患者さんと二人三脚で取り組む質の高い矯正治療【千葉県船橋市 ふかや矯正歯科】
歯の状態は全身の健康にさまざまな影響を及ぼす。そのため、矯正治療は審美性のみならず、それによって口内環境の改善にアプローチすることが大きな意味を持つ。千葉県船橋市の「ふかや矯正歯科」は、新しい矯正技術である「マウスピース型矯正」を主軸に、患者さん一人ひとりにフィットした取り組みで日々治療を行なっている。この分野のスペシャリストであり、「治療は患者さんと二人三脚で」がモットーの深谷哲郎院長にお話を聞いた。
深谷 哲郎
ふかや矯正歯科 院長
1994年、北海道大学歯学部を卒業し東京医科歯科大学第2矯正科へ入局。1998年に東京医科歯科大学第2矯正科の医員。翌年には「赤坂まつの矯正歯科」でも非常勤医師として勤務し、多くの症例を経験する。2001年4月、千葉県船橋市で「ふかや矯正歯科」を開院。矯正治療に特化したクリニックとして、新しいマウスピース矯正を駆使した取り組みで注目され、また常に患者サイドに立って多くのオプションを提示してくれるドクターとして定評がある。2003年からは市内の小学校で学校医としても活動中。
矯正によって手に入る幸せは、綺麗な歯並びだけじゃない
歯並びに悩みがあっても、いざとなると矯正に踏み切れない人は多いようです。その点を先生はどのように思われますか?
「部活,塾,仕事が忙しくて中々」「お財布事情で」「なんとなくツラく時間がかかりそう」など、矯正治療を迷っている理由は人によって様々ですが、日常生活に支障をきたすほど重度の症状でなければ、急いで治療しなくてもいいと考える人が多いのではないかと思います。
そう考えてしまう原因の1つに、従来の矯正のイメージが今も根強く残っているという点があると思うのですが、矯正に関する治療技術は日々進化しており、今は1人1人のライフスタイルに極力合わせた治療が可能になっています。
私も「もっと早く来ればよかった」という患者さんの声を何度も聞いているので、まずはイメージで決めつけずに、前向きな気持ちで相談してみることを勧めたいです。
歯並びや噛み合わせがよくないことは、どんな問題を引き起こす可能性があるのでしょうか?
歯並びや嚙み合わせが悪いと、歯ぎしりや食いしばりなどによって口の中が傷つく咬合性外傷を伴ってしまうことがありますし、過度に一部の歯や骨に負担をかけてしまいます。
また、歯磨きをしにくいので口腔内の衛生状態も管理しにくくなります。
他にも、顎の骨や歯根、歯周組織、顎関節などにアンバランスな力が加わって、表情に歪みを生じさせたり、歯周病の進行を促進させたり、全身の健康状態に影響を及ぼすこともあります。さらには、噛み合わせの悪さからくる頭痛や肩こりで、集中力が発揮できないといったケースもあります。
メンタル面では、症状によっては人前で話すことに抵抗を感じ、消極的な性格が形成されたり、それが高じて「対人恐怖症」のような状態になってしまうこともあります。
では、正しく患者さんにマッチした矯正治療がもたらす効果とは何でしょうか?
やはり、人前で笑顔を見せられることだと思います。実際に相談に来られる方の中には、「確かに歯並びはよくないけれど、人前で目立つほどではない」程度の方もいらっしゃいます。
しかし、自分の見た目が気になるか気にならないかは本人の価値観によるもので、患者さん自身が見た目に自信を持てるようになることが重要です。
とくに「幼少期~多感な中高校生」といった人格形成に大きく関係する時間の多くを、口元の悩みに支配されてしまうのはかわいそうです。「歯を見せて笑える」「食べ物をしっかり噛んで味わえる」「口腔内衛生をよい状態に保ちやすい」など、矯正がもたらす効果はたくさんあります。歯並びや嚙み合わせをよくすることの意味とは、審美目的にとどまらず、健康的で幸福度の高い生活を送っていただくことだと考えています。
歯列矯正の治療には、どんな方法(バリエーション)があるのでしょうか?
