従来の歯科治療は、歯科医師が患者さんの歯を直接見て、歯を削ったり、詰め物をしたりするのが主流でした。しかし、最近は可能なかぎり患者さんの歯を残そうと、「精密な歯科治療」といって
マイクロスコープ(眼撮影装置・
歯科用顕微鏡)を使った治療を行う歯科医院も増えているようです。
今回は、
根管治療や歯周病治療といった歯科治療や、歯科衛生士による歯のメンテナンスなどで
マイクロスコープを使用している「シエルデンタルクリニック」の太田 卓先生にお話を伺いました。精密な歯科治療を中心に、治療後のメンテナンスの大切さなども解説します。
Doctor’s Profile太田 卓
シエルデンタルクリニック 院長
東京歯科大学歯学部卒業、東京歯科大学大学院歯学研究科卒業。2011年4月に「シエルデンタルクリニック」を開業し、2014年10月に同医院を法人化。現在に至る。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顎咬合学会など参加学会多数。
精密な歯科治療とは、
マイクロスコープや拡大鏡などを使用した精度の高い歯科治療の総称です。
マイクロスコープの場合、患者さんの歯を最大で肉眼の約20倍に拡大できます。そのため、従来の肉眼での治療に比べ、細かな歯科治療ができるようになりました。
それでは太田先生に、「マイクロスコープがどのような機器なのか」、「シエルデンタルクリニックではどのような治療に使っているのか」などを詳しく聞いてみたいと思います。
マイクロスコープや拡大鏡とはどんな医療機器なのか?
精密な歯科治療ではマイクロスコープや拡大鏡を使用すると説明しましたが、このマイクロスコープとはどのような医療機器なのでしょうか。太田先生は次のように説明しています。
全体的に大きく見るものではなく、「一部を大きく拡大して見る」ものが
マイクロスコープです。歯の検査や治療に使用しています。
太田先生によれば、
マイクロスコープは詳細な検査や精密な治療を行うために
歯の一部を拡大する医療機器とのことです。また、シエルデンタルクリニックでは、歯を拡大して観察できる
拡大鏡も導入するなど、治療の精度を向上できるように努めているといいます。
マイクロスコープはどのような治療に使用されているのか?
近年、歯科では正確な処置が求められるケースが増えていて、幅広い歯科治療で
マイクロスコープが使用されています。主な精密な歯科治療については以下にまとめています。
・
根管治療:歯髄が炎症・感染を起こした際に、その歯髄を取り除き、詰め物をする治療
・保存治療:虫歯などを起こした際に、その歯を保存・機能させるために行う治療
・歯周病治療:歯周病を起こした際に、歯石や汚染組織を取り除く治療
・
補綴治療:歯を失ってしまった際に、
入れ歯やクラウンなど
義歯で補う治療
このように
根管治療・保存治療・歯周病治療・
補綴治療など、さまざまな歯科治療で
マイクロスコープは使われています。それではシエルデンタルクリニックではどのようなときに
マイクロスコープを使用するのでしょうか。太田先生にお話を伺いました。
当院では主に
根管治療に使っていますが、歯周病治療などで使うこともあります。また、歯科衛生士による歯のメンテナンス、初期治療における歯ブラシの訓練、歯石の除去など、さまざまな機会で
マイクロスコープを使用しています。
シエルデンタルクリニックの場合は、太田先生が検査や治療のために
マイクロスコープを使うだけでなく、歯科衛生士も歯のメンテナンスなどのために使用しているとのことです。太田先生のお話からも、現在はさまざまな目的で使用されていることが伺えます。
シエルデンタルクリニックでは、根管治療や歯周病治療などの際にマイクロスコープを使用しているそうですが、なぜこうした歯科治療で使用しているのでしょうか。太田先生に歯科治療に対するポリシーやマイクロスコープを使用することの魅力について伺いました。
歯科治療を行うにあたり、太田先生が重視している3つのこと
太田先生に歯科治療で重視していることを伺ったところ「虫歯や歯石を取りきること」、「詰め物をしっかりとし、虫歯治療を行うこと」、「患者さんの歯を長持ちさせるように努めること」の3つをポリシーにしているとお話ししていました。そこで、それぞれの理由なども教えていただきました。
1.なぜ虫歯や歯石を取りきることを重視しているのでしょうか?
歯科治療では患者さんの歯を削ったりすることが多いのですが、しっかりと虫歯や歯石を取りきることで、削る範囲を小さくすることが可能になるからです。
2.詰め物をしっかりとして虫歯治療を行うメリットを教えていただけますか?
詰め物をしっかり行うことで、歯の見た目がきれいになります。また、接着面の隙間がほとんどないので虫歯の二次感染の予防につながるというメリットも期待できます。
3.歯を長持ちさせるためにどのような工夫をしていますか?
先に話したとおり、虫歯や歯石を取ったり、詰め物をしっかりと行ったりすることが、患者さんの歯を残すことにつながります。そして、これらの治療はより精密に行うことが重要になるので、
マイクロスコープが役立っています。
ただし、
マイクロスコープだけで歯の病気を治すことは難しいです。そのため、当院では歯科用CT・口腔内写真・細菌検査なども行えるようにしています。
このように太田先生は、歯科治療によって
患者さんの歯を長持ちさせることを重視しています。そして、その際に
マイクロスコープが役立っているとのことです。それでは
マイクロスコープを導入する前に比べて、導入後にはどのような変化が生じたのでしょうか。
一番の魅力は「治療における質の向上や原因の追究につながる」こと
従来の歯科治療では、歯科医師が経験と勘を頼りに「肉眼」で患者の歯を確認し、歯を削るケースが一般的でした。一方でマイクロスコープを使った歯科治療では、肉眼よりもはるかに細かな点が見えることから、「質の高い治療」が期待できます。その点で近年では、シエルデンタルクリニックのように、マイクロスコープを使用する歯科医院が増えているそうです。
では実際、マイクロスコープを導入したことで治療や診断に関してどのような変化が生じたのでしょうか?太田先生は、次のようにお話ししてくださいました。
今までは肉眼を頼りに見ていた疾患部分を、
マイクロスコープを使うことで精密に確認できるようになりました。そのおかげで治療の質の向上、原因の追究がしやすくなったのは間違いありませんね。
マイクロスコープは治療の質の向上や原因の追究に役立つのですが、特に、異常を起こした歯髄を取り除く
「根管治療」に役立つといわれています。この理由は、
マイクロスコープを使うことで、複雑な形をしている根管の細部を確認できるようになるからです。また、歯髄を除去するときには歯を削るのですが、その削る範囲も小さくてすむからです。
なお、太田先生に伺ったところ、必ずしも全ての
根管治療で
マイクロスコープを使用するわけでないそうです。例えば、ラバーダムシートで対応できる病気など、
マイクロスコープを使用しないで良い場合は使わないとお話ししていました。
根管治療後には、歯のメンテナンスも大切です。この理由は、
根管治療によって歯そのものは残りますが、歯の神経はなくなってしまうからです。神経がなくなると、虫歯になっても痛みを感じず、知らない間に虫歯が進行してしまうことがあります。
また、
根管治療が再治療となった場合、治療の成功率は初回に比べて下がってしまうといわれています。そのため、虫歯になっていないかを確かめるため、また自分自身の歯を将来に残すためにも、
根管治療後の定期的なメンテナンスが大切になってくるのです。
根管治療後に行うメンテナンスはどんなこと?
一般的に行われている
根管治療後のメンテナンスには、虫歯・歯周病・かみ合わせのチェック、歯石の除去、予防のための歯みがきのトレーニングなどがあります。このようにメンテナンスは歯の状態を確認するだけでなく、歯のケア方法などを学ぶ機会にもなるので定期的に受診しましょう。
歯科衛生士によるマイクロスコープを使ったメンテナンスについて
シエルデンタルクリニックではメンテナンスの際に、歯科衛生士もマイクロスコープを使用しているそうです。しかし、マイクロスコープに関する知識や技術を習得できる教育環境は少ないといわれています。この点についてどのように対応しているのかを伺ってみました。
当院の歯科衛生士は、
マイクロスコープを扱えるよう勉強に励んでいます。また、歯科医師以外のスタッフもそれぞれ勉強を重ねて、患者さんの歯を長持ちさせられるよう全員で努めています。
「患者さんの歯を長持ちさせること」を重視しているシエルデンタルクリニックでは、歯科医師だけでなく歯科衛生士などスタッフ全員で治療・予防のサポートをしています。その一つとして、歯科衛生士による
マイクロスコープを使ったメンテナンスがあります。
【自由診療に関する記載事項】
シエルデンタルクリニック 治療費用
精密根管治療 55,000円~110,000円(税込)
メンテナンス 16,500円(税込)
マイクロスコープは歯を拡大して確認することができるため、従来よりも精密な検査・治療が可能となりました。特に
根管治療をはじめ、細かな処置が必要な治療で役立っています。患者さんにとっては治療の成功率に関わることなので、歯科医院選びで困ったら
マイクロスコープを導入しているかどうかという観点も確認してみると良いかもしれませんね。
医院情報
シエルデンタルクリニック
| 所在地 |
〒275-0011
千葉県習志野市大久保1-29-14
グランフォース習志野 1F
|
| アクセス |
京成本線「京成大久保」駅より徒歩5分 |
| 診療内容 |
根管治療 歯科一般 歯周病治療 小児歯科 予防治療 他 |