「大腸がんの余命」はどれくらいかご存知ですか?医師が解説!

大腸がんは早期発見しやすいがんですが、それでも進行してステージ3や4で発見される事例も少なくありません。
早期なら内視鏡で簡単に治療できたものが、進行に伴って体への影響が大きい外科手術が視野に入ってきます。リンパまで侵されたステージ3で根治は期待できるのか、また余命・生存率も気がかりです。
この記事ではステージ3の大腸がんについて解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「大腸がん・ステージ3」の症状・余命はご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
かつては欧米人に多く日本では少数だった大腸がんは、食生活の変化とともに近年増加の一途をたどっています。
がん死亡者数でも男女を問わず大腸がんが上位を占めるようになりました。その大腸がんとはどのようなものなのか、概略をみていきます。
結腸・直腸に発生するがん
大腸がんは結腸がん・直腸がんともいわれるように、腹部右下の盲腸から大きく腹部を一周してS字結腸までの結腸と、そこから肛門縁までの直腸にできるがんです。
特に発生しやすい場所としては、S字結腸と直腸周辺が多いとされます。大腸の構造は、内面の粘膜から粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜と続く5層構造になった管状の臓器です。周囲にはリンパ管・血管・腹膜などがあり、大腸がんはまず粘膜から始まります。
良性のポリープががん化するもの・正常な粘膜から直接発生するものがある
大腸がんは粘膜で発生しますが、その多くは粘膜にできるポリープが変化したものです。
大腸ポリープの80%を占める腫瘍性ポリープのうち、良性腺腫ポリープは大きくなる過程でがん化する可能性を持ちます。5mm未満のポリープでがん化するのは1%程度ですが、1cmでは数%、2cm以上でがん化するのは20%〜30%です。
また、少数ですが正常な粘膜から直接大腸がんが発生する事例もあります。表面が平らな平坦型や陥没した陥凹(かんおう)型がありますが、発生のメカニズムなど詳細は未解明です。
大腸がんの余命について
大腸がんは罹患者数が年間約15万人に対し死亡者数が約5万3千人で、生存率が高い=余命が長いがんといえます。
罹患・治療後の余命の目安になるのが5年生存率です。結腸がんと直腸がんについてそれぞれの余命の実状をみていきます。
結腸がんのステージ別の5年生存率
まず結腸がんについて、ステージ別に5年生存率がどう変化するかをみていきましょう。ステージ0〜1の5年生存率は92.1%と高い数値で、ステージ2ではこれが85.7%に低下します。
ステージ3では76.2%と段階的に下がった後、ステージ4では15.8%と急激な低下をみせました。このように進行度に比例して生存率が低下し、特にステージ3から4への進行では数値の変動が顕著です。
直腸がんのステージ別の5年生存率
続いて直腸がんでも、ステージごとに5年生存率の変化をまとめました。
ステージ0〜1での5年生存率は92.7%で、そこからステージ2では85%へ低下します。ステージ3では74.4%だったものがステージ4では急激に落ちて23.1%です。
ただ、ステージ4では結腸がんより7.3ポイント高い数値でした。傾向としては直腸がんも結腸がんと同じような推移を示し、ステージ4で急激に下がります。
大腸がんステージ3についてよくある質問
ここまでステージ3の大腸がんの余命・治療方法・根治の可否などを紹介しました。ここでは「大腸がんステージ3」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ステージ3の大腸がんはどのような症状が出るのですか?
甲斐沼 孟(医師)
進行したステージ3では便中の血液・鮮血がみられます。また下痢や便秘などの便通障害が起こりやすく、便が細い・きれぎれなど便の変形も特徴的です。がんの進行に伴い周辺のリンパ節の腫れ・組織への圧迫や炎症が起こり、腹痛や腹部不快感を覚えることがあります。進行した腫瘍が栄養を消費し吸収を阻害するため、痩せ・貧血などの症状とともに全体的な体力低下がみられるのが一般的です。
ステージ3で薬物療法が行われるのはどのようなケースですか?
甲斐沼 孟(医師)
ステージ3での薬物療法は外科手術の補助になります。ステージ3では外科手術でがんを切除するのが標準的です。その場合、微小ながん細胞が周辺に残り、それが再び増殖を始めてがんが再発する可能性があります。残っているがん細胞を排除してできるだけ再発を防ぐために術後補助化学療法が選択され、ステージ2と3で再発リスクが高いと判断される患者さんが対象です。手術後1〜2ヶ月で始められ、薬剤により3ヶ月または6ヶ月間継続します。
ステージ3の再発率を教えてください
甲斐沼 孟(医師)
ステージ3の大腸がんでは、再発率は31.8%です。大腸がんの治療では常に再発防止を念頭にすすめますが、ある程度は再発します。再発率はがんが進行するほど高くなり、ステージ1では5.7%・ステージ2では15.0%といった数値です。再発の様態では、元の場所で再発する局所再発・肝臓や肺に移る遠隔転移・大腸を覆う腹膜に起こる腹膜播種などがあります。再発に対しても手術がメインで、補助療法との組み合わせで治療が進められます。
編集部まとめ
この記事ではステージ3の大腸がんの根治可否・余命・治療方法などを解説しました。進行してリンパ節に転移したステージ3でも根治は可能です。
そして余命も70%以上の5年生存率があります。治療方法は手術になりますが、腹腔鏡による負担の少ない手術・ロボット支援の精密な手術も選択が可能です。
また、再発予防措置など補助的な治療法も数多く整っています。転移していても決して絶望的な状況ではないので、積極的に治療に取り組みましょう。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらの病気を発症すると、時間が経つにつれて大腸がん化するリスクが増大します。特に遺伝性の家族性大腸腺腫症・リンチ症候群は高い確率でがん化します。他の病気も放置は禁物で、大腸がんの前兆ととらえ定期的なチェックが必要です。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
上記の症状はどれも大腸がん以外の病気でもみられるものばかりです。しかし、自己診断するのは危険で、長期間続いたり複数の症状が現れたりする場合は医療機関で受診をおすすめします。

