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歯周病治療における「骨再生」とは? メリットや適応条件、治療前の注意点を歯科医が解説!

 公開日:2024/05/19
歯周病治療における「骨再生」とは? メリットや適応条件、治療前の注意点を歯科医が解説!

歯周病によって失われた骨は自然に治ることはありませんが、近年は「骨再生」という治療で新たに骨を作りなおすことができます。今回は歯周病治療における骨再生のメリットや適応条件などを、「かねこ歯科診療所」の金子先生に解説していただきました。

金子 潤平

監修歯科医師
金子 潤平(かねこ歯科診療所)

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大阪歯科大学卒業。その後、歯科医院で勤務医として経験を積む。2015年、兵庫県伊丹市に「かねこ歯科診療所」を開院。しっかり噛める歯と、それを支える口腔の環境整備、継続的な健康維持のためのメンテナンスプログラムをトータルで提供している。日本臨床歯周病学会認定医。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

歯科治療の「骨再生」とは? 骨を再生させる方法やメリット

歯科治療の「骨再生」とは? 骨を再生させる方法やメリット

編集部編集部

歯科治療における骨再生とは、どのような治療法なのでしょうか?

金子 潤平先生金子先生

骨再生とは、歯周病が原因で歯を支える骨(歯槽骨)を失った場合、その部位に新たな骨を作っていく治療法です。

編集部編集部

具体的に、どうやって骨を再生させていくのでしょうか?

金子 潤平先生金子先生

骨の再生にはいくつかの方法があり、骨の欠損具合に応じて術式を選択するのが一般的です。代表的な方法に「骨移植術」があります。これは、ほかの部位から採取した骨や、それに相当する材料を移植する方法です。そのほかに、特定の術式や骨の成長を促す材料を使って、骨が再生しやすい環境を作り出す方法もあります。これらの方法を単独でおこなう場合もあれば、複数の方法を組み合わせる場合もあります。

編集部編集部

移植する骨や骨を再生させる材料に、どのようなものが使われますか?

金子 潤平先生金子先生

患者さん自身から取り出した「自家骨」、化学的に製造した「人工骨」、ほかには「他家骨」や動物の骨を加工した「異種骨」などが用いられます。骨の再生を促す材料としては、骨の欠損部を覆う特殊な膜や、新しい骨を作るのを助ける薬剤(エムドゲイン・リグロスなど)などを使用します。

編集部編集部

骨再生をおこなうと、患者さんにどのようなメリットがありますか?

金子 潤平先生金子先生

最大のメリットは、歯の寿命を延ばせることです。歯周病は「沈黙の病」と言われるほど自覚症状に乏しいのが特徴で、特に症状がない場合でも部分的に骨が溶けていることがあります。これをそのまま放置すると、やがて「歯がグラグラする」といった症状が表れますが、その段階になると手の施しようがなく、抜歯を余儀なくされることも少なくありません。そうなる前に骨再生で新しい骨を作ってあげれば歯周病の進行を食い止められますし、それが結果的に歯の延命につながるわけです。

骨再生治療の適応条件 誰が・どんなときに受けられる?

骨再生治療の適応条件 誰が・どんなときに受けられる?

編集部編集部

骨再生治療は、どんな人におすすめの治療でしょうか?

金子 潤平先生金子先生

「歯がグラグラする」という症状がなくても、レントゲンやCT検査で骨が部分的に溶けているのが確認できる場合は、治療の適応となります。そのほかに、他院で「抜歯」と言われたケースでも、状況によっては骨再生治療で歯を残せる可能性があります。

編集部編集部

以上のような人が希望すれば、誰でも骨再生治療は受けられますか?

金子 潤平先生金子先生

全身の健康状態に問題がなければ、基本的に治療は可能です。ただし、骨の再生にも限度はあるため、あまりにも動揺が強い・歯が大きくグラグラしている重度歯周病は適応外となります。

編集部編集部

そのほかに、骨再生を受けるための条件はありますか?

