すきっ歯の治療は保険適用される?原因・治療方法・放置した場合のトラブルについて解説
歯並びにもさまざまありますが、中でもすきっ歯は、食べ物を上手く噛み切れなかったりつぶせなかったりするため、治したいと考えている方も多いでしょう。
しかし、治療にあたって気になるのが保険適用されるかどうかです。保険が適用されなければ費用負担が大きいため、気になる方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、すきっ歯の治療は保険適用されるかについて解説します。原因・治療方法・放置した場合のトラブルについてもご紹介するので参考にしてください。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
すきっ歯とはどのような状態?
そもそもすきっ歯とは、歯と歯の間に隙間がある歯並びのことを表します。正式名称は、空隙歯列といいます。
特に、真正面の前歯に隙間がある場合は、正中離開と呼ばれる歯並びです。隙間があるだけと思われるかもしれませんが、隙間があることで食べ物が挟まる可能性が高いです。
この状態のままでいると、食べかすが残る可能性があります。また、空気が隙間から漏れることで滑舌にも影響します。すきっ歯は、決して放置して良い状態ではありません。
すきっ歯の治療は保険適用される?
すきっ歯の治療は、基本的に保険適用されません。
治療方法はいくつかありますが、ほとんどのケースが保険適用外となり、治療目的が大きく関係します。
すきっ歯などの歯並びを整える治療は、ほとんどが美容目的の治療としての扱いです。そのため、保険適用となりません。
しかし、症例によっては適用となるケースもあります。例えば、先天性疾患が原因のダウン症候群・筋ジストロフィー・唇顎口蓋裂などの病気です。
外科的治療の必要な顎変形症なども、保険適用となる病気の1つです。
また、コンポジットレジン治療ですきっ歯の治療を行う場合、虫歯治療と一緒に行えば保険適用となるケースもあります。
保険適用されるケースをしっかりと把握したうえで、治療を進めるかを選びましょう。
すきっ歯の原因は?
すきっ歯の原因には、先天的なものと後天的なものとに分けられます。先天的なものとしては、もともとの歯の数が不足しているケースや歯が小さいケースです。
後天的な原因としては、主に習慣的に行ってしまっている癖が挙げられます。すきっ歯改善のためにも、原因を把握しておきましょう。
舌で押す癖がある
すきっ歯の原因としては、舌で押す癖がある場合が考えられます。特に上の前歯だけでなく舌の前歯にも隙間がある場合には、この原因である可能性が高いです。
舌を前に出す癖がある場合、常に歯を外側に押す力が働きます。すると、歯が外側に倒れ、隙間ができてしまうのです。
舌で押す力は、思っているよりも強く、無意識で継続的に行ってしまっているために歯並びを悪化させてしまいます。
歯が小さい
歯が小さいことも、すきっ歯の原因の1つです。顎のサイズに対して、歯のサイズが小さすぎると、顎のスペースに歯が生えそろった時に隙間ができる可能性があります。
前歯や奥歯など、すきっ歯となる歯の部位や本数はさまざまです。1本だけのこともあれば、数本まとめて歯が小さいこともあります。
もともと歯の本数が不足している
もともと歯の本数が不足していることでも、すきっ歯が生じる可能性があります。通常、歯は親知らずを含めて32本あります。
親知らずを含めない場合は28本が正常な数です。しかし、先天的な理由から歯の本数が通常よりも少ないケースがあります。
これを先天性欠損といい、10人に1人程度の割合で起こる身近な病気だといわれています。
歯の本数が少なくなると、生えそろった時にスペースが余ることとなってしまい、通常よりもすきっ歯を生じやすい環境になってしまうのです。
また、実は歯の数が多すぎてもすきっ歯になる場合があります。歯が正常な歯よりも多く生えてしまうことを過剰歯といいます。
正常な状態よりも歯が多く生えてしまうと、歯並びが乱れる可能性が高いです。その結果、すきっ歯を引き起こしてしまいます。
歯周病になる
歯周病も、すきっ歯になる原因の1つです。歯周病などの病気を引き起こすと、歯肉に炎症が起こります。
そして、重症化すると歯を支えている骨がもろくなってしまい、歯が動きやすくなってしまいます。最悪の場合は、抜け落ちてしまうケースもあるでしょう。
歯が動きやすくなってしまったり、抜け落ちてしまったりすると、噛み合わせによって歯にズレが生じます。そのまま放置してしまうと、上下の噛み合わせが合いません。
次第に噛み合わせがズレ、最終的には歯が全体的にすきっ歯になる可能性もあります。
歯ぎしりの癖がある
歯ぎしりもすきっ歯の原因です。歯ぎしりは、起きている時だけでなく、就寝中に無意識で行う方もいます。
このような歯ぎしりは、歯に強い力がかかり、歯の摩耗・歯肉炎・歯周病を引き起こす可能性があります。
そして、長期間の歯ぎしりによって歯肉にダメージが蓄積すると、歯がぐらついたり歯の間に隙間ができたりするのです。
就寝中の歯ぎしりは、ご自分ではなかなか気づけず防止も難しいため、注意が必要です。
すきっ歯の治療方法は?
