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「膵臓がんを疑う初期症状」にはどんな特徴がある?【医師監修】

 公開日:2024/09/27

膵臓がんとは、どのような特徴のあるがんなのでしょうか。治りにくく、治療が難しいというイメージがあるかもしれません。

膵臓に発生するがんであることはわかっていても、特徴や余命についてなど詳しいことはわからないという場合もあります。

この記事では、膵臓がんの痛みが出る場所についてを中心に、どのような病気なのか・初期症状・生存率について解説します。

※この記事はMedical DOCにて『「膵臓がんを発症すると感じる痛みの場所」はご存知ですか?初期症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

膵臓がんとは?

膵臓がんは、多くは膵管という場所で発生し、ほとんどが腺がんです。膵臓にがんが発生したとしても、小さいうちは無症状であることが多いです。このため早期での発見が難しいといわれています。
70〜80%の患者さんでは発見されたときにはがんが進行してしまっていて、手術が選択できないため治りにくく、治療が難しいイメージがあります。また、ほかのがんに比べて再発率が高いことも治療が難しいといわれる一因です。

ほとんどは腺がんという組織型

膵臓がんの組織型はほとんどが腺がんで、その割合は90%以上に及びます。腺がんとは体を構成する上皮組織の腺組織から発生するがんです。残りの10%未満は希少な膵がんに分類され、さらに10種類以上の組織型に分類されています。

膵管に発生することが多い

膵がんの90%以上は、膵臓の中の膵管に発生します。これを膵管がんといい、通常膵臓がんといわれているのはこの膵管がんのことです。膵臓がんは消化器に発生するがんの中でも治りにくいがんの1つです。
発生率は胃がん・大腸がんなどほかのがんと比べて3分の1程度と低いですが、国内のがんの死亡原因では5位になっています。このことからも膵臓がんは治療の難しいがんであるイメージがあります。

膵臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすい

膵臓がんは、がんが小さいうちは症状がほとんどないにもかかわらず、膵臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすいです。周りの組織にがんが転移することで、お腹の中でがんが散らばって転移し腹膜播種が起こってしまうこともあります。
腹膜播種が起こると手術でがんを取り切ることが難しくなってしまうため、治療方法が限られてしまいます。このことも膵臓がんの治療が難しいとされる原因になっているのです。

膵臓がんの初期症状

膵臓がんの初期症状にはどのようなものがあるのでしょうか?膵臓がんは、初期には症状が出にくく進行してから見つかることがよくあり、治療が限られてしまうことが多いです。早期に発見することで、早い段階で治療を始めることができるので、治療の選択肢も広がります。ここでは、膵臓がんの初期症状について解説します。自分や周りの人に気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。

初期には症状が出にくい

膵臓がんはがんが小さいうちは症状が出にくく、無症状であることも多いです。このため、早期での発見が難しいといわれています。がんが進行して大きくなってくると、腹痛・腰痛・背部痛・食欲不振・腹部膨満感・黄疸などが起こり、医療機関を受診するきっかけとなります。また、急に糖尿病を発症することや糖尿病が悪化することもあり、膵臓がんが見つかるきっかけとなるのです。
症状が出にくいといわれる一方で、20mm以下の膵臓がんの患者さんの80%以上は上記の症状のうちどれかを認めているという研究結果もあるので、小さな違和感も見逃さないことが大切です。

痛み

膵臓がんの初期症状で生じる痛みは、腹痛・腰痛・背部痛が多いです。
また、左の肩に放散する痛みが出ることもあります。膵臓は背骨の前に横たわっていて、膵臓の近くには痛みを伝える神経が集まっているため、膵臓に炎症が起こると持続する痛みが生じるのです。

食欲不振・腹部膨満感

膵臓がんになると、食欲不振・腹部膨満感などの症状が出ることがあるのは、膵臓の機能が障害される影響にもよります。膵臓は消化にかかわる臓器で、以下の2つの機能があります。

  • 外分泌機能:食物を消化する消化酵素であるアミラーゼ・リパーゼ・トリプシノーゲンを含んだ膵液を分泌
  • 内分泌機能:血糖の調節に必要なインスリン・グルカゴンなどのホルモンを分泌

このため、膵臓がんになると消化が滞ってしまい食欲がなくなったり、お腹にガスが溜まって膨満感が出たりしてしまうことがあるのです。

黄疸

がんが膵頭部にできると胆管を圧迫して胆汁の流れが滞るため黄疸が出ることが多くあります。黄疸が出ると医療機関を受診し検査をすることが多いので、結果的に早期発見につながる場合もあるのです。
黄疸の具体的な症状としては、ビリルビンが皮下脂肪に大量に出て皮膚・眼球結膜が黄色くなります。胆汁がうっ滞することで、便の色が灰白色に変わり体にかゆみが出ることがあります。

糖尿病の悪化

膵臓がんになると、急に糖尿病を発症することがあります。また、もともと糖尿病だった人は急激に症状が悪化することがあるのです。これは、膵臓のランゲルハンス島で血糖の調節に必要なインスリン・グルカゴンが作られているためです。
膵臓のランゲルハンス島にがんが生じると、血糖値を下げるためのインスリンが出にくくなるため血糖値が急激に上がってしまいます。このため急に糖尿病になってしまったり、糖尿病が悪化したりすることがあるのです。

膵臓がんの痛みの場所についてよくある質問

ここまで膵臓がんの痛みが出る場所・初期症状・生存率などについて紹介しました。ここでは「膵臓がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膵臓がんの痛みとほかの病気の痛みを見分ける方法はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

膵臓がんの痛みには、腹痛・腰痛・左の背部痛・左肩への放散痛があります。症状が進行すると痛みが持続することが多いです。しかし、ほかの病気と全く異なる痛みというわけではなく、痛みだけで見分けることは困難です。気になる症状があるときには医療機関を受診し相談しましょう。

痛みと並行してあらわれる症状があれば教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

痛みのほかの膵臓がん発見のきっかけとなる症状には以下のものがあります。

  • 黄疸
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感
  • 下痢

患者さんが気になる症状があり、受診したことがきっかけで膵臓がんが見つかることが多いです。このような症状があらわれたときには、医療機関で相談してみましょう。

編集部まとめ

今回の記事では、膵臓がんで痛みが出る場所はどのような部位かということを中心に、膵臓がんの特徴・初期症状・生存率などについて解説しました。

膵臓がんは特徴的な初期症状が少なく、症状が出ない人もいます。このため発見が遅れて治療が限られてしまう場合もあるのです。

早期発見・早期治療を行うことによって、手術でがんを切除することができれば完治することもある病気です。

ご自身またはご家族で気になる症状・異変があるという人は、1人で悩まずなるべく早く医療機関に相談してください。

膵臓がんと関連する病気

「膵臓がん」と関連する・似た症状が出る病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

腹部や背中に急激な痛みが出るときには急性膵炎、慢性的な痛みが出るときには慢性膵炎の可能性もあります。
また、膵臓がんになると糖尿病を発症したり、糖尿病が急激に悪化したりすることがあるので注意が必要です。

膵臓がんと関連する症状

「膵臓がん」と関連している・似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背部痛
  • 腰痛
  • 黄疸
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 腹部膨満感
  • 全身倦怠感
  • 下痢

これらは膵臓がんに特有の症状ではありませんが、膵臓がんの症状として出ることがある症状です。

この記事の監修医師