「人生100年時代」に歯医者さんとの付き合い方はどう変わる? 現代に合った歯科医院の選び方とは?
日本人の平均寿命は男女ともすでに80歳を超え、今後は100歳まで生きることが当たり前となる「人生100年時代」が訪れると予想されています。そのような時代の変化のなかで、今後は歯科医療のあり方や歯医者さんとの付き合い方も変わってくるでしょう。そこで人生100年時代における歯医者さんとの付き合い方や歯科医院の選び方について、まつのき歯科クリニックの小松先生に話を聞きました。
監修歯科医師:
小松 貴紀(医療法人社団 まつのき会)
目次 -INDEX-
人生100年時代、お口の健康を取り巻く環境は昔と今とでどう違う?
編集部
「人生100年時代」といわれる近年、病気のあり方や健康への考え方も昔とは変わってきているようです。歯科においても、昔と今とで何か変わったことはありますか?
小松先生
お口の病気に関していうと、今は昔と比べてむし歯で歯を失うことは少なくなりました。一方で、自分の歯を長く残せるようになった近年は、歯周病になる人の割合が年々増えてきています。このように歯科もメインとなる病気が変わってきたことで、医療のあり方や歯科医院と患者さんとの付き合い方も変わりつつあります。
編集部
具体的に、昔と今とで歯科医療のあり方はどのように変わってきているのでしょうか?
小松先生
60年ほど前はむし歯で苦しむ人があふれかえっていたので、歯科医もそれに対処するのが精一杯の時代でした。そういう環境の中では歯科医が定期的にお口の健康を管理するというのは難しく、またそういう考え方にも至らなかったのだと思います。ですが、むし歯から歯周病へとシフトしてきた近年は、昔のように「痛くなってから治す」といったその場限りの治療だけではお口の健康は守れなくなっています。
編集部
「その場限りの治療だけではお口の健康は守れない」。その理由を教えてください。
小松先生
歯周病はいわゆる慢性疾患なので一時的な治療ではなく、長い目で病気をみていく必要があります。例えば、体の病気も昔は結核で亡くなる人が多く、感染症を治すことが治療のメインでした。しかし、公衆衛生が発達して感染症の脅威がなくなると、次に増えてきたのが糖尿病や高血圧、がんといった慢性疾患です。慢性疾患は短期的な治療で治る病気ではなく、定期的に通院を続けて病状の安定を図る必要があります。歯周病も糖尿病や高血圧と同じ慢性疾患ですから、「治療したら終わり」ではなく長く経過をみていく必要があるわけです。
編集部
そうすると、患者側も「痛くなったら歯医者さんに行く」というスタイルを見直す必要があるわけですね。
小松先生
そのように思います。歯周病に限らず、むし歯治療に関しても様々な研究が進むにつれ、近年は「削って治療する」から「管理する」という方向にシフトしつつあります。このように、病気との付き合い方が変われば、歯医者さんとの付き合い方も当然変わってくるわけです。しかし、このあたりがなかなか歯科では広がらず、「歯医者は痛くなったら通うもの」という考えを払拭できないのが大きな課題だと感じています。
「治療完結型」から「予防管理型」へ 人生100年時代における歯医者さんとの付き合い方・通い方
編集部
人生100年時代を迎える今、歯医者さんとの関わり方・通い方はどのように変えていくのがよいのでしょうか?
小松先生
痛くなったら通う・痛くなくなったら通うのをやめるという「治療完結型」ではなく、痛くなくても定期的に通ってお口の健康を管理してもらう「予防管理型」に変えていく必要があります。人生100年時代を迎える今後は、この「予防管理型」が主流になるでしょうし、そうなるべきだと考えます。
編集部
「治療完結型」ではなく「予防管理型」に変えたほうが良い理由を教えてください。
小松先生
「痛くなったら通う」「悪くなったら治療する」という治療完結型は、むしろお口の状態を悪くしていることが最近の研究でも明らかになっています。そもそも、むし歯も歯周病も、痛くなる段階ではすでに手遅れになっているケースが少なくありません。つまり、「痛くなったら通う」ではどんどん自分の歯を失ってしまうわけです。さらに、むし歯に関しては先ほども少しお話ししたように、今は「黒ければ何でも削る」という時代ではなくなっています。
編集部
むし歯で歯が黒くなっても、削らなくて良い場合があるということですか?
