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「末端神経障害」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/15
「末端神経障害」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

末梢神経障害という病名を耳にしたことはあっても、実際どのような症状なのかよく知らない方もいらっしゃるでしょう。

末梢神経障害は脳や脊髄などの中枢神経から全身に広がっている末梢神経に、何らかのダメージを受けて引き起こされる障害です。

体に違和感を覚えた時にその症状が末梢神経障害に当てはまるのかどうかがわかれば、過剰な不安に陥ることなく冷静に対処できます。

この記事では末梢神経障害について、発症の原因から治療方法まで詳しく解説していきます。早期発見のポイントについても紹介しますので、参考にしてみてください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

末梢神経障害の原因

悩む女

末梢神経障害はどのような病気ですか?

末梢神経障害についてお答えする前に、そもそも末梢神経がどのようなものかについてご説明しましょう。脳や脊髄から分布している末梢神経は全身の器官や細胞に張りめぐらされています。末梢神経は全身の筋肉に関わる運動神経・皮膚の感覚や関節の位置に関わる感覚神経・血圧や体温調整を含む内臓の働きに関わる自律神経経の3つに分類されます。
この末梢神経が圧迫や刺激を受けてダメージを被ると働きが悪くなり、様々な不調や障害を引き起こすのが末梢神経障害です。つまり末梢神経障害といっても、体の特定の部位のみで発症する病気ではなく、様々な部分で起こりえる病気なのです。更に末梢神経障害は次のような障害に分類されます。全身の末梢神経に多発的に発症する「多発性末梢神経障害」と一つの末梢神経に発症する「単末梢神経障害」です。

末梢神経障害の発症にはさまざまな原因があると聞きましたが…。

確かに末梢神経障害は様々な原因から発症する病気です。怪我や圧迫といった外的要因のものから、病気の治療で使用する薬の作用によって発症するものなど多岐に及びます。主な発症原因は次のとおりです。

  • 切り傷等による外傷
  • 靱帯・腱・骨・ギプス等による圧迫
  • ウイルス等の感染
  • 抗がん剤・抗生物質等の薬物
  • がん治療等で使用される放射線

単末梢神経障害は一つの末梢神経が外傷や圧迫が原因で発症し、腕の神経障害である「橈骨神経麻痺」や足の神経障害である「腓骨神経麻痺」がこの単末梢神経障害に含まれます。多発性末梢神経障害は糖尿病等の代謝性疾患・薬物・ウイルス等が原因として挙げられ、中には遺伝や原因不明の突発的な症状として現れる場合もあります。
また末梢神経の髄鞘を攻撃してしまう自己免疫異常による疾患があり、難病に指定されている「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」や「多巣性運動ニューロパチー」です。残念ながらこれらの症状は、発症の原因が解明されていません。特に病気や薬物治療が原因の末梢神経障害の多くは発症を避けられないとされています。

どのような症状がみられるのか教えてください。

末梢神経障害の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。運動神経に現れる症状としては、手足の筋力が低下したり筋肉が衰えたりすることです。その結果、力が弱くなります。そして、感覚神経に現れる症状では痺れや痛みが出る一方、感覚が鈍くなったり触れた感覚が消えたりする場合も生じてきます。また、自律神経への症状としては、立ちくらみ・不整脈・手足を含む発汗の調整ができなくなることです。
いずれも些細な症状として見過ごされがちですが、末梢神経障害の症状にも当てはまります。高齢者にこれらの症状が発生した場合は少し注意が必要となります。末梢神経機能は加齢に伴い、多少なりとも衰えてくるものです。筋力の低下や手に力が入らない等が加齢によるものか、末梢神経障害で引き起こされているものかは病院で見極めることをおすすめします。

末梢神経障害の検査と治療方法

白衣の男性

受診を検討すべき初期症状はありますか?

末梢神経障害の症状には日常の些細な動作で引き起こされるものもあるため、一時的な症状か病気の症状かの判断がつきにくいです。例えば感覚神経に現れる症状の一つである痺れは、正座をしたり同じ姿勢をとり続けたりすると誰でも起こりえる症状です。ただし手根管症候群が疑われるケースもあります。それは明け方や起床時に痺れが起こりしばらくすると解消するものの、その症状が繰り返されるようなことが続いた場合は受診をおすすめします。
また末梢神経の障害によって引き起こされるギラン・バレー症候群のように風邪・下痢・感染症にかかった後、手足の痺れや麻痺が出てきた場合はすぐに医療機関を受診してください。末梢神経障害の中には一旦回復しても症状が繰り返されたり、初期症状を見逃してしまったりすると重症化してしまう場合があるので、不調や違和感を覚えたら早めに医師に相談するとよいでしょう。

どのような検査で診断されますか?

