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「慢性骨髄性白血病の生存率」はご存知ですか?症状・検査法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/01
「慢性骨髄性白血病の生存率」はご存知ですか?症状・検査法も解説!【医師監修】

慢性骨髄性白血病は、数多く存在する白血病の一種です。初期症状は微熱や倦怠感など、非常に身近なものが多く、その分気づきにくい病気の一つとされています。

今回は慢性骨髄性白血病の生存率について解説してきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病(CML)とは?

血液には、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞が含まれています。これら全てのベースとなっているのが造血幹細胞です。
慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の遺伝子の中にある染色体に異常が起こることによって発症する病気だと判明しています。

染色体異常で発症する

造血幹細胞にある遺伝子の染色体のうち、9番染色体と22番染色体が転座という現象を起こすことによって、フィラデルフィア染色体という染色体ができます。
この染色体からBCR-ABL融合遺伝子という別の遺伝子が生まれます。この遺伝子のはたらきによって、血液細胞が過剰に増殖してしまうのです。その結果、白血球や血小板が増え、さまざまな症状が現れます。
染色体が入れ替わる原因については、まだはっきりとわかっておらず、年齢も関係しません。また、この遺伝子異常は遺伝するものではないとされています。

慢性骨髄性白血病と急性骨髄性白血病の違い

よく似た名前の「慢性骨髄性白血病」と「急性骨髄性白血病」には、さまざまな違いがあります。急性骨髄性白血病は進行が早く、急に症状が現れるため、診断と治療の開始をできるだけ急がなくてはなりません。
これに対し、慢性骨髄性白血病は通常数年かけてゆっくりと進行します。ですが「急性転化」といって、慢性骨髄性白血病から急性白血病へ変化することもあるため、油断は禁物です。
一方で、「急性骨髄性白血病から慢性骨髄性白血病になる」ことはありません。また、急性骨髄性白血病では喫煙によって発症率が増加することがわかっていますが、慢性骨髄性白血病と喫煙に直接関係があるかどうかはまだ不明です。

慢性骨髄性白血病の生存率

かつて慢性骨髄性白血病は「不治の病」とみなされていた病気でした。しかし、2000年代から新たな治療薬が登場し、生存率が大幅に向上しています。
近年では5年生存率は90%ともいわれており、早期発見と速やかな治療開始の重要性がより高まりました。近年では、患者さんの状態が良ければ「服薬中断が可能」と診断されることもあり、明るい兆しがみられます。
現在でも、より効果的に慢性骨髄性白血病の再発を防ぐ方法が研究されています。今後の進展に注目したいところです。

慢性骨髄性白血病の症状

「慢性」とつく通り、慢性骨髄性白血病はゆっくりと進行する病気です。進行段階は慢性期・移行期・急性期にわかれています。それぞれの段階では、どのような症状がみられるのでしょうか。

慢性期の症状

初期段階である「慢性期」では、自覚症状がほとんどない傾向があります。職場などの健康診断で血液の異常を指摘され、その後検査をした結果として慢性骨髄性白血病が見つかり、驚く方も少なくありません。
症状は徐々に現れますが、風邪やちょっとした体調不良と見分けがつきにくいものがほとんどです。血球が必要以上に作られてエネルギーを使うため、微熱が出たり、体重が減ったりします。
また、脾臓というお腹の左上にある臓器が大きくなることにより、お腹の張りや胃の不快感が現れることもあります。この段階で治療を開始できれば、良い状態を長く保つことも不可能ではありません。

移行期の症状

慢性期が続いて正常な血液細胞が作られなくなると、よりはっきり症状が現れます。これが移行期です。貧血がさらに進んで息切れや動悸が頻繁に起こったり、発熱・倦怠感が続いたり、関節痛が現れる人もいます。
慢性期に治療を始めていた場合、それまで使っていた薬に耐性が出ることがあるため、薬の変更や造血幹細胞移植などが検討されます。医師との連携をより緊密にする必要があるでしょう。

急性期の症状

さらに慢性骨髄性白血病が進行した段階が「急性期」です。急性期に移行することを急性転化といいます。急性期への流れは人によって異なり、移行期を経て少しずつ進行する場合・突然急性期に移行する場合・慢性期で治療せず急性期に移行した場合があります。
急性期は正常な血球が不足し、白血球や未熟な細胞(芽球)が過剰に増えた状態です。急性期では、急性白血病と同じ症状が現れるため、重篤な感染症や出血などにも注意しなければなりません。

慢性骨髄性白血病の検査法

慢性骨髄性白血病は、ちょっとした体調不良がサインになっている場合も多々あります。正確な診断には、血液検査・骨髄検査・染色体検査をする必要があります。
どのような検査なのか、あらかじめ知っておきましょう。

血液検査

慢性骨髄性白血病に気づいたきっかけとしてよく挙げられるのが、健康診断などでの血液検査です。
血液検査で白血球や血小板の増加がみられた場合、より詳しく調べるために他の検査をします。白血球・血小板の増加は他の病気でも起こりうることなので、慢性骨髄性白血病かどうか判別するためです。

