巷で聞く「インプラントは絶対にダメ」のウソ・ホントを歯科医が徹底解説
インプラントに関するネットの情報や周囲の話の中には、「インプラントはやらないほうがいい」「後悔する」という話も見かけます。インプラントを検討中にこのような情報に触れ、少し不安に感じている方も多いのではないでしょうか。そこで、巷で聞くネガティブな噂の真相や、歯科医から見たインプラントに向かない人の特徴などを、和田デンタルクリニック院長の和田先生に聞きました。
監修歯科医師:
和田 晃(和田デンタルクリニック)
目次 -INDEX-
「インプラントは絶対にダメ」という噂の真相を歯科医が解説
編集部
はじめに、周囲の声やネットの情報などにある「インプラントはダメ」「後悔する」といった噂の真偽についていくつかお聞きしたいと思います。
和田先生
どんな治療にもメリットとデメリットがあり、それはインプラントも例外ではありません。おそらく「インプラントがダメ」といわれる理由の多くはデメリットに関係すると思いますので、その不安を解消できれば幸いです。
編集部
まず「インプラントは絶対にダメ」派の理由でよく聞くのはインプラントの手術に関することです。術後に「すごく腫れる」「痛みが長引く」というのは本当でしょうか。
和田先生
確かに歯ぐきを切ったり、縫ったりするので、術後に多少なりとも痛みは出ます。ただ実際はというと、少数歯のシンプルなケースでは、術後の腫れや痛みも歯を抜いた後と同等か、もしくはそれよりも軽い場合がほとんどです。
編集部
では、インプラントを複数本入れるケースはどうでしょうか?
和田先生
多数歯欠損で手術が広範囲に及ぶケースや骨造成(骨を増やす処置)をともなうケースでは、術後に腫れや痛みが出やすくなります。ただ、仮に痛みや腫れがでても、その多くは1週間程度で落ち着きます。また、症状が強く出た場合でも、お薬の服用などでコントロールは可能ですので、その点は安心していただけると思います。
編集部
インプラント手術に関してはもう1つ、術後の麻痺やしびれ、大量出血などのトラブルも耳にします。こちらはいかがでしょうか?
和田先生
CT装置がまだ普及していなかった頃は、2次元のレントゲンのみで手術を行っていたため、過去にそのような事例も確かにありました。ただ、近年はインプラント手術の際にCT検査を行なうのが当たり前となっているほか、コンピュータを使ったガイデッドサージェリーも広く行なわれています。このような技術の革新によって、術後に生じる麻痺や痺れ、出血というトラブルはかなり減ってきています。
編集部
次に、インプラントは「骨が少ない・薄いとできない」と聞きますが、これは本当でしょうか?
和田先生
インプラントは骨と直接結合して維持するものなので、確かに骨の量が少ないままだと治療は難しくなります。ただ、これに関しては「骨造成」という骨を増やす処置で解決できます。したがって、必ずしも「骨が少ない・薄いからインプラントができない」というわけではありません。
編集部
インプラントは高額で時間もかかるわりに「すぐにダメになる」「長持ちしない」とも聞くのですが、こちらはいかがでしょうか?
和田先生
インプラントがすぐにダメになってしまう要因には、大きく分けると「不適切な治療」「治療後のメンテナンス不足」の2つがあります。「不適切な治療」に関しては、やはり歯科医院を選ぶ段階でインプラント治療に精通したドクターの元で治療を受けることが重要です。「治療後のメンテナンス不足」はインプラントに限らず、歯科治療でお口の中に入れた人工物の寿命は治療後のケアによって大きく左右されます。したがって、治療後も日々のセルフケアや歯科医院でのプロフェッショナルケアを継続していけば、すぐにダメになるということはありません。
歯科医から見る「インプラントが絶対にダメ」という人の特徴は?
編集部
歯科医の先生方からみて、「インプラントが絶対にダメ」という方もいるのでしょうか?
和田先生
「絶対にダメ」と強く拒否することはありませんが、向かない人・慎重に考えたほうがいい人はいらっしゃいます。例を挙げると、自己免疫疾患や重度の糖尿病などの全身疾患がある方や、抗がん剤や骨粗しょう症などのお薬を服用している方は治療が難しくなります。さらに、インプラント治療に過剰な期待を持っている方も要注意です。
編集部
「インプラント治療に過剰な期待」とは具体的にどういうことでしょうか?
和田先生
「インプラントにすれば健康な時と100%同じ状態に戻る」といった過度な期待です。インプラントは自分の歯にかなり近い見た目や噛み心地がメリットですが、やはり人工物である以上、健康な時とまったく同じ状態に戻るとは限りません。そこに過度な期待を寄せすぎてしまうと、治療後に「舌で触った感覚が違う」「昔よりも舌のスペースが狭くて話しづらい」という不満が大きくなってしまいます。このあたりは個人差もありますが、必ずしも昔と100%同じ状態に戻るとは限らないということは頭に留めて、歯科医としっかり相談していただきたいと思います。
費用・そのほかの理由で「インプラントが絶対にダメ」という場合は、どんな治療がある?
編集部
インプラントについては、費用面や体調面などを理由にそれを選択したくない方もいらっしゃいます。そのような場合、ほかの選択肢としてどのような治療がありますか?
和田先生
自身の歯を失った場合の治療法としては、インプラントのほかに「入れ歯」「ブリッジ」という治療法が選択できます。ブリッジは歯がない部分の両側に残っている歯を削り、そこに橋渡しのような被せ物を入れて人工歯を補う方法です。入れ歯は歯のない部分をピンク色の樹脂(プラスチック)で覆い、その上に人工歯を並べて歯を補います。
編集部
ブリッジと入れ歯のいずれかを選ぶ場合に「選び方のポイント」はありますか?
和田先生
固定式でしっかり噛めるようにしたい場合は、ブリッジがおすすめです。ただし、ブリッジは自分の歯を削ることにくわえ適応には一定の条件があるため、その点は頭に留めていただきたいと思います。自身の歯がほとんど残っていない場合や歯を削りたくない場合などは、入れ歯が第一選択肢となります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
和田先生
ネガティブな情報に触れると不安に感じますが、ただインプラントには「自分の歯を削らない」「残っている歯に負担をかけない」という利点もあります。長期的なお口の健康を考えるとメリットのほうが大きい場合もあるため、まずは信頼できる歯科医の意見を聞いて治療を選択していきましょう。
編集部まとめ
インプラント治療は外科手術をともなうことから、それにまつわる否定的な情報に触れることも少なくありません。しかし、今回のお話で術後の腫れや痛みはそれほど心配ないこと、医療技術の発達により術後のトラブルも少なくなっていることなどがわかりました。インプラント治療には確かにデメリットもありますが、情報に惑わされず、専門家の話をしっかり聞いてみることも大切です。治療に不安を感じたら、1人で悩まずまずは信頼できる歯医者さんに相談してみましょう。
医院情報
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