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「咽頭がんの生存率」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】

 更新日:2024/02/15
「咽頭がんの生存率」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】

がんと聞くと、生存率を気にされる方が多いのではないでしょうか。咽頭とは、のどの奥から食道までの食べ物や空気が通る部位で、咽頭にできるがんを咽頭がんといいます。咽頭がんの生存率は病期やがんの場所によって異なるのが一般的です。

病期が進行すればするほど、生存率が悪化します。早期発見のために、咽頭がんの症状5つと原因を知っておくと安心です。

咽頭がんの治療法や再発の有無についてもご紹介します。 ご自身の健康を守るために、正しい知識を身につけておきましょう。

渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

頭頸部に生じる咽頭がんの症状

頭頸部に生じる咽頭がんの症状は5つです。
咽頭がん初期は自覚症状がみられない方が多いですが、早期発見できるかどうかは生存率にも関わります。普段と違うと感じたら医療機関を受診しましょう。

のどの違和感

咽頭がんでは、のどの異物感やいがらっぽさなどの違和感が出る可能性があります。風邪ではないのにのどの違和感が続く場合は、早めに病院を受診してください。
上咽頭がんでは、首のしこりがみられる方もいらっしゃいます。上咽頭は頸部リンパ節が近く、リンパ節に転移により、しこりが発生するためです。

嗄声

嗄声(させい)とは声がかすれることです。下咽頭と呼ばれる部分にがんが発生すると、嗄声が起こります。声帯を調整する神経へとがん細胞が及ぶためです。
下咽頭は喉頭に近く、下咽頭がんと診断された時には、喉頭に広がっている可能性もあります。

誤嚥

咽頭部分の粘膜が、がん細胞によって隆起するのが咽頭がんの特徴です。そのため、飲み込みにくさから誤嚥が生じる可能性があります。
通常であれば食べた物は咽頭を通り、食道に入ります。しかし、隆起したがん細胞が飲み込みにくくし、食べ物が気管に入って誤嚥を起こしてしまうのです。
通常、誤嚥すると咳き込むなどの症状がでます。しかし、むせが起こらずに気管の奥に食べ物が入ると、肺炎を引き起こすかもしれません。

飲み込みにくさ

咽頭がんは咽頭部のがん細胞が隆起するため、飲み込みにくい症状が出るかもしれません。中咽頭がんや下咽頭がんの際に、飲み込みにくさを訴える方が多いです。

発声しにくさ

咽頭部のがん細胞が隆起することにより、発声しにくいと感じる方もいらっしゃいます。思い当たる原因はないのに、普段と違う声だと指摘された場合や思った通りの音がでないなどの症状があれば、病院を受診しましょう。

咽頭がんの生存率

咽頭がんと診断されると気になるのは生存率でしょう。がんの病期によって生存率が異なるため、3つの場合に分けてご紹介します。
ここでご紹介する咽頭がんの生存率は、5年全生存率です。がんの診断から5年後に生存が確認できた割合を5年全生存率といいます。

限局している場合

咽頭にできたがん細胞が限局的で、リンパ節への転移がない病期をI期(早期がん)といいます。部位による5年全生存率は、以下の通りです。

  • 上咽頭がん:76.9%
  • 中咽頭がん:79.4%
  • 下咽頭がん:88.3%

初期の咽頭がんは、5年全生存率が高いといえるでしょう。のどの違和感や飲み込みにくさなどの症状がある場合は、早めに病院を受診してください。

所属リンパ節転移している場合

咽頭部にがん細胞があることに加え、所属リンパ節に転移している病期をII期・III期といいます。II期とIII期は、がんの大きさなどで判断されます。III期の場合の5年全生存率は以下の通りです。

  • 上咽頭がん:89.3%
  • 中咽頭がん:72.2%
  • 下咽頭がん:78.3%

III期の場合、5年生存率は以下のように報告されています。

  • 上咽頭がん:77.0%
  • 中咽頭がん:71.0%
  • 下咽頭がん:72.3%

遠隔転移している場合

咽頭がんが遠隔転移している場合をIV期といいます。遠隔転移とは、がん細胞が血管やリンパ節を通り、他の臓器や器官に移動して増殖することです。IV期の場合、5年全生存率は以下のように報告されています。

  • 上咽頭がん:50.7%
  • 中咽頭がん:56.5%
  • 下咽頭がん:37.4%

ここで紹介している5年全生存率は、何らかの治療をした方が対象のデータです。治療には手術・放射線治療・投薬治療などが含まれるため、病院ごとに公表しているデータと違うかもしれません。
受診する病院での生存率データを知りたい場合は、病院のホームページや問い合わせにてご確認ください。

