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「嵌頓痔核」になりやすい生活習慣を医師が解説 再発防止に向けた改善ポイントとは

 公開日:2025/12/09
嵌頓痔核
前田 孝文

監修医師
前田 孝文(医師)

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京都府立医科大学卒業。その後、国内外複数の病院の勤務を経て、2012年より「辻仲病院柏の葉」にて骨盤臓器脱専門外来・便秘外来を担当、現在は臓器脱センター医長として勤務。
日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本大腸肛門病学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医(一般外科:大腸)、消化器癌外科治療認定医身体障害者福祉法指定医(ぼうこう又は直腸機能障害、小腸機能障害)。

嵌頓痔核の概要

嵌頓痔核(かんとんじかく)とは、肛門の奥にある直腸と肛門の繋ぎ目の「歯状線」より内側にできる「内痔核」が肛門の外に飛び出して戻らなくなり、強い痛みを伴うものを指します。

痔核は「いぼ痔」とも呼ばれ、歯状線の内側にできる「内痔核」と、歯状線の外側にできる「外痔核」に分けられます。いずれも直腸や肛門周囲の毛細血管の血流が悪くなってこぶ(静脈瘤)ができたり、肛門の筋肉や周囲の組織が弱くなったりして発症します。

さまざまな要因によって内痔核の血流が悪くなると、血液の塊(血栓)ができたりリンパ液の流れが滞ったりして大きくなり、肛門の外へ飛び出すことがあります。肛門の外へ飛び出した痔核は肛門の筋肉(肛門括約筋)に締め付けられてさらに血流が悪くなることで、強い痛みを伴う嵌頓痔核が生じます。
嵌頓痔核は、血流障害によって肛門周囲の組織まで広く障害され、最終的には広範囲に血栓や潰瘍を認めることもあります。

嵌頓痔核は痛みが非常に強いため、痛みを迅速に軽減させる目的で外科的手術が選択されることもあります。薬物療法を行なって症状が落ち着いてから手術することもありますが、症状の程度が強い場合などには緊急手術が行われるケースもあります。

嵌頓痔核

嵌頓痔核の原因

嵌頓痔核は内痔核が悪化し、肛門の外に飛び出して肛門括約筋に締め付けられることで生じます。

肛門は心臓よりも下に位置するため、血液が滞りやすい部位です。長時間座っていることで肛門周囲の血流が悪くなり、静脈瘤ができて痔核を生じることがあります。また、重いものを持ったり排便時に強くいきんだりすると、肛門周囲に過剰な圧がかかって痔核ができることもあります。さらに、下腹部の冷えやアルコールの多飲、香辛料の過剰摂取などによっても発症するケースもあります。妊娠中や出産時なども肛門周囲の血流が悪くなることにより、痔核が生じるケースもあります。

これらの原因によって生じた内痔核がさらに血流が悪くなったり、激しい怒責をかけた後などに嵌頓痔核を呈することがあります。

嵌頓痔核の前兆や初期症状について

嵌頓痔核の初期症状は、肛門周囲に生じる突然の強い痛みです。
もともとできていた内痔核が肛門括約筋に締め付けられ、血流が悪くなって膨らむことにより生じます。痔核は肛門内に戻らなくなり、飛び出したままの状態になります。

症状が進行すると、痛みに加えて血栓や潰瘍、壊死などを伴います。痔核を覆う皮が破れると出血することもあります。

嵌頓痔核の検査・診断

嵌頓痔核の検査では、問診や肛門の視診などが行われます。問診では、これまでの生活習慣や病歴のほか、自覚症状などを確認します。視診では、飛び出した痔核や肛門周囲の皮膚の状態などを観察します。

一般的に、痔核の診断では肛門の内部を観察する「肛門鏡」と呼ばれる器具を用いることがあります。しかし、嵌頓痔核では肛門の痛みが強く、肛門鏡を挿入できないケースが多いため、主に視診や触診などによって診断します。

痔核が飛び出して元に戻らなくなり、激しい痛みや患部の潰瘍などを認める場合に嵌頓痔核と診断されます。

嵌頓痔核の治療

嵌頓痔核では、一般的に薬物療法や外科的手術が選択されます。

薬物療法では、坐薬や軟膏などがあり、強い痛みを和らげる局所麻酔薬や、痛みや腫れを和らげるステロイド薬などが用いられます。

薬物療法の効果が十分に得られなかったり、症状の程度が強かったりする場合には、外科的手術を行います。

嵌頓痔核の外科的手術では「結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)」が広く選択されています。結紮切除術は、麻酔を使用して痔核を切除し、さらにその根本を縛って切除し、出血や再発を予防する手術です。

結紮切除術は再発のリスクが少ない一方、術後に痛みを認めることがあります。また、治療を受けたとしても、術後に痔核を招くような生活習慣の乱れがあれば再発する可能性があります。再発を防ぐためには術後の生活習慣を改善させることが重要です。

嵌頓痔核になりやすい人・予防の方法

長時間座り仕事をする人やアルコールを常飲する人、重い荷物を持つことが多い人、腹部に冷えがある人、便秘が頻繁に起こる人などは、嵌頓痔核になりやすいといえます。

嵌頓痔核を予防するためには、生活習慣を見直すことが重要です。

特に便が固くなっていきむことが多かったり、便座に座る時間が長かったりすると肛門周囲に負担がかかり、痔核を発症しやすくなります。便秘を認める場合は、排便コントロールに努めることが重要です。水分を十分に摂取し、食物繊維などを積極的に取り入れると良いでしょう。

これらの方法でも便秘が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。症状に応じ、下剤などの薬剤を処方してもらい便秘をコントロールすることが重要です。

また、香辛料やアルコールも痔核を悪化させる要因になります。香辛料やアルコールは過剰に摂取しないよう注意し、暴飲暴食もしないよう心がけましょう。

長時間座って作業する仕事をしている場合は、作業の合間に立ち上がったり、少し歩いたりすると良いでしょう。

腹部が冷えている場合は、肛門周囲の血流が悪くなって血栓ができやすくなります。入浴によって体を温めたり、マッサージをしたりして血流をよくしましょう。嵌頓痔核では、入浴によって患部を温めることで痛みや腫れを和らげる効果も期待できます。暖房器具や使い捨てカイロなどを用いることも有効です。

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