受診率40%の壁。子宮頸がん検診の現状と、女性医師・自己採取など受けやすい環境への取り組み

子宮頸がんによる死亡を減らすには、検診の受診率を上げることが欠かせません。日本ではまだ受診率が低く、啓発と環境整備が課題です。自治体や医療機関による取り組みを通じて、誰もが安心して検診を受けられる環境づくりが進んでいます。その現状と課題を紹介します。

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
子宮頸がん検診の受診率向上に向けて
子宮頸がん検診の受診率向上は、子宮頸がんによる死亡率減少のための重要な課題です。現在の受診率の現状と向上のための取り組みについて説明します。
日本における検診受診率の現状
日本の子宮頸がん検診受診率は、残念ながらほかの先進国と比較して低い水準にとどまっています。厚生労働省の調査によると、20歳〜69歳の女性の受診率は約40%程度とされており、欧米諸国の70〜80%と比較して大きな差があります。
受診率が低い理由として、検診への関心の低さ、検診に対する不安や恥ずかしさ、時間がないなどの要因が挙げられています。また、症状がない場合の受診の必要性に対する認識不足も、受診率向上の妨げとなっています。
地域差も受診率に大きく影響しており、都市部と地方部では受診環境に差があります。また、市区町村による検診体制の違いも受診率に影響を与えています。検診の実施方法、受診券の配布方法、啓発活動の程度などにより、同じ都道府県内でも受診率に差が生じています。
受診しやすい環境の整備
受診率向上のためには、女性が受診しやすい環境づくりが重要で、多くの自治体や医療機関で、さまざまな工夫が行われています。検診の実施体制としては、土日や夜間の検診実施、託児サービスの提供、女性医師による検診などが行われています。
検診場所の多様化も進んでいます。従来の保健センターや医療機関での検診に加えて、検診車による巡回検診、職場での集団検診、商業施設での検診などが実施されています。これにより、女性が日常的に利用する場所で検診を受けることができるようになっています。
検診内容の改良も受診率向上に貢献しています。従来の細胞診に加えてHPV検査を併用することで検診間隔を延長でき、受診者の負担軽減につながります。また、自己採取HPV検査の導入により、内診に抵抗がある女性でも検査を受けやすくなっています。
まとめ
子宮頸がんは、予防と早期発見により克服可能ながんです。HPVワクチンによる一次予防と定期的な検診による二次予防、さらに異形成段階での適切な治療により、多くの場合で子宮頸がんの発症を防ぐことができます。
正しい知識を持ち、適切な予防行動を取ることで、健やかな人生を送ることができるでしょう。定期的な検診受診と、必要に応じた専門の医師への相談をおすすめします。
参考文献




