「白内障」の進行は気づかぬうちに… 白内障の進行や手術について医師が解説
白内障は進行が緩やかで自覚しづらい病気ですが、治療を怠ると視力低下や転倒事故を引き起こすリスクがあります。そうなる前に意識すべきことや治療の重要性について、うえだ眼科クリニックの上田先生にお聞きしました。
監修医師:
上田 至亮(うえだ眼科クリニック)
編集部
白内障は自覚できるのですか?
上田先生
自覚のない方が多いですね。白内障は長い年月をかけて徐々に進行するため、日々の変化に気づきにくいのです。また、脳には、ぼやけた画像を鮮明に補正する機能が備わっています。ですから、視力を測っても、そこそこの数値が出ます。医師からしたら、「心眼で見ているのか」と思うくらいの場合もあります(笑)。
編集部
でも、白内障は治すべき病気ですよね?
上田先生
そうですね。見え方の個人差もありますが、白内障の手術を受けると、「家の中がこんなに汚かったのか」「いつもは平気だった道路がこんなに危険だったのか」などと気づかれる方が少なくありません。また、白内障のまま足腰が弱くなっていくと、治療の機会を得にくくなります。転倒事故などがきっかけで、寝たきりの生活を余儀なくさせられることも考えられるでしょう。
編集部
なるほど、見え方は人生に直結しているのですね。
上田先生
元気なうちから「ある程度見えるようにしておく」ことが大切で、これを「QOV(クオリティ・オブ・ビジョン = 視覚の質)」と言います。白内障は、自覚がなくても緩やかに進行していきますので、QOVを保つようにしてください。
編集部
ちなみに、白内障の手術費用は、どれくらいなのでしょうか?
上田先生
単焦点の眼内レンズであれば保険の適用が可能で、その費用は、3割負担として片目あたり6万円前後といったところです。遠近に対応した多焦点レンズは自費となりますが、契約している生命保険などによっては、「先進医療」としての補償を受けられる場合もあります。
編集部
眼内レンズって、コンタクトレンズのようなものでしょうか?
上田先生
いいえ。眼内レンズは、水晶体がもともとあった部分に移植します。その直径は6mm程度ですが、丸くたたむことが可能で、2.4mmほどの穴を開けて挿入します。すると、眼内の中で広がって、固定される仕組みです。手術に要する時間は、麻酔が効くまでの時間を除くと、おおむね10分〜20分前後です。
編集部
手術中の意識はしっかりしているのですよね、怖くないですか?
上田先生
皆さん、やはり緊張されるようです。ただし、瞳孔を開く点眼を用いるため、視界が明るく飛んだような状態になります。加えて、目の中にピントは合わないので、「メスなどがはっきり見える」ということもありません。患者さんの中には、「オーロラが見えてきれいだった」という方もいらっしゃいますね。もちろん、手術は怖いものですが、よく見えない状態を一生引きずっているほうが怖いのではないでしょうか。
※この記事はメディカルドックにて【白内障の手術を受けると、視力はどれくらい回復するの?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。