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“歯医者さんは痛い・怖い”という思い込みが消えれば、予防治療はもっと身近な治療に!【埼玉県鶴ヶ島市 しのはら歯科医院】

 更新日:2023/03/27
しのはら歯科医院
しのはら歯科医院

日本人の約7割、8割が罹患しているといわれるむし歯や歯周病。初期には自覚症状がほとんどないことに加え、歯科治療への苦手意識から「歯科医院にはどうも足が向かない」という方は多いのではないだろうか。しかし、むし歯や歯周病は「予防」できる疾病。なってから治療するより、ならないほうがいい。それには予防治療という概念は避けて通れない。予防治療へ独自のアプローチを実践する「しのはら歯科医院」の篠原先生に、予防治療に関する詳しいお話を伺った。


Doctor’s Profile
篠原 勇輝
しのはら歯科医院 院長

明海大学歯学部卒業。同大学歯科臨床プログラム修了。医療法人における非常勤勤務を経て、明海大学大学院歯学研究科歯科放射線学専攻を卒業。埼玉県内の医療法人や、歯科医院にて多くの臨床経験を積んだ後、2017年8月、埼玉県鶴ヶ島市に「しのはら歯科医院」を開院。

予防治療が浸透していかない原因。現場から見えてくるものとは…

歯科医院を受診するきっかけは「痛み」「不具合」を感じたときという方が多いかと思いますが、まだまだ「予防のために」と受診される方は少ないのが現状のようですね。

そうですね。地域の特性があるのですが、都心から郊外へと遠ざかるにしたがい、お口の病気や予防に関する関心度や知識度のレベル、いわゆる“デンタルIQ”が下がってきます。
都心と郊外では情報量の違いもさることながら、ライフスタイルも含め、医療費に対する意識の差が“デンタルIQ”の差に表れてきます。鶴ヶ島市の現状を見ると、「予防」に関してなかなか厳しい感じがあるかな、というのが実感です。
予防治療が浸透していかない原因。現場から見えてくるものとは…

予防治療の先進国として有名なスウェーデンや、アメリカなどの海外の国々と比べ、日本で予防治療が一般に広く普及しないのは何が原因だと思いますか?

いいえ、そうでもないですよ。日本も歯科の予防意識は以前に比べたらかなり高まってはきているんです。それでも日本でなかなか予防治療が一般へ浸透しないのは、医療保険制度のシステムが大きく影響しているからだと考えます。
スウェーデンは税金が高いとよくいわれますが、それらは社会福祉に還元されていますよね。歯科医療に対しても、むし歯などで治療費を多く使われるより、あらかじめ予防に徹して医療費を抑えていこうという考えで行われる国家プロジェクトなわけです。したがって予防治療は税金で賄われているので、予防治療を受ける敷居が低いといえます。
アメリカは少し様子が違っていて、きれいなお口はお金持ちのステータスシンボルと捉えられているんですね。そしてアメリカには医療保険制度というものはないですから、むし歯や歯周病の治療も、矯正治療も結局自費診療ですから、予防治療も診療科目のひとつのカテゴリーでしかないんです。
日本の医療保険制度は病名があり、症状に対して処置をすることに適用される制度ですから、病名も症状もない状態での「予防」に対して保険は適用できないですよね。そこが予防治療の浸透していかない大きな原因だと思います。

予防治療が浸透していかない原因。現場から見えてくるものとは…
日本人の約7~8割の人がむし歯や歯周病にかかっているといわれていますが、それは予防治療への関心の低さや、予防治療の受診をためらう状況が影響しているとお考えになりますか?

むし歯や歯周病は予防で罹患や進行を防げる病気です。特に歯周病の場合は、いかに病状の進行を食い止めるかといった治療がメインになってきますが、この場合の治療は広い意味で歯周病の「予防」になってきます。
ただ、歯周病というのは非常にむずかしく、初期は痛くもかゆくもないのが歯周病の特徴なので、多くの人は“自分は歯周病である”という病識を持つことができません。ということは、「歯科医院へ行かなければ!」という気持ちも起きませんので、早期発見・治療につながりません。そうこうしていくうちに病状はどんどん進んでいきます。ですから予防治療への意識をどう引き出していくかというのが非常に大事なところになってきますよね。

予防治療の基本は「歯磨き」。しかし定期的にプロの手を借りることがより効果的

むし歯や歯周病の予防には歯磨きだけでは不十分ですか?

