利用してよくわかる、メリットが多い訪問歯科診療【兵庫県三田市 ウッディ吉原歯科】
歯科医師や歯科衛生士が自宅などを訪問し、歯科診療を行う「訪問歯科診療」。自宅で行われるがゆえ、診療内容に制限があるように思われる。また、通常より費用がかかるのではないかというイメージもある。そもそも、どんな人が受けられるのだろうか。「医療法人社団健歯会ウッディ吉原歯科」の吉原院長によると、訪問歯科診療の対象となる人やその家族でさえ、なかなか十分な認知には至っていないという。そこで詳しく話を伺った。
吉原 秀明
医療法人社団健歯会ウッディ吉原歯科 院長
朝日大学歯学部卒業後、大阪歯科大学研修修了。なかの歯科クリニック、医療法人社団健歯会吉原歯科医院勤務を経て、2019年に医療法人社団健歯会ウッディ吉原歯科開院。コンセプトは「寄り添う歯科医院」。日本顎咬合学会、日本老年歯科医学会、日本訪問歯科協会会員。自院の院長として、また父親が院長を務める吉原歯科医院での勤務医として、訪問歯科診療に積極的に取り組む。自院では水曜日と土曜日の午後、希望がある場合には平日の外来診療後に訪問歯科診療を行う。
目次 -INDEX-
- ハードルは意外と高くない。外来診療と同じ気軽さで
- 通院が困難な人に対する訪問歯科診療のポテンシャル
- 必要であるはずの訪問歯科診療を利用しないと、どのようなことが起こりますか?
- 悪循環のきっかけになり得るのが、オーラルフレイルなんですね。しかしどうしても、身体の病気や障害の治療に目が向いてしまいそうです
- なぜ、そのようなことになったのでしょうか…?
- 歯科の先生から「食べられますよ」とお墨付きをもらえたからこそ、患者さんもご家族も安心して取り組めたのでしょうね。そういった検査や、食べる練習のサポートも、訪問歯科診療で受けられますか?
- 歯の治療だけでなく、「全身の健康のための道筋を提示してくれる」のが、先生の考える訪問歯科診療なのですね
- 先生のお父様は、三田市の訪問歯科診療において先駆者であったときいています。先生が訪問歯科診療に力を入れるのは、そういった影響もあるのでしょうか?
- 「噛める」ではなく、「ヒゲ剃りができる」ですか?
- 家族と歯科医院の諦めない気持ちが患者さんの幸せに
ハードルは意外と高くない。外来診療と同じ気軽さで
近隣の歯科医院などから、訪問歯科診療を希望される患者さんをよく紹介されるとお伺いしました。それほどニーズがあるのですね
はい、必要とされている方はたくさんおられます。ただ、本当は必要なのに訪問歯科診療を利用できていない方は、まだまだ多いと思います。
なぜ、利用に至らないのでしょうか?
そもそも、ご自宅で歯科治療を受けられることをご存じない方がほとんどです。歯科医院によって異なりますが、当院の訪問歯科診療では、虫歯・歯周病の治療、入れ歯の作製・修理・調整、抜歯、口腔ケア、嚥下簡易検査・嚥下トレーニングなどを行います。
基本的な歯科診療が、ご自宅や入居施設などで受けられるのですね。詰め物や被せ物の治療なども可能ということでしょうか?
はい、ポータブルの歯科ユニット、滅菌バッグに包んだ滅菌済みの器具一式などを車に積み込んで訪問します。詰め物や被せ物の治療などももちろん可能です。ご希望であれば、金属床義歯、ノンクラスプデンチャーといった自費の入れ歯にも対応します。
「自費の入れ歯にも対応可能」ということは、基本的には保険診療ということでしょうか?
その通りです。訪問歯科診療には、医療保険・介護保険が適用されます。
ご自身の保険負担割合にもよりますが、通院の診療に比較して1回1,000円~2,000円程度割高になるくらいです。
通院の労力、通院途中の事故などの心配などもありませんから、むしろ「安価」と感じます。ちなみに、訪問歯科診療の対象となるのは、どういった方々ですか?
寝たきりや心身の障害などで、お一人での通院が困難な方です。「困難」というのが少し曖昧ですが、手を引いてもらわないと歩行が心配な方や、公共交通機関の利用に不安がある方は、訪問歯科診療を利用できることが多いかと思います。
どちらかわからないというときには、歯科医院に問い合わせてみるのが確実です。外来診療と同じ気軽さで相談してほしいですね。
どれくらいの距離であれば、訪問してもらえるのでしょうか?
歯科医院から半径16km以内と定められています。当院であれば、三田市内、神戸市北区・三木市・宝塚市・西宮市の一部です。16km以内かどうかわからない場合には、これも歯科医院に尋ねてみるといいでしょう。
通院が困難な人に対する訪問歯科診療のポテンシャル
必要であるはずの訪問歯科診療を利用しないと、どのようなことが起こりますか?
訪問歯科診療を必要とされる方は、恐らく介護サービス等でリハビリもされていると思います。実は介護が必要になるような身体的機能の低下で最初に起こることは口の問題からと考えられており、この問題が起こった状態のことをオーラルフレイルと言います。
歯が弱る・歯が減るなどして食べられないと栄養が取れない、筋力が低下する、歩けない、すると余計に筋力が低下していくというように進行していきます。運動機能とともに、社会性の低下も懸念されます。逆に考えれば、口腔機能が良くならなければリハビリ等でよくなることも難しいといえます。
悪循環のきっかけになり得るのが、オーラルフレイルなんですね。しかしどうしても、身体の病気や障害の治療に目が向いてしまいそうです
病気や障害の治療はもちろん大切です。けれども、同じくらいの重要性が歯科治療にもあります。病気を原因として入院したある方が、急に食事を摂らなくなり、胃ろうの処置を受けました。退院後は自宅でも口から全く食べずに胃瘻のみで栄養補給をしていたのですが、実は本人は食べたがっており、また食べることができた、というケースがあります。
なぜ、そのようなことになったのでしょうか…?
