「高血圧・糖尿病」がある人は要注意!「心房細動」を引き起こす生活習慣病の恐ろしい関係【医師が解説】

現在、「心房細動」の患者数が増えています。心房細動を放置すると、脳梗塞などを引き起こすこともあり、命のリスクになる場合もあるそうです。心房細動とはどのような状態なのか、「おくやまクリニック」の奥山先生に解説していただきました。

監修医師:
奥山 裕司(おくやまクリニック)
編集部
まず、心房細動について教えてください。
奥山先生
脈が異常に速くなったり遅くなったり、不規則になったりすることを「不整脈」と言い、心房細動は不整脈の一種です。心臓には心房と心室があり、血液は心房から心室、全身へと流れます。この心房内で異常な電気信号が発生して、収縮が無秩序に起きる状態が心房細動です。心房が痙攣(けいれん)したように、つまり細かく動くように見えるため、心房細動と呼ばれています。
編集部
なぜ、心房細動が起きるのですか?
奥山先生
心房細動が発症する大きな要因に、「加齢」があります。長年、働き続けた心臓はやがて疲弊してしまいます。そのため、心臓の機能が低下したり、心臓を動かすのに必要な電気信号を伝える組織が劣化したりしてしまいます。それにより、心房細動が起きるのです。
編集部
加齢による劣化とは、具体的にどういうことですか?
奥山先生
赤ちゃんの肌はプルプルして弾力がありますよね。しかし、歳をとるとだんだん弾力が減ってきます。これは皮膚の線維成分が増えることによって生じる変化です。これと同じ変化が心臓にも起きていて、加齢とともに心臓の筋肉の間に線維成分が増えてきます。こうした変化を「線維化」と言い、これによって心臓内の電気の流れがスムーズでなくなり、不規則になるのです。
編集部
最近、心房細動の患者数が増えていると聞きましたが、それは高齢化によるものですか?
奥山先生
そのように考えられます。ある研究によると、健康診断時の心電図検査で心房細動がみられる確率は60代で1%、70代で2%、80代で3%であることがわかっています。加齢に伴って増えることが明らかですが、そのほかにも、「高血圧」「糖尿病」「肥満」などが発症に関わる、つまり発症確率を高めることも判明しています。
編集部
いわゆる生活習慣病が関係しているのですね。
奥山先生
正確に言えば「医療技術が進化したり病態の理解が進んだりしたおかげで、生活習慣病のコントロールが良くなったため、生活習慣病を持ったまま長生きする人が増えた」ということが、心房細動の患者数の増加に関係しているのではないかと思います。
編集部
なぜ、それらの病気が心房細動の原因になるのですか?
奥山先生
例えば、高血圧だと左心室の肥大が起こります。それにより左心房に負荷がかかり、線維化が進むため心房細動が起こりやすくなります。また、血糖値が高いことも心房の線維化に関係しています。
編集部
そのほかにも、心房細動の原因になるものはありますか?
奥山先生
「ストレス」「過労」「睡眠不足」「飲酒」「喫煙」「睡眠時無呼吸症候群」「甲状腺機能の異常」などが原因になることもあります。特に近年では、睡眠時無呼吸症候群と心房細動の関係が注目を集めており、合併する人が非常に多いことが判明しています。そのほかにも「心臓弁膜症」「心筋症」「虚血性心疾患」などが原因となることもあります。さらに、一部では遺伝性の心房細動があることもわかっています。
編集部
心房細動は高齢者に増えているということですが、なぜですか?
奥山先生
繰り返しになりますが、加齢によって心房細動の発生のもととなる、線維化が進行するからです。しかし、高齢になってある日突然心房細動が発症するのではなく、実際はもっと前にその種は蒔かれているのです。40歳代から生活習慣病の発症が増えます。その頃から線維化が加速し、心房細動の芽が出始めているのです。心房細動の予防を考えれば、中高年の時期から健康を意識する必要があります。
※この記事はメディカルドックにて<「心房細動」の初期症状はご存じですか? 受診の目安・放置リスクも医師が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。



