白内障の進行に気付けるサインはありますか?
安藤眼科クリニックの安藤先生によると、誰にでも起こりえる「避けられない目の病気」のひとつが白内障とのこと。はたして、いつごろから発症することが多いのか。どのような症状なのか。発症を遅くすることはできるのか。さまざまな疑問を投げかけてみた。
監修医師:
安藤 靖恭(安藤眼科クリニック 院長)
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部眼科入局、同眼科専任講師、北里研究所病院眼科部長などを経た2017年、東京都練馬区に「安藤眼科クリニック」開院。慶應義塾大学病院やその関連病院で体得した診療・研究内容を、地域医療に生かしている。医学博士、日本眼科学会認定眼科専門医。日本眼科手術学会、日本眼炎症学会、日本緑内障学会の各学会所属。
景色が「まぶしく」感じられたら、白内障の兆しかも
編集部
まず、白内障という目の病気について教えていただけますか?
安藤先生
目のレンズにあたる「水晶体」が白く濁る病気です。主な原因は老化で、80歳までには、ほとんどの方が発症するといわれています。
編集部
レンズが白く濁ることで起きる不具合は?
安藤先生
水晶体の透明度が失われるので「まぶしく感じる」「視野がかすむ」「物がダブって見える」「メガネが合わなくなる」ことなどが挙げられます。なぜまぶしく感じるかというと、目に入ってきた光が、濁りのせいで乱反射を起こし、眼球の中で散乱するのです。正常な状態なら当たらない網膜にも光が届いてしまうため、まぶしく感じてしまいます。
編集部
上記が発症のサインと考えていいのでしょうか?
安藤先生
そういっていいと思います。よく「水晶体」の濁りを卵白に例えることがあります。生の卵白は、透明ですよね。これが初期の状態で、加熱してだんだん白くなった卵白は末期ということです。
編集部
80歳までには、誰でも発症するのですよね?
安藤先生
老化現象ですから、そうなります。程度の差はあるものの、白髪と同じようなイメージを持っていただければわかりやすいでしょうか。早い方で50歳くらいから始まります。
日差しを浴びるとレンズが濁る白内障の仕組み
編集部
水晶体が白く濁るのはどうしてなのでしょう?
安藤先生
主に加齢ですが紫外線の影響も考えられています。水晶体は紫外線を浴びると酸化して、白く濁ってしまうのです。したがって、住んでいる地域や生活環境との関連性が報告されています。日差しを浴びやすい環境ほど、白内障の発症率が顕著ということです。
編集部
日差しが原因だとすると、サングラスは予防に有効でしょうか?
安藤先生
有効です。ほか、食生活で抗酸化物質をとることも推奨されています。ビタミンCやアントシアニンの含まれている食物がいいですね。
編集部
予防に有効な食べ物を具体的に教えてください。
安藤先生
ビタミンCは野菜や果物に多く含まれています。アントシアニンが多いのは、端的に言うと「紫色の食べ物」です。ベリー系各種、アズキ、紫イモなどでしょうか。ほか、サプリメントでも摂取することができます。
編集部
誰でも発症するとなると、予防が重要な意味を帯びてきそうですね。
安藤先生
そうですね。夏の日焼けなどは避けたほうがいいでしょう。他方で、避けられないという性質もあります。サングラスや食べ物などでも、完全に防げるわけではありません。
点眼薬や手術による治療が可能
編集部
白内障になってしまったら、どのような治療方法があるのでしょう?
安藤先生
軽度な場合は、お薬で進行を抑制します。重度な場合は、超音波で濁った水晶体を取り除き、直径6ミリほどの眼内レンズで補います。なお、眼内レンズによる治療は保険の適用が可能です。費用は3割負担を前提に、片目で約5万円といったところです。入院を希望する場合は、さらに1万円前後の費用がかかるでしょう。
編集部
「眼内レンズ」について詳しく教えてください。
安藤先生
保険の適用ができるのは単焦点レンズで、遠くか近くのどちらかにピントを合わせるかを選択する必要があります。どちらにもピントの合う遠近両用の多焦点レンズは自由診療になります。多焦点レンズは「遠近のピントがあわせやすい」一方、「コントラストの不明確さ」や「暗い場所での見にくさ」を伴うことがあります。多焦点レンズの場合、目に入った光が、遠近の2方向に分散されてしまうからです。
編集部
白内障を放置しているとどうなりますか?
安藤先生
見えづらい状態が続くほか、緑内障や目の中の炎症を併発することも考えられます。白内障だけにととどまっていたとしても、重篤化するにしたがって、手術が難しくなってきます。用いる超音波の量が増えると、他の目の組織を痛めてしまいかねないからです。
編集部まとめ
白内障は主な原因は加齢で、早い方で50歳くらいから、そして80歳までにはほとんどの方が発症してしまいます。目のレンズにあたる「水晶体」が白く濁ってしまうことで「まぶしく感じる」「視野がかすむ」「物がダブって見える」「メガネが合わなくなる」ことなどが症状としてみられます。以上のようなことが発症のサインとみていいでしょう。また、白内障そのもので失明することはないものの、緑内障などを併発すると、話が変わってきそうです。「どうせ老眼だろう」「いまさらどうしようもない」などとあきらめず、できることから取り組みましょう。その第一歩が、眼科の受診です。まずは自分に何が起こっているのかを把握してみてはいかがでしょうか。
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