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『ステージ4の子宮体がん』闘病体験をYouTubeで発信する理由「検診を受けないのは時間がもったいない」

 更新日:2024/02/21
大量出血と吐き気は「ステージ4の子宮体がん」辛い日々を乗り越えられた理由とは

初経から生理不順、でも元気だから「自分は病気にならない」と思っていたら、大量出血と強い吐き気の末に「ステージ4の子宮体がん」が発覚したヒダノさん。ご自身のYouTubeチャンネルでは、子宮体がんの経緯を細かく記録・発信することで多くの人に勇気と元気を与えています。「時間がもったいないから、定期的に検診を受けてほしい」と語る理由はなんでしょうか? 「子宮体がん」発症の経緯から治療、現在の活動について詳しくお話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年1月取材。

ヒダノ マナミさん

体験者プロフィール
ヒダノ マナミ

プロフィールをもっと見る

新潟県在住の36歳。29歳の時に子宮体がんステージ4と告知。地元新潟でAYA世代コミュニティの副代表。YouTubeチャンネルでは、子宮体がんの経験をもとに多くの人へ勇気を与えるメッセージを発信している。(YouTube / Instagram

鈴木 幸雄

記事監修医師
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

大量の出血と強い吐き気 異変は一年前から始まっていた

大量の出血と強い吐き気 異変は一年前から始まっていた

編集部編集部

ヒダノさんの病気が発覚するまでの経緯を教えてください。

ヒダノ マナミさんヒダノさん

中学生の時に生理が初めてきて以来、大人になってもずっと生理不順でしたが、当時は生理不順を気にせずに過ごしていました。27歳の時に薄い茶色の出血が毎日あったのですが、もともと生理不順だったこともあって大丈夫だろうと思い、1年ほど放置していました。結婚をきっかけに子どもが欲しいと思い、産婦人科を受診した際に薄い血について相談したところ、漢方薬で対処することになりました。ですが、その時同時に子宮の中にポリープを発見したんです。そこで子宮頸がん検査をしたのですが、異常なしだったので経過観察でした。

編集部編集部

そうなのですね。それから体調にどのような変化がありましたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

通院を始めて半年ほど経ったある時、生理のタイミングで突然の大量出血と強い吐き気に襲われました。生理が終わってある程度落ち着き、その一カ月後にまた生理が来ると、再び大量出血と嘔吐です。夜寝ていても途中で目が覚めるほどの出血感覚と吐き気が起こり、さすがにおかしいと思って救急車で病院へ行きました。その後、別の病院を受診し、その病院の先生から「すぐに大学病院へ向かうように」と指示され、言われるがまま大学病院に向かい、検査を受けると「念のために入院しましょう」と言われました。

編集部編集部

かなりバタバタとされたのではと思います。それから大学病院でどのようなお話がありましたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

当時は貧血気味だから入院した方が良いといわれ、5日間ほど入院しました。退院後、先生から電話があり、家族と一緒に来るように言われました。そして、先生から「あなたは子宮体がんで、ステージ2もしくは4です。手術をします」と告げられました。体調がいつもと違うと感じてから一年以上経ってからの出来事でした。

編集部編集部

自覚症状について教えてください。

ヒダノ マナミさんヒダノさん

毎日続く茶色い出血から始まり、大量出血と強い吐き気が目立った自覚症状です。今振り返ると、当時はすごく疲れやすく、例えばショッピングセンターなどで歩いて買い物をしても疲れて、ちょっと座って休んでいました。

「自分は大丈夫」と思い込んでいた。手術までの辛い日々

「自分は大丈夫」と思い込んでいた。手術までの辛い日々

編集部編集部

診断を受けた時、どのようなお気持ちでしたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

自分はがんのような大きな病気をするとは思っていなかったです。「自分は大丈夫」と思い込んでしまったばっかりに、ショックが大きかったですね。

編集部編集部

では、診断を受けてからどのように治療を進めていくと言われましたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

いろいろあり手術は一カ月後になりました。その一カ月はとても辛かったですが、病気が急激に進行することはなく、普段通り仕事もしていましたね。

編集部編集部

お仕事に戻られたのですね。特に体調は問題なかったのでしょうか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

そうですね、告知前とそこまで体調は変わりありませんでした。一方で、やっぱり気持ちの面は落ちていたので、裏方の仕事をさせてもらっていました。手術を待っている間の一カ月間が辛く、嘔吐や蕁麻疹などもあって明らかにストレスを感じていましたね。あえて仕事に行って紛らわせていました。

編集部編集部

確かに、病気と分かっていながら治療に着手できないのは辛かったと思います。では、それからどのように手術を迎えましたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

まず、手術の際に大量出血が起こる可能性もあるので、それに備えて自己血採血というものを週に1回、それを3週分行いました。それから、がんの場所をより明確にするためにPET検査、CT検査、MRI検査をして、手術の方法を先生と相談しました。背中には注射・点滴をしましたし、肺と心臓の検査もして当日の手術を迎えました。

