神経痛の症状や原因、治療法とは?
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
神経痛とは
怪我をしたときに痛みは、傷口の痛みの刺激が感覚神経を通り、末梢神経→脊髄→大脳と順に伝わることで痛みとして感じます。
神経痛とは、痛みの刺激の経路である感覚神経の異常により引き起こされる痛みです。
村上先生の解説
痛みの要因には
1)傷口の痛み(侵害受容性疼痛)
2)痛みを伝える経路(体性感覚神経)や痛みを処理する脳の異常で感じる痛み(神経障害性疼痛:神経痛)
3)痛みに対する不安やストレスなどによる痛み(心理社会的な痛み)
などがあります。
神経痛の保有率は6~11%と言われており、代表的な痛みの原因の一つです。
神経痛はどんな症状が現れるの?
神経痛での痛みの感じ方はさまざまで、「刺すような痛み」「灼けるようなヒリヒリする痛み」「しびれたようなビリビリとした痛み」「電気が走るような痛み」などと表現されることがあります。
また、通常は痛みとは感じない程度の弱い刺激(物が触れる、暖かいものや冷たいものが触れる)で痛みを感じることもあります。痛みの部位は障害を受けた神経によるためさまざまであり、体のどこにでも起こす可能性はあります。
村上先生の解説
神経痛は、診断がつきにくいことや鎮痛薬が効きにくいこと、周りからの理解が得られにくいことから、心理社会的な要因が合併して、慢性的な強い痛み(慢性疼痛症候群)となることがあります。
神経痛による慢性疼痛症候群は他と比べて重症かつ治療が困難であることが多く、生活に大きな影響を与えている場合も少なくありません。
神経痛の原因は?
神経痛は、感覚神経の障害で出現し、その原因は多岐にわたります。
外傷や圧迫/絞扼、腫瘍、感染で神経が破壊されたり、血流や栄養の不足、中毒で神経が壊れてしまったり、自身の免疫システムの異常で神経を破壊してしまうことが原因となります。非常にまれですが、遺伝が原因となる場合もあります。
村上先生の解説
糖尿病には、代表的な合併症として神経障害があり、糖尿病のコントロールが悪い人や長期に罹患している人では、四肢末端の感覚低下や神経痛が出現しやすくなります。
脳梗塞や脳出血などの後遺症として、神経痛が残る方も少なくないため、発症リスクとなる生活習慣病には、注意が必要です。
神経痛の検査方法・診断方法は?
神経痛の診断には、ペインクリニック(疼痛治療科)や神経内科、脳神経外科、整形外科などの専門医による診察が重要です。神経痛のある範囲やその他の運動や感覚の異常(腱反射や温痛覚、深部感覚の異常)の有無を総合的に判断して障害部位を推定します。
障害部位によって行う検査は異なりますが、MRIなどの画像検査や神経電動検査などの神経生理学的検査を行います。皮膚の異常による痛みとの鑑別に皮膚生検を行うこともあります。
画像検査や神経生理学的検査で障害部位と推定される神経の異常がある場合に診断することができます。MRI検査では30分~1時間程度、神経伝導検査は1時間~1時間30分程度かかります。
神経痛の治療方法・治療薬
神経痛の治療は薬物療法が基本になりますが、薬物療法では改善が不十分な場合には、神経に電気刺激を行うことで痛みを抑える神経刺激療法や、神経に局所麻酔を行うことで痛みを抑える神経ブロックを行うことがあります。神経痛の原因となる疾患が明らかな場合には、原因に対する治療も並行して行います。
神経痛の原因の治療によって症状が完全になくなる場合もありますが、症状を抑える治療では痛みを完全になくすことは困難であり、生活に支障となる強い痛みを抑えることが目標になります。
内服での治療薬としてはプレガバリン(リリカ)、デュロキセチン(サインバルタ)、三環系抗うつ薬などを使用します。眠気やふらつきなどの副作用が出やすい薬であり、自動車の運転などに制限がかかるため注意が必要です。
村上先生の解説
神経痛では、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの市販薬などによく含まれる痛み止めは効かないことが多く、医療機関で処方を受けても十分な鎮痛の実感が得られません。また、副作用で薬の増量ができないこともしばしばあります。
治療抵抗性の神経痛では心理社会的な要因が合併していることも多く、抗うつ薬による薬物療法が有効な場合もあります。
痛みの治療は、ペインクリニックが専門となるため、通院中の病院での治療で痛みの改善があまり得られない場合には、ペインクリニックへの受診も検討しましょう。
神経痛の予防方法
神経痛の原因はさまざまで、原因ごとで予防方法が異なります。また、原因によっては予防ができないものもあります。
予防可能な原因としては、ビタミンなどの栄養不足や糖尿病などがあり、バランスが取れた食事を適量摂取しつつ、ある程度の運動を行うことが望まれます。
また、筋骨格系の問題で起こる神経痛の予防として、過度な負荷の筋肉トレーニングを避け、怪我に気を付けること、適度にストレッチをすることなども好ましいと考えられます。
村上先生の解説
生活習慣病は、神経痛の要因となる脳梗塞や動脈狭窄のリスクを上昇させます。また、不規則な生活などで免疫力が低下すると、帯状疱疹など神経痛を起こす感染症のリスクも上がります。
神経痛に限らず、バランスが取れた食事や適度な運動、規則的な生活は健康を維持するためには重要です。
もしかして神経痛?初期症状・気になる症状を解説
ここでは神経痛の初期症状や、神経痛の疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などをなどを解説します。
片側のお尻から踵にかけてしびれがある
片側の臀部から踵にかけてしびれや痛みがはしる場合には、坐骨神経痛が疑われます。
初期症状としては、臀部の痛み、下肢の痛みやしびれ、足首が動かしにくくなるなどの症状が出ることがあります。
症状が持続的になる、症状により日常生活に支障が出てくる場合には整形外科を受診しましょう。
村上先生の解説
坐骨神経痛は、原因によっては早く治すためにストレッチが有効である場合もありますが、悪化してしまう場合もあります。
症状が悪化した場合には、ストレッチは避けて早期に整形外科を受診しましょう。
神経痛についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「神経痛」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
神経痛に漢方やサプリメントは効果があるのでしょうか?
