歯周病の重症度の判定基準は?症状や進行度ごとの治療法も解説

歯周病には、適切な治療によって本来の健康状態を取り戻せる軽度なものから、改善が難しく歯を失ってしまうような重度のものまで、さまざまな段階が存在します。
初期症状のうちであれば改善の可能性が高い一方で、中等度以上になると治療期間が長引くだけでなく、元の状態に戻すことが難しくなる傾向があります。そのため身体が出している異変に早めに気付いて対処することが大切です。
この記事では、歯周病の重症度の判定基準と、進行度に応じた症状や治療法について詳しく解説します。

監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
目次 -INDEX-
歯周病の重症度の診断基準

歯周病は歯肉炎という軽度な症状から始まり、何も対処せずにおくと軽度、中等度、重度という段階を経て進行していきます。ここでは歯科医院で一般的に用いられる重症度の判断基準を紹介します。
歯肉炎の診断基準
歯肉炎は歯周病の兆候が現れ始めている初期の段階を指します。
この時点では適切な処置を行うことで、元の健康な歯茎を取り戻せる可能性が十分にあります。判断基準としては歯周ポケットの深さが3mm以下で、軽度の炎症が認められる状態を指します。具体的な症状としては歯茎の腫れや赤み、出血があげられます。健康な歯茎は淡いピンク色をしていますが、歯肉炎になると赤紫色に腫れ上がり、歯磨きなどのわずかな刺激でも出血しやすくなります。
軽度歯周病の診断基準
歯周ポケットの深さが3mmを超えると、歯周病と診断されます。
軽度歯周病の判断基準は、ポケットの深さが4mmから5mm程度で、歯茎に軽度の腫れや出血が見られる状態です。またレントゲン撮影を行うと、歯を支える歯槽骨にわずかな溶解が確認されます。この段階になると歯磨き時だけでなく、食事の際などにも出血が生じることがあります。
中等度歯周病の診断基準
中等度歯周病の判断基準は、歯周ポケットの深さが4mmから6mm程度に達し、歯を支える歯槽骨が30%から50%ほど吸収されている状態を指します。症状としては歯茎の腫れや出血のほか、口臭の悪化や歯の揺れ、歯肉の退縮などが顕著になります。
また歯茎がムズムズと痒く感じたり、冷たいものがしみたり、食後に鈍い痛みを感じるといった感覚的な症状も現れ始めます。
重度歯周病の診断基準
重度歯周病の診断基準は、歯周ポケットの深さが6mm以上に達し、歯槽骨が歯の根の長さの半分から3分の2以上も失われ、明らかな歯のぐらつきがある状態です。
症状としては激しい腫れや出血に加え、歯茎から膿が出る、強い口臭を放つ、歯肉が大きく下がるといった現象が起こります。最終的には食べ物を満足に噛めないほど歯が不安定になります。
歯周病の重症度を示す主な症状

歯周病が悪化するにつれて、外見や感覚に現れる症状はより顕著になります。ご自身に思い当たる変化がないか、以下の内容を参考に確認してください。
歯茎の腫れや赤み
歯茎の腫れや赤みは歯周病の代表的なサインです。軽度の場合は大きな自覚症状はないものの、本来は淡いピンク色をしている歯茎が赤色や赤紫色へと変化します。重症度が上がるにつれて腫れや赤みの範囲が広がり、色味もより濃くなっていく傾向があります。
歯磨き時の出血
歯茎からの出血も重要な指標の一つです。軽度の段階では普段は自覚がなくても、歯ブラシによる刺激で出血が見られます。中等度になると食事中に硬いものを食べたり強く噛み締めたりするだけで出血することがあります。重度になると何もしなくても出血が続いたり、痛みで食べ物を噛むこと自体が困難になったりします。
口臭
口臭は歯周病の重症度が高まるほど強くなります。
主な原因は、深い歯周ポケットの中で繁殖した細菌がタンパク質を分解する際に発生するガスにあります。そのためポケットが深くなるほどガスの発生量が増え、周囲の方にも気付かれるほどの強い臭いを放つようになります。
歯肉の後退
歯周病が重症化すると、歯の根元が露出するように歯肉が下がっていきます。これは歯を支える歯槽骨が細菌感染による炎症で溶けてしまうことが主な原因です。土台となる骨が失われることで歯茎を支える力が弱まり、結果として歯肉が後退します。
重症化するほど骨の減少量は増えるため、歯が長く見えるようになります。
歯のグラつき
歯肉の後退と同様に、骨の吸収が進むことで歯の安定性が失われ、グラつきが大きくなります。
炎症によって歯の根の周辺組織が破壊されると、歯槽骨が歯を固定できなくなります。そのまま放置して骨の減少が止まらない場合、しばらくすると歯が自然に抜け落ちてしまいます。
歯茎の膿
歯茎から膿が出る症状は歯周膿瘍と呼ばれます。これは重症化した歯周病特有の症状で、歯周ポケットに溜まった細菌と戦った免疫細胞の死骸が膿となって排出される現象です。
この段階では強い痛みや不快な味を伴うことも少なくありません。
歯周病の重症度が高まることによるリスク