編集部編集部

すごいいろんな準備をされたのですね。

ヒダノ マナミさんヒダノさん

準備の大変さよりもメンタル面が辛かったので、乗り越えられた気がします。注射が大の苦手なので、自己血採血をするときに主治医に一緒にいてもらっていました(笑)

術後の抗がん剤治療…乗り越えられたのは周囲の人々に支えられたから

術後の抗がん剤治療…乗り越えられたのは周囲の人々に支えられたから

編集部編集部

手術後はいかがでしたでしょうか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

手術後一番辛かったのが「水分禁止」で、1日だけではありましたが水分を摂ってはいけない期間がありました。もちろん喉は乾くので、水分を含んだガーゼを含むという初めての経験をしました。術後2日目に水をやっと飲めたときは感動しましたね。また、手術後は身体に管だらけで、うがいもしたいし鼻水も出るのですが、動けなくて辛かったですね。

編集部編集部

「管だらけ」というのは?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

背中には痛み止めの点滴、排尿のための管、鼻には酸素マスク、腹部左右にはドレーン、足には血栓予防の管がついていました。もちろん、術後経過につれてだんだん管の数は減っていきましたが、お腹が痛かったです。動こうとしても動けないものの、腸閉塞予防のために動きましょうと言われて頑張っていたら、だんだん動けるようにもなりましたね。

編集部編集部

大変でしたね…退院後は抗がん剤で治療されたと思いますが、副作用などありましたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

私の場合はTC療法を6サイクルしました(3週間に1回、うまくいけば半年で終わるくらいのペース)。1サイクルの中で変化が大きく、初日は吐き気止めの影響で吐き気はありませんが、薬をアルコールに溶かして投与するので、顔が赤くなります。それから次第に吐き気が出て、投与から4日目が吐き気・むかむかのピークに。5日目は便秘になり、腸閉塞が頭をよぎって怖くて酸化マグネシウムを飲んで対応します。7日目になると体調が回復して、便秘も解消される。このような流れを、6サイクルしました。ほかには、そこまで強くないものの味覚障害やしびれ、脱毛が徐々にありました。卵豆腐が苦いと感じたときはびっくりしましたね。

編集部編集部

今の体調はいかがでしょうか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

今は卵巣を摘出した影響で骨密度が80歳超え、骨粗鬆症になっています。ですが、今のところ骨折もなく、そのほかの体調も問題なく生活できています。

編集部編集部

辛い時期だったと思いますが、闘病中の心の支えは何でしたか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

当時はコロナ禍ではなかったのでいろんな人がお見舞いに来てくれました。少しでも病気のことを考える時間が減って本当に心の支えになりました。あとはSNSで出会ったがん患者さんたちとの情報交換だったり、オフ会での交流だったりでいろんな人から笑顔をもらっていました。わたしはずっと周囲の人に救われていましたね。

編集部編集部

ヒダノさんはYouTubeで発信もされていますが、病気のことを動画で配信する理由は何なのでしょうか?

ヒダノ マナミさんヒダノさん

そもそも「がんになりました」と顔を出して公表はあまりしないということを知らなくて、やってしまったというほうが近いですね。私の経験が役に立つのであればそれでいいと思い、ずっと発信を続けています。YouTubeでは毎週ライブ配信をしていますが、視聴者さんからコメントがよく来ます。「不安に思っている時間も結果は変わらないから、なるべくそれを考えない時間を増やすと心が落ち着きますよ」「周囲に頼ってくださいね」とよく伝えています。

編集部編集部

この記事を読んでいる方へ、メッセージをお願いします。

ヒダノ マナミさんヒダノさん

不正出血や、もしかしてがんかも? と思ったら、怖がらず早めにお医者さんに行って検診してください。仮にがんだった時に治療にかかる時間を考えると、早く見つかればもっと仕事もできますし、子ども・家族・自分のための時間も作ることができます。私のように進行してからの治療はお金も時間もかかるので、定期検診を受けて心と時間とお金の余裕を作ってください。そして告知を受けたばかりの方は、不安と恐怖でいっぱいと思います。でも、ステージ4のがんになった私が今こうして笑顔でいれるということを頭の片隅にいれて治療を続けてください。自分の時間を大事にしてください。人生は有限なので、後悔しない人生を生きていきましょう! 応援しています。

編集部まとめ

体の異変はあれど「自分は大丈夫」と思っていたら、子宮体がんを発症し、辛い治療を乗り越えて現在は元気に活躍されているヒダノさん。「自分と向き合う時間を大切にしてほしい」理由の裏には、時間が有限であることを病気から学んだからだと思います。定期的に検査を受けることもまた、自分と向き合うことの一つではないでしょうか? 異変があれば、遠慮せずに医療機関へ相談に行くことの大切さを忘れないようにしましょう。


▽ヒダノさんへのインタビュー動画はこちら


この記事の監修医師