日本人は眼圧が正常範囲でも「緑内障」になりやすいって知ってた?【医師解説】
40歳以上の日本人17人に1人が緑内障と言われ、年齢が上がるほどその割合は上昇するそうです。近視の人や緑内障の家族歴がある人もなりやすい傾向だと、神楽坂みなみの眼科の南野先生は言います。詳しく教えてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【「緑内障」を眼科医が基礎から解説 白内障との違いは? 症状・治療・手術について知る】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
南野 麻美(神楽坂みなみの眼科)
編集部
「緑内障」とはどんな病気ですか?
南野先生
目の中の網膜に写った映像は、視神経から脳に伝えられることで、私たちはそれを視認しています。緑内障はその視神経が傷つくことにより視野(見える範囲)が狭くなっていく病気です。
編集部
どんな症状が出るのですか?
南野先生
隅角(ぐうかく/角膜の内側と虹彩で囲まれた部分)が広い「原発開放隅角緑内障」、眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障では早期~中期にかけては自覚症状がほとんどありません。なぜなら脳には、視野が欠けてもその部分を補う機能があるからです。また両方の目で見ているので、片目の視野が欠けても、もう片方の目で補ってしまいますし、見えない部分があっても目を動かせば見えてしまいます。しかも緑内障は基本的にゆっくり進んでいくので変化がわかりにくく、かなり悪くなるまで発見しにくいのです。
編集部
発見が遅れるとどうなるのですか?
南野先生
隅角が狭い原発閉塞隅角緑内障やその前駆病変(病気になる前に表れる異常)では、眼圧が急激に上昇する急性緑内障発作を起こすことがあります。この場合は眼痛、頭痛、視力低下、霧視(ぼやけて見える)、虹視症(光の周囲に虹が見える)、充血、悪心、嘔吐などの症状があり、適切な治療をしないと数日でかなり視神経が障害されてしまいます。
編集部
なるほど。単なる見え方の問題では済まないのですね。
南野先生
はい。ほかの目の病気や全身の病気、薬物が原因となって眼圧が上昇する「続発緑内障」も、進行が速いことも多いため、早期に原因を診断し、原疾患を治療する必要があります。そのほか、目の発達異常や小児期に発症した病気が原因となる「小児緑内障」もあります。角膜(黒目)径の拡大、角膜の濁りがあれば眼科受診が必要です。
編集部
緑内障の原因はなんですか? どんな人が緑内障になりやすいのでしょうか?
南野先生
目の中は、房水という液体の流れ具合により一定の圧が保たれています。これを「眼圧」といい、日本人の平均眼圧は14.5mmHgで正常範囲は10~20mmHgです。眼圧が高いと視神経が圧迫されて傷つくため、視神経が減少し緑内障になります。さらに、眼圧が正常範囲でも視神経が弱いと緑内障になります。実は、日本人ではこの「正常眼圧緑内障」が、一番多いのです。
編集部
どんな人が緑内障になりやすいのでしょうか?
南野先生
40歳以上の日本人の17人に1人が緑内障と言われていて、この割合は年齢が上がるとさらに増加していきます。あとは、近視の方や家族に緑内障の方がいらっしゃる場合も、緑内障にかかりやすいです。
編集部
似た名前ですが、白内障とは違うのですか?
南野先生
目の中のレンズ(水晶体)が、主に加齢によって濁る状態が白内障です。水晶体が濁ることで、まぶしさを強く感じたり、ピントが合いづらくなったり(視力低下)します。白内障は老化によって出てきますので、人により早い・遅いはありますが、誰もがかかります。しかし、緑内障と違って白内障はある程度進行しても、手術により視力を回復させることができます。