咽頭がんの発生原因

咽頭がんの発生原因は、過度の飲酒や喫煙です。男性の喫煙者は非喫煙者と比べて、咽頭がんの罹患リスクは2.4倍になると報告されています。男性で週1回以上飲酒をする方は、非飲酒者と比べて咽頭がんの罹患リスクは1.8倍です。
さらに、喫煙者で週に150グラム以上のエタノールを摂取する飲酒量の方は、非喫煙・非飲酒の方と比べて咽頭がんの罹患リスクが4.1倍になります。喫煙・飲酒をする女性も同様に、咽頭がんの罹患リスクが高まるという報告があるのです。
喫煙と飲酒をしていなくても咽頭がんになる可能性はあります。咽頭がんの発生原因は飲酒・喫煙だけではないからです。上咽頭がんはEBウイルスの感染、中咽頭がんはパピローマウイルス(HPV)の感染の関与があるといわれています。

咽頭がんの治療方法

咽頭がんの主な治療方法は2つです。咽頭がんの治療は、飲み込みや発声の機能が温存できるかが重要になります。
治療方法や副作用について疑問があれば、主治医とよく相談しましょう。

手術

手術は、がん化した部位を取り除くために行われます。中咽頭がん・下咽頭がんに対して検討されるのが一般的です。上咽頭がんは手術が難しい部位のため、手術を避ける病院が多いようです。
中咽頭がんは経口的切除といって、口から器具を入れてがんを切除します。経口的切除は、手術後の障害が軽度です。しかし、がんの範囲・進行度によっては、舌・喉頭・下咽頭も切除する場合があります。頸部リンパ節に転移がみられる場合、リンパ節を切除する頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)が行われるかもしれません。
下咽頭がんに対しては、経口的切除術の他に、以下のような手術方法があります。

  • 喉頭温存・下咽頭部分切除術
  • 喉頭全摘・下咽頭部分切除術
  • 下咽頭・喉頭全摘出
  • 下咽頭・喉頭・頸部食道全摘術

がんの広がり具合によって、温存する部位と切除する部位が決められます。喉頭・下咽頭・食道は、発声や飲み込みに重要な器官です。
可能な限り温存する方向で手術方法が検討されますが、気になる点は納得がいくまで主治医と相談してください。

化学療法

がんに対する化学療法では、抗がん剤や化学物質が使用されます。がん細胞の増殖を抑えたり、破壊したりするのが目的です。化学物質が全身を巡るため、吐き気・貧血・脱毛・免疫機能の低下が副作用として現れるかもしれません。
咽頭がんに対する化学療法は、放射線治療と合わせて行われる場合が多いです。手術で咽頭周囲の機能が失われるのを防ぐために、化学療法や放射線治療が検討されます。手術と化学療法はどちらもメリット・デメリットがあるため、主治医とよく話し合ってみてください。

咽頭がんの生存率についてよくある質問

ここまで咽頭がんの生存率・治療法などを紹介しました。ここでは「咽頭がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

咽頭がんは完治しますか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

咽頭がんの5年全生存率は、早期の場合でも80〜90%程度です。この中には完治した方も再発する方もいらっしゃいます。咽頭がんが再発するのは、治療後2年以内が多いです。治療によりがんを全て取り除くことができれば、再発リスクは低くなります。しかし、手術を行っても全て取り除けていない場合や他の臓器に転移している場合、再発します。咽頭がんの治療が終了しても、治療後2〜5年以内は経過観察としての受診が必要です。治療後の合併症や転移の有無を確認する目的があります。

咽頭がんは転移しますか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

咽頭がんは頸部リンパ節に転移するケースが多いです。咽頭がんと診断された時、すでに頸部リンパ節への転移が認められる方もいらっしゃいます。リンパ節に転移したがんは、リンパ管を通って他の臓器に転移する可能性が高いです。そのため、頸部リンパ節に転移している場合はリンパ節の切除が検討されます。また、咽頭部に近い、喉頭・口腔内・食道に転移するケースがあります。

編集部まとめ

咽頭がんについて、原因・生存率・治療法についてご紹介しました。咽頭がんの初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると、のど周囲の違和感や発声しにくさ・飲み込みにくさなどがみられます。

咽頭がんの5年全生存率は、部位やステージによって異なります。初期に発見ができ、治療が行われると生存率が高くなるため、違和感を覚えたらすぐに受診しましょう。

治療方法は手術や化学療法が検討されます。咽頭がんは発声・飲み込みに大きく関わる部位なので、どの程度の機能を温存可能かどうかを主治医とよく相談してください。

咽頭がんと関連する病気

「咽頭がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

喉頭がんの症状は嗄声や飲み込みにくさなど、咽頭がんの症状と似ています。食道・口腔・喉頭は、咽頭から近いため、転移している場合があるのです。

咽頭がんと関連する症状

「咽頭がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • のどの痛み
  • 飲み込む際の違和感
  • のどの出血
  • 嗄声・声の変化
  • 誤嚥
  • 舌の動かしにくさ
  • 口・のど・首のしこり

のどの痛みや違和感は風邪でも起こりますが、長く続く場合や出血を伴う場合は早めに病院を受診しましょう。

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