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子どもに笑顔で診察台を降りてほしい。「歯医者=怖い?」をなくす工夫を日頃から。【大阪市港区 弁天町やまうち歯科】

 公開日:2025/11/27
子どもに笑顔で診察台を降りてほしい。「歯医者=怖い?」をなくす工夫を日頃から。 子どもに笑顔で診察台を降りてほしい。「歯医者=怖い?」をなくす工夫を日頃から。

乳歯がむし歯になっても「どうせ生え替わるから」と乳歯のむし歯を放置していると、あとから生えてくる永久歯に悪影響が及んでしまう。乳歯は、永久歯が生える準備をする大事な役割を担っていることを、親御さんはしっかり理解しておくべきだろう。「子どもには笑顔で診察台から降りてもらい、歯医者をイヤな思い出にしてほしくない」と語るのは、大阪市港区で開院する「弁天町やまうち歯科」院長の山内理司先生だ。子どもの成長過程で親御さんに心得てほしいアドバイスはもちろん、子どもを歯医者に慣れさせてから治療を始める配慮は、自身にもお子さんがいるからこそできる気遣い。今回は、小児歯科の役割や乳歯の重要性などについて、山内院長に話を伺った。

Doctor’s Profile 山内 理司(やまうち まさし) 弁天町やまうち歯科 院長
2005年、大阪大学歯学部を卒業、2009年に同大学院歯学研究科博士課程(小児歯科学)を修了。大学時代は小児や胎児の成長に関する研究に没頭し、小児歯科学で歯学博士の学位を取得。勤務医を経て、2013年に大阪市港区の歯科クリニック院長に就任。2021年より弁天町やまうち歯科院長を務める。 「正確な診断、快適な治療、十分な説明」をモットーに、小児治療・予防治療から歯周病治療、審美治療インプラントまで幅広い診療に対応。患者のQOL向上を支えるため、ライフスタイルに合わせた治療法の提案とインフォームドコンセントの徹底を心がけるとともに、子どもの成長発育や健康に関する不安と向き合う。 〔所属〕大阪府歯科医師会港支部常務理事、総務

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小児歯科の役割は、将来の口内の成長をうまく促すこと

まずは初歩的なことからお伺いします。そもそも「小児歯科」と「一般歯科」の違いは何でしょうか?

一般歯科は、むし歯や歯周病などがあった場合に、元の状態に治す治療が主になります。これに対して小児歯科は、正しい成長の範囲からずれていきそうになる口腔内の状態を、正しい範囲に戻してあげるということ。成長を見越して、今後の成長をうまく促していくことを行っています。

小児歯科の役割は、将来の口内の成長をうまく促すこと

貴院に来院されるお子さんの中で、特に多い年齢層はどの辺でしょうか? また、よく見られる症例は何ですか?

当院に来るのは、未就学のお子さんから小学生が多いですね。中高生になってくると少なくなってくる印象です。 多い症例としては、やはりむし歯です。ほかには歯並びの相談、定期検診などが主になります。

小児歯科の役割は、将来の口内の成長をうまく促すこと

子どもが受診する場合、やっぱり親御さんが連れてくることになると思います。なかには、あまり積極的に子どもを受診させない親御さんもいるようです。それにはどんな理由が考えられますか?

ありがちなこととしては、お子さんへの無関心だったり、どのタイミングで歯医者に行けばいいのかといった判断がついていなかったりする人が多いです。 子どもの場合、朝にむし歯が痛んでいたとしても、昼には痛くなくなっているようなことがあります。すると、親は「もう歯医者へ連れて行かなくても大丈夫か」と考えてしまいがちです。あるいは、僕にも子どもがいるからわかりますが、歯医者へ連れて行く時間が取れないとか、親御さんによっては「習い事を休ませてまで行くべきなのか」という判断に迷って、足が遠のくこともあるようです。

子どもの歯医者に対する恐怖心を3つの選択肢で取り除く

子どもの歯医者に対する恐怖心を3つの選択肢で取り除く

歯医者さんに対する恐怖心を取り除くために、何か対策をしていることはありますか?

