白内障手術の費用はどのくらい?手術の種類や保険適用になるケースについて解説します
白内障は40代以降から老年期までの年齢を重ねた方であれば、かなり高い確率で発症する可能性がある病気です。
現代の日本では白内障で失明まで至ることは少なく、症状が進行した場合でも手術で回復できることが殆どです。白内障の手術にはいくつか種類があり、手術内容によって費用が変わってきます。
手術費用は誰もが気になるところでしょう。この記事では白内障手術の種類ごとの費用について、また保険が適用されるかどうかについて詳しく解説していきます。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
白内障手術の費用はどのくらい?
白内障手術は濁った水晶体を取り除き、目の中にレンズを入れるという手順が一般的です。
手術費用は手術の種類・挿入するレンズの種類・入院の有無・保険適用か自由診療かによって違いが出てきます。それぞれの手術費用の目安は次のとおりです。
- 超音波乳化吸引術(単焦点レンズ・日帰り・保険適用・片目)約15,000〜60,000円
- 超音波乳化吸引術(多焦点レンズ・日帰り・自由診療・片目)約400,000〜500,000円
- レーザー白内障手術(単焦点レンズ・日帰り・自由診療・片目)約250,000〜350,000円
- レーザー白内障手術(多焦点レンズ・日帰り・自由診療・片目)約500,000〜600,000円
多焦点レンズにする場合は保険が適用されないため自由診療となります。また、単焦点レンズであってもレーザー手術を選択する場合も自由診療です。
保険適用の場合も、自己負担割合によって金額が違ってきますので、ご注意ください。保険適用時の金額の目安は次のとおりです。
- 自己負担1割(超音波乳化吸引術・単焦点レンズ・日帰り・保険適用・片目)約15,000〜20,000円
- 自己負担2割(超音波乳化吸引術・単焦点レンズ・日帰り・保険適用・片目)約30,000〜40,000円
- 自己負担3割(超音波乳化吸引術・単焦点レンズ・日帰り・保険適用・片目)約45,000〜60,000円
手術の種類やレンズによって、金額にかなりの差が生じるので、事前によく確認されることをおすすめします。
白内障手術の種類は?
白内障手術では、手術方法と目の中に入れるレンズの種類が複数あります。現在一般的に行われている白内障手術は次のとおりです。
- 超音波乳化吸引術
- テレーザー白内障手術
手術はどちらかの方法を用いて、水晶体の濁った部分を取り除きレンズを入れていきます。
超音波乳化吸引術はごく僅かに角膜を切開し、そこから超音波を用いて水晶体を取り除き眼内レンズを挿入していく方法です。
レーザー白内障手術も工程は基本的に同じですが、切開や水晶体の吸引を超音波ではなくレーザーを使うことで、誤差が生じにくくより正確に傷口も小さく済ませられるという特徴が挙げられます。
単焦点眼内レンズ
白内障手術では、水晶体の濁った部分を除去した後にレンズを挿入することになります。まず、単焦点眼内レンズから特徴を紹介していきましょう。
単焦点眼内レンズは焦点が一つの距離にのみ合うという特徴を持っています。そのため、事前にどの程度の距離にピントが合うようなレンズにするかを決める必要があります。
注意する点はピント合わせした距離以外を見る際にピントが合わなくなることです。単焦点眼内レンズを使用する場合には、メガネの併用が必須となります。
多焦点眼内レンズ
白内障手術に用いられるもう1種類のレンズが多焦点眼内レンズです。
単焦点眼内レンズと違い一つの距離だけでなく、遠くと近くの距離のピント合わせが可能です。
レンズによっては遠方・中距離・近方といった複数の距離に対してピント合わせができるレンズもあります。
多焦点眼内レンズのピント調整の仕組みは、目から入ってきた光を遠方と近方といったように距離に合わせて振り分けられるようになっています。
このようなレンズの特性があるため、単焦点レンズと違い、手術後にメガネを使うことが殆どありません。
多焦点眼内レンズは保険が適用されないという点や、手術後の見え方に慣れるまで多少時間がかかる点に注意が必要です。
保険適用になるケースはある?
