FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【眼科医に聞く】白内障手術はどこで受ける? レンズにも種類がある?

【眼科医に聞く】白内障手術はどこで受ける? レンズにも種類がある?

 公開日:2024/03/30
【眼科医に聞く】白内障手術ってどこで受けても同じ?

「白内障」は、加齢を代表とするさまざまな原因で発症し、視力が低下する・目がかすむなどの症状が起こる病気です。年齢を重ねると大半の方が「白内障」を発症するようですが、手術での治療が可能です。そこで今回は、白内障の病態や治療法としての手術について眼科医の長谷川 裕基先生(はせがわ眼科院長)に伺いました。

長谷川 裕基

監修医師
長谷川 裕基(はせがわ眼科)

プロフィールをもっと見る
日本大学医学部医学科卒業後、トヨタ記念病院や昭和大学病院などで、小児から高齢者までさまざまな目の疾患の治療に積極的に携わり経験を積む。平成27年11月、はせがわ眼科を開院、院長となる。日本眼科学会認定専門医。

白内障とは? 眼科医が徹底解説!

白内障とは? 眼科医が徹底解説!

編集部編集部

白内障とはどんな病気ですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

目の中にある「水晶体」というレンズの働きをする部分が、老化をはじめとしたさまざまな原因で濁ってしまう状態です。また、若くても外傷やステロイド使用、アトピー性皮膚炎や糖尿病が原因で起こることがあります。50代を過ぎると発症する方が増え、80代ではほとんどの方に白内障が認められると言われています。

編集部編集部

レンズが濁ると、どのような症状が出るのですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

ぼやけて見える、かすむ、光がまぶしいというような症状を感じるようになります。暗いところで見えにくい、対向車のライトが眩しいなどといった訴えもよくあります。ただ、初期の段階では症状として出ないことも多々あります。症状の進行も徐々になので、ある程度進んでも本人が全く自覚していないケースも多くあります。

編集部編集部

白内障の治療はどのように行われるのですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

白内障の進行を抑えるとされている点眼薬もありますが、こちらは治す治療ではないので進行が止まるわけではありません。一度白く濁った水晶体が目薬で透明になることはなく、白内障を根本治療するには適正な時期に手術することとなります。

編集部編集部

どのような手術ですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

濁った水晶体を取り除き、その場所へ人工の水晶体である眼内レンズを挿入するという方法です。点眼麻酔が主体となり、日帰りで行うこともできます。場合によってはほかの麻酔方法を追加することもあります。

白内障の手術について詳しく教えて!

白内障の手術について詳しく教えて!

編集部編集部

手術について、もう少し詳しく教えてください。

長谷川 裕基先生長谷川先生

事前に眼内レンズの度数を決めるための検査などをおこない、手術3日前から術後感染予防のための抗生剤を点眼していただきます。手術は、多くの場合は麻酔後、角膜わきに2~3mmの小さな切れ込みを入れ、濁った水晶体を超音波装置で乳化・吸引、人工の眼内レンズを入れて固定します。特別なことがなければだいたい10分程度ですべて完了します。硬い白内障では、超音波装置を使用せずに一塊で水晶体ごと取り除くこともあります。

編集部編集部

術後についても教えてください。

長谷川 裕基先生長谷川先生

手術後は眼帯をして、必要な方は帰宅前にリカバリールームで休んでいただくこともできます。翌日再診していただき、眼帯を外して目の状態を確認し、その後は間隔をあけて定期的な診察を行います。必須ではありませんが、目を触ってしまう心配がある方、ホコリっぽい環境にいることの多い方などにはご希望に応じて保護用のメガネを使用頂くことができます。

編集部編集部

手術の際、注意する点などはありますか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

手術では、緊張されてしまう方が多いので、リラックスして頂くことが大事です。目を開く器具は使用しますが、なるべく目を閉じない、目を動かさないようにすることが重要です。痛みを強く感じる手術ではありませんが、もし何かあった場合も急に目を動かすことはせず、挙手や声で教えていただくようお願いしています。また、術後は、感染を防いで炎症を改善させるために数種類の点眼をしてもらいます。そして状態の観察のためのこまめな診察も重要です。

編集部編集部

手術のリスクなども気になります。

長谷川 裕基先生長谷川先生

合併症として最も怖いのは「術後眼内炎」です。手術中もしくは手術後に菌が目の中に入り感染してしまう状態です。この場合、いち早く目の中を洗う手術をすることが重要です。ほかには、目の中の血管に何らかの圧力がかかり生じる「駆逐性出血」が起こることもあります。そして「後発白内障」はよく起こり得るもので、YAGレーザーを用いて後嚢(こうのう)を切開することで改善します。ごく稀に、手術で水晶体嚢が破れ水晶体が落下する「水晶体落下」や、「眼内レンズ偏位」などが起こることもあり再手術が必要なこともあります。