いいえ、歯磨きが習慣化していればよいと思います。一般の方が歯科医院でのブラッシング指導通りの磨き方がすぐにできるかといえばなかなか難しいことなので、当院では“ながら磨き”をおすすめしています。
“ながら磨き”は何かをしながら歯磨きをすることですが、たとえばテレビを見ながら、「ひと番組30分間磨き続けてみてください」と。ブラッシング指導はもちろん事前に行った上で、患者さんには気軽に取り組んでもらいます。磨き初めは歯磨きペーストを付ける必要はなく、物理的に磨く時間を長くしていけば磨き残しが少なくなり、それだけでもきれいになります。最後に歯磨きペーストで仕上げればすっきりしますよ。あとはフロス糸ようじを用いたり、フッ素塗布をホームケアに加えたりしてもらえればOKです。
お子さんの場合は食事の時間に気を付けることでしょうか。ダラダラと長く食べ続けていたり、常に口の中に食べ物が入っているという状況は、歯の再石灰化(自動修復)を妨げます。
予防治療の基本は「歯磨き」。しかし定期的にプロの手を借りることがより効果的

ところで歯周病の原因である歯垢(プラーク)や歯石ですが、どのくらいの期間で歯に付着するものなのですか?

歯磨きは予防に効果的だとお話ししましたが、歯石は歯磨きで取ることができません。キチンと歯を磨けていなければ1カ月くらいでくっついてきますね。特に下の前歯、上の奥歯の頬っぺた側に付着しやすいんです。
ただ、1カ月くらいの歯石でしたら簡単に専用の器具で取ることができます。4カ月くらい経過したものでもまだ取るのは難しくはありません。しかし半年から1年経ち、結構カチカチに固まった歯石を取るのは容易でなくなります。
歯周病の治療の過程でお口の中を掃除するのですが、その効果は半年するとなくなります。したがって、できれば4カ月を目安に定期的・継続的に歯石を取り除いたほうが、歯周病の治療としては高い効果が得られます。
付着して半年以上経過した歯石を取り除くのにやはり痛みを伴いますか?

そうですね、問題になってくるのは歯と歯茎の間、いわゆる歯周ポケットに入り込んだ歯石を取り除くこと。ポケットの中に入り込んだ歯石を取るのは、はっきり言ってむちゃくちゃ痛いです! ですから当院では、取り除くときには絶対に麻酔をします。予防治療、歯周病予防としては、歯周ポケットの中の歯石をしっかり取り除くことは避けて通れません。
そのようなことになる前に、やはり専門家による定期的なメンテナンスが必要な気がしてきました。歯科医院にはどのくらいの間隔で通うのがよいでしょうか?

歯科医師によってさまざまな意見があるのですが、だいたい3カ月から半年というところが多いようです。
当院では4カ月間隔で統一しています。患者さんも予定が立てやすいほうがよいと思いますし。歯石除去など歯周病の治療効果は半年で切れてきますので、患者さんの都合がつかないということも考慮して少し余裕を持った間隔でスケジュールを組んでいます。
しのはら歯科医院で行っている予防治療はどのようなことを行っていますか?

お子さんの場合は、お口の中を確認させてもらい、むし歯があればまずはその治療から始めます。むし歯がなければ、クリーニングやフッ素塗布、歯の溝を埋めるシーラント治療ですね。
大人の場合は、歯周病の治療の一環として行いますので、患者さんの歯周病の現況をしっかり説明し、ブラッシング指導クリーニング、必要に応じてオペも行います。

予防治療の基本は「歯磨き」。しかし定期的にプロの手を借りることがより効果的
歯周病やむし歯のリスク検査やPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)は行いますか?

いえ、リスク検査は扱っていません。検査に時間をかけるよりもブラッシング指導に時間を割いたほうが効果的だと思っています。あとは保険の適用になる診療を中心にして、患者さんの負担を軽減したいという考えからです。
PMTCも歯周病治療の一環として行うことが多いので、保険の範囲内で取り扱っています。歯石や汚れをしっかり取り除くことによって、歯ぐきの腫れなどを抑えることができますからね。

