を避けるために1週間程度は食事・移動・排便などに関して制限があります。医師から説明があるので、説明に従って生活しましょう。
下剤を口から飲まない大腸カメラの費用相場は?
下剤を口から飲まないで大腸カメラを受ける場合、費用はどれぐらいかかるのでしょうか。通常の大腸検査の場合、1割負担で約2,500円、3割負担で約7,500円かかります。
下剤を口から飲まない大腸検査は、基本的には通常の大腸カメラの場合と費用が変わりません。ただし、内視鏡的洗浄液注入法の場合は胃カメラの検査も同時に行うため、そのための検査費用がかかります。
胃カメラの検査は、1割負担で1,500〜3,000円程度、3割負担で5,000円〜7,000円程度かかるでしょう。また、特殊検査着費用として1,000円ほどかかる場合があります。
鼻チューブ法にした場合は胃カメラの検査費用はかかりませんが、材料費として3,000円ほどかかる場合があるでしょう。
また、組織を採取して病理検査を行う場合や、ポリープを切除した場合はさらに費用がかかります。
大腸ポリープを切除した場合は内視鏡手術の扱いになり、生命保険や医療保険から還付金が支払われるケースもあります。ご自身が加入している保険会社等に連絡しましょう。
編集部まとめ
この記事では、下剤を口から飲まない大腸検査の方法を詳しく解説しました。下剤を口から飲まない大腸検査の方法には、内視鏡的洗浄液注入法と鼻チューブ法の2種類の方法があります。
内視鏡的洗浄液注入法は胃カメラのスコープを使って直接十二指腸に下剤を注入する方法です。また、鼻チューブ法は鼻から胃にチューブを挿入し、チューブを使って胃に下剤を注入する方法です。
どちらの方法も下剤を口に入れて飲む必要がないので、下剤の味や量に悩まされずに大腸検査が受けられるメリットがあります。
すべての医療機関で行われているわけではありませんが、下剤が飲みきれない方は少しでも楽に検査を受ける方法の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。