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矯正治療の不安・疑問は先生にどう伝えたらいい? セカンドオピニオンの進め方も解説

 公開日:2025/02/18
矯正治療の不安・疑問は先生にどう伝えたらいい? セカンドオピニオンの進め方も解説

矯正治療を進めるなかで、治療の進捗や内容、結果に疑問や不安を感じる患者さんは少なくありません。その一方で「相談するタイミングがわからない」「余計なことを言って先生との関係が悪化するのが怖い」という理由で、質問や相談を躊躇してしまうという声も多く聞かれます。矯正治療中の不安や疑問をどのように解消していけばよいのか、セカンドオピニオンを考える前にできることについて、しぶたに矯正歯科の渋谷先生に解説していただきました。

渋谷 直樹

監修歯科医師
渋谷 直樹(しぶたに矯正歯科)

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国立大学法人東京医科歯科大学卒業。同大学院にて歯学博士を取得。公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター歯科・口腔外科・矯正歯科の指導診療医として顎変形症を中心とした矯正治療を担当。(現在非常勤診療医)2017年東京都世田谷区にしぶたに矯正歯科を開院。「エビデンス(医学的根拠)に基づいた、お子様が成人するまでの一貫した治療を提供する」ことをコンセプトに顎変形症などの大学病院と連携した治療にも力を入れている。日本矯正歯科学会認定医。ほか学会発表、論文など多数。

矯正治療の結果に不満… その原因と納得のいく結果を得るための対策

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編集部編集部

矯正治療では「自分が思っていた結果と違う」という不満の声もよく聞かれますが、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

患者さんの思い描いていた理想の歯並びと、実際の状況との間にギャップを感じた際に、このような不満が生じやすくなります。この状況は、歯科医が考える治療のゴールと、患者さんが求めるゴールとの間にズレが生じている可能性を示唆しています。そうならないためには、治療の過程ごとに患者さんの希望と先生が提供する治療との「すり合わせ」をしっかりしていくことが大切です。

編集部編集部

具体的に、どのように「すり合わせ」をしていくとよいでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

矯正治療は最初に前歯の凹凸が解消され、次にすき間が閉じ、最後に上下の奥歯の噛み合わせを調整するといったように、歯並びを段階的に改善していきます。この過程のなかで、「中心のズレが気になる」「前歯の噛み合わせをもう少し良くしたい」といった具体的な気づきがあれば、その都度先生に伝えることが大切です。このように患者さんの希望を共有することで、歯科医も治療のゴールをより明確に理解でき、スムーズな治療につながります。

編集部編集部

それでも治療後に不満が残った場合は、どうしたらよいでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

保定段階に入った後に上下の噛み合わせが気になる場合でも、保定期間内に改善することがあります。したがって、まずは気になるところを率直に担当医に伝えてみてください。もし、再治療が必要だと判断された場合は、具体的な治療方法や期間、費用についてしっかり質問することをおすすめします。それでも納得のいく説明が得られない場合は、セカンドオピニオンを検討してみるのも方法の1つでしょう。

担当医に質問や相談がしづらい… こんな時どうしたら? 矯正歯科専門医がアドバイス

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編集部編集部

不安や疑問に感じても、相談をためらってしまう患者さんも多いと聞きますが、どのような理由が考えられますか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

患者さんのなかには、質問や相談をすることで「先生に嫌われて、治療してもらえないのではないか?」という不安を抱えていらっしゃるようです。また、人気がある歯科医院では、診療時間が限られていて先生が多忙な様子だったり、質問しても不機嫌そうに対応されたりした経験から、相談をためらってしまう人も少なくないようです。

編集部編集部

そのような不安を抱える患者さんに、何かアドバイスはありますか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

ぜひ知っておいてほしいのは「担当医に質問や相談をすることは決して悪いことではない」ということです。歯科医師はすべての患者さんに不安なく、気持ちよく治療を受けていただきたいと考えています。患者さんが疑問や不安を伝えてくださることは、私たち歯科医にとってもより良い治療を提供できるチャンスとなります。したがって、「失礼にあたるのでは」「嫌われるのでは」など考えず、遠慮なくご相談していただければと思います。

編集部編集部

担当医に相談や質問をスムーズに切りだすには、どうしたらよいでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

次回の予約時に「今の状況や今後の予定について詳しく知りたいので、処置ではなくカウンセリングのみの予約を希望します」と伝えるとよいでしょう。とくに人気のある歯科医院では、通常の診療枠では担当医との十分な相談時間を確保できないこともあります。したがって、予め気になっている点をメモにまとめてリストアップしておくと、歯科医側も必要な資料を準備でき、限られた時間でもより詳しい説明を受けることができます。

編集部編集部

「相談の時間を別に設けてもらう」というのがポイントなのですね。

渋谷 直樹先生渋谷先生

そうですね。歯科医はみな患者さんに満足していただきたいという気持ちで治療に臨んでいます。しかし、通常の診療時間では技術的な面に時間を費やすことが中心となるため、質問や相談の時間が十分に取れず、先生の対応を慌ただしく感じてしまうことも少なくありません。このような場合は、ほかのスタッフに相談することも方法の1つですし、先生と直接話をする時間を設けてもらうことで、より丁寧なコミュニケーションが可能になるでしょう。

