歯列矯正には大きく分けて、ワイヤー矯正とカスタム
マウスピース型矯正(アライナー型矯正装置)の2つの技法がある。ワイヤー矯正は長年行われてきただけに日本国中に浸透している。確実に歯並びを整えることができるが、歯に装着したワイヤーが見えること、痛みがあること、清掃性が悪いことなど、扱いづらいのが難点だった。一方、
患者の口に合ったマウスピースをはめて矯正するカスタムマウスピース型矯正(アライナー型矯正装置)は、手軽に扱えるなどメリットが多い。鎌倉地域でカスタム
マウスピース型矯正(アライナー型矯正装置)の
インビザラインを積極的に取り組んでいる、「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」の千原先生にそのメリット、
矯正治療の効果を語っていただいた。
Doctor’s Profile
千原 晃
湘南鎌倉歯科・矯正歯科 院長
神奈川歯科大学卒業後、神奈川県内の医療法人分院長勤務を経て、2016年5月、「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」を開院。日本顎咬合学会所属・認定医。ICOI(国際インプラント学会)所属・国際認定医。IACD(アメリカ初歯科総合医認定制度)理事・指導医。これまでに、ハーバード大学、ミシガン大学、コロンビア大学、UCLA、ニューヨーク大学などの歯科分野研修を多数修了。日本歯科補綴学会、日本顕微鏡歯科学会、日本顎関節学会、日本臨床歯周病学会、日本小児歯科学会など参加学会多数。2018年から、ハーバード大学歯学部共同研究者。
ワイヤーとマウスピース、どちらの矯正治療を選ぶかはメリット・デメリットを比較検討することから
歯列矯正の治療にはどんな種類があるのでしょうか? それぞれの手法の大まかなメリット・デメリットについて教えてください。
まずワイヤー矯正です。これは100年以上前から行われてきた手法で、基本的に1つの歯に1つのブラケットという金具または
セラミックなどを装着し、そこにかけたワイヤーの弾力によって歯を動かしていくものです。この方法だと
確実に歯の移動ができる反面、清掃性や見ばえが悪いこと、お口のお手入れに時間がかかることなどが欠点といえます。
次に、比較的新しい矯正技法として脚光を浴びているのが、カスタム
マウスピース型矯正です。歯型を取り、そのお口の中の情報をパソコンに取り込み専門のソフトにて歯を移動させ仕上がりまでのシュミレーションを行なっていきます。それによって大まかな治療期間、矯正後の状態を術前に把握する事が出来ます。そして3Dプリンターによって作製された矯正装置を使用していきます。装置はご自身で外す事ができ、洗えるので
口腔内の清掃性が保てる上に、透明に近い器具なので目立ちにくいのがメリットです。ただし、
外している時間が長いと、目標とする効果が得られません。
歯列矯正というと、子どもの歯並びのための治療というイメージがあります。大人でも必要なのでしょうか?
実際、お子さんの歯並び、噛み合わせの矯正は親御さんの意識の高まりとともに増えています。一方、大人では、若者が就活のために矯正をしたり、高齢者が
入れ歯や歯周病の治療の一環として矯正を行うなど、
従来のイメージよりはるかに矯正治療が一般的になってきたといえます。そもそも人の歯は動くものなので、機能的な安定を求めると、
矯正治療が必要になってくるのです。
大人の患者さんが矯正治療を行うとき、抵抗はないのでしょうか?