編集部編集部

ほかに気をつけることはありますか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

白内障手術を受けると、目の症状が大方改善するのではと考える方もたまにいらっしゃいます。ですが、白内障の手術は先ほど述べたように、濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズへ置換するだけです。飛蚊症などが治るわけでもありませんし、異物感やドライアイなどの症状が改善するわけではありません。むしろそれらの症状が悪化してしまうこともあります。

編集部編集部

そうなのですね。

長谷川 裕基先生長谷川先生

また、白内障手術をすると遠くも近くも眼鏡なしで全て見やすくなると考えていらっしゃる方がいます。ですが、単焦点レンズを使用した場合は、ピントが合いにくい場所には眼鏡を必要とします。多焦点レンズなども発展し眼鏡の依存度を低くすることはできるようになってきましたが、いまだに全ての領域を絶対に不快感なく見えるレンズはありません。

白内障手術、どこで受けても同じ? 病院選びのポイントは?

白内障手術、どこで受けても同じ?病院選びのポイントは?

編集部編集部

手術はどこで受けても同じですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

まず、入院できる施設日帰りのみの施設の両方があります。日帰りの場合には、付き添いが必須というわけではありませんが、眼帯をした状態でご自宅に帰らなければなりません。痛みを強く感じる手術ではありませんが、閉所恐怖症などの方や何らかの病気で体動が強い場合には全身麻酔ができる施設もありますし、笑気などの吸入麻酔を扱っている施設もあります。

編集部編集部

費用は同じですか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

基本的に保険診療で施行することが多い手術ですが、選定療養という保険診療に眼内レンズの差額分を上乗せして行うことが可能です。選定療養には届出が必要ですので、それによりできる施設とできない施設があります。まれにですが、自由診療のみおすすめする施設もあります。レンズの種類も単一ではありません。今は普通に見えるようになるだけでなく、裸眼視力などでより良く見えるを追求する時代になっています。多焦点眼内レンズや乱視矯正眼内レンズなど付加価値レンズが存在しますが、扱っているかは施設によってまちまちです。保険診療で扱う焦点深度拡張型のレンズも存在しますが、全ての施設で扱っているわけではありません。緑内障がある方は「MIGS」と言って、低侵襲緑内障手術を併用して眼圧下降を期待することも可能ですが、これも施設基準の届出が必要になる手技です。

編集部編集部

病院を選ぶ際、ポイントなどありましたら教えてください。

長谷川 裕基先生長谷川先生

ご自身の身体の中にインプラントを入れる手術ですので、手術に対する説明を充分に受け、ご自身が納得頂くことが大事だと思います。例えば、術後のピントをどこに合わせるべきかについても、人それぞれの生活スタイルは違うのでご希望をお聞きしながら選択することが大切です。多くの場合、医師だけでは十分な説明が難しいため、場合によっては視能訓練士のいる施設だと、ピントの相談を詳しくできるかもしれません。

編集部編集部

注意すべき点はありますか?

長谷川 裕基先生長谷川先生

術後の管理も重要ですので、それをしっかりとしてくれる施設や通院しやすい施設が良いでしょう。手術なので、時として合併症も生じえます。注意していただきたいのが、自由診療で起きた合併症の治療は自由診療となる可能性もあるので、術後のトラブル防止のために術前に確認しておくことも重要です。

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。

長谷川 裕基先生長谷川先生

患者さんからは「白内障手術は簡単なのでは?」と言われることもありますが、決して簡単には考えない方が良いと思っています。正しい知識を持って、医師や医療スタッフとのお話にしっかり耳を傾けて頂き、ご納得頂いて手術を受けることが大切です。

編集部まとめ

白内障手術は、安全かつ効果的な治療法として確立されていますが、決して「簡単な手術」ではありません。術中や術後に気をつけなければならないことや、手術に伴うリスクもあります。しっかりと説明と受けた上で、信頼できる医療機関で手術するようにしましょう。

医院情報

はせがわ眼科

はせがわ眼科
所在地 〒175-0094 東京都板橋区成増2-14-5 メディパーク成増 2F
アクセス 東武東上線 「成増駅」南口より徒歩0分
診療科目 眼科一般、形成眼科

この記事の監修医師