村上先生
有効性の報告にはばらつきがありますが、神経痛に有効とされる漢方はいくつも報告されています。
牛車腎気丸や疎経活血湯、桂枝加朮附湯が代表的ですが、その他にも抑肝散も有効であった報告があります。
サプリメントの有効性は不明ですが、ビタミンB12は末梢神経障害の再生に必要な栄養素であり、補うことで症状の改善に寄与すると考えられています。ビタミンB12は医療機関でもメコバラミンとして処方がされています。
サプリメントは医薬品と異なり、その有効性や安全性に対しての十分な試験が行われていません。有効性についての何かしらの根拠がある場合には特定保健用食品や機能性表示食品のように効果の表記ができますが、推奨レベルの高い医学的根拠にはなりません。そのため、有効性がないとは限りませんが、有効性があるとも言いきれません。
神経痛の症状を抑えるツボやマッサージはあるのでしょうか?
村上先生
ツボ(鍼治療) やマッサージは神経痛自体への有効性は確立しておらず、有効とは言えません。梨状筋症候群などの一部の神経痛では、ストレッチが有効です。
ツボ(鍼治療)やマッサージをしてはいけないということはありませんが、行った際に症状が悪化した場合には、中止しましょう。
神経痛には市販の痛み止めなど、薬を服用しても良いのでしょうか?
村上先生
神経痛では、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの市販されている痛み止めは効果が乏しいことがほとんどです。
しかし、一部に有効な人もいるため、過量服用や有効性が乏しい場合の長期服用をしなければ、服用してしても構いません。服用後に体調が悪くなった場合には服用を中止してください。
市販薬は、医療機関で処方される薬剤に比べて効果や副作用が弱いものが多く、用法用量を守っていれば、服用して問題になることは少ないでしょう。
まとめ
神経痛は痛みのコントロールが難しく、心理社会的な要因も重なって、生活の質に大きく影響を与えてしまう場合も少なくありません。痛みの原因には様々なものがあり、原因の診断や治療も重要ですが、痛みのコントロールが困難な場合にはペインクリニックへの受診を検討しましょう。
心房細動と関連する病気
「神経痛」と関連する、似ている病気は26個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
頭蓋内の病気
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 多発性硬化症
脊髄の病気
- 脊髄梗塞/脊髄出血
- 神経根引き抜き損傷
- 脊髄損傷
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
末梢神経の病気
- 坐骨神経痛
- 手根管症候群/肘部管症候群
- 大後頭神経痛
- 腫瘍随伴症候群
- 慢性炎症性脱髄性神経障害(CIDP)
脳神経の病気
- 三叉神経痛
全身性の病気
- 糖尿病性ニューロパチー
- アルコール性多発ニューロパチー
- ビタミン欠乏性ニューロパチー
- 甲状腺機能低下性ニューロパチー
- 尿毒性ニューロパチー
- 多発血管炎
- クリオグロブリン血症
- ファブリー病
感染症に関わる病気
- 帯状疱疹
- 神経梅毒
- HIV感覚神経障害
神経痛の原因はさまざまであり、痛みを抑える治療とともに、痛みの原因を調べることも重要です。
神経痛と関連する症状
「神経痛」と関連している11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 刺すようなチクチクとした痛み
- 灼けるようなヒリヒリする痛み
- しびれたようなビリビリとした痛み
- 電気が走るような痛み
- 冷えて痛む
- 触っただけで痛む
- 熱いもの、もしくは冷たいもので痛む
- ふくらはぎが痛い
- 耳の後ろが痛い
- 後頭部が痛い
- 肋骨を押すと痛い
神経痛は、体のどこにでも痛みが出ることがあります。痛みの出方もさまざまですが、上記のような症状が見られます。
■神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版
■慢性疼痛治療ガイドライン
■済生会病院 坐骨神経痛
■済生会病院 梨状筋症候群
■日本神経学会 臨床神経学53巻11号
■Cochrane 成人の神経障害性疼痛に対する鍼治療