たしかに、従来のワイヤー矯正しかなかった時代、そして今でも、これに抵抗のある患者さんが多いのは事実です。装置を着けたまま人前で話したり、食事をしたりするとき、思わず口元を手で隠してしまう。笑顔も不自然だったりしますからね。
食事の後で、普通の歯磨き以上に手間ひまかけてお口の掃除をしないといけないのは、慣れてもかなり面倒なのも事実です。ワイヤー矯正では、そういった点をすべて患者さんにご説明し、納得していただいてはじめて治療に入ります。しかし、
マウスピース型矯正なら、治療にそれほど抵抗はなく、治療にあまり問題を感じないはずです。
では、マウスピース型矯正はどんなケースに向いている手法ですか? そのメリット、デメリットについて教えてください。
部分矯正など特殊な治療を除いて、今ではお子さんから高齢者まで、ほとんどの歯列
矯正治療にマウスピースが向いているといえます。というか、マウスピースを希望される方が、実際多いですね。お子さんの場合は、既製品のマウスピースを短期間でどんどん別のものに替えていくことで歯を動かしていきます。
大人の場合は、その人の歯型に合ったカスタムメイドのものを使用します。メリットとしては、どちらも口を開けても目立ちにくく、
見栄えの点ではほとんど問題なし。しかも、痛みはワイヤー矯正より少なく、食べ物が詰まったりしづらい上に、取り外しがきくので
お口やマウスピースのお手入れも格段にラクなのです。
デメリットは、
装着してもらえないと効果が出ない。ワイヤー矯正と比較すると動きが緩やか=重度な症例では時間がかかる若しくは適応外となることなどです。
圧倒的にマウスピース型矯正の方が受けやすい治療だという印象ですね。「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」では、マウスピース型矯正で「インビザライン」という製品・治療方法を利用されていますが、どんな方法で、どんな特徴があるのでしょうか?
インビザラインはアメリカのメーカーによるカスタム
マウスピース型矯正システムです。現在、世界的には標準治療になりつつあります。アメリカでは歯学部全65大学すべてで
矯正歯科医への専門教育プログラム・研修が行われています。日本の歯科大学ではまだ教育に取り組まれておらず、大学病院では1施設を除き殆ど行われてないのが現状です。日本では専門医教育制度に含まれていないので否定的な意見があり、大学・学会を主体とした「新しい
矯正治療方法」としての周囲への認知度が現状になっているかと思います。ですので日本での普及は一部の一般開業医や矯正専門医が主に行っている状態です。以前見学させていただいたアジアで一番の症例数を誇る香港にある診療所では年間1000人以上の方が
インビザラインによる
矯正治療を新規に受診されていました。ある論文で日本都内にある大学病院では年間約500名の新規矯正患者さんの受診というデータがあります。複数の歯科医師が居る大学病院の受診人数と比較するとやはり日本での認知度、患者さんからの要望は少ない(知らない)のかと思います。治療方法は簡単にいえば、患者さんの口腔内をCAD/CAMでスキャンしたデータをメーカーに送り、パソコン上で治療計画を作ります。そしてその
治療計画を元にオーダーメイドのマウスピースが送られてくるというシステムです。
このメーカーでは、多彩な技術革新を生かして、素材をはじめマウスピースのデザインなどを開発してきました。アラインテクノロジー社はアメリカではカスタム
マウスピース型矯正の先駆けでもあり、シェアの80%を占めます。また、この会社には膨大な症例データが蓄積されていて、歯科医が専用の3次元治療計画ソフトを利用することで、
治療計画から最終的な歯の移動の確認まですべてをパソコン上で患者さんと共有できるのも特徴のひとつです。
では、「インビザライン」はどんな患者さんに向いているのでしょうか?
幅広い年齢層の患者さんにおすすめですが、やはり
周囲の人に気付かれずに矯正治療すること、食事やお手入れなどに手間がかからないことを第一に希望される方向きです。要は、どなたにとっても、
インビザラインのような画期的な装置を使うことで、普段の生活で気軽に矯正ができればそれに越したことはないのですから。
「インビザライン」の治療例にはどんなものがありますか?
通常の
歯列矯正のほか、私が経験してきたケースでは、すでに治療した歯のある患者さんの矯正です。たとえば、差し歯があるような方の場合、ワイヤー矯正だとまずその差し歯を外して仮歯にしてから
矯正治療を行います。これには余計に費用も時間もかかります。ところが、
インビザラインなら先に矯正して歯列を整えてから、ほかの治療も可能ですし、既存の差し歯を外すことも必要ありません。その点では、
多くの治療を経てきたような方にこそ、負担の少ないインビザラインは向いているといえます。
「インビザライン」の具体的な治療内容としてはどのようなものでしょうか?