白内障手術は保険適用になるかどうか気になる方は多くいらっしゃるでしょう。白内障手術は保険が適用されます。
ただ、全ての手術方法で保険適用される訳ではありません。保険が適用されるのは、超音波乳化吸引術で単焦点眼内レンズを選択した場合のみです。
また、単焦点眼内レンズであっても、レーザー手術を選択すると保険適用外の自由診療になってしまいます。
さらに多焦点眼内レンズを選択すると、どの手術方法であっても保険適用外となりますので、保険適用をご希望の方はお気をつけください。
また保険適用される場合であっても、自己負担の割合が年齢や所得によって変わってきますので、自己負担額についても事前に確認されるとよいでしょう。
白内障手術の流れ
白内障の手術をすることが決まりましたら、まずは事前に検査が行われます。これは眼底や視神経などに病気が無いかどうかを確認する目的も含まれています。
また目の機能や合併症が無いかの確認も重要です。この手術前の検査で目の中に入れるレンズの調整も行われます。
白内障手術自体は白内障の程度にもよりますが、手術時間は30分程度です。手術は日帰りや入院を問わず、次のような流れで行われます。
麻酔
手術には局所麻酔が使用されるので痛みを感じることなく手術を受けられます。麻酔の種類は球後麻酔や点眼麻酔が多く用いられます。
麻酔の目的は痛みに対する不安を取り除く目的もあるので、病院によっては万が一痛みを感じるようであれば、その時点で麻酔を追加するケースがあるようです。
眼内レンズを入れる穴を作る
続いて行われるのは、レンズを入れるために角膜を切開します。
これは手術方法によって使用する器具が違ってきますが、超音波乳化吸引術の場合はメスで切れ込みを作り大きさにして2〜3mm程度です。
レーザー手術の場合はレーザーでの切開です。
角膜の切開後に水晶体の周りにある前嚢を切開していきます。前嚢の切開も手術方法に合わせてメスかレーザーのどちらかの使用となります。
水晶体を取り除く
穴が作られた後に、濁った水晶体が取り除かれます。
超音波乳化吸引術では、小さな手術器具を用いて超音波で水晶体を細かく砕きながら吸い取ります。
レーザー手術では、あらかじめレーザーで取り除きやすいように分割していき、水晶体を吸引する器具もレーザーです。
眼内レンズを入れる
最後に眼内レンズの挿入です。水晶体嚢に挿入しやすいようにレンズは少し縮めた状態で入れられますが、目の中で少しずつ広がっていきます。
レーザー手術の場合、眼内レンズの位置取りや傾きに誤差が生じにくいことがメリットとして挙げられています。
手術後の注意点は?
白内障手術は時間も短時間で入院する必要も殆どない手術です。しかし短時間で終わるとはいえ、局所麻酔を打ち、目の切開が行われます。
また白内障の手術は高齢の方が多く受けられるものです。体力的にも不安を抱えられている方もいらっしゃるでしょう。
特に手術後に帰宅してから何か起きるのではと不安に思われるかもしれません。事前に注意点がわかっていれば、手術後の準備を進めておくことができます。
ここからは手術後の注意点を紹介していきます。
なるべく安静にする
白内障の手術後は手術室から自分で歩いて病室に戻れますし、日帰り手術の場合でも、手術後にしばらく休養してから付き添いの人と一緒に帰れるくらいです。
しかしながら、手術直後は眼帯を付けているケースもあり慣れない状態がしばらく続きます。なるべくゆったりと過ごし安静にされることをおすすめします。
1週間は喫煙や飲酒を控える
白内障の手術は術後の食事制限はありません。ただし、喫煙と飲酒には注意が必要です。
喫煙はタバコの煙が眼の中に入ると刺激になってしまうため控えてください。
また飲酒についても、アルコール成分が炎症を悪化させてしまう可能性があるので、タバコ同様控えることをおすすめします。
いずれも1週間程度控えていただき、その後は様子を見て再開されるとよいでしょう。
入浴や洗顔の開始は医師の指示に従って行う
入浴や洗顔は感染症にかかるリスクがあるので、開始時期は医師の指示に従ってください。特に手術後1週間は控えてください。
顔はタオルを濡らし固く絞った状態で拭くのは問題ありません。特に洗顔は医師からの許可が出てから行うようにし、洗顔が可能になっても目を強く押さえつけないよう十分気をつけてください。
また、入浴も1週間は避ける方が望ましいです。顔にお湯がかからなければシャワーの使用は差し支えありませんが、こちらも十分な注意が必要です。