当院では、初診のタイミングで特に緊急性がない場合は、処置をせずにお口の中をチェックするだけに留めます。お子さんには「歯医者とは、こういうところなんだな」と知ってもらい、段階を踏んで進めています。 治療が必要な場合は、①練習しながら通ってできるようになるのを見ていく、②希望があればその日に一気にやる、③鎮静療法や笑気麻酔を使って恐怖心を取り除きながら進めるという、3つの選択肢から選んでもらいます。 お子さんって、成功体験で成長していくものなんです。最初は怖いけれど、やってみたら意外とできたという体験が大事です。

子どもの歯が生える段階として、たとえば「生え始めたとき」「生えそろったとき」の中で、いちばんむし歯になりやすい時期はありますか?

生え始めの時期ですね。歯茎から歯が出てきたタイミングが、むし歯予防にとって最も重要です。 その時期に親御さんができることとして、寝る前の歯磨きをしっかり頑張ることが大事です。また、間食のコントロールもしっかりやっていただきたいところです。

親御さんのなかには、「乳歯はどうせ生え替わるからむし歯は放置してもいいんじゃないか?」と考える方もいらっしゃるようです。乳歯がむし歯になった場合、そのあとに生えてくる永久歯にどんな影響がありますか?

まず、むし歯は痛いですから、食事が食べられなくなって全身の成長に悪影響を及ぼします。ひどくなると、発熱したり全身疾患につながったりすることもあります。特に幼稚園児で、かなり大きいむし歯で膿が溜まるような状態にまでなってしまうと、熱が出て入院、点滴という事例も年に一人ぐらいは経験します。 永久歯への影響としては、永久歯の出来が悪くなります。むし歯菌がいる環境のなかで永久歯が生えてくるため、その後もむし歯にかかりやすくなってしまいます。また、歯並びが悪くなるなどの問題もあります。 ですから、親御さんには「乳歯のむし歯だからといって放置せず、しっかり治さないといけないですよ」という話はしています。

子どもは歯肉炎になりやすいと聞きましたが、いかがでしょうか?

基本的には、子どもだろうと大人だろうと、汚れが溜まってくれば歯茎が腫れる可能性は高まると思います。子どもの口の中には歯周病菌が存在しないので、口の中にいる菌の総数は子どもでも大人でもそんなに変わりません。しかし、その割合が変わってくるので、子どもの場合はいわゆる歯周病菌という骨を溶かすような菌は少ないけれど、歯茎を腫れさせる菌が多い状況はあると思います。

子どもが進んで歯医者さんに通うように促すために、親御さんはどのような意識を持つべきでしょうか?

お子さんを叱るときに、「歯医者さんへ連れて行って歯を抜いてもらうよ」とか、「注射してもらうよ」というふうに、歯医者に対して恐怖心を植え付けるようなことは言わないでほしいですね。子ども心に、「歯医者は痛いんだ、怖いんだ」という意識を持ってしまうといけませんから。

子どもの歯医者に対する恐怖心を3つの選択肢で取り除く

子どもの歯を守るため、親がやっておきたい日頃のケア

子どもの歯を守るため、親がやっておきたい日頃のケア

親御さんが子どもの歯をケアするにあたって、着眼しておくポイントを教えてください

物を口にする機会を1日4~5回に抑えてください。小学校低学年までは、朝昼晩の3食と2回のおやつ。高学年からは午前中の間食をなくして、1日4回の食生活を推奨しています。 物を食べると、口の中が酸性に傾きます。それが元へ戻るまで30分ぐらいかかります。30分かけて食べるとすれば、そこから30分かけて戻るので、結局1時間は酸性の状態が続くことになります。つまり1時間に1回食べると、口の中はずっと酸性で歯が溶ける環境になっているというわけです。ですから、「砂糖を減らしてください」というような制限はしていなくて、「食べる内容よりも回数をしっかりコントロールしましょう」と、日頃からお話ししています。 あとは糖分を摂るタイミングですね。寝る前は必ず避けましょう。むし歯になりやすい食べ物に関しては、就寝時間まで時間を空けることがポイントです。

子どもの診療を行う上で、先生がいちばん大切にしていることは何でしょうか?

子どもに負担がかかる治療をした後は、2回の簡単な治療をするなど緩急をつけることと、診察台から笑顔で降りてもらえるようにすること、できたことをしっかり褒めてあげることなどです。お母さんの前で褒めてあげて、子どもの気持ちがマイナスで終わらないように意識しています。 子どものむし歯を治療するにあたっていちばん大事なのは、口の中全体で考えるということ。今、その子の口の中のむし歯の活性度がどれぐらいなのかも意識しています。

子どもに対して説明をするときの工夫はありますか?

子どもにもわかりやすい表現を心がけています。たとえば、麻酔のことは「むしばい菌を眠らせる」と表現したり、タービンを「飛行機のシャワー」、コントローラーの機械を「電車の音」と表現したりしています。 また、僕自身はもちろん、スタッフにも留意させていることで、「痛くない?」という問いかけはしないこと。「痛くない?」って問いかけると、子どもが「痛いことをされている」と思ってしまいます。ですから、マイナスの声かけをしないよう工夫しています。

院内の設備で特別なものはありますか?

とりわけ特別な設備は思い当たりませんが、マイクロスコープの導入は歯科クリニック全体の2~3割程度かと思います。あとはCT、IOS(口腔内スキャナー)、インプラント関係の機材やシミュレーションシステムが当院では充実していると思います。

小児歯科はおおむね保険診療だと思いますが、保険の適用外になる治療はありますか?

一般的には、矯正関係が保険適用外です。簡易的な矯正治療(既製のマウスピース使用)は基本料金が88,000円、調整料が月3,300円です。ワイヤーやインビザライン(※)を使った矯正は基本料金385,000円、調整料が3,300円です。料金はすべて税込みです。 【小児矯正】 リスク:虫歯・歯肉炎のリスクが増加する恐れがある 治療期間:約3年 回数:月1回程度 (※1) 未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。

小児歯科で診察できる最低年齢はいくつからですか? また、上限はありますか?

基本的には、生後3日くらいから受け入れています。上限は年齢で切るのではなく、永久歯が全部生えそろった頃。個人差で、12~16歳くらいの幅があります。早いお子さんだと12~13歳で、大人のメンテナンスに移る子もいます。

子どもの歯を守るため、親がやっておきたい日頃のケア

「キッズクラブ」というのがあるそうですね。それについて概略のご説明をお願いします

はい。当院では小児患者に「キッズクラブ」サービスを提供しています。これは、子どもの治療をスムーズに進めるにあたって、情報提供やむし歯予防に役立つように生活習慣を改善するサポート、モチベーション向上の施策などです。 具体的には、食事記録によるリスク特定や、唾液検査でのむし歯リスクの可視化をするなど、楽しく予防に取り組める工夫をしています。

最後に、Medical DOCのサイトを訪れている読者に対してメッセージをいただけますか?

子どもの時期に治療をしてあげたり必要な処置をしてあげたりすることによって、将来やらないといけないことが減らせます。 親御さんの目が離れる中高生から歯を悪くする子が多いので、その時期までにできるだけよい環境を与えてあげて、将来、お子さんの口に対してかかる負担を減らしてあげてほしいと思います。

編集部まとめ

日頃の診療で子どもの相手をなさっているためか、物腰が柔らかく、なるべく平易な言葉を選んでインタビューに答えてくださいました。 とりわけ印象的だったのは、「むしばい菌を眠らせる」や「飛行機のシャワー」など、山内先生が知恵を絞って考え出した、子どもに恐怖心や不安を与えない独自の言い回し。親御さん向けにも的確なアドバイスをくださるなど、歯とお口の健康をおまかせできる先生だと感じました。

弁天町やまうち歯科

医院名

弁天町やまうち歯科

診療内容

小児歯科 予防治療 一般歯科 など

所在地

大阪府大阪市港区弁天1-3-3
クロスシティ弁天町2F

アクセス

JR大阪環状線・大阪メトロ中央線「弁天町」駅より徒歩1分

この記事の監修歯科医師