歯の詰め物や被せ物の素材といえば、保険診療で用いられる銀がまだまだ一般的。しかし、金属アレルギーや見た目の悪さなどさまざまな課題を抱えている。一方で、保険適応とはならないが、
銀が抱える問題点をクリアできる理想的な素材としてセラミックが注目されている。そこで、
セラミック素材のメリットについて、クオーレ歯科クリニック院長の山田拓先生にお話を伺った。
Doctor’s Profile
山田 拓
クオーレ歯科クリニック院長
2008年神奈川歯科大学卒業。千葉県をはじめ、都内、神奈川県の歯科医院に勤務。分院長などを経て、2017年6月東京都武蔵小金井市に「クオーレ歯科クリニック」を開業。日本歯周病学会、国際口腔インプラント学会、国際インプラント学会に所属。現在、大学歯学部の歯周病学講座の研究生として歯周病認定医を目指している。
治療の際、詰め物や被せ物の素材をどのように選べばいいのか教えてください。
以前治療した虫歯の詰め物や、被せた物が取れたといって、多くの患者さんがいらっしゃいます。そして、その部分の治療にあたり、再び詰めたり被せたりするための素材を、保険診療の銀(金属)にするか、保険が使えない金や
セラミックにするか、患者さんに選んでいただくことになるわけです。その際、こちらから素材それぞれのメリットとデメリット、費用面のお話をさせていただくのですが、
「なぜ取れてしまったか?」が重要なポイントになります。
素材を選ぶ前に、取れてしまった原因がポイントになるのですか?
そもそも銀のような金属と
セラミックでは、歯と素材をくっつける「つけ方」が違うんです。セメントが固まってくっつく銀の「合着」というつけ方は、完全な密着が不可能なんです。時間の経過とともに隙間ができて、セメントがなくなり、再び虫歯になって、それが原因で被せたものが取れてしまうというわけです。
一方、接着剤を結合させてくっつける
セラミックの「接着」というつけ方だと、隙間のない密着が可能です。ばい菌が入りにくい分、虫歯になりにくいです。ですから
セラミックは欠けることはあっても取れることはないんですね。
よく詰め物や被せ物の素材として金属と
セラミックが比較され、金属アレルギーの有無とか、見た目のよし悪しが取り上げられますが、僕は
「隙間ができず、ばい菌が入りづらく、虫歯になりにくい」点がセラミックの一番のメリットだと思っています。
歯と詰め物、被せ物に隙間ができないことが重要なのですね。
そうです。実際に患者さんの歯を見てみると、「銀歯が取れた」という患者さんの場合、中が虫歯になっていることが多いのですが、
「セラミックが欠けちゃった」という患者さんの歯は虫歯にはなっておらず、中の状態は悪くなっていないことが多い。素材によって、被せ物を取ったときに中の歯の状態が違うんですね。
取れない、虫歯になりにくい以外にセラミックの利点はありますか?
金属に比べて、
セラミックはプラーク(歯垢)がつきにくい。たとえついても落としやすいので、虫歯で歯周病の予防にもつながる点がいいですね。それと、
セラミックの歯の削れ方は天然歯に似ているので、対合歯(噛み合わせの反対側の歯)を守れるというのもメリットでしょう。
では、セラミックのデメリットは?
やはり
セラミックは陶器ですから、欠けてしまう、割れてしまうリスクがあります。それと保険が使えないので、費用がかかることですね。
ただ、保険で金属を詰めて、取れて、また金属を詰めるというのを繰り返すと、どうしても治療の度に削る中の歯がどんどん小さくなっていくんですね。それより
セラミックを入れてしまえば長く持つはずなので、歯にかかる負担は少なく、長い目でみたら費用面も納得していただけるのではないかと思います。
セラミックの耐用年数はどのくらいですか?
何を食べるかによっても個人差があります。硬い物をよく食べる人だと欠けるリスクが高く、そうでない人との差が出るので、一概には言えないですね。一応、
セラミックの場合、保証期間を2年設けていますので、期間内に何かあれば対応します。
セラミックは保険外、自費治療ですが、およそいくらくらいですか?
詰め物、被せ物にもよりますが、だいたい奥歯の詰め物で3万5,000円くらい。被せ物になると6万~15万円くらいですね。
詰め物なら、セラミックも金と変わらない料金でできるんですね。では、セラミックを選ぶという患者さんも多いのでは?