「予防治療」の効果は患者さんの心理面へのアプローチもカギ

初めにデンタルIQを高めること、予防への意識をどう引き出すかが大事であるとお話されていました。患者さんの心理面に対し、どのようにアプローチされていますか。

初診時、あるいは歯科医院に初めて来たというお子さんには治療器具などを紹介するところから始めます。“Tell Show Do法”という患者さんへのアプローチ法を用いて、これから何をするのかを説明し(Tell)、器具を見てもらい(Show)、最初に説明したとおりのことを実行、治療する(Do)ことで、安心感をもって治療に臨むことができるようになります。
併せて重要なのは、治療内容の“見える化”です。患者さんのお口の中の状態をモニターに映しながら説明したり、治療内容の説明にもiPadやアニメーションを用いてよりわかりやすく丁寧に行うことを心がけています。
メラビアンの法則にもあるように、視覚的な説明を用いたほうが理解度は高まりますし、患者さんにとっても治療の前と後を詳細に比べることができるので、「治療を続けていこう!」というモチベーションアップにもつながります。このような“見える化”には力を入れています。
「予防治療」の効果は患者さんの心理面へのアプローチもカギ

お子さんに対して特に重要視している点はどこでしょうか?

心を育てるという視点で治療にあたっています。まずはお子さんには“歯医者さんって楽しいな”という気持ちを持ってもらうのが目標です。なぜならば、“歯医者さんは楽しい”という気持ちを持ったまま成長することで、以後抵抗なく歯科医院へ通うことができますし、いずれお子さんが生まれたときにも気軽に歯科医院へ連れていくことが当たり前になります。こうしたよいサイクルをつくり出すことができれば、予防治療への関心はもっと広がっていくと考えています。

「予防治療」の効果は患者さんの心理面へのアプローチもカギ
予防治療にあたり、どのようなシステム、機材を用いていらっしゃいますか?

当院では各ユニットに大きなモニターが備え付けられています。お口の中をペン型の口腔内カメラで撮影して、そのモニターに映し出します。毎回毎回、治療の前と後の説明には必ず使いますね。
治療中は常にルーペを用いています。細かなところまで気を配るためには必須です。歯科用CTの導入により、細かな精密な治療が行えるようになりました。
画像を治療の記録としてきちんと残しておくことは、やはり患者さんにとっても理解度を高める助けになりますからね。予防治療に対するモチベーションも上がりますし、それによって納得のいく治療、満足する治療へつながっていくのだと思います。

身近で通いたくなる歯医者さんであることが、「予防治療」への意識を高めていくと信じて

身近で通いたくなる歯医者さんであることが、「予防治療」への意識を高めていくと信じて
予防治療に対する先生のお考え、モットーなどを教えてください。

「あなたと幸せを紡ぐために」という当院の医院理念に基づいた診療を心がけています。歯科診療を通して笑顔を紡いでいく、信頼を紡いでいくということをひとつの真理として追い求めていきたいですね。やはり信頼関係がなければ医療というのは成り立ちませんし、予防効果を高めるためにも患者さんとの良好な関係は必要不可欠な要素なんです。
そのために院外研修におけるスタッフ教育であるとか、心理学のほか行動科学や脳科学、コーチングなどエビデンスに基づいた診察・治療方針により、“歯医者さんは痛い、怖い”といった思い込みを打ち消すための努力は続けていきたいと考えています。

最後に予防治療を受けてみたいと関心を持たれた方へメッセージをお願いします。

ひと言でいえば、当院はホームページでは紹介しきれないことが多いので、「まず来てください!」ということですね。予防治療も来てくれないと始まらない!と。
当院は「歯医者さんがどうも苦手で…」という人ほど向いている歯科医院だと思っています。おそらく鶴ヶ島で一番歯医者さんっぽくない歯医者さんであると自負しています。患者さんには遊びに行く感覚でいらしてほしいのです。来ていただければ、治療はしっかりとやらせていただきますので、そのあたりは安心していただければと思います(笑)。
身近で通いたくなる歯医者さんであることが、「予防治療」への意識を高めていくと信じて

編集部まとめ

すべての歯科診療において「予防治療」は基本。重要な部分を担うはずの診療にもかかわらず、「予防」を目的に歯科医院を受診することが未だに特別なことのようにとらえられているのが現状です。しかし、「予防」の重要性を日頃の診療から実感している歯科医師の努力により、予防治療はもっと私たちの身近な診療になりつつあります。よりいっそうの効果を得るためには、私たち自身も予防治療についての意識を高めていく必要がありそうですね。

医院情報

しのはら歯科医院

しのはら歯科医院
所在地 〒350-2204
埼玉県鶴ヶ島市鶴ヶ丘276-1
ベルク鶴ヶ丘店
アクセス 東武東上線 鶴ヶ島駅 徒歩20分
東西線(鶴ヶ島市コミュニティ)バス停「商工会」下車 徒歩1分
診療内容 歯科一般 小児歯科 予防治療 入れ歯

この記事の監修歯学博士