編集部編集部

そのような過程を経ても、やはり先生の説明がしっくりこない、納得がいかない場合はどうしたらよいでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

担当医と十分に話し合いを重ねても不安や疑問が解消されない場合は、セカンドオピニオンを検討してみることをおすすめします。また、自身が受けている治療法についてほかの専門医の意見も参考にしたい場合にも、セカンドオピニオンは有効な選択肢となります。

より良い選択のために:セカンドオピニオンの正しい進め方

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編集部編集部

セカンドオピニオンを受けたい場合、現在治療を受けている担当医にその旨を伝えたほうがいいのでしょうか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

これは非常に難しい問題だと思います。多くの患者さんは現在の担当医との関係を良好に保ちたい、敵対関係になることは避けたいと考えています。確かに、セカンドオピニオンは担当医が資料を作成し、患者さんの希望に応じて他院での受診を支援するのが理想的です。しかし、近年は担当医から紹介状や依頼状がなくても、セカンドオピニオンを受けつけている歯科医院も増えていますので、そのような歯科医院を探してみるのも方法の1つかもしれません。当院も特に資料がなくても受け付けています。

編集部編集部

セカンドオピニオンを受けて、別の歯科医院に転院したいと思った場合、どのような手続きが必要になりますか?

渋谷 直樹先生渋谷先生

転院を考える際は、まず転院先の料金体系をよく確認することが大切です。多くの場合、治療を一からやり直す形になるため、新たな費用が発生します。そのうえで、転院先での受け入れをきちんと確保してから、現在の担当医に転院の意向を伝えるという順序で進めていくようにしてください。転院先が確保できたら必要な資料についての依頼書を受け取り、それを現在の担当医に提出して資料を作成してもらう、という流れになります。

編集部編集部

セカンドオピニオンにあたって患者さんが注意したいこと、気をつけたいことを教えてください。

渋谷 直樹先生渋谷先生

セカンドオピニオンを受ける患者さんのなかには、4~5件と複数受診される方もいらっしゃいます。しかし、複数の意見の中から自身が一番求めていた回答が得られたとしても、あくまでもセカンドオピニオンということで、必ずしもその歯科医院で受け入れてもらえるというものではなく、その歯科医院で継続治療が受けられないというケースも実は少なくありません。また、セカンドオピニオンでの説明をもとに「他院の先生はこう言っていた」と現在の担当医に再度相談をもちかけても、歯科医との関係が悪化してしまう可能性があるため注意が必要です。

編集部編集部

そのような事態を避けるために、セカンドオピニオンを受ける際のポイントを教えてください。

渋谷 直樹先生渋谷先生

セカンドオピニオンに際しては、歯科医によって持っている技術や治療に対する考え方が違うことを、予めよく理解しておくことが重要です。セカンドオピニオンで聞いた意見も、その歯科医が持っている技術がベースとなっています。実際には治療しないにもかかわらず「このような治療ができると、主治医に伝えたらいい」などと安易に助言する歯科医もいますが、これは非常に無責任な対応だと感じています。このような背景をふまえたうえで、セカンドオピニオンで得た情報からご自身にとって最適な治療方針を慎重に判断していただきたいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

渋谷 直樹先生渋谷先生

私がセカンドオピニオンの相談を受けるなかで一番多い相談内容が、「治療がうまく進んでいない」というものです。そしてほとんどの場合に、治療開始時から「患者さんと歯科医との認識のズレ」が生じていると考えています。矯正治療は「患者さんが求める治療=歯科医が提供する治療」という状態で治療を始めないと、治療が進むほどそのギャップが広がり、不幸なすれ違いが生じてしまいます。これを防ぐには、治療前にお互いの目指すゴールをしっかりと共有しあい、治療中も疑問や不安があればその都度歯科医に相談することが重要です。患者さんと歯科医が良好なコミュニケーションを保ちながら、同じ目標に向かって進んでいくことが満足のいく結果につながっています。本記事が、信頼できる最初で最後の矯正担当医との出会いの一助になれば幸いです。

編集部まとめ

矯正治療中や治療後の不満は、患者さんと歯科医の認識のズレから生じることも少なくありません。このズレを解消するためには、治療のそれぞれの段階で気になることがあれば、その旨を積極的に伝えることが大切です。質問や相談がしづらい場合は、通常の診療とは別にカウンセリングの時間を設けてもらうことで、より丁寧な説明を受けることができます。それでも納得のいく説明が得られない場合は、セカンドオピニオンを検討するのも方法の1つです。まずは、自分の希望する歯並びについて、担当医としっかりコミュニケーションをとりながら治療を進めていきましょう。

医院情報

しぶたに矯正歯科

しぶたに矯正歯科
所在地 〒154-0003 東京都世田谷区野沢3-31-7 ロイジェント世田谷野沢1F
アクセス 東急田園都市線駒沢大学駅 徒歩14分
診療科目 一般歯科、小児歯科、矯正歯科

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