子どものむし歯予防はいつから? 乳歯のむし歯のリスクやセルフケア・予防歯科の開始時期を歯科医が解説
「乳歯はいずれ抜ける歯だからむし歯になっても問題ない」と考えがちですが、乳歯のむし歯は永久歯の歯並びや発音など子どもの発育に影響が及びます。そこで子どものむし歯の特徴や放置するリスク、さらに歯医者さんでの予防ケア(予防歯科)について、「柏 なかよし歯科・口腔外科」の好岡先生に解説してもらいました。
監修歯科医師:
好岡 夢貴(柏 なかよし歯科・口腔外科)
目次 -INDEX-
子どもの歯(乳歯)は永久歯よりむし歯になりやすい? おやつの食べ方も関係? 子どものむし歯の原因を歯科医が解説
編集部
子どもの歯(乳歯)と永久歯とでは、むし歯のなり方も違うのでしょうか?
好岡先生
「お口の細菌が糖から酸をつくり、その酸によって歯が溶ける」というむし歯の発症メカニズムは乳歯も永久歯も基本的に同じです。ただ、乳歯はその性質上、永久歯よりむし歯になりやすく、さらに進行も早いのが特徴です。
編集部
なぜ乳歯のほうがむし歯になりやすく、進行も早いのでしょうか?
好岡先生
乳歯は永久歯に比べて歯質が軟らかく、むし歯菌のつくる酸に対する抵抗力が強くありません。それにくわえ、歯の表面を覆う「エナメル質」は永久歯の半分ほどの厚みしかないため、比較的早くエナメル質の奥にまでむし歯が進行してしまいます。乳歯はさらに、その下の象牙質も永久歯の1/2程度の厚さしかなく、すぐに歯の神経まで達してしまいます。
編集部
子どもがむし歯になる原因に、どのようなものがありますか?
好岡先生
1つは、歯磨きがうまくできていない点が挙げられます。子どもは歯磨きに長い時間を取るのが難しいうえ、うがいがまだ上手にできない時期はお口の汚れが洗い流される割合も少なくなります。また、忙しい保護者が仕上げ磨きの時間をとれないのも、子どもがむし歯になる要因になります。
編集部
まずは「歯磨き不足」ですね。そのほかに、子どもの歯がむし歯になる原因は何ですか?
好岡先生
個人差はありますが、普段の飲み物で糖分を含む飲料を飲む習慣のあるお子さんは、むし歯リスクが高くなります。なかでも、盲点になりやすいのが果汁ジュースや野菜ジュースです。子どもの健康や栄養不足の改善に良かれと与えてしまいがちですが、これらのジュース類には糖分が多く含まれるため注意が必要です。
乳歯のむし歯は永久歯の歯並びにも影響⁉ 「抜けるから」と油断は禁物 乳歯のむし歯を放置するリスク
編集部
乳歯はむし歯になってもいずれ抜けてしまうと思うのですが、放置すると何かリスクはあるのでしょうか?
好岡先生
「乳歯は抜けるから」と油断しがちですが、これは大きな間違いであることは知っておく必要があります。乳歯は決して「永久歯の代わりの歯」ではなく、この時期の子どもの発育において様々な役割を担っています。つまり、乳歯のむし歯は子どもの健康な発育に悪影響を及ぼしてしまうわけです。
編集部
具体的に、乳歯のむし歯は子どもの発育にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
好岡先生
むし歯で痛くて噛めなくなると食べ物が限られてしまい、栄養バランスが悪くなります。体の器官や機能が育つこの時期に、栄養が十分摂れないというのは、子どもにとっては大きなデメリットです。
編集部
むし歯で噛めないと、健康な体の発育にも影響はありそうですね。ほかにも、乳歯のむし歯にはどんな問題がありますか?