こちらで患者さんの口腔内のデータをアメリカに送ると、それに合ったマウスピースが送られてきます。そして動かしたい歯に対し部分的に白い樹脂を貼り、その上からマウスピースを装着しますが、使い捨てなので衛生的です。10日〜14日を目安に新しいものに取り替えていき、トータルで4カ月から3年といった具合に、期間はケースバイケースです。マウスピースの詳細はすべてデジタルデータで残るので、治療の経緯などを確認するのにも便利です。
「インビザライン」は歯科医にとってメリットが多いのですね。患者さんにとってはいかがでしょうか?
もちろん、患者さんにもメリット満載です。
マウスピース型矯正のメリットで述べた長所は、インビザラインの長所でもあります。患者さんにとっての使い心地は個人差もありますが、「食事」「会話」「清掃性」といったお口に関係する機能面でも、ワイヤー矯正装置における装置の脱落、ワイヤーの飛び出しや欠けるといった不具合の面でも、ほとんど心配ありません。
ズレてしまうと効果がほぼ無くなるので、その点を注意すれば、それ以外は安心して使えることから、気持ちの点で信頼が置ける、とのお声を頂くこともあります。
それでも患者さんが治療を迷われるケースはありますよね?
使い心地、効果の点では万人向きの
インビザラインですが、たしかに、これを躊躇される患者さんもいらっしゃいます。その第一の理由は、やはり費用の問題です。ワイヤーによる矯正方法と同程度の費用となり、決して安くはありません。一部の症例を除き
矯正治療は保険外診療となります。症例によって異なりますが治療費用としては45〜85万円かかります。あとは回数などによって費用はかさんでいきます。
もっとも、できるだけご利用していただきやすいように、当院では
医療費用ローンを設けていますので、費用で迷うなら、ぜひご相談していただきたいと思います。むしろ、治療で得られる明るい未来像・人生のほうに、費用以上の価値があると私は考えています。
「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」ならではの治療が矯正を生かす
矯正治療を受けるとして、「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」における治療は具体的にどんな流れですか?
まず、実際の治療の前に患者さんのカウンセリングから始めます。歯科を受診する患者の痛みや不安、悩みをお持ちなので、それを聞き出し、あるいはご希望とあわせて、理想へと導く治療を一緒に考えます。
次に数種類の検査を行いますが、最初にお顔の正面・横顔など外観を診るほか、鼻づまりなどのクセや隠れた病気がないかもチェックします。口腔内は歯並びや噛み合わせなどを、顕微鏡を使って入念にチェックします。
顕微鏡では分からない歯根、横顔などの骨格はレントゲン撮影して確認します。その後、必要に応じて歯型を取ることもあります。これらの検査の結果を情報として手元に集約して、最後に再びカウンセリングし、最終的に費用も含めた治療方針・計画を書面でご提案します。患者さんと相談し納得していただけたら、ご提案した治療へと進みます。
事前の検査を入念に行うのには理由がありますか?
歯の
矯正治療は、歯並びひとつの問題ではなく、あごの骨や顔の骨格、時には頭蓋骨にまで影響を及ぼすほか、噛み合わせの不具合が全身の不調を招くこともあるので、
治療に入る前に関連することすべての情報が必要です。たとえば、抜歯してから行うワイヤー矯正の場合、
矯正治療終了後に約1~2年すると顎関節症を起こす可能性という報告もされています。ですから、その可能性を事前に探っておくわけです。
「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」さまの矯正治療の特徴はどんな点にありますか?