末梢神経障害の診断で用いられる検査は主に血液検査や電気生理学的検査が一般的です。電気生理学的検査には神経伝導検査・体性誘発感覚電位・針筋電図が含まれ、末梢神経障害かどうかの判断に有効な検査とされています。これらの検査方法の中の一つである神経伝導検査は、神経が正常に動いているかを確認するために末梢神経に電気刺激を与える検査です。この検査は運動神経・感覚神経のそれぞれの部位について、神経の反応が正常か異常かを判断できる方法です。
また、症状が発生している部位によっては、脳や脊髄のMRIを撮影することもあります。なお、遺伝による原因が疑われるケースでは、患者さんの同意を得たうえで遺伝子検査を行います。このように末梢神経障害であるかどうかを診断する方法は一つだけでなく、症状によって異なってくるものです。

末梢神経障害の治療方法を教えてください。

末梢神経障害を引き起こす原因は様々なため、治療方法も多岐に及ぶでしょう。ニューロパチーのように免疫介在性の末梢神経障害や、末梢神経の神経炎である慢性炎症性脱髄性多発神経炎の場合は、ステロイド療法・免疫グロブリン療法・血液浄化療法などで治療が行われます。また橈骨神経麻痺・腓骨神経麻痺・手根管症候群など圧迫等による症状は、飲み薬・患部への装具固定・ステロイド剤を使用することが多く、一度これらの治療方法で経過を診ていきます。症状が長期間改善されなかったり、重症であったりする場合は手術が実施されるでしょう。ビタミン不足によって発症した場合は、ビタミン剤の内服や注射で治療が行われます。
一方、糖尿病・膠原病・がん治療などで発症するケースもありますが、こちらは元々の病気の治療を進めることで解消に繋がるでしょう。発症した症状に適した治療方法があるので、医師への相談がおすすめです。

治療にはどのような薬が使われるのでしょうか?

病気治療によって発症した場合以外で、投薬治療が実施される場合は次のような薬が挙げられます。

  • メコバラミン錠
  • ミロガバリンベシル酸塩
  • プレガバリン
  • 利尿剤
  • ビタミン剤

なお、がん治療に伴い発症した場合はデュロキセチン・ビタミンB12・プレがバリン・非ステロイド性消炎鎮痛薬・オピオイドなどが、治療内容と照らし合わせたうえで投薬の有無や薬の分量が判断されます。
いずれにしても薬の使用については医師の診察が必要です。

末梢神経障害についてよくある質問

相談する男

末梢神経障害は治る病気ですか?

末梢神経障害の症状の種類や症状の程度によっては、適切な治療で早期回復がはかれるといえます。単末梢神経障害に分類される橈骨神経麻痺・正中神経麻痺・尺骨神経麻痺・腓骨神経麻痺などは適切な処置を受ければ、回復が見込まれる症状です。橈骨神経麻痺や腓骨神経麻痺のように軽症であれば自然に回復するものもあります。重症になると患部を固定する装具を付け低周波を当て神経が回復する治療を行ったり、筋力訓練が必要になったりと回復まで数ヶ月を要するでしょう。また正中神経麻痺や尺骨神経麻痺のように、軽症であれば利尿剤やビタミン剤を用いた投薬治療で回復が見込まれる症状もあります。
しかし、いずれの症状も上記のような治療を行って様子を見ても改善がみられない場合は、手術が行われる場合があります。一方がん治療などで引き起こされる末梢神経障害はがんの投薬治療とも関連があるので、一概にはお答えできにくく回復にはかなりの時間がかかるでしょう。

末梢神経障害は何科を受診すればいいですか?

末梢神経障害がどのような症状として現れているかによって受診する科は異なってきます。ただし、末梢神経障害のように症状の原因が多岐に及ぶ場合は判断が難しいところです。外傷や圧迫によって発症した末梢神経障害であれば整形外科の受診でよいでしょう。
その他の原因の場合は、末梢神経を扱う科へ受診することをおすすめします。医療機関によって異なりますが、脳神経内科・神経内科で診てもらえることが多いです。判断に迷われる場合は内科医に一度相談してみてもよいかもしれません。

予防方法があれば教えてください。

予防方法があるかどうかは気になるでしょう。ただ末梢神経障害は原因不明で発症したり、病気の治療に伴い発症したりするケースがあるので、明確な予防策があるとはお答えしにくい病気です。圧迫などが原因の末梢神経障害であれば、手首・上腕・膝などの特定部位を圧迫しないよう気をつけて生活することを心がけてください。病気治療など避けられない原因で発症する末梢神経障害と違い、圧迫などが原因によるものは予防の効果が出やすいです。
特に腓骨神経麻痺のように膝の外側の神経が圧迫されることによって起こる症状は、高齢者で寝たきりの方に起きやすくなります。例えば膝の外側に柔らかいクッションや枕のようなものを添えると予防になるので、ご家族や周囲の方によるケアも末梢神経障害の予防の一つになります。この病気の重症化を防ぐには、初期の段階で違和感を覚えたらすぐに医療機関へ診察することが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

末梢神経障害による不調が長期間続いてしまうと、生活の質の低下を招きかねません。症状が軽傷であれば早期回復も見込まれますが、原因不明・病気治療による誘発・遺伝性といった治療が長期間に及び避けられないケースもあります。
手術だけでなく薬や筋肉訓練などで改善することが多いので、初期症状が発生したり不調を感じられた場合は自己判断せずに、まずは医師へのご相談をおすすめします。

編集部まとめ

説明する男性医師
痺れ・痛み・立ちくらみといった一見すると、少しのきっかけで日常的に起こりえる症状が含まれているのが末端神経障害です。

些細な症状であると思われがちで末端神経障害に当てはまるのか判断がつきにくいでしょう。不調や痛みを抱えての生活は更なるストレスの原因にもなりかねません。

違和感が生じた時点で、医療機関への相談が症状の長期化防止にも繋がるでしょう。早い段階での医師の診察と治療を受けることをおすすめします。

この記事の監修医師