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親知らずは本当に抜かないとダメ? 親知らずを残すリスクや抜歯基準を歯科医が解説

 更新日:2023/11/02
親知らずは本当に抜かないとダメ? 親知らずを残すリスクや抜歯基準を歯科医が解説

歯医者さんで親知らずを指摘され「早めに抜いておいた方がいい」と、抜歯をすすめられた経験のある人も多いでしょう。とはいえ、痛みや腫れといったトラブルがない段階では「本当に抜く必要があるのだろうか?」という疑問が頭に浮かびます。そこで、親知らずの抜歯をすすめられる理由や抜歯の基準について、「横浜駅西口歯科第2医院【親知らず外来】」の鈴木先生にお聞きしました。

鈴木 亮広

監修歯科医師
鈴木 亮広(横浜駅西口歯科第2医院【親知らず外来】)

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日本歯科大学生命歯学部卒業。東京女子医科大学病院麻酔科・救命救急センター、筑波大学附属病院歯科・口腔外科、国立病院機構静岡医療センター歯科口腔外科の勤務。その後、「横浜駅西口歯科第2医院【親知らず外来】」の院長に就任。親知らず専門外来チームによる診療で抜歯実績は年間1万本を超える。日本口腔外科学会認定医、日本外傷歯学会認定医、日本有病者歯科医療学会専門医。

なぜ、親知らずは抜歯をすすめられるの? 親知らずを抜歯した方がいい理由

なぜ、親知らずは抜歯をすすめられるの? 親知らずを抜歯した方がいい理由

編集部編集部

「親知らずは抜いた方がいい」と言われていますが、なぜでしょうか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

親知らずは上下左右の奥、前から数えて8番目に生えてくる歯で「第3大臼歯」または「智歯(ちし)」と呼ばれています。この歯は真っすぐ生えてくることが少なく、横向きや斜め向きであることがほとんどです。本来とは異なる生え方をする親知らずは、ほかの永久歯と比べるとむし歯や歯周病になるリスクが高くなるため、抜歯をすすめられることが多くなります。

編集部編集部

具体的に親知らずを残しておくと、どんなトラブルが起こるのでしょうか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

一番多いのは、親知らず周囲の「腫れ」です。代表的なものに、親知らずが生えてくるときに歯ぐきが腫れる「萌出性歯肉炎(ほうしゅつせいしにくえん)」と、生えた後に痛みや腫れを繰り返す「智歯周囲炎」の2つの病気があります。なかでも智歯周囲炎は腫れが大きくなるとお口が開かなくなったり、顔全体が腫れたりして、日常生活に支障をきたしてしまうことも少なくありません。また、重症化すると腫れによる窒息など重篤な症状を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

編集部編集部

親知らずの腫れ以外には、どんなリスクがありますか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

横向きや斜め向きに生えている親知らずは、手前の歯との間にむし歯が生じやすい傾向があります。奥歯の後ろ側は治療自体が難しいため、きちんとブラッシングができていない場合は抜歯を検討するか、もしくは歯科医院で定期的にケアをしていくことをおすすめしています。

抜かなくてもいい親知らずもある? 親知らずの抜歯基準について

抜かなくてもいい親知らずもある? 親知らずの抜歯基準について

編集部編集部

親知らずがあっても「抜かなくていい」ケースはあるのでしょうか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

親知らずは「抜かないといけない歯」と認識している人が多いようですが、必ずしも抜かなければならないわけではありません。ほかの永久歯と同じように真っすぐしっかり生えていて、上下がきちんと噛み合っていれば抜く必要はないと考えます。また、顎の骨の中に完全に埋まっていて、この先も恐らく悪さはしないと判断できる親知らずも抜く必要はありません。

編集部編集部

「親知らず=抜かないとダメ」というわけではないのですね。

鈴木 亮広先生鈴木先生

はい。ほかにも、むし歯や腫れがなく、親知らずの形や埋まり方の条件が揃えば、歯の移植や再生医療に使えることがあります。

編集部編集部

親知らずが再生医療に使えることもあるのですか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

歯の根っこの周囲にある「歯根膜」という組織を使って、歯ぐきや頬の粘膜を再生する研究を見たことがあります。まだ治験の段階なので適応できるケースは限られますが、実用化されれば再生医療のドナーとして親知らずが利用できる可能性もあるでしょう。将来的には親知らずもそのような使い道があるのではないかと考えます。

編集部編集部

そうすると、以上のようなケースに当てはまらない親知らずについては、やはり「抜歯した方がいい」ということになるのでしょうか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

将来的なリスクも含めると「抜いた方がいい」という考えに至ります。しかし、現時点で「歯ぐきの腫れや痛みを繰り返す」「むし歯で痛い」などに当てはまっていないのであれば、「抜かない」という選択肢があってもいいと思います。「抜いた方がいい」とはいえ抜歯にもリスクは伴いますので、抜くリスクと抜かないリスクについて、担当医とよく相談しながらベストな方法を選んでいきましょう。

親知らずの抜歯で気になる「抜歯中・抜歯後の痛みや腫れ」について歯科医が解説

親知らずの抜歯で気になる「抜歯中・抜歯後の痛みや腫れ」について歯科医が解説

編集部編集部

親知らずの抜歯は「痛い」「腫れる」という話もよく耳にします。実際のところはどうなのでしょうか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

まず、抜歯中の痛みに関しては麻酔をしっかり効かせるため、およそ9割は痛みを感じることなく処置が完了します。ただ、残りの1割は抜歯の途中で痛みを感じることがあるので、その場合は我慢せずに歯科医に伝えれば、麻酔を追加することで痛みを抑えることができます。

編集部編集部

では、抜歯後の痛み・腫れについてはどうですか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

抜歯後の痛みや腫れについては親知らずの状態によって個人差が大きいため、一概に「こうだ」とは言いきれません。親知らずは根っこの形や埋まり方などで抜歯の難易度も変わってきますが、一般に簡単な抜歯ほど痛みや腫れは少ない傾向があります。反対に、根っこの形が複雑だったり、奥深くに埋まっていたりする親知らずは抜歯の難易度が上がるため、腫れや痛みが出る可能性も高いと予想されます。

編集部編集部

抜歯後に痛みや腫れが出た場合、どれぐらい続きますか?

鈴木 亮広先生鈴木先生

抜歯後2~3日がピークで、1週間~10日で引いてくるのがほとんどです。ただ、稀に「ドライソケット」という抜いた部分のかさぶたが剥がれて骨がむき出しの状態になると、痛みが1~2カ月続くこともあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

鈴木 亮広先生鈴木先生

親知らずに関してはネットでも様々な情報を目にしますが、どちらかというとネガティブな話が多く、そのような情報を目にして不安に思う人も少なくないようです。「親知らずを抜歯した方がいいって言われたけど、本当に抜歯しなければならないの?」と疑問や不安を持っている人に、本記事が何かの手助けになれば幸いです。

編集部まとめ

ほかの永久歯とは異なり、真っすぐ生えてくることが少ない親知らずは、むし歯・歯周病になるリスクが高いという理由で抜歯をすすめられることが多くなります。将来的なリスクまで考えると早めの抜歯が推奨されますが、現時点で問題のないケースについては「抜かない」という選択肢もあるようです。親知らずに関する悩みや不安がある場合は、かかりつけ歯科医にまずは相談してみましょう。

医院情報

横浜駅西口歯科第2医院【親知らず外来】

横浜駅西口歯科第2医院【親知らず外来】
所在地 〒220-0004 神奈川県横浜市西区北幸2-10-50 北幸山田ビル 4F
アクセス JR「横浜駅」 徒歩5分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師