歯科治療でもセカンドオピニオンは必要? 受けるタイミングや求める際のポイントを歯科医師が解説
「第2の意見」と訳されることもあるセカンドオピニオン。その目的は「第1の意見」の確認にあるはずです。しかし、“現状の不満のはけ口”をセカンドオピニオンに求める傾向はないでしょうか。そこで、「日比谷公園前歯科医院」の乙丸先生に、歯科領域のセカンドオピニオンのあるべき姿について話を聞きました。
監修歯科医師:
乙丸 貴史(日比谷公園前歯科医院 院長)
東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業。東京医科歯科大学大学院顎顔面補綴学分野修了。東京医科歯科大学歯学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)や民間歯科医院などでの臨床を積んだ2021年、東京都千代田区に「日比谷公園前歯科医院」を開院。心身の健康にも寄与できるような歯科医療を目指している。日本補綴歯科学会専門医・指導医・代議員、日本顎顔面補綴学会認定医・代議員。日本口蓋裂学会、日本口腔インプラント学会の各会員。
歯科治療におけるセカンドオピニオンとは
編集部
歯科治療でもセカンドオピニオンはあるのでしょうか?
乙丸先生
はい。一般的に、セカンドオピニオンというと、がん治療のようなケースで求められるイメージですよね。しかし、歯科医院でも実際にあります。例えば、歯が抜けたときに受診して、「インプラントの説明だけだったけど、入れ歯やブリッジについても知りたいな」といったケースです。そこで、入れ歯やブリッジの得意な別の歯科医院の説明を受ければ、それがセカンドオピニオンということです。
編集部
「最初の歯科医院での治療が不安だから、別の歯科医院の意見を聞く」のは、セカンドオピニオンと言えないのですか?
乙丸先生
それは単なる「転院」や「転院先探し」であって、セカンドオピニオンと言えないでしょう。本来のセカンドオピニオンは、「ほかの医師が、前の歯科医師の検査・結果・診断・治療方針を元に、その治療の妥当性やそれ以外に選択肢があるのかどうかなどをお話しすること」です。「情報のプラスアルファ」が目的であり、けっして担当医師の批判ではありません。
編集部
ということは、担当医師から「診療情報の提供」があることがセカンドオピニオンだと?
乙丸先生
そうです。それが真のセカンドオピニオンであって、気に入らない治療方法の回避や自分がしたい治療方法の模索ではないと考えます。ですから、セカンドオピニオンには原則として「治療行為」が含まれず、あくまでも情報提供で完結するはずです。もし、別の歯科医院での治療が前提なら、それはセカンドオピニオンではなく「転院」になります。
編集部
なるほど。元の歯科医院での治療方法や状況がわかっていないと、患者としても比べられないですよね。
乙丸先生
はい。大前提として、「現在診療を受けている担当医師の話をよく聞くこと」と「わからなければ、わかるまで質問すること」が欠かせないと思います。理解していれば、セカンドオピニオン先で異なった治療選択肢が示されたときでも、ご自身で比較検証することができます。あるいは、担当医師から聞いたことを「専門病院や総合病院でもっと知ろう」でもいいと思います。
歯科におけるセカンドオピニオンのケーススタデイ
編集部
セカンドオピニオンについてのご説明ありがとうございます。続けて、具体的なセカンドオピニオンのケースについて教えていただきたいです。
乙丸先生
わかりました。例えば、ある歯科医院で抜歯を勧められたときに、抜かない「保存療法」のセカンドオピニオンを受けるケースが考えられます。難しいところですが、「抜きたくないから」という前提でほかの治療方法を探すと「転院」です。仮に「抜歯が妥当」というセカンドオピニオンが出されたら、元の歯科医院で治療を続けることになります。
編集部
「歯がないところの補綴(ほてつ)方法」に関するセカンドオピニオンはどんな感じでしょうか?
乙丸先生
補綴方法についても同様で、元の歯科医院で扱っていない方法・素材を探そうとすると、「転院先探し」に近いニュアンスです。担当医師と歯を抜いた後の方法や素材、あるいは保険診療なのか保険外診療なのかなどをよく相談するようにしましょう。いずれにしても、セカンドオピニオン受診で、説明が詳しくなることで、前医よりも丁寧に説明してもらったと思ってしまうことがありますが、もともとの担当医の説明不備ということではないと思います。
編集部
歯並びの矯正治療などでも、セカンドオピニオンなどはあります。
乙丸先生
矯正治療をするために抜歯するのか、歯を小さくするために削るのか、マウスピース型矯正が適しているのかなど、担当医が「自分の得意方法」を提案してくることは考えられるでしょう。もっとも、元の医院で仮に「ワイヤー矯正」を提案されていたとしたら、その評価が不可欠です。転院を目的とした行為はセカンドオピニオンに含めません。
編集部
あと、例えば「口内炎がなかなか治らないのでおかしい」という疑い含みのセカンドオピニオンはいかがでしょうか?
乙丸先生
色々なケースが考えられますね。患者さんが入れ歯の取り扱い方について担当医の指示を守っていないために「なかなか治らない」場合もありますし、口腔がんを担当医が見逃していて「なかなか治らない」場合もあると思います。逆に、患者さんとしては「痛みもなく、治った」と感じているのに、医師から通院を続けるように言われる場面もあるでしょう。そこには、何かしらの理由があるはずなので、担当医とよく情報を共有することが肝要です。「おかしいな」と思ったら即、セカンドオピニオンということではありません。
セカンドオピニオンの進め方
編集部
今までの流れを伺うと、開業医の判断を高度医療機関に確認してもらうのが、実際のセカンドオピニオンという気がしてきました。
乙丸先生
そうかもしれませんね。開業医同士のセカンドオピニオンは、あまり成立しない印象です。「後医は名医」といって、「後に診てもらうドクターの方が、情報的にも時系列の変化を追えている点でも“有利”であることは理解しておいてほしいです。
編集部
セカンドオピニオンには「診療情報の提供」が伴いますしね?
乙丸先生
はい。重要なのは、セカンドオピニオンの希望を「治療中の担当医に申し出る」ということです。「診療情報の提供」はセカンドオピニオンに欠かせないプロセスですからね。セカンドオピニオン先の歯科医師は、提供された診療情報を加味して診察することができます。これが「後医は名医」と言われる理由の1つでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
乙丸先生
仮に身体上の理由などから、通院が困難になったとします。このとき、紹介などにより最寄りの歯科医院で治療を受けるとしたら「転院」なのですが、「診療情報の提供」を欠かさずおこなうようにしてください。あるいは、訪問歯科に切り替えるという手もあります。「別の歯科医院を受診する」ケースを想定したとき、「批判的な転院」と「やむを得ない事情による紹介を伴った転院・治療方法の変更」と「セカンドオピニオン」という3パターンが考えられるということです。
編集部まとめ
セカンドオピニオンは「すでに提案された内容の再評価」ですから、別個の治療提案はおろか、新たな検査すらおこなわず、「提供された診療情報から、別の医師が言えること」が、その真意なのでしょう。もちろん、紹介元での治療継続を想定しています。ただし、現実には、様々な解釈の余地を含みます。自分が何をしようとしているのかわからなくなったら、「すでに提案された内容の再評価」という原則に立ち戻ってみてください。
医院情報
所在地 | 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2丁目2−2富国生命ビル地下1階 |
アクセス | 都営三田線「内幸町駅」 直結 東京メトロ「霞ヶ関駅」 徒歩4分 JR山手線「新橋駅」徒歩6分 |
診療科目 | 歯科 |