すきっ歯の治療は、矯正による治療が効果的です。しかし、具体的にどのような治療方法かを知らなければ、ご自分に合った治療を選べません。
そこで、ここではすきっ歯の治療方法を特徴とともにご紹介します。
ワイヤー矯正
すきっ歯の治療方法の1つが、ワイヤー矯正です。ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットを装着して、ワイヤーを通して力を加えて矯正する方法です。
幅広い症例に対応できる点が特徴であり、すきっ歯にも対応できます。また、隙間が大きいすきっ歯にも対応できる点がポイントです。
歯を削らずに治療を進められ、固定式の矯正方法なので、特別な自己管理が不要な点も魅力に挙げられます。一方で、矯正器具が目立つといったデメリットがあります。
ワイヤーが歯の表面にあることで、口を開けると見えてしまいます。
人によっては、見た目が気になって思い切り笑えなかったり、気にして会話を楽しめなかったりといった問題を抱えることもあるでしょう。
適切なセルフケアをしなければ、虫歯や歯周病のリスクがある点にも注意が必要です。ワイヤー矯正の構造上、どうしても食べかすや汚れが残りやすいです。
しっかりとブラッシングなどを行わなければ、口内環境を悪化させて虫歯や歯周病を引き起こすケースがあります。
さらに、矯正器具の調整を行った後は、特に痛みやすいといった特徴もあります。これらの特徴を踏まえた上で、選ぶ必要があるでしょう。治療の費用は30万円~170万円程度です。
マウスピース矯正
マウスピース矯正も、すきっ歯の治療方法の1つに挙げられます。この方法は、透明なマウスピースを使用して歯を動かす方法です。
マウスピースによって歯に力を与えて、少しずつ歯を動かします。大きな特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 目立ちにくい
- 自由に取り外しが可能
樹脂などで作られたマウスピースは、透明で薄いためワイヤー矯正などと比べると、非常に目立ちにくいです。
- 適用可能な範囲がワイヤー矯正よりも狭い
- 装着時間の管理が必要
マウスピース矯正は、大きく歯を動かすことが求められる治療には適していません。そのため、すきっ歯の隙間が大きい場合には、適用できない可能性があります。
さらに、装着時間の管理が必要な点も押さえておく必要があります。マウスピース矯正は、取り外しが自由に可能ですが、1日22時間程度の装着時間が必要です。
これよりも装着時間が短くなると、想定通りの効果が得られず、治療期間の長期化を招く恐れがあります。
このように、ワイヤー矯正と異なる特徴があるため、しっかりと把握しましょう。治療費用は10万円~100万円程度です。
セラミック治療
セラミック治療は、歯を大きく削って、セラミックの被せ物を使った治療方法です。ワイヤー矯正やマウスピース矯正とは異なり、歯を移動させての治療ではありません。
セラミック矯正のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 天然歯のような仕上がり
- 経年劣化が少ない
- 治療期間が短い
セラミック矯正で、セラミックを使用しているため、天然歯のような自然な仕上がりとなります。経年劣化も少なく、すり減る心配もほとんどありません。
矯正を伴わないため、治療期間は全体で1カ月~2カ月程度と、矯正治療に比べて非常に短いです。しかし、次のようなデメリットもあります。
- 歯を削る必要がある
- 神経処置を行うケースがある
歯を削る必要がある点は、大きなデメリットです。セラミックの被せ物を被せるために、天然歯を大きく削らなければならないケースもあるでしょう。
歯の状態によっては、神経処理を行うケースもあります。1度削った歯は、元に戻せないため、注意が必要です。治療費用は、歯1本あたり10万円~15万円程です。
すきっ歯の治療期間はどのくらい?
