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安心できる場所を診察室に。「訪問歯科診療」の役割、そして魅力とは?【広島市中区 ごこちデンタルクリニック】

 公開日:2026/04/20

安心できる場所を診察室に。「訪問歯科診療」の役割、そして魅力とは?
安心できる場所を診察室に。「訪問歯科診療」の役割、そして魅力とは?

通院が困難な人や、体の不自由な人に向けた「訪問歯科診療」。歯科を受診するための手段のひとつでありながら、サービスを利用する人はもちろん、存在自体の認知度もまだまだ低いのが現状だ。しかし、外来と変わらない治療が受けられる便利さ、通院の負担を軽減できる安心感は、口腔ケアに困難を抱えている多くの人の課題解決に直結している。広島市中区の「ごこちデンタルクリニック」は、こうした訪問歯科診療を通じて地域の歯科医療に大きく貢献。今回は同クリニックの石田奈菜美先生に、もっと積極的に訪問歯科診療を利用してもらうため、現場の実情や利用方法などを伺った。

Doctor’s Profile
石田 奈菜美(いしだ ななみ)
ごこちデンタルクリニック 歯科医師

口腔外科で経験を積み、2年間、奄美大島での訪問歯科診療に従事。離島で、かつ高齢者の多い地域における、受けたい治療が受けられていない現状を学び、訪問歯科診療の意義、やりがいを見出す。以来、生活に寄り添った医療サービスの提供に心を傾け、訪問歯科診療の発展に情熱を注いでいる。

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口腔ケアは介護の一部へ、広がる訪問歯科診療のニーズ

まず、訪問歯科診療の現状についてお聞かせください

私が以前、総合病院に勤めていた頃は、介護施設やグループホームから依頼を受けるケースがメインでした。本院に勤務してからは、居宅でひとり暮らしをされている方、高齢のご夫婦などからの依頼が増え、訪問歯科診療のニーズの高さを実感しています。

口腔ケアは介護の一部へ、広がる訪問歯科診療のニーズ

訪問歯科診療を利用されるのはどんな方が多いですか?

手足が不自由で介護が必要な方、寝たきりや認知機能の低下により外出が困難な方、車いすを利用されている方、脳梗塞などの後遺症で体がうまく動かせない方、酸素吸入をされている方などさまざまです。その9割は高齢者です。

高齢者以外での利用はありますか?

訪問歯科診療は、基本的に歯科に通院が難しい方を対象としています。たとえば、肢体に障がいをお持ちのお子さん、知的障がいや自閉症などで大きな音や場所の変化が苦手な方なども対象となります。

皆さん、訪問歯科診療が必要な方だと思いますが、実際の利用数はまだまだ少ないのが現状ですか?

そうですね。「料金が高いのではないか?」という疑問や、「家に来てもらうことに抵抗がある」といったことなども背景にはあると思いますが、そもそも訪問歯科診療を行っている歯科が少ないことや、アナウンス不足のためにサービス自体を知らないという方が多いのが現状だと思います。

今後、需要は高くなると思われますか?

日本の人口の約4分の1は高齢者であり、抵抗力や機能の衰えによる口腔ケア不足は、QOLの低下をはじめ、あらゆる疾患リスクを招いてしまいます。
しかし、歯科が適切に介入することで、これらのリスクは減らせると思います。近年、口腔ケアの重要性が高まっており、地域包括ケアシステムも推進されているなかで、今後、訪問歯科診療のニーズはますます高まるのではないでしょうか。

歯科に出向く治療とは違った、訪問だからできる“介入”がポイントということですか?

これまでの訪問歯科診療は、やはり歯科に通えない方を対象とした治療がメインだったと思います。しかし最近は、施設から「口腔ケアの指導をお願いします」という依頼が増え、施設入所時に歯科検診を行う流れも一般的になりつつあります。
あとは居宅の高齢者のご家族から「入れ歯の調整と手入れの仕方をアドバイスしてほしい」と言われることもあり、さまざまなケースに沿った歯科医療の提供が求められています。

口腔ケアは介護の一部へ、広がる訪問歯科診療のニーズ

状況はさまざまなので、より柔軟な対応が不可欠ですね

訪問歯科診療の役割や魅力はそこにあると思います。たとえば、施設では「歯磨きをしましょうね」「入れ歯を洗いましょうね」という声がけがメインだと思いますが、認知機能が低下していたり、お口を触られることに抵抗があったりするなどで、なかなか難しい。
そこに専門の私たちが介入し、介護者はもちろん、言語聴覚士や看護師もいれば連携して、個々に適切なアドバイスを提供できます。これは訪問歯科診療だからこそできる大切な役割のひとつです。

生活に溶け込む医療で、「歯を治す」以上のトータルケアを

生活に溶け込む医療で、「歯を治す」以上のトータルケアを

ここからは訪問歯科診療の実情について伺います。どのような治療が可能ですか?

歯科で受けられる基本的な治療はすべて行えると考えてもらって大丈夫です。むし歯の治療、レントゲン撮影、補綴や入れ歯作製に必要な型取りも可能です。
ただ、精密な補綴になると制限があり、お口の開閉や姿勢維持が困難な方への治療が限られる場合もあります。

治療が限られるケースとは、具体的にはどんなことがありますか?

長時間お口を開けておくことが難しい方、姿勢維持に制限のある方、酸素吸入をされている方などです。
安全を第一に行うので、患者さんに無理のない範囲でという意味で治療が限られることがあります。あとは、認知機能の関係でコミュニケーションがうまく図れず、治療への協力が得られない場合も稀にあります。

訪問をお断りするようなケースはありますか?