骨髄検査

次に、骨髄検査を行います。腰の骨の中から血液を採取する検査です。この検査は他の病気でも行われることがあり、麻酔を用いますが、稀に痛みを感じる人もいます。
その場合は、ためらわずに医師へ申し出ましょう。また、血液検査・骨髄検査は、治療が開始された後も定期的に行われます。その時点での治療が有効かどうかを調べるためです。

染色体検査

次に骨髄検査で得られた骨髄液を使って、染色体検査を行います。ここでフィラデルフィア染色体もしくはBCR-ABL融合遺伝子が発見されれば、慢性骨髄性白血病と診断されます。

慢性骨髄性白血病の治療法

慢性骨髄性白血病には、主に2つの治療法があります。ひとつは「分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)」、もうひとつは「造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)」です。使い分け方や詳細は以下をご覧ください。
どの治療を受けるかは、「将来子どもを持ちたいかどうか」という点も大きなカギになります。慢性骨髄性白血病に限らず、がんの治療を受ける方が「将来子どもを授かりたい」と考えている場合は、医師に申し出た上で治療方針を決めましょう。

分子標的薬 (チロシンキナーゼ阻害剤)

主な治療法といえるのが分子標的薬の使用です。この薬は、がん細胞の表面にあるたんぱく質などに働きかけて治療する内服薬の一種です。抗がん剤の中には、正常な細胞も攻撃してしまい、重い副作用が出ることがあります。
そのデメリットを軽減するために開発されたのが分子標的薬です。慢性骨髄性白血病の治療に用いられる分子標的薬は、販売開始された順にイマチニブ・ダサチニブ・ニロチニブ・ボスチニブ・ポナチニブなどがあります。
患者さんによって症状や副作用の度合いが異なるため、適切な薬を選びます。分子標的薬は取り扱いに注意が必要な薬ですので、注意事項を守って正しく使うようにしましょう。
また、効果が十分でない・副作用が強い場合は、別の薬に変更する・副作用を抑える薬を使うなどの対策方法があります。慢性骨髄性白血病の治療は長期にわたりますので、薬と上手につき合うことも大切です。
つらいときは無理をせずに、医師や薬剤師に相談しましょう。

造血幹細胞移植

移行期や急性転化期の患者さんには、造血幹細胞移植という別の治療をすることもあります。これは文字通り、血液のもととなっている造血幹細胞を移植するものです。
患者さんの正常な造血幹細胞をあらかじめ採取しておくか、ドナーから提供を受けて移植します。慢性骨髄性白血病のような血液のがんや、リンパのがんなどに用いられる治療方法です。
副作用や合併症が強く出ることもあるため、造血幹細胞移植をするかどうかは、慎重な検討と患者さん本人の意思決定がより重要になります。

慢性骨髄性白血病の生存率についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の生存率・病期ごとの症状や検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性骨髄性白血病は完治する可能性はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

現時点では、完治するかどうかについて明言できない状態です。
しかし、分子標的薬を一定期間服用した後、状態が良ければ長期にわたって服薬を中断できる場合があります。これが完治といえるかどうかは、今後の経過や研究で明らかになるでしょう。

急性期に移行した場合の生存率はどれくらいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

急性転化を起こした場合は、急性白血病と同じ治療を行います。しかし急性白血病はその名の通り、急激に症状が進行していく病気です。
また、急性期に入ると抗がん剤への抵抗性も強くなるため、治療が難しくなります。残念ながら、急性期移行後の生存率は決して高いとはいえません。
慢性骨髄性白血病のうちであれば、分子標的薬を用いて良い状況を保つことは可能です。疑わしい症状がある場合は、早めに病院で診察と検査を受けましょう。

編集部まとめ

この記事では、慢性骨髄性白血病の症状や検査方法・治療についてご紹介しました。

初期段階では気づきにくい病気だからこそ、健康診断の血液検査で異常が見つかった場合は、速やかに医師の診察とその後の検査を受けることが重要です。早いうちに治療を開始すれば、より長く・より良い体調を維持できる可能性があります。

さまざまな情報がありましたが、「対処方法がある」ことがわかると、少し心境が変わるのではないでしょうか。自分がかかってしまった場合だけでなく、周りに慢性骨髄性白血病の方がいる場合も、治療に前向きになれるような言葉をかけてあげましょう。

「慢性骨髄性白血病」と関連する病気

慢性骨髄性白血病と関連する病気は、主に他の種類の白血病で2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

白血病にはさまざまな種類があるため、早い段階で鑑別することが大切です。その中でも、特にこの2つは進行が早い病気なので、より早い段階での治療開始が求められます。
また、慢性骨髄性白血病を「骨髄増殖性腫瘍」という面からとらえた場合、以下のような病気も関連があるといえます。

  • 真性多血症
  • 本態性血小板血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 慢性好中球性白血病
  • 慢性好酸球性白血病

「慢性骨髄性白血病」と関連する症状

慢性骨髄性白血病と関連している症状は8個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血
  • 腹部膨満感(お腹の張り)
  • 体重減少
  • 出血しやすい
  • 微熱
  • 倦怠感(だるさ)

風邪や他の病気でもみられる症状が多いため、慢性骨髄性白血病を見分けることは非常に困難です。これらの症状が長く続く場合は、速やかに医師の診察と検査を受けてください。

この記事の監修医師