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感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)の症状や原因、治療法とは?

公開日:2019/01/15  更新日:2021/11/22
disease_1216 感染性心内膜炎

感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

感染性心内膜炎

村上 友太 医師

監修医師
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。

感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)とは

感染性心内膜炎とは心臓の弁や内側の膜、大血管の内側の膜に細菌が付着して塊を作る疾患です。細菌が塊となっているため抗生剤が効きづらく、また細菌が付着している部分の構造を壊したり、塊の一部がちぎれて血管の中を流れていくことで脳梗塞などの塞栓症を起こしたり、詰まった先でさらに感染を起こして膿瘍を形成したりすることで、大きな後遺症を残したり、致死的になったりするため、注意が必要です。

感染性心内膜炎にはどんな症状が現れるの?

感染性心内膜炎の症状には多様性があり、心臓の弁の破壊などで急速に心不全が悪化して、息苦しさや胸苦しさが出現する場合や微熱以外に症状が特にない慢性の経過をたどる場合があります。感染性心内膜炎の患者で共通みられる症状は発熱であり、約90%の人で見られます。また、悪寒や振戦、食欲低下などがあり、疲れやすくなります。

村上 友太 医師村上先生の解説

その他の症状としては心臓の機能の低下による症状として、足のむくみや運動時の息切れ、胸苦しさなどがみられ、また細菌の塊が末梢血管で詰まることで脳梗塞の症状がでたり、手足に痛みを伴う結節(Osler結節)や痛みのない小さい紅斑(Janeway病変)が出たり、爪の中や眼瞼結膜に出血したりします。
しかし、慢性経過をたどる場合には初期には抗生物質を使用しても続く微熱しか症状がないこともあり、診断が難しい場合があります。

感染性心内膜炎の原因は?

感染性心内膜炎は先天的な心臓病や心臓の弁の異常などで異常な血流がある人(心臓の内膜が痛んでいる人)や心臓に人工物(人工弁など)が入っている人で発症しやすく、虫歯(齲歯)や歯科処置、観血的な処置、手術などで一時的に血液内に細菌が入り込んだ際に痛んだ内膜や人工物に細菌が付着して増殖することで発症すると考えられています。

村上 友太 医師村上先生の解説

また免疫力が低下していると菌が血液内に入りやすいため、免疫抑制剤を服用中の人や化学療法中の人もリスクが高いため注意が必要です。

感染性心内膜炎の起因となる菌について

感染性心内膜炎の起因菌はさまざまであるが、多くが黄色ブドウ球菌を代表とするグラム陽性球菌です。ブドウ球菌は人や哺乳動物の皮膚や粘膜などに生息する比較的一般的な菌ですが、黄色ブドウ球菌は様々なタンパク性毒素を産生し、感染性心内膜炎以外にも毒素性ショック症候群などを引き起こす非常に病原性の強い細菌です。しかし、このように病原性の高い細菌以外にも腸球菌やα溶連菌など身近にあるグラム陽性球菌が起因となることも少なくありません。また頻度は低いですが、Rickettsia(Q熱)、真菌、ウィルスなども心内膜炎の原因となることがあります。

村上 友太 医師村上先生の解説

原因となる菌の多くは口腔内や表皮に常在している菌であるため、観血的なイベントがあればそれだけで感染リスクとなります。そのため、弁膜症や先天性心疾患の基礎疾患のある人で、ひどい虫歯がある、怪我をした際に創部をきれいにしない、免疫不全がある、観血的な処置・手術をしている人は発症するリスクがあります。

感染性心内膜炎の初期症状や前兆

感染性心内膜炎は血液内に菌がめぐることが要因となりますが、観血的な処置などによる一時的なものでも発症するため、必ずしも発症前に発熱などの症状はありません。発症時には随伴症状に乏しい発熱が見られることが多く、便に菌が付着することで新たな心雑音が聴取できることが多いです。急性に悪化するタイプでは胸苦しさや息苦しさが出現して、血圧が下がって意識状態も悪くなる場合もありますが、慢性に経過するタイプでは発熱以外の症状が無い場合もあります。

村上 友太 医師村上先生の解説

病院に行くべき目安となる症状としては、1週間以上発熱が続く場合には医療機関に受診して下さい。感染性心内膜炎は循環器内科が専門となりますが、初期には他の感染症と区別がつかない疾患であるため、まずは内科を受診してください。内科で治療を受けても発熱が続く場合には高次医療機関での精査を受けてください。

感染性心内膜炎と微熱との関係は?