歯周病は一度進行してしまうと、完全に元の状態へ戻すことが難しい病気です。しかし早期であれば適切な治療で食い止めることが可能です。
治療を放置した場合のリスクを正しく認識しておく必要があります。
食事や発音に影響が出る
中等度以上に重症化して歯のグラつきが激しくなると、硬いものが噛めなくなるなど食事の内容が制限されます。また歯の隙間から空気が漏れることで喋りづらくなり、発音が不明瞭になるといった日常生活への支障も生じます。
治療期間が長引く
重症度が高いほど、お口の環境を整えるための工程が増えるため、治療期間は必然的に長くなります。また組織の破壊が進んでいるほど、治療を行っても十分な改善が見込めない可能性も高まります。
抜歯の可能性が高まる
歯周病は目に見えない歯茎の奥で深刻化していきます。
歯を支える歯槽骨が萎縮し続けると、どれほど優れた治療を行っても歯を保存できない場合があります。また、そのまま歯を残しておくことが周囲の健康な歯へ悪影響を及ぼすと判断された場合、やむを得ず抜歯を検討することになります。
抜歯後の選択肢としてインプラントなどを選ぶと、自費診療となるため経済的な負担も大きくなります。
治療の選択肢が減少する
重症化するほど、選択できる治療法は限られていきます。
軽度であれば歯石取りなどの保存的な処置で済みますが、重症の場合は外科手術や噛み合わせを改善するための歯列矯正、抜歯後の複雑な補綴治療などが必要となります。これにより治療の難易度が上がり、通院の負担も増大します。
歯周病の重症度に応じた治療法

