発達障害の子どもの特徴はご存じですか? 背景にある「認知的処理」とは?
発達障害の子どもたちが抱える「落ち着きがない」「運動が苦手」といった困りごとの裏側には、認知的処理のエラーが隠れているかもしれません。環境を認識し、目標を設定し、実行する――この一連の流れが認知的処理と呼ばれるものです。この過程で何がうまくいかないのかを見極めることで、支援の糸口が見えてきます。本記事では、作業療法士の小玉武志さんに認知的処理の基本を聞き、発達障害児の行動の背景を解き明かします。
監修作業療法士:
小玉 武志(作業療法士)
編集部
発達障害のある子の困りごととして、落ち着きがない・運動が苦手などといった様子が挙げられます。これらはなぜ起こるのでしょうか?
小玉さん
そうですね。そうした困りごとの背景を知るために、認知的処理の過程について考えてみたいと思います。
編集部
認知的処理……、初めて聞きました。一体どういうことでしょうか?
小玉さん
例えばキャッチボールをする時のことをイメージしてみてください。まず、ボールを投げる相手がどこにいるのか、どのくらいの距離にいるのか、ボールを投げた時に誤って当ててしまって困るものがないかなど、周囲の環境に気づく必要があります(これを「登録」)。次に、相手にボールを届けるという目標を設定し、目標を達成する方法を考えます(これを「観念化」)。次に、投げる時はどの位の力を入れるのかなど目標達成に必要な手順や動作を意図します(これを「企画」)。そうしてようやく運動を実行に移し、ボールを投げるという行為に至ります。このような一連の動作がおこなわれており、これらの過程を認知的処理と呼んでいます。
編集部
難しいですが、何となくイメージがつきました。発達障害のある子はこうした認知的処理がうまくおこなえないということでしょうか?
小玉さん
困りごとを聞いた時、認知的処理のどこかにエラーが生じている可能性を考えます。例えば、視覚や聴覚、触覚などの感覚情報を取り入れる力が弱い、もしくは偏っている場合、認知的処理の1段階目「登録」がうまくおこなわれていないかもしれません。そうすると、日常でも、名前を呼ばれても気づかない、いつも走り回っている、座っている時にすぐ姿勢が崩れる、といった困りごととして現れることがあります。このように、認知的処理のどの段階でどのようなエラーが生じているかを分析することで、支援の糸口を探っていきます。
※この記事はMedical DOCにて《【親必見】「発達障害のある子が運動をすると良い理由」を作業療法士が解説》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。