歯科で受けられるインプラント治療とは?入れ歯やブリッジとの違い・メリット・デメリット・費用の目安・手術方法・寿命も解説
インプラントとは、歯を失ってしまった際に歯科で行う治療の1つです。入れ歯やブリッジに次いで取り入れられるようになった治療方法で、まだ先進的な治療に分類されます。
インプラントは、入れ歯やブリッジの弱点ともいえる部分を様々にカバーしてくれる画期的な治療法です。
入れ歯やブリッジに抵抗がある・実際に入れ歯やブリッジで不自由を感じているという方は、インプラントを検討してみても良いかもしれません。
今回の記事では、歯科で受けられるインプラント治療の気になる要素を様々にご説明いたします。インプラントを検討中の方はぜひご活用ください。
監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
歯科で受けられるインプラント治療とは
インプラント治療とは歯の根元に人工的な歯根であるインプラントを埋め込み、その上に人工歯を取り付けることで、自然な歯と同様の噛み心地や見た目を取り戻