「胃がんの前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!

Medical DOC監修医が胃がんの初期症状・原因などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
※この記事はMedical DOCにて『「胃がんの手遅れとなる自覚症状」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃の内側の粘膜から発生する悪性の腫瘍(しゅよう)のことです。胃がんは現在、臓器別の死因の3位で、罹患数は大腸がん、肺がんに次いで3番目に多いがんです。胃がんの進展には「直接浸潤」と「遠隔転移」の2種類があります。「直接浸潤」では粘膜に発生した胃がんは、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。胃がんが一番外側の漿膜まで達すると、隣接する大腸や膵臓、肝臓や横隔膜に直接浸潤をきたすことがあります。また、がん細胞がおなかの中にばらまかれることもあり、これが腹膜播種(ふくまくはしゅ)というものです。「遠隔転移」ではがん細胞が血液やリンパの流れに乗って離れた臓器に転移を起こすことを指します。遠隔転移には肝臓、肺、脳転移などがあります。
胃がんの前兆となる初期症状
胃がんの初期症状はほとんど出ないことが多いです。早期胃がんではほとんどの方に症状がありません。胃がんの前兆の症状は、胃がんの原因になる胃炎の症状とも類似します。胃もたれや食欲不振、体重減少、黒色便など、気になる症状がある時は消化器内科を受診して、医師の診察や血液検査、胃カメラの検査を受けることをおすすめします。
胃もたれ・胃部不快感
胃がんがあることで胃もたれや胃部不快感がでることがあります。その他にも吐き気や痛みを伴うこともあります。これらの症状は、胃がんだけでなく胃炎や逆流性食道炎などでもみられる症状です。症状が気になった場合にはお近くの消化器科を受診しましょう。
食欲不振・体重減少
胃がんがあると食欲が減って体重が落ちることがあります。また、がんによってエネルギーが過剰に消費され、食事は摂れていても体重が減る場合もあります。とくに、半年〜1年で体重の5%以上の体重減少がある場合には要注意です。このような症状がある場合には一度内科を受診することをおすすめします。
黒い便が出る
胃がんがあると粘膜から出血しやすくなります。胃から出た血液が胃酸にさらされると色が黒くなり、便の色が黒くなります。胃がんの他にも胃潰瘍(かいよう)でも同じような症状が出ます。そのような症状が出た場合には早急に消化器科を受診しましょう。
胃がんの原因
ここでは胃がんのリスクを上昇させる原因を説明します。まずは胃がんの原因になるものを理解して、対策ができるようにしましょう。
ピロリ菌の感染
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃の酸を中和しながら胃に住み着く細菌です。感染陽性者の胃がんリスクは、陰性者の5.1倍と言われています。ピロリ菌によって胃の粘膜に炎症が起こり、萎縮性(いしゅくせい)胃炎を起こします。この萎縮性胃炎が進むと胃がんの発生要因になります。
塩分の多い食事
世界保健機関(WHO)や日本人を対象とした多くの研究で塩分の多い食事が胃がんリスクであることが示唆されています。塩分の多い食事で胃炎が起こると、発がん物質の影響が出やすくなり、またヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌の感染も起こりやすくなることが知られています。特に、日本人に馴染みのある味噌汁や漬物、魚卵、魚、塩辛などの食品には多くの塩分が含まれており、食べる頻度には注意が必要です。
喫煙
喫煙によって胃がんのリスクが1.6倍上昇すると言われています。喫煙は肺がんを始め、喉頭がんや食道がん、膵臓がんなど、さまざまながんの危険因子です。また受動喫煙によって喫煙者本人だけでなく、まわりの人のリスクも上がってしまいます。
過度の飲酒
日本人男性において、1日一合以上の飲酒(エタノール摂取量として1日23 g以上の飲酒)が胃がん罹患リスクを有意に高めることがわかっています。エタノール摂取量23gは、缶ビール500 mL 1本または日本酒1合に相当します。それ以上の飲酒は胃がんの原因になる可能性があります。
すぐに病院へ行くべき「胃がんの手遅れとなる自覚症状」
ここまでは胃がんの手遅れとなる自覚症状などを紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
黒色の便が出る場合は、消化器科へ
黒色便は胃や十二指腸などの消化管からの出血を示唆します。胃がんや胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの可能性があります。腹部のCT検査や胃カメラや大腸カメラができる大きな病院を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「胃がん」のセルフチェック法
- ・ふらつきや立ちくらみなどの貧血症状がある場合
- ・黒色便の症状がある場合
「胃がんの手遅れとなる自覚症状」についてよくある質問
ここまで胃がんの手遅れとなる自覚症状などを紹介しました。ここでは「胃がんの手遅れとなる自覚症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性が胃がんを発症している場合、どのような初期症状が現れますか?
齋藤 雄佑 医師
胃がんにおいて、女性だけにでる特有の症状はありません。初期症状は胃もたれや胃部不快感、胃痛、貧血などです。ただし、女性の場合は月経によって、もともと貧血の方が多いため、発見が遅れることがあります。また、注意したいのが「スキルス胃がん」といって胃がんの中でも進行が早く、予後が悪いものがあります。男女比は胃がん全体では高齢の男性が多いのに対し、スキルス胃がんは若年の女性に多いです。スキルス胃がんの原因は現段階では特定されておらず、初期症状は通常の胃がんと変わりませんが、健診のバリウムで発見されるケースもあるため、健診は毎年受けることをおすすめします。
胃がんの末期症状について教えてください。
齋藤 雄佑 医師
胃がんの末期症状とは前述のように、食べ物がつかえる、お腹が張る、マヒや呂律が回らない、重度の貧血症状などがあります。ただし、胃痛や胃の不快感などの軽い症状しかない場合でも詳しく検査をしてみると末期の胃がんであったという場合もあります。特に前述のスキルス胃がんなどでは早期の発見が難しい場合が多いです。気になることがあれば、近くの内科を受診しましょう。
編集部まとめ
ここまで胃がんの手遅れになる症状について説明しました。ただし、症状だけに着目してしまうと良性の疾患なのに過度の心配をしてしまうことにもなりかねません。まずは胃がんのリスクが高くなる生活習慣を避けて、症状に注意しながら健診などで身体の異常にいち早く気づくことが重要です。また症状がある方や40歳以上の方は胃カメラや胃がん健診を受けて、ピロリ菌の感染があれば除菌しましょう。またピロリ菌の除菌が終わってもすぐに萎縮性胃炎が良くなるわけではないので、胃がんが発生しないか注意深く経過観察が必要です。定期的な健診と検査が受けられるようにかかりつけの消化器科をつくるのもおすすめです。
「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する病気
「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
脳神経内科の病気
血液科の病気
胃がんの手遅れになる症状について説明しましたが、そのような症状があっても、胃胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎などの良性の疾患の場合もあります。また、血便や便に血が混ざる場合にも胃がんだけでなく、他の消化管からの出血や痔の出血の可能性もあります。まずは気になる症状があれば内科を受診しましょう。特に胃カメラや大腸カメラができる消化器内科の受診がおすすめです。
「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連する症状
「胃がんの手遅れとなる自覚症状」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の症状だけでは病気を断定できません。症状がある場合には、まず内科を受診しましょう。血液検査で貧血があるかどうかなど調べることができます。また血液検査ではわからない消化管の疾患には消化器内科を受診して、胃カメラ、大腸カメラを受けましょう。40歳以上の方は胃がん検診や大腸がん検診なども積極的に受けてみてはいかがでしょうか。