むし歯や歯周病の侵襲が激しく、外科的処置が必要な場合は訪問歯科診療では対処できません。これは外来の歯科でも同じですが、できるだけ自身の歯を残し、口内環境を長く健康に保つためには定期的なメンテナンスが重要です。施設や高齢の患者さんには、対応できなくなる前に、できるだけ早めの相談をお願いしています。

訪問歯科診療を受けられる方によくみられる口内の特徴などはありますか?

一番は、お口の中の汚れです。高齢になってくると手が不自由になり、力も弱くなるので、それまでできていたことが少しずつ難しくなります。きちんと歯磨きできたと思っていても汚れが残ってしまうわけです。
独居の方は特に、気づいてもらえる人が周囲にいないことで、口内環境が悪化しやすいといえます。

高齢だと口内環境の悪化も早いですか?

注意しなければならないのは、口内環境が悪化することで口内の細菌が増え、誤嚥性肺炎のリスクが高まることです。高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎といわれています。寝たきりの患者さんになると水分が積極的に補給できずに口内が乾燥し、さらに細菌の増殖を高めてしまうので注意が必要です。

訪問歯科診療ならではの診療の特徴はどんなところにありますか?

施設あるいは居宅の慣れた場所で、ベッドの上や車椅子のままでも診療を受けることができます。個々の生活スタイルや身体機能に合わせた治療をコーディネートできるのが特徴といえます。
そのためには患者さんだけでなく、介護者やご家族とのコミュニケーションをもとに、多角的に希望を考慮し、最適なゴールを目指して治療計画を決定していくことが大切です。そこが外来と最も異なる部分だと思います。

段階的なアプローチと、トータルケアが必要ということでしょうか?

そうですね。どんなケースでも、まずはコミュニケーションを十分に図り、お口に触れさせてもらうところから始めるなど、信頼関係の構築に力を入れています。そこから実際の治療へと進み、定期的な訪問、口腔ケアのアドバイス、介護者やご家族には食事指導を行うこともあります。
生活に溶け込むような形で介入することで、患者さんの生活そのものを支える医療が訪問歯科診療の一番の役割だと考えます。

生活に溶け込む医療で、「歯を治す」以上のトータルケアを

安心の保険診療と、一人ひとりに寄り添った治療計画

安心の保険診療と、一人ひとりに寄り添った治療計画

貴院で訪問歯科診療を受ける流れを教えてください

まずは施設やご家族、ケアマネジャーを通じて本院に連絡をいただきます。その際、患者さんの口腔内や生活環境などをヒアリングすると同時に、患者さんと周囲の方の意向を確認し、初回の訪問日時を決めます。
一度お口の状態を見させてもらったうえで、無理のない範囲で治療計画や費用、訪問頻度など提案させていただき、同意を得て治療がスタートする流れとなります。

きちんとした計画のもと治療は進められるのですね

治療計画については初見をもとに報告書を提出します。ですから、それを踏まえて日程を調整しながら、継続的にケアできる習慣づくりにつなげていければと考えています。

日程や、訪問できる範囲についてはいかがでしょうか?

本院では、月曜・火曜・木曜の週3回、午前9時から午後5時までを訪問診療に当てています。その中でスケジュールを組むので完全予約制となっています。訪問範囲は保険診療のルールに基づき、医院より半径16km以内となっています。

保険は使えるのですね?

保険証に記載の1~3割の負担割合で治療は行えます。ただし、むし歯の治療や入れ歯の作製・調整は医療保険、口内の清掃、嚥下や歯磨き指導、食事に関する指導などは介護保険が適用されます。もちろん併用することも可能なので、詳細はお問い合わせにてご確認ください。

そのほかに費用がかかることは何かありますか?

出張費、交通費などは一切かかりません。なかには歯ブラシやマウスウォッシュを買いたいと言われる方もおられるので、その金額についてはいただくことになりますが、それ以外の費用は基本的にかからないので安心してご利用いただけると思います。

安心の保険診療と、一人ひとりに寄り添った治療計画

改めて、訪問歯科診療の意義についてお聞かせください

訪問歯科診療は、まだ敷居が高いのが現状だと思います。しかし、通院と変わらない費用で受けられること、介助される方の負担軽減といったメリットがあり、実際に利用された方からは「もっと早く相談すればよかった」と言われることが多くあります。
最初は緊張されると思いますが、まずは「会いに来たよ」と訪ね、困っていることはないか話を聞いてあげることも私たちの務めです。ゆっくりでいいので、徐々にステップアップしながら口腔ケアに意識を向けていただければと思います。

ありがとうございました。最後に、読者の方にメッセージをお願いします

私たちは、ただ治すだけではなく、患者さんの生活を支えられる医療の提供を目指しています。そのためにも、生活に寄り添った治療を最も大切にしています。
患者さん、ご家族、介護者の方も含めた総合的なQOLの向上をはじめ、何より生きるために必要な「食べる」「話す」ことへの意欲を高め、生活によい影響を与えられる存在でいたいと思っています。

編集部まとめ

健康寿命の延伸に欠かせない口腔ケアの重要性が高まってきているなか、歯科への通院が困難な方たちへのフォローは後回しになっていたのかもしれません。「食べる」「話す」といった日常の基本がおろそかになれば健康は保てません。しかし、それらを守り、サポートできるのが訪問歯科診療です。移動の負担軽減、医療アクセスの確保といったメリットだけでなく、いつまでも楽しく健康であり続けるための選択肢として、本記事が訪問歯科診療を積極的に利用してみようと考えるきっかけになればうれしく思います。

ごこちデンタルクリニック

医院名

ごこちデンタルクリニック

診療内容

訪問歯科診療 むし歯治療 予防治療 など

所在地

広島県広島市中区小町3-22
マスダビル3F

アクセス

広島電鉄各線「中電前」駅より徒歩1分

この記事の監修歯科医師