小松先生
はい。今は黒くても進行しないむし歯は削らずに、磨けていない部分の歯磨きの指導をしたり、定期的にフッ素塗布をしたりするのが主流となっています。なぜかというと、むし歯もやたらむやみに削るのではなく、管理していくほうが結果的に歯に優しく、むし歯にならなくて済むことがわかってきたからです。したがって、これからは「悪くなったら通う」ではなく、「定期的に歯医者さんに通いながら歯を守る」というのが正しい歯医者さんの付き合い方・通い方といえます。
人生100年時代に自分にあった歯科医院を選ぶには? ネットの口コミは当てになる?
編集部
これまでのお話をふまえると、今後私たちはどのように歯科医院を選んでいくのが良いでしょうか?
小松先生
治療を受けて管理もしてもらえる・困った時にすぐに診てくれる「かかりつけ歯科医」をぜひ見つけていただきたいと思います。先ほどもお話ししたように、歯科も今は慢性疾患がメインになっているので、過去の状態と現在の状態の両方を追っていく必要があります。緩やかに進行している時は様子をみて、状態が急激に悪くなったらすぐに対処するというのは、かかりつけ歯科医だからこそできることです。このように、経過を追いながら自分のお口の状態をしっかり把握してくれる、そういう歯科医院を見つけてほしいと思います。
編集部
そのような「かかりつけ歯科医」を見つけるうえで、押さえておきたいポイントがあれば教えてください。
小松先生
しっかりコミュニケーションをとってもらえることが重要だと思います。今は昔と違って、歯科医が主導で治療を進める時代ではありません。歯科医が現状を説明し、どういう治療法の選択肢があって、それぞれにどんなメリットやデメリットがあるかを示すのが当たり前です。そのうえで患者さんにご納得いただき、ご同意を得てから治療を進めるのが現代のスタイルです。これを「インフォームドコンセント」と言いますが、これを普通にやってくれる・当たり前にできる歯医者さんをぜひ選んでいただきたいです。
編集部
近年はインターネットで情報を集めたり、口コミや評判をみたりして歯科医院を探すことも多いと思うのですが、こちらについてはいかがでしょうか?
小松先生
個人的にネット上の口コミはあまり当てにならないと考えます。例えば、自分が好きで通っている行きつけのレストランやお店の口コミの評価がいつも高いかといえば、必ずしもそうとは限りません。つまり、自分の「ここが良い」というのが他人にとって良いとは限らないし、その逆もしかりです。また、口コミを書かれる側から見ると、悪い口コミの背景には何かしら理由があることが多いのも事実です。したがって、「ネットの口コミだけ」では、歯科医院を選ばないでほしいなと思います。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
小松先生
私たち歯科医と患者さんの付き合い方は、昔のように短期的なものではなく、生涯を通じた長いお付き合いに変わってきています。歯科医にも色々なタイプの人がいるので、どの先生とも相性が良いとは限りませんし、それは歯科医からみても同じことがいえます。治療の腕や設備、価格などももちろん重要ですが、人と人とのお付き合いを大切にできる、そういう歯医者さんをぜひ見つけてください。
編集部まとめ
歯科医療も今は「悪くなったら治療する」という治療完結型ではなく、病気の発症や進行を管理する「予防管理型」にシフトしてきていることがわかりました。その意味において、今後は私たち患者側も「痛くなったら通う」という従来のスタイルを見直す必要があるようです。その場限りの治療ではなく、生涯を通じて自身のお口の健康を管理してくれる歯医者さんをぜひ見つけていきましょう。
医院情報
所在地 | 〒306-0221 茨城県古河市駒羽根42番地3 ベルク古河駒羽根店敷地内 |
アクセス | JR「古河」駅より車で14分 JRバス関東「総和中学校前」「女沼仲町」より徒歩5分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科 |