大きく分けて「ワイヤーによる矯正」「外科手術を伴う矯正」「マウスピースを使用した矯正」があります。
ワイヤーによる矯正は、ブラケットと呼ばれる器具を装着しワイヤーで弱い力をかけてゆっくりと歯を動かす方法で、器具には素材や形状などさまざまなタイプがあり、歯の裏側に装着して目立たないようにしたものもあります。そして、外科手術が用いられるのは、上顎や下顎を移動させることにより、嚙み合わせを改善する治療であり、歯を動かす矯正アプローチのみでは治療困難な症例において行われます。
一方、マウスピース型矯正は、その名のとおり歯にかぶせる透明なマウスピースを定期的に交換しながら徐々に歯を動かしていくもので、当院ではアライン・テクノロジー社(USA)がグローバル展開している「インビザライン(※1)」を導入しています。
デジタルシミュレーションを駆使した新しい繊細な歯科矯正
それでは、先生が採用している「インビザライン(※1)」について教えて下さい
実は、このシステムが世に出たきっかけをつくったのは歯科医師ではありません。従来型のワイヤー矯正で痛みを感じ、マウスピースで矯正ができたらいいなと思った人物が、コンピューター解析を用いて歯を動かしていくシミュレーションを行い、矯正スタートから完成時まで複数のマウスピースを製作するというプロセスに行き着いたそうです。
マウスピースを矯正に使うという発想自体は、その前から臨床応用されていましたが、ビッグデータを基に、必要な装置のデザイン、治療期間の仔細なシミュレーションなどをすべてコンピューターで行なったという点が、インビザライン(※1)の優れた点です。
臨床例が増えれば増えるほど、それがビッグデータとして蓄積されていく。それによって治療精度も高まっていくわけですから、インビザライン(※1)は今も進化し続けているといえます。
一般的なワイヤー矯正とマウスピース型矯正の違いを具体的に教えて下さい
ワイヤー矯正装置は、医師が装着するため患者さんご自身で取り外すことができませんが、マウスピース型矯正装置は、1日20~22時間の装着時間さえ守れば、必要に応じてご自身で取り外せます。たとえば、食事や歯磨きするときに装置を外せるので、治療期間中に患者さんが感じるストレスは大幅に軽減されます。
装置によって歯を少しずつ動かす点はワイヤー矯正と同じですが、マウスピース型矯正では、約2週間ごとにマウスピースを次の段階のものに交換していきます。しかも、このプロセスは基本的に患者さん自身が行えるため、来院する回数も少なくなります(治療中に何か不安や問題が生じた際は来院いただきます)。
マウスピースはどのようにしてつくられるのですか?
治療に使用するマウスピースは、「iTero」と呼ばれる高精度の口腔内歯型3Dスキャナーを使って極めて詳細なデータを取得し、さらにレントゲン写真なども元にして、アライン・テクノロジー社で製作されます。
注目すべきは、最初のデータ解析の段階で、患者さんの歯をどのように動かしていき最終的な矯正完了状態に持っていくか、治療計画用ソフトウェア「Clin Check®」によって詳しくシミュレーションできることです。しかも、そのデータは患者さんにお見せできるので、治療内容をしっかりご理解いただけます。
マウスピースは目立たないのですか? また痛みはありませんか?
マウスピースは透明で、厚みは約1mmです。歯列にフィットするように精巧につくられているので、よほど注意して見ない限り気づかれることはないでしょう。
もちろん、歯を少しずつ動かしている(一つのマウスピースで動かす歯の移動量は大きくても約0.25mm)ので無感覚ではありませんが、痛みというよりも「引っ張られているような」感覚で、多くの場合装着後1週間以内に違和感はなくなりますが、中には1週間程度痛みを感じ続ける患者様もいらっしゃいます。
マウスピース型矯正が適用できないといったケースはありますか?
たとえば、1日およそ20時間の装着を厳守できない場合ですね。ご自身で取り外せることはメリットですが、同時に「外してはいけないのに外せてしまう」ということでもあります。あくまでも矯正中だという自覚を持って自己管理できない場合は、適用が難しくなります。
また、マウスピース矯正だけでは治療困難な症例もあり、この場合は、複数の方法を取る場合があります。
マウスピース型矯正は小さなお子さんでも大丈夫ですか?