感染性心内膜炎の発症時には38度台の発熱が出ますが、診断がつくまでに抗生剤治療や解熱鎮痛薬の投与を受けていることが多く、それにより発熱が抑えられて37度台の微熱が続くことが多いです。

感染性心内膜炎と虫歯との関係は?

感染性心内膜炎は一時的に菌が血液内をめぐることで、障害を受けた内膜に菌が付着して発症します。虫歯は血液内に菌が流入してしまう代表的な経路であり、虫歯を介して菌が血液内に侵入することで感染性心内膜炎を発症しやすくなります。

感染性心内膜炎と脳出血や脳梗塞との関係は?

感染性心内膜炎では心臓の弁などに付着した菌塊(疣贅)がちぎれ、血管内を流れていくことで末梢血管を詰めてしまい、脳梗塞などの塞栓症を発症します。無症候性の脳梗塞を含めると感染性心内膜炎の患者の約半数が脳梗塞を発症しているとされており、合併頻度は非常に高いため注意が必要です。

村上 友太 医師村上先生の解説

菌塊が血管に詰まることで血管に炎症が起きて血管壁が破壊されます。感染を原因として血管の壁が薄くなり、血管が膨らんでしまう状態を細菌性動脈瘤といいますが、細菌性動脈瘤は容易に出血するため、感染性心内膜炎では脳出血も起こしやすく注意が必要です。

感染性心内膜炎の検査方法・診断方法は?

感染性心内膜炎の診断は臨床所見に加えて血液培養や心エコーで行います。血液培養と心エコーだけでは判断が困難な場合には、心臓CTやPET/CTを、塞栓症があれば塞栓症に関連した画像検査を行い診断します。38℃以上の発熱や、塞栓症や感染性動脈瘤による出血、腎炎などの免疫反応に合併症などの臨床所見に加え、血液培養で検出された菌の種類や心エコーでの弁膜症の程度を参考にして診断します。

村上 友太 医師村上先生の解説

感染性心内膜炎は初期には診断が困難であるため、多くは抗生剤が効かない不明熱と判断された後に初めて精査されます。精査を始めてから診断までには数週間かかることが多いです。

感染性心内膜炎の治療方法

感染性心内膜炎の主な治療方法は長期間の十分な抗生剤治療です。血液培養での抗生剤の感受性に従って抗生剤を選択し、6-8週間を目安に抗生剤を行います(黄色ブドウ球菌では血液培養で陰性を確認してから、さらに6週間の抗生剤投与を行います)。また心臓の弁の破壊が強い場合や疣贅が大きい場合、抗生剤治療に抵抗性な場合などには手術も重要な治療法となります。

村上 友太 医師村上先生の解説

治療中は長期間の抗生剤投与となるため、副作用の出現に注意し、また脳梗塞などの塞栓症の発症に注意が必要です。

感染性心内膜炎と合併症の可能性について

感染性心内膜炎による合併症としては弁の破壊による急激な心不全の悪化や疣贅がちぎれ、即穿刺として血管の中を流れていくことによる血栓症、また動脈の感染による感染性動脈瘤とそれによる出血合併症です。

村上 友太 医師村上先生の解説

合併症の予防には早期診断、早期治療が重要ですが、弁の破壊が強い場合や疣贅が大きい場合などは合併症が起きる前に手術を行うことが重要と考えられます。

感染性心内膜炎の予防方法

感染性心内膜炎の原因は心臓の内膜の障害と血液中に菌が侵入してしまうことでした。心臓の内膜の障害は先天性心疾患など予防が困難な場合が多いが、後天的な弁膜症については高血圧などの生活習慣病の治療やリウマチ熱の早期治療により予防できる可能性があると考えられる。また血液中への菌の侵入を防ぐ方法としては虫歯を作らず、観血的な処置を行う場合には抗生剤を予防投与することが好ましいと思われます。

村上 友太 医師村上先生の解説

日常生活で行える予防法としては歯磨きなどで口腔衛生を保ち、怪我をした場合は創部を清潔に保つなどの血液中への菌の侵入の予防と、食事や睡眠を十分にとり免疫力を保つことが重要と考えられます。

まとめ

感染性心内膜炎は発症当初はその他の感染症と区別がつかないなど診断が難しく、また放置すれば重篤な合併症をきたしてしまう危険な疾患です。特に先天性心疾患がある方や、心臓弁の手術歴がある方は、口腔衛生を良好に保ち、必要に応じて早期に歯科治療を受けるなど、予防に努めることが望ましいでしょう。


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