セラミックは歯を守る点で優れた素材ですが、
噛み合わせが強い方には欠けたり割れやすいセラミックは不向きですね。口の中を見ると、噛み合わせの強い方はすでに歯が摩耗しているのがわかるので、そういう方には「
セラミックよりも金のほうがいいのでは?」とお話させていただく場合もあります。実際、金のほうが
セラミックより長持ちするケースもあります。
金はどのくらい長持ちするのでしょうか? また、同じ金属でも銀とはどんな差がありますか?
金は噛む力に耐える堅さと延びる柔軟性があり、歯に馴染みやすく取れにくいので、奥歯には金を使う場合も多いです。銀は薄くなるとちぎれてしまうので、歯と銀の間に隙間ができて虫歯になりやすいです。
では、セラミック治療の流れを教えてください。
当院は変形が少ないシリコン印象で型取りをして、技工所に発注し、出来上がった物を調整して詰めたり被せたりします。前歯の被せ物のように、見た目が重要な位置の場合は仮歯を入れて、本数が多い場合は形を確認してから入れるケースが多いですね。
奥歯の場合は噛み合わせを考える必要がありますので、奥歯と前歯を治療する場合は、奥歯を先に、噛み合わせがちゃんとなっている状態で前歯を治療します。とにかく、噛み合わせが重要ですので、気を遣っています。
ところで、セラミックには、いくつか種類がありますね。
セラミックは色合わせも重要ですよね?
はい。歯の色が特殊だと判断した患者さんの場合、写真に撮って技工所に送り、ある程度患者さんの歯に近いものが出来上がるようにしています。滅多にないことですが、僕自身が見て「色がちょっと違うかな?」と思ったときは、色を合わせてつくり直すことも患者さんに提案しています。
院内の設備や器具が整っていると伺っていますが、どのようなこだわりがあるのでしょう?
当院は
滅菌にこだわっており、タービン(歯を削る道具)の滅菌器を用意しています。歯石を取るときに使うスケーラーも、歯周ポケットの深いところに使う手用スケーラーと
超音波スケーラーを使い分けていますが、一般的なものより振動が少ない分、痛くない、歯に響かないといわれているマグネット式の超音波式スケーラーを使って患者さんの痛みを軽減しています。
また、当院は
ポセイドンという除菌装置を使ってユニット内の水を循環させ、常にきれいな水を使えるようにしています。これは、歯科ユニット給水管内の微生物の繁殖や汚染を防ぐために、水の不純物を取り除き、滞留水を常にきれいに保つことで、患者さんの口腔内に雑菌が入らないようにしているものです。
院内の滅菌、除菌対策がしっかりできていることは、小さなお子さんから高齢の患者さんにもうれしいですね。
はい。当院はバリアフリーの造りになっているので、車いすの方はもちろん、ベビーカーを持ったお子さん連れの方も来院しやすい環境だと思います。妊婦さんとか、お子さんがいらっしゃるとご自分のことは後回しになってしまいがちなママさんにも歯の検診や治療にいらしていただきたいですね。
当院には、ママの治療の間、お子さんが飽きずに待っていられるように、絵本やテレビ、おもちゃを揃えたキッズスペースも用意しています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
「歯が取れたから詰めて、被せて」という患者さんが多いですが、実際はただ取れただけではなく、歯周病だったり、虫歯だったり、口腔内の状態が悪いことが多いです。ですから、歯周病の治療など問題がある部分を処置し、口腔内の環境を改善して歯を残せる状態になったときに、「じゃあ、詰め物、被せ物は何にする?」という治療をしないと大事な歯を残せないわけです。
治療後も口腔内の環境を整え、よい状態を保つためには、最低でも4カ月に1度、年に3回くらいの定期検診が大切だということも理解していただきたいですね。
詰め物が取れたら、その部分を治療してまた詰めればいい。そんなふうに治療を安易に考えてしまいがちですが、一度治療をした歯は虫歯が再発しやすいとのこと。同じ歯の治療を繰り返すことによって歯は削られ、どんどん小さくなり、そして歯の寿命が短くなってしまうと知って驚きました。長く歯を守るためには、虫歯の再発を防ぐことがとても大事。そのために、詰め物の素材を慎重に選ばなくてはいけないこと、治療後も口腔内の環境をよい状態に保つために定期検診が必要であることも改めて実感しました。
医院情報
クオーレ歯科クリニック
所在地 |
〒184-0004
東京都小金井市本町1-8-4
ライオンズマンション武蔵小金井第二101
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アクセス |
JR中央線「武蔵小金井駅」駅より徒歩4分 |
診療内容 |
セラミック治療 歯科一般 小児歯科 インプラント治療 矯正歯科 |