発達障害と運動の意外な関係が! コミュニケーション力を育む方法とは?
発達障害を抱える子どもたちが日常で感じる「他者とのコミュニケーションの難しさ」。その背景には、運動や感覚情報の処理が関係していることをご存じでしょうか? 赤ちゃんが自分の体を認識するところから始まり、他者との言葉のやり取りができるようになるまで、コミュニケーションは段階を踏んで発達します。しかし、どこかでつまずきがあると、その影響が次の段階へと波及してしまうことも。今回は、作業療法士の小玉武志さんに感覚や運動とコミュニケーションの発達について話を聞き、子どもたちがより豊かな関係性を築けるための支援のヒントを探ります。
監修作業療法士:
小玉 武志(作業療法士)
編集部
運動と認知的処理の関係性はよく理解できました。では、他者とのコミュニケーションがスムーズにいかないという困りごとも、運動との関係性から考えることができるのでしょうか?
小玉さん
正しくは運動の中でコミュニケーションも発達するということです。まず、コミュニケーションを身につける過程についてお話します。赤ちゃんが最初に身につけるコミュニケーションは、「自分の体とのコミュニケーション」です。手足を動かす、指をしゃぶる、ハイハイをすることを通して体の感覚を認識していきます。次の段階は、お母さんに抱っこをされる、体をくすぐられる、など体を媒介とした他者とコミュニケーションを取ります。その後成長を重ねて、言葉を媒介として他者とコミュニケーションが取れるようになります。
編集部
なるほど。生活の中で自然と段階を踏んで、他者とのコミュニケーションの方法を学んでいくのですね。
小玉さん
はい。しかし、この段階のどこかでつまずくと、結果的に他者とのコミュニケーションに難しさを感じる場合があります。例えば、感覚面に凸凹があり、うまく感覚情報を処理できない場合は、自分の体を思うように動かせません。つまり、最初の段階である自分の体とのコミュニケーションという点で、運動や遊びを通して自分の体をコントロールする経験が少なくなり、結果として次の段階で経験するはずの、体を媒介としたコミュニケーションも積み重ねづらい状態に陥ります。すると当然、その次の段階である言葉でのコミュニケーションにも影響を及ぼすと考えられます。
編集部
やはりコミュニケーションの力が発達する過程でも、経験の積み重ねが大切になってくるのですね。では感覚面に凸凹があるお子さんの場合は、どのような支援をおこなっていけば良いのでしょうか?
小玉さん
一人ひとり状況は異なっているので一概にこれがいいとは言えませんが、一般的に感覚面の問題に対しては「感覚統合療法」というアプローチの視点から考えることがあります。ここでは、感覚を取り入れる時の脳の働きに問題が生じることで、生活上の問題である不器用さが出てくる、と考えられています。何かひとつのアプローチで解決しようとするのではなく、幅広い視点を持ってお子さんを観察することが、支援の第一歩となるのではないかと考えます。
※この記事はMedical DOCにて《【親必見】「発達障害のある子が運動をすると良い理由」を作業療法士が解説》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。