金子 潤平先生金子先生

前提条件として「事前に歯周基本治療をきちんと受けて、歯周病がコントロールされていること」が必須となります。プラークコントロールと歯石除去で歯周病の病状が安定していること、セルフケアがしっかりできることが治療を成功に導く条件です。受診してすぐ骨再生治療が受けられるわけではないので、その点は注意してください。

編集部編集部

骨再生治療を受ける前に、まずはお口の環境をしっかり整えておくことが大切なのですね。

金子 潤平先生金子先生

はい。骨再生治療に際しては歯周病のほかにも、「噛み合わせ」に関する問題も改善しておくことが大切です。噛み合わせが悪い、あるいは歯ぎしり・食いしばりのある場合は、歯に加わる過剰な力が骨の破壊をさらに進行させる要因となります。その状態のまま骨再生治療をしても良い結果が得られない場合もあるため、事前に噛み合わせのチェックもおこなうことが重要です。

骨再生に保険適用できる? 気になる費用や治療期間、治療後の注意点について

骨再生に保険適用できる?気になる費用や治療期間、治療後の注意点について

編集部編集部

骨再生治療の費用に保険は適用できますか?

金子 潤平先生金子先生

リグロスという骨の再生を促す薬剤を単体で使用する場合に限り、保険が適用できます。そのほかの材料を使用する場合や骨移植については保険適用外です。具体的な費用は歯科医院によって異なるため、あらかじめ受診する医院に確認しておきましょう。

編集部編集部

実際に、骨が再生されるまでにどのぐらいの期間がかかるのでしょうか?

金子 潤平先生金子先生

骨再生の治療自体は1回で終わりますが、そこから骨が再生するまでには9~12カ月ほど期間を要します。その間は歯科医院で傷口の管理やプラークコントロールを継続しながら、骨が再生するのを待ちます。

編集部編集部

骨再生治療が終わった後も、定期的に歯科医院の通院が必要なのですね。

金子 潤平先生金子先生

はい。定期的な通院は「骨が再生するまでの期間」だけでなく、新しい骨が出来上がった後も続くと思ってください。骨再生で溶けた骨がある程度回復したとしても、それで一生大丈夫ということは絶対にありません。骨が再生した後も定期的にレントゲンを撮って骨のレベルを確認し、メンテナンスを継続して受けることが骨の状態を安定させ、歯を長持ちさせる重要なポイントとなります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

金子 潤平先生金子先生

骨再生治療は歯周病で骨が失われた際に歯を守る最後の手段となる治療ですが、一方で全てのケースに適応できるわけではありません。「骨がなくなったら再生すればいい」といった簡単な解決策ではないことはよく理解しておきましょう。そのような状況にならないように、日頃からセルフメンテナンスをおこない、定期的に歯科健診を受けて歯を支える骨の健康を保つことが大切です。もし、それでも歯周病が進行して骨を失った場合は、歯周病治療を得意とする歯科医師に相談して適切な治療を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

歯周病で骨を失った場合、骨再生という新たな骨を再生する治療で歯周病の進行を食い止め、歯の寿命を延ばすことができます。一方で、骨再生は「歯周病がしっかりコントロールされていること」「噛み合わせの問題が解決していること」が、治療が受けられる前提条件となります。また、歯周病が重度まで進行して骨の多くを失った場合は、骨再生をしても歯が残せない場合もあるため注意が必要です。まずは歯医者さんで歯周病の検査、治療を受けて、生涯に1本でも多くの歯が残せる対策に取り組んでいきましょう。

医院情報

かねこ歯科診療所

かねこ歯科診療所
所在地 〒664-0858 兵庫県伊丹市西台3-7-7阪急オアシス伊丹西台店2F
アクセス 阪急電鉄伊丹線「伊丹駅」 徒歩5分
診療科目 歯科

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