好岡先生
乳歯にむし歯が多い子どもは、次の永久歯もむし歯になる確率が高くなります。そもそも、乳歯の時期にむし歯が多いということは、その時点でお口の中にむし歯菌が占める割合が多いということです。乳歯から永久歯への生え代わりは数年かけて段階的に進んでいくため、乳歯と永久歯が混在する時期に乳歯のむし歯菌はそのまま永久歯に移ってしまいます。さらに、子どものうちに歯磨きの習慣が身についていないと、その影響は大人になってからのむし歯や歯周病のリスクにも及んでいきます。
編集部
乳歯のむし歯は永久歯にも悪影響があるのですね。
好岡先生
乳歯のむし歯は永久歯のむし歯だけでなく、萌出や歯並びにも影響を及ぼします。乳歯がむし歯になって早くに抜け落ちたり、反対になかなか抜けなかったりすると永久歯が本来の位置に生えてこられず、歯並びが悪くなってしまう可能性があります。また、乳歯は正しい発音を助ける役割もあるため、この時期のむし歯は子どもの発音にも悪影響を及ぼすおそれがあるでしょう。
子どもの予防歯科は何歳から? 歯医者さんではどんな予防ケアをしてもらえる? 子どものむし歯の予防法を解説
編集部
子どものむし歯は、何歳ごろから予防ケアを始めたらよいでしょうか?
好岡先生
最初の乳歯(下の前歯)が生えだしたら、予防ケアをスタートします。最初は歯ブラシを口に入れるのに慣れてもらうことからです。乳歯が生える8か月ごろまでに、清潔な指でお口に触れる、またはガーゼのようなものでお口の中をぬぐうことなどを少しずつはじめておくと、歯磨きもスムーズに進みやすいでしょう。
編集部
家庭のケアでは、どんなことに注意したらよいでしょうか?
好岡先生
歯磨きの習慣をしっかり身につけていくことも重要ですが、子どもの時期は食生活にとくに気をつけていただきたいです。まずは、食事と間食の時間をきちんと決め、「ダラダラ食べ・ダラダラ飲み」をなくすようにしてください。また、間食でジュースやお菓子を与えた後に歯磨きができない場合は、うがいをするだけでもリスクが下げられます。
編集部
むし歯予防は歯医者さんの予防ケア(予防歯科)も重要だと思うのですが、子どもの歯医者さんデビューは何歳ごろがよいでしょうか?
好岡先生
お子さんの成長の度合いによりますが、基本的には歯が生えたら歯医者さんの予防ケアをはじめて問題ありません。早い時期から歯医者さんに定期的に通院しておくと、「歯医者さんに慣れやすい」というメリットがあります。乳歯は軟らかいのでどうしてもむし歯になりやすいのですが、幼いころから歯医者さんに慣れておくと、万が一の時にもすぐに対応できます。
編集部
歯医者さんの予防歯科では、具体的にどのような処置を行っていますか?
好岡先生
まずは、現在の歯の萌出状態や歯並び、むし歯の有無などのチェックです。その後、年齢に応じた歯ブラシの選び方やブラッシング法の指導のほか、保護者の仕上げ磨きの方法や食生活もアドバイスします。さらに必要に応じて、フッ素(フッ化物)の塗布やシーラントなどの処置や、上唇や舌の裏側にある「小帯(しょうたい)」というヒダに異常がないかのチェックを行います。
編集部
小帯に異常があると、どのような問題があるのでしょうか?
好岡先生
例えば、舌の裏側にある小帯(ヒダ)が極端に短いと、舌の動きが悪くなって食べ物を飲み込む動作や発音に支障が出てしまいます。同様に、上唇の小帯の位置異常は歯並びなどに影響を及ぼしてしまいます。子どもの予防歯科は、このような発育に影響を与えるような小帯の異常を早期に発見できるのもメリットでしょう。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
好岡先生
繰り返しになりますが、子どもの歯(乳歯)は永久歯に比べて軟らかいため、子どもは大人よりもむし歯になりやすく、また進行するスピードも速い傾向があります。したがって、お子さんに最初の乳歯が生えたら、できるだけ早い時期に歯科医院の予防歯科をはじめていきましょう。
編集部まとめ
子どもは乳歯の形態的な特徴や「歯磨きの時間が長くとれない」といった子どもならではの事情により、大人よりもむし歯になりやすいことがわかりました。子どもの歯が生えたらご家庭でのケアをはじめるのはもちろんのこと、歯医者さんの予防歯科デビューも検討していきましょう。
医院情報
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アクセス | JR「東武野田線柏」駅東口より徒歩8分 |
診療科目 | 歯科・矯正歯科・小児歯科 |