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「慢性骨髄性白血病の10年生存率」はご存知ですか?症状や原因についても解説!

 公開日:2024/03/02
「慢性骨髄性白血病の10年生存率」はご存知ですか?症状や原因についても解説!

白血病とはどのような病気かご存知でしょうか。白血病には種類があり、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4種類の病型があるとされています。病型によってそれぞれ特徴が異なり、治療法も変わるため、分類が重要になります。本記事では、慢性骨髄性白血病の10年生存率について、以下の点を中心にご紹介します。

  • ・慢性骨髄性白血病とは
  • ・慢性骨髄性白血病の10年生存率
  • ・慢性骨髄性白血病の治療

慢性骨髄性白血病の10年生存率について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病とは?

慢性骨髄性白血病(CML)は、血液細胞の源である造血幹細胞が異常を起こし、血液中の白血球、赤血球、血小板の数が無制限に増加する疾患です。この病気は、フィラデルフィア染色体(BCR-ABL1融合遺伝子)と呼ばれる、特定の異常染色体を持つことが特徴です。慢性骨髄性白血病は、慢性期、移行期、急性転化期の3つの段階を経て進行します。慢性期では、白血球や血小板の数が増えるだけで、ほとんど症状がありません。しかし移行期になると、全身に症状があらわれ始め、急性転化期に進行すると、急性白血病の症状と類似してきます。慢性骨髄性白血病は症状があらわれにくいため、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることもあります。

慢性骨髄性白血病の10年生存率

慢性骨髄性白血病の治療は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の導入により大きく進歩しました。この導入により治療選択肢が増え、治療結果の評価が確立されました。これにより、慢性骨髄性白血病の10年生存率は約90%に達しています。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25676422/

慢性骨髄性白血病の症状

慢性骨髄性白血病の症状を以下で解説します。

慢性期

慢性骨髄性白血病の「慢性期」は、病気が進行する初期段階を指します。慢性期の間は、患者はほとんど症状を感じないか、感じたとしても軽度の症状です。これは、白血病細胞が増えても、正常な血液細胞とほぼ同じ機能を持っているためです。しかし、白血病細胞が骨髄を満たし始めると、倦怠感や微熱を感じたり、体重が減少したりするなどの症状があらわれ始めることがあります。

移行期

慢性骨髄性白血病の「移行期」は、病状が変化し始める段階で、この期間は約3〜9ヶ月です。この時期には、骨髄内で芽球と呼ばれる未熟な白血病細胞が増加し、白血病細胞がさらに悪性化し、薬への抵抗性が高まります。また、芽球は成熟しないため、芽球の数が増加すると貧血を引き起こします。さらに、白血球の数も増えるため、全身の倦怠感、発熱、脾臓の腫れ、腹部の張りといった症状が出てきます。

急性転換期

急性転化期では、骨髄が悪性化した未熟な芽球で満たされ、血液中にも芽球が増えます。その結果、正常な血液細胞が減少し、強い貧血、発熱、出血が頻繁に起こるといった症状が出てきます。また、この段階では、白血病細胞がこれまで有効とされた分子標的治療薬に対して抵抗性を示し、より強力な薬物治療や造血幹細胞移植が必要となり、病気の管理が難しくなります。

慢性骨髄性白血病の原因

慢性骨髄性白血病の発症は、特定の染色体異常、フィラデルフィア(Ph)染色体が関与しています。このPh染色体は、人体における46本の染色体のうち、9番目と22番目の染色体が途中で分断され、分断された部分が交換されて結合したものとなっています。これにより、BCR遺伝子とABL遺伝子が融合し、新たな遺伝子であるBCL-ABL遺伝子が生まれます。BCL-ABL遺伝子は、Bcl-Ablというタンパク質を生成します。このタンパク質はチロシンキナーゼという酵素で、白血病細胞の増殖を促進する役割を果たします。その結果、体内で白血病細胞が増え続けることになります。