すきっ歯の治療期間は、歯の状態・治療方法・どの程度改善させるかによっても異なります。先述した通り、セラミック矯正の場合は、全体の期間が1カ月~2カ月です。
他の矯正のように歯を動かす必要がないため、比較的短期間で終えられます。しかし、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの矯正方法では、長期の治療が必要です。
時間をかけて、ゆっくりと歯を動かす必要があるためです。一般的な治療期間としては、1年~3年程度となります。
しかし、症状によっては、これ以上の期間がかかるケースもあるでしょう。
すきっ歯を放置した場合どんなトラブルがある?
すきっ歯は、歯に隙間があるだけと思われる方も多いかもしれません。しかし、すきっ歯を放置することで引き起こされるトラブルがあります。
生活に大きく関わるトラブルを招く可能性もあるため、どのようなリスクがあるかを、あらかじめ知っておくことは非常に重要です。
虫歯になりやすい
すきっ歯の放置によって起こるトラブルとしては、虫歯になりやすい点が挙げられます。歯と歯の隙間に食べ物が挟まりやすいためです。
また、歯磨きが十分に行えていない場合、細菌が繁殖する可能性があります。徐々に歯を溶かしてしまうため大きな問題です。
歯周病になりやすい
歯周病になりやすい点も挙げられます。原因は虫歯と同様です。隙間によって食べかすが残り、十分に磨けないことで菌が繁殖してしまいます。
それによって歯周病を発生してしまうのです。歯肉の炎症を引き起こし、重症化すると歯を支えている骨が溶けてしまい、歯も抜け落ちてしまうかもしれません。
発音が不明瞭になる可能性がある
放置すると、発音が不明瞭になる可能性もあります。すきっ歯となる歯の位置にもよりますが、隙間があることで息もれが生じることがあります。
この息漏れは、滑舌に影響を与える恐れがあるのです。特にサ行やタ行に影響が出やすいといわれています。発音が不明瞭になると、会話から印象も悪くなる可能性があるでしょう。
口臭が発生する可能性がある
口臭が発生する可能性がある点も、放置のリスクの1つです。隙間に食べかすなどが詰まりやすくなり、歯磨きが不十分だと細菌が繁殖する可能性があがります。
その結果、虫歯や歯周病と同じように、口臭を発生させるかもしれません。
すきっ歯の治療を検討しているなら
すきっ歯は、見た目の問題だけでなく、上手く噛み切れないなどの問題も引き起こす歯並びです。
そのため、できれば矯正を行ってきれいな歯並びにしたいと考える方は多いでしょう。しかし、基本的に保険適用外であるため、治療費は全額自己負担です。
治療のメリットと負担を照らし合わせながら、治療を受けるかを検討しましょう。また、もし治療を検討しているのであれば、専門の歯科医への相談をおすすめします。
症状に合った適切な矯正方法などを提案してくれ、疑問などを払拭したうえで、安心して治療を始められるでしょう。
編集部まとめ
すきっ歯は、食べかすが挟まりやすかったり息漏れを起こしたりなどで、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
先天的なものもありますが、普段の癖などで後天的に発症するケースも少なくありません。そのため、すきっ歯にならないように、普段から気をつける必要があります。
またすきっ歯の方は、保険適用外という点を踏まえた上で、矯正を行うかをしっかりと検討しましょう。
すきっ歯の治療でお悩みの場合には、歯科医に相談して、症状の度合いや具体的な治療方法を教えてもらいながら治療するかを決めましょう。
参考文献
- すきっ歯とは何か、治療が可能なのか|東京加悦矯正歯科クリニック
- すきっ歯矯正|医療法人社団 千美会 ザ・ホワイトデンタルクリニック
- 矯正歯科治療が保険診療が保険診療の適用になる場合とは|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- すきっ歯が気になる|さんぽうよしさくら医療グループ 医療法人さくら会
- 矯正歯科|東北大学病院
- すきっ歯治療は保険適用になる?治療内容や費用を紹介|Oh my teeth/a>
- 歯が小さいことが原因のすきっ歯|すずき矯正歯科の公式ブログ
- すきっ歯は加齢が原因って本当?|SBC湘南美容外科クリニック
- 歯ぎしり|日本橋はやし矯正歯科
- マウスピース矯正のデメリット|北浜オルソ
- セラミック治療とは|吉祥寺セントラルクリニック
- すきっ歯の矯正治療の流れを解説|歯科医がすきっ歯矯正のメリットや治療期間・費用をご紹介|You矯正歯科
- すきっ歯は放置しておくと年々ひどくなる?その原因は?|デンタルサロン・フレジール
- すきっ歯になってしまう原因や放置することのリスク|新潟西歯科クリニック
- すきっ歯が与える印象は?治療方法をご紹介!|hanaravi歯科矯正blog