その名の通り、
矯正歯科だけでなく、口腔外科などの一般歯科も専門としているので、
連携治療ができるところが最大の特徴です。本来、
矯正治療は患者さんのお口全体を診ないと実行できないもので、歯の治療に関するトータルの知識を持って、的確に処置ができることが、
矯正治療の一部であったり、またその逆であったりして、お互いに奏功しているといえます。
そのほかに、ここが売りという点はなにかありますか?
鎌倉地域でカスタム
マウスピース型矯正、「
インビザライン」を導入している歯科医院はまだまだ少ないとメーカー担当者から伺っています。当院では「
インビザライン」を早くから導入してきました。
歯列矯正なら
インビザラインという時代になりつつあるので、この治療についてのカウセリングだけでも受けに来ていただけるといいと思います。
また、
CAD/CAM、
CTレントゲンといった機器を導入して治療のデジタル化を図っている歯科医院も鎌倉では多くはありません。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を3台揃え、顕微鏡下にて精密な歯科の検査・治療を行なっているのも鎌倉では少ないと思います。これにより、お口の中を4〜20倍に拡大しながら撮影した画像・動画で詳細な治療、患者さんとの情報共有が可能になりました。
治療後、患者さんに動画を見ていただくことで、どんな治療が行われたか目で見て確認していただけます。そうしたコミュニケーションツールとしても大いに役立っています。
マウスピース型矯正の治療が完了した患者さんからはどんな声が届いているでしょうか?
まず、笑顔や表情が治療前とは違いますね。特に女性の場合、歯の矯正がうまくいくと、髪や肌にもお手入れが行き届き、トータルで若返るというか、生き生きして、心身に矯正効果が表れています。
「歯並びが治って、なんだか顔全体がきれいになった印象があります」「矯正の効果で、自信を持って笑えるようになりました」といった感想を多く聞けるのは、歯科医師だけでなくスタッフ一同うれしい限りです。
ほかには、就職の面接で矯正をしていることが前向きな姿勢だと受け止めてもらえたとか、人に会うのがおっくうではなくなったなど。皆さん、治療後は積極的な姿勢を得ているようです。
矯正治療が
歯並びだけでなく患者さんの人生に大きな変化をもたらした点が最大の効果ではないでしょうか。
今後、矯正治療、なかでもマウスピース型矯正を受けようと考えている方、またMedical DOCのサイトを訪問している読者にメッセージをお願いします。
誰にも知られずに
歯列矯正を行いたい方、ずっと歯並びにコンプレックスを感じていた方、外で働く社会人だからワイヤー矯正が無理だと諦めていた方など、
矯正治療に踏み込めない理由を抱えていた方々に、マウスピース型矯正を視野に入れて、ぜひ矯正治療を再考していただきたいと思います。見栄えなど仕事の場などでも支障がワイヤー矯正より少なく、扱いも比較的手軽なので、仕事に忙しい方や海外出張が多い方にも是非おすすめしたいと思います。アメリカや西欧では、保護者の考え方によっても異なりますが、小児期で8割が
矯正治療を行なっています。これは「
歯列矯正は当たり前」という概念が日本より浸透しているからだと思います。また海外では一般的な虫歯や歯周病等の歯科治療は日本の様な国民皆無保険制度が無く、自己負担金が高額になる場合が多いので
「矯正治療=予防治療」といった考えが浸透しています。日本でも、これからは「人生が変わる」ほどの効果があるカスタム
マウスピース型矯正を行う意義が、多くの人にあると私は信じています。
ワイヤー矯正による歯列矯正はもう過去の話になりつつあるようです。今や着脱可能な透明に近いマウスピースを歯にはめるだけのカスタムマウスピース型矯正が主流だといえるでしょう。このシステムを導入している鎌倉の「湘南鎌倉歯科・矯正歯科」では、治療完了後、患者さんが「人生が変わった」と感激しているそうです。歯並びが整うことは、人生に前向きになれること。それを叶えてくれるカスタムマウスピース型矯正治療を選択しない手はないようです。
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湘南鎌倉歯科・矯正歯科
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