慢性骨髄性白血病の診断・検査

では、慢性骨髄性白血病はどのような検査で診断されるのでしょうか。以下で解説していきます。

血液検査

慢性骨髄性白血病の診断には、血液検査が重要な役割を果たします。血液検査では、赤血球、白血球、血小板の数や形の異常を調べます。特に、白血球の数が増加しているかどうかを確認します。さらに、血液中に芽球が存在するかも調べます。ただし、最終的な診断には、染色体異常(フィラデルフィア染色体)または遺伝子異常(BCR-ABL遺伝子)の存在を確認する必要があります。

骨髄検査

骨髄検査は、血液検査で異常が見つかった場合に局所麻酔のもとで実施されます。腸骨に針を挿入して骨髄組織を採取する骨髄穿刺と、骨髄の組織を直接取り出す骨髄生検の2つの方法があります。

染色体検査・遺伝子検査

慢性骨髄性白血病の診断には、染色体検査と遺伝子検査が重要です。染色体検査では、骨髄液から取り出した細胞を調べ、特徴的なフィラデルフィア染色体を探します。遺伝子検査では、FISH法を用いて染色体を染色し、異常なBcr-Abl遺伝子を特定します。また、PCR法という遺伝子増幅手法も利用され、より精密な検出が可能となります。染色体検査・遺伝子検査により、慢性骨髄性白血病の診断と治療の方向性が決定されます。

超音波検査・CT検査

慢性骨髄性白血病が確認された後は、体の器官に異常が存在しないかを調べることが大切です。特に、疾患の進行や治療を予測する要素の1つである脾臓の肥大度を確認するために、腹部の超音波検査や腹部CTなどをすることがあります。造影剤を使用する際には、アレルギー反応が起こる可能性があるため、ヨードアレルギーの経験がある方は医師にその旨を伝えましょう。

慢性骨髄性白血病の治療

次に、慢性骨髄性白血病の治療について解説します。

分子標的薬による治療

慢性骨髄性白血病の治療には、分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬が用いられます。チロシンキナーゼ阻害薬は、慢性骨髄性白血病の原因となるBCR-ABL遺伝子の働きを抑制することで、白血球や血小板の数を正常化し、白血病細胞の比率を低下させます。初代のTKIであるイマチニブ(グリベック)は、効果的とされる治療薬であり、多くの患者に良好な治療結果をもたらせる可能性があるとされています。しかし、グリベックはBCR-ABL遺伝子に変異が生じると、期待できる効果は弱まるとされています。この問題を解決するために、第二世代のTKIであるダサチニブ(スプリセル)、ニロチニブ(タグシナ)、ボスチニブ(ボシュリフ)が開発され、初回治療として広く使用されています。さらに、これらの薬剤が効きづらい特定のBCR-ABL遺伝子変異(T315I)に対しても良いとされる第三世代のTKIであるポナチニブ(アイクルシグ)も承認されています。これらの薬剤は副作用を持つため、専門の医師の適切な管理のもとで治療を行うことが重要です。また最近の研究では、一定期間薬を内服し、一定以上の効果が期待できた場合、薬の内服を停止しても再発しない患者が存在することが明らかになっており、TKIによりCMLが治癒する可能性が示唆されています。