目をいじらないように注意する
手術後は目をいじらないよう気をつけてください。シャンプーが目の中に入るのを避けるため、洗髪も1週間は控えてください。
目に影響を及ぼす洗顔や洗髪は1週間程度経ったところで再開は可能ですが、アイメイクを1ヶ月程度は控えることをおすすめします。
高額療養費制度を利用すれば費用が抑えられる
白内障の手術費用は手術内容によって金額にかなりの差が生じます。手術を検討されていても費用面で躊躇される方もいらっしゃるでしょう。
医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」という医療費の還付が受けられる制度があります。
この制度は1ヶ月の窓口負担額が一定金額を超えて支払った場合、加入している健康保険から払い戻しを受けられるという仕組みです。
上限金額を超えた分の還付金は通常3ヶ月後に払い戻しとなりますが、「限度額適用認定証」の提示をすると、限度額までの支払いで済むので、あらかじめ病院に相談してみてもよいでしょう。
1ヶ月の窓口自己負担額の上限金額は年齢や収入によって、違いが生じています。
70歳未満は年収と健康保険の種別で自己負担限度額が決められています。
70歳以上は算出方法が複雑になり、基準となる数値が見直されることがありますので、最新の情報を確認されることをおすすめします。
なお、この高額療養費制度は自由診療で支払う分には適用されませんので、ご注意ください。
白内障手術を受けるクリニックを選ぶ時のポイントは?
白内障の疑いが出た時に、どのクリニックに相談すればよいか悩まれるでしょう。大がかりな手術ではないとはいえ、眼の手術であれば慎重になるのも当然です。
白内障手術を受けるクリニック選びで外せないポイントがいくつかあります。
ここでは事前に確認すべきポイントをお伝えしていきます。クリニック選びの参考にしてみてください。
事前のカウンセリングや対応が丁寧かチェック
白内障に限らず手術を受ける前には様々な疑問が出てくるでしょう。また不安に感じる点があれば手術前に解消したいと思われる方が殆どかと思われます。
特に目の状態は生活のクオリティを左右するといっても過言ではありません。小さな疑問でも真摯で丁寧な対応のクリニックを選ぶことが重要です。
また、目の見え方や手術の方針など医師と相談しながら進めていくのが白内障手術の特徴です。納得いくまで相談に乗ってくれるようなクリニックかどうかを確認してみてください。
白内障手術の経験が豊富かどうかチェック
白内障手術の技術は進歩し続けています。最新の技術で手術可能かどうかもチェック項目に含まれます。
また白内障の手術件数が多ければ、それだけ実績も積んでいるという証拠です。経験が豊富であれば技術的な面での安定感はもちろんのこと、患者さんの疑問や不安にも的確に回答できます。
白内障の手術はリスクが少ない手術とはいえ、経験豊富な医師が在籍しており、手術器具も最新のものが揃っているクリニックに任せるのがよいでしょう。
通いやすい場所にあるかどうかチェック
白内障手術は日帰りで行われることも多い手術です。
日帰りの場合は手術後に休養してから当日帰宅できますが、いくら日帰り可能とはいえご自宅から遠いクリニックですと、体に負担がかかってしまいます。
やはりご自宅から通いやすい場所にあるクリニックがおすすめです。
また万が一手術後に合併症が発症してしまった場合、すぐに手術を受けたクリニックに診てもらう必要があります。
合併症はすぐに治療を開始しなければ、最悪の場合失明の恐れがあります。
このようなケースにも対応できるよう、クリニックは通いやすい場所にあることが大切でしょう。
編集部まとめ
ここまで白内障手術の費用について手術の種類ごとに解説してきました。あわせて保険適用される手術方法についてもご紹介しました。
白内障手術の技術は進歩し、手術自体は非常に簡単でリスクの少ないものになっています。
手術方法や目の中に入れるレンズの種類も、ご自身の症状や今後の生活スタイルに合ったものを選べるようにバリエーションも増えてきました。
その一方で保険適用外の手術やレンズも存在するので、費用面で悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。
目は一生使う大切な体のパーツです。費用面でも納得したうえで、ご自身にとって最善の手術方法を選択できればよいですね。
参考文献