脳梗塞は生活習慣だけでなく、家族歴や遺伝的体質にも左右されます。家族に脳梗塞の既往がある場合、発症リスクが高まることが知られています。本章では、家族歴が与える影響や遺伝的背景を踏まえ、リスクを軽減するための現実的な対策を解説します。
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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
家族歴と遺伝的要因
脳梗塞には遺伝的な要因も関与しており、家族歴がある方はリスクが高まる傾向があります。遺伝的な背景を理解することで、より意識的な予防行動につなげることができます。
家族歴の影響
両親や兄弟姉妹に脳梗塞の既往がある場合、自身の発症リスクは約1.5〜2倍に上昇するとされています。これは遺伝的な血管の脆弱性や、家族内で共有される生活習慣が影響していると考えられます。家族歴がある方は、より早い段階から血圧や血糖値、脂質の管理に注意を払い、定期的な健康診断を受けることが推奨されます。
遺伝子と体質
特定の遺伝子変異が脳梗塞のリスクを高める可能性が研究で示されていますが、現時点では遺伝子検査が広く臨床応用されているわけではありません。むしろ、遺伝的素因があっても生活習慣の改善や基礎疾患の管理によってリスクを大幅に低減できることが重要です。家族歴を過度に不安視するのではなく、コントロール可能な要因に目を向けることが現実的な対応といえます。
まとめ
脳梗塞は突然の発症により生活の質を大きく損なう疾患ですが、その多くは予防可能な要因によって引き起こされます。初期症状や前兆を正しく理解し、万が一の際には迅速に行動することが救命と後遺症軽減の鍵となります。片側の麻痺やろれつが回らないといった典型的な症状だけでなく、一過性脳虚血発作のような短時間で消失する症状も重要な警告サインです。FASTによる簡易チェック法を知っておくことで、ご家族や周囲の方も早期発見に貢献できます。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心房細動といった基礎疾患の管理、禁煙や適度な運動、バランスの取れた食生活など、日常の積み重ねがリスクを大幅に低減させます。年齢や性別、家族歴といった変えられない要因があっても、生活習慣の改善によってリスクをコントロールすることは可能です。定期的な健康診断を受け、自身の身体の状態を把握することも重要です。
気になる症状がある場合は、早めに内科や神経内科、脳神経外科を受診し、専門医の診察を受けることを推奨します。本記事で紹介した情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。脳梗塞の予防と早期発見には、正確な知識と日々の実践、そして専門医との連携が不可欠です。