歯周病は、その進行段階によってお口の中の状態が大きく異なるため、重症度に合わせて選択すべき適切な治療法が異なります。
軽度の段階であれば、原因となる汚れを取り除くといった負担の少ない処置で改善が見込めますが、進行が進むにつれて、失われた組織を補うためのより専門的なアプローチが必要となります。
患者さん一人ひとりの歯茎の状態や歯槽骨の吸収度合いを見極め、段階的に治療を進めていくことが健康な口腔環境を取り戻すための近道といえます。
ここでは、それぞれの進行度に応じた具体的な治療内容について、一つずつ順番に詳しく解説していきます。
歯肉炎から軽度歯周病の治療法
この段階であれば、適切な処置によって健康な状態を取り戻すことが可能です。
歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)
歯周基本治療とは、歯についた歯石や歯垢を除去するスケーリングと、歯周ポケットの内部にある汚れを除去するルートプレーニングを指します。歯周病の原因菌の温床となっている歯石や歯垢を除去することで、再感染を防ぎ、歯茎の回復を促す目的があります。
歯肉炎や軽度歯周病の場合は、1回から2回程度の歯周基本治療だけで改善することが多いため、1ヶ月間に1回から2回の通院で治療が完了することがあります。ただし、患者さん自身のセルフケアや生活習慣によってはそれだけでは改善しないこともあるため、歯科医院では回復状態を確認しながら、必要に応じて歯周基本治療の継続の必要性の有無を判断していきます。
歯磨き指導
歯磨き指導とは、歯科医師や歯科衛生士が、一人ひとりに合わせた適切な歯磨き方法を直接アドバイスすることを指します。歯周病治療は、歯科医院での処置と並行して、患者さん自身がセルフケアに意欲的に取り組むことが治療成功に大きく関わるため、より効率的に歯周病を改善する目的があります。
磨き残しが出やすい箇所や、歯並びや噛み合わせによって歯茎に強い刺激が加わりやすい箇所などを、プロの視点で見極め、患者さんが磨き残しがないように指導します。
噛み合わせ調整
噛み合わせを調整することで、歯周病の悪化防止や再発防止を行います。
一部の歯に過度な負担がかかることは、その歯の周辺組織の炎症につながり、歯周病のリスクを高めます。歯周病の原因が噛み合わせに関わることである場合は、噛み合わせの調整を行います。具体的には、歯の出っ張りを少し削ったり、詰め物や被せ物を調整したり、歯列矯正をしたりといったことを行います。
中等度から重度歯周病の治療法
歯周病が中等度から重度になると、歯周病基本治療だけでは改善するのが困難なため、外科治療やレーザー治療などといった、より専門的な歯周病治療を行う必要性が生じます。
歯周外科治療
歯周外科治療とは、歯周病の改善のために行う外科手術を伴う治療法のことを指します。
主にスケーリングやルートプレーニングといった歯周基本治療で改善できない場合や、歯槽骨が破壊されている場合に行われます。
歯周外科治療の主だったものの一つとして、フラップ手術があります。フラップ手術は、歯茎を切開して歯の根元を露出し、丁寧に歯垢や歯石を除去する手術です。ルートプレーニングでは歯垢や歯石が落とせない場合はこの手段を検討されます。
そのほかには、歯周形成手術があります。歯肉が後退してしまった歯茎を、ほかの部分から移植し回復をはかる手術です。
歯周組織再生治療
歯周組織再生治療も歯周外科治療の一つです。
骨再生療法とも呼ばれ、歯周病によって骨が破壊され吸収されてしまった場所を切開で露出させ、歯の根元についた歯石や汚れを徹底的に除去したうえで、エムドゲインなどの骨再生剤を充填して縫合し、数ヶ月間かけて骨の再生を促す治療法です。これは、歯の土台となる歯槽骨を再生することで、骨を安定させることを目的とするほかに、歯を失った場合でも歯槽骨の量を取り戻すことでインプラント治療が行えるようにする目的もあります。
レーザーなどの補助的治療
歯周病のレーザー治療は、歯周ポケットの内部にレーザーを当て、殺菌したり、炎症した組織を焼いて組織の再生を促す治療です。スケーリングやルートプレーニングは、歯石や歯垢などの汚れを落とすことはできますが、細菌の殺菌やバイオフィルムの完全な除去は難しい場合があります。そこで、レーザーを照射することで、殺菌し、細菌の再感染や増殖を防ぎます。
また、歯周病のレーザー治療は痛みが少なく、低侵襲のため、麻酔なしで治療を行えることが特徴的です。炎症箇所は麻酔薬が効きにくいこともありますが、レーザーであれば低侵襲で炎症箇所を除去できるうえ、熱を与えることで止血しながら治療できるため傷の回復が早く、照射した箇所の組織の再生促進効果もあり、多くのメリットがあります。
まとめ

歯周病は、軽度のうちは症状が一時的であるため気がつきにくく、自覚症状が出たときにはすでに重症度が高まっているということが少なくありません。
歯磨きなどで出血があったら、歯周病の初期段階の可能性があるため、早めに歯科医院を受診し検査することが推奨されます。また、口臭や食事中の出血などは中程度の歯周病ですので、早期に治療を行う必要があります。さらに、喫煙をする習慣のある方は、歯に着色があったり、血流の影響で歯茎の腫れに気付きにくかったりと、喫煙をしない方に比べて歯周病に気が付きにくい傾向があり、注意が必要です。
歯周病は早期であれば完治することができますが、中等度以上になると完治することは難しくなっていきますので、早めに診断を受けることが大切です。自己判断で様子を見ることなく、2ヶ月から3ヶ月をめどに定期的な歯科検診を受け、歯周病に備えるようにしましょう。
参考文献