造血幹細胞移植

チロシンキナーゼ阻害薬で病状が改善しない場合、または病状が移行期や急性期に進行した場合、若い患者に対しては、造血幹細胞の移植が選択肢とされます。「造血幹細胞移植」は、通常の治療だけでは難しい病気を治療することを目指しています。造血幹細胞の移植は、たくさんの化学療法や全身への放射線療法などを含む移植前の処置をした後に、自分自身またはドナーから事前に採取した造血幹細胞を投与します。移植前における処置の目指すところは、がん細胞の数を削減し、患者の免疫細胞の活動を制御することです。これにより、移植した造血幹細胞が患者の骨髄にしっかりと定着し、正常な造血機能が回復することが期待されます。また、同種造血幹細胞移植の場合、ドナーのリンパ球が患者の腫瘍細胞を攻撃する効果も期待されます。ただし、この治療法はとても強い副作用や合併症を引き起こす可能性があり、そのために患者ごとに慎重な検討が必要です。また、移植前処置の強度や患者とドナーの関係性、使用する細胞の種類によって、造血幹細胞移植の種類は異なります。それぞれの方法には長所と短所があり、患者とドナーの立場から適切な移植方法が選択されます。

化学療法(抗がん剤)

化学療法は、抗がん剤という化学物質を用いてがん細胞の増殖を制御し、がん細胞を排除する治療法です。全身に存在するがん細胞を対象に攻撃・排除する全身療法として機能します。慢性骨髄性白血病の場合、化学療法は治癒よりも、発熱、倦怠感、肝臓や脾臓の腫れなどの症状の緩和と血球数の管理を目的として実施されます。投与方法としては、内服、点滴による静脈注射、筋肉注射などがあります。しかし、これらの方法では脳脊髄液への薬剤の移行が難しいため、抗がん剤を直接脊髄に注射する「髄注」が選択されることもあります。
さらに、大量の抗がん剤を使用した化学療法は、造血幹細胞移植の補助療法などとして用いられることもあります。

「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の症状を紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性骨髄性白血病のステージを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病は、ステージⅠやⅠ期のようなステージ分類は存在せず、前述した通り、病状の進行度により「慢性期」、「移行期」、「急性転化期」の3つのフェーズに分けられます。慢性期は、白血病細胞が骨髄内でゆっくりと増加し、症状がほとんどあらわれない安定した期間を指します。しかし治療しないと、移行期や急性期へと進行します。移行期は、骨髄内で未熟な白血病細胞である芽球が増加し、白血病細胞がさらに悪性化する期間を示します。急性転化期は、骨髄が悪性化した芽球で満たされ、血液中にも芽球が出現する期間を指します。この期間では、正常な血液細胞が減少し、貧血や出血傾向が強くなり、高熱などが出現し、病気が急速に進行します。

慢性骨髄性白血病の予防法はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病の予防は、現時点では確立された方法は存在しません。慢性骨髄性白血病は遺伝子の異常が原因であるため、放射線や化学物質のベンゼンなどに曝露することが発症の一因となる可能性があります。したがって、有害な物質を吸い込む喫煙は避けたほうがよいでしょう。しかし、急性骨髄性白血病という関連疾患では、喫煙により発症率が約2倍になるという疫学的な調査結果がありますが、慢性骨髄性白血病と喫煙との間に因果関係を示す報告は、今のところ存在していません。

編集部まとめ

ここまで、慢性骨髄性白血病の10年生存率についてお伝えしてきました。慢性骨髄性白血病の10年生存率についての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・慢性骨髄性白血病とは、血液細胞の源である造血幹細胞が異常を起こし、血液中の白血球、赤血球、血小板の数が無制限に増加する疾患である
  • ・慢性骨髄性白血病の10年生存率は、チロシンキナーゼ阻害薬の導入により約90%に達している
  • ・慢性骨髄性白血病の治療は、チロシンキナーゼ阻害薬という分子標的薬が用いられる場合が多く、チロシンキナーゼ阻害薬の効果が期待できない場合は、造血幹細胞移植や、化学療法などが実施される場合もある

「慢性骨髄性白血病の症状」と関連する病気

「慢性骨髄性白血病の症状」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

  • 真性多血症
  • 本態性血小板血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 慢性好中球性白血病
  • 慢性好酸球性白血病

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

「慢性骨髄性白血病の症状」と関連する症状

「慢性骨髄性白血病の症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 微熱
  • 体重減少
  • 肝臓や脾臓の腫れ

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師