ご家族が「胃ろうの処置を受けたのだから、『二度と』食べられないだろう」と思い込んでいたのですね。『胃ろう造設に関わった病院やかかりつけ医師との対診を取り』、嚥下簡易検査を行った上で、食べる練習をお手伝いしました。」初めはゼリー、その1週間後には好物のアンパンを、2週間後にはバナナを食べることができました。食べなくなったきっかけは、入院して気分が塞がったことだったようです。
歯科の先生から「食べられますよ」とお墨付きをもらえたからこそ、患者さんもご家族も安心して取り組めたのでしょうね。そういった検査や、食べる練習のサポートも、訪問歯科診療で受けられますか?
はい、嚥下簡易検査、嚥下トレーニングと呼ばれるこれらの診療も、当院では訪問歯科診療で行っております。その患者さんも、当院の訪問歯科診療を利用してくださったからこそ、胃ろうと併用しながらではありますが、経口で食事を摂れるようになりました。痩せていた身体にも肉が付き、「手が動かせるようになった」「お喋りになった」とご家族から報告を受けたときは、うれしかったですね。
歯の治療だけでなく、「全身の健康のための道筋を提示してくれる」のが、先生の考える訪問歯科診療なのですね
「歯科治療が必要だけれど通院が難しい。じゃあ私(歯科医師)が行きますよ」というのが訪問歯科診療の基本的な構造で、非常にシンプルです。だからこそ、外来診療にできるだけ近い形で、訪問歯科診療を提供していきたいと考えています。
先生のお父様は、三田市の訪問歯科診療において先駆者であったときいています。先生が訪問歯科診療に力を入れるのは、そういった影響もあるのでしょうか?
「噛める」ではなく、「ヒゲ剃りができる」ですか?
歯を失って口元のハリがなくなり、うまく剃刀が当たらなかったそうです。当時は私も歯がないことでそんなお悩みがあるとは知らず、大変驚きました。女性の方だと、「顔貌が若々しくなった」というお声もいただきます。噛むことを含め、通院できずに諦めていたことが再びできるようになる――これが訪問歯科診療の持つポテンシャルだと思います。
家族と歯科医院の諦めない気持ちが患者さんの幸せに
訪問歯科診療では、ご家族のご負担は大きくなりませんか?
訪問歯科診療において、お伝えする歯磨き習慣を実践していただいたり、普段の様子を教えていただいたりと、ご家族の協力は欠かせません。ただ、特別何かをご準備していただく必要はありません。歯磨きが難しいということでしたら小まめに訪問させていただきますし、あまり時間が取れないということでしたら、期間を開けて訪問します。
歯磨きが難しいということでしたら、器具などを持参してご指導致しますし、あまり時間が取れないようでしたら、患者さんの状態にもよりますが、必ずご家族が同伴して頂く必要もございません。
希望に合わせた訪問が可能なのですね。診療の中で、ご家族のご様子に変化は見られますか?
大切な人が「以前より食べられる」「喋れるようになった」ことの喜びのお声のほかに、「歯磨きが楽になった」「食べてもらいやすくなった」といった、介護者としての負担が軽減したというお声もいただきます。訪問歯科診療の利用を迷っているご家族の方には、こういった面もあることを知っていただきたいですね。
歯磨きも食事も毎日のことですから、それはうれしいですね。訪問歯科診療が必要になったときには、すぐに利用できるものなのでしょうか?
歯科医院に問い合わせていただき、了解が得られれば利用できます。当院では、水曜日と土曜日の午後、それにご希望があった場合には平日の外来診療後に訪問歯科診療を行っています。スピード感が大切だと考えていますので、患者さんやご家族の了承があれば、夜遅くであっても訪問させていただきます。
外来診療の後に来てもらうとなると、少し申し訳ないような気もするのですが…
たとえば入れ歯が壊れて噛めないというとき、訪問が1週間後になってしまうと、その患者さんは1週間、食事や会話に不便が生じます。ご家族も大変です。歯科を含めた訪問診療、看護・介護に携わる人は特に、「早く助けてあげたい」という情熱を持っていると私は信じています。少なくとも当院の場合は、お気になさらないでください。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします
患者さんもご家族の方も、食べること、喋ること、歯磨きをすることなど、お口の悩みの解決を、どうか諦めないでください。お口の健康の維持・向上は、体全体の健康の鍵であり、第一歩です。医療法人社団健歯会のスローガンでもある「口から食べることを諦めない」をこれからも実践してまいりますので、お気軽にお問合せください。
編集部まとめ
少し縁遠い印象があった訪問歯科診療が、グッと身近に感じられる取材となりました。診療の内容、費用、そしてお口のトラブルを放置した場合のリスクなども、意外な点が多かったですね。訪問歯科診療には、実はほとんどハードルなどないのかもしれません。
身体の病気よりも後回しにされてしまいがちな口腔トラブルですが、その解決によって心身への好影響・好循環がもたらされます。通院が難しいと感じている患者さん、またそのご家族は、まずは一度問い合わせてみましょう。
医院名
ウッディ吉原歯科
診療内容
訪問歯科診療 一般歯科 摂食・嚥下・食育 入れ歯 など
所在地
兵庫県三田市すずかけ台2丁目3-1
えるむプラザ3F
アクセス
神戸電鉄公園都市線「南ウッディタウン」駅より徒歩1分