マウスピースを自分で外せるという点が、小さなお子さんにとってはネックになるでしょう。自分で外してしまい使用しなかったり、紛失してしまう可能性もあるため、
小さいお子さんでもマウスピース型矯正は可能ですが、保護者の方の管理負担はそれだけ大きくなること踏まえておく必要があります。
自分自身で「治そう!」というしっかりした意思を持つことが大切
実際の矯正治療の流れについて教えて下さい
第1段階は精密検査と口腔内スキャンです。問診はもちろん、レントゲン撮影、頭蓋のCT撮影、口腔内および顔面の撮影、歯型の採得、そして「iTero」を用いて口腔及び歯型の3Dスキャンを行います。これらのデータをもとに患者さん一人ひとりにカスタマイズされた3D治療計画書を作成しますが、この時点で予測される最終的な仕上がりイメージや、治療に要するおおよその期間も割り出されます。
動的イメージとして実際に歯が移動する様子がご覧いただけますので、治療に向けてのモチベーションも上がります。そして同意を得られたら、レントゲン画像、口腔内撮影画像と併せて、歯形やデータをアメリカのアライン・テクノロジー社に送ります。
矯正用のマウスピース装置(アライナー)は、治療完了までに必要なすべてが一度に製作されるため、紛失や治療方針の変更などの特別な事情が発生しない限りは、口腔内データを再取得する必要はありません。装置が到着したら、装着方法や注意点をしっかりと患者さんにご説明してお渡しします。
治療中は原則的に1日20時間以上の装着が必要なので、その管理はご自身でやっていただくことになります。また、装置には番号が付けられていて、1~2週間ごと(医師の指示によります)に次の番号のものに交換していきます。
治療中は通院しなくてもよいのでしょうか? また治療完了の判断はどのタイミングで行われますか?
4週間~8週間ごとにチェックは必要です。場合によっては歯の移動を促進させたり、噛み合わせ改善のための処置を追加したりすることもあります。ここでも3D治療計画書を随時参照しながら、その時点で適切なオプションを検討していきます。
実際に歯を動かす段階が終わり、治療計画書どおりの仕上がりが確認できたら治療完了です。ただし、動かした歯は、もともとあった位置に戻ろうとする性質を持っているので、それを防ぐための保定装置を一定期間装着していただきます。その後、歯列の安定を見て終了のタイミングを決めます。
マウスピース型矯正に限らず、矯正治療においてもっとも大切なことは何でしょうか?
医療技術やテクノロジーがどんなに発達しても、人間の仕事に取って変われないものがあります。それは「医療とは、医師が独りよがりで病気と対峙するものではなく、患者さんと二人三脚で山を登るようなもの」だということです。
患者さんの立場や気持ち、悩みを知らなければ、適切な医療サービスを提供することなんて不可能です。それと同時に、患者さん自身が「治療したい、そのために自分ができることを頑張る」という気持ちになっていただかないと、私たちの医療行為も効果を発揮できません。
矯正治療に限らず、病気やけがを治すということは、どんな方法を用いたとしても多少の身体的、肉体的ストレスは避けられません。もちろん私たち医師は、そのときどきで患者さんの状態に寄り添い、できるだけストレスフリーに治療に取り組んでいただけるように努力しますが、まずはご自身で「治そう!」というしっかりとした気持ちを持っていただくことが一番だと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします
以前のように、口を開けて笑う子どもたちが公園にあふれ、街中で口角を上げて微笑む人々を目にする日常が、少しずつ取り戻されていることに喜びを感じています。
3年近く続いたマスク姿が当然の日々が明け始めた今、改めて笑顔の素晴らしさを感じることも多いのではないでしょうか。
矯正は、患者さんと長くお付き合いをする治療です。その過程において患者さんと常に心で触れ合いながら「山頂(治療完了)への二人三脚をしていきたいと考えています。
編集部まとめ
かつての歯科矯正は、審美目的に行われることがほとんどでした。しかし現在では、歯並びが全身の健康状態に影響を及ぼすことが知られてきたほか、食べ物を噛むという人間本来の行動にも直接関係することが認知されてきたようです。今回の取材を通じ、歯並びを整えることの大切さがよく理解できました。もちろん、マウスピース型矯正という治療技術の進歩も著しいものがありますが、「患者さんの頑張りにはとことん付き合って二人三脚でいく」という深谷先生のスタンスからは、新しいテクノロジーを最大限に駆使しつつ、しかし「人間的な医療」へのこだわりといったことも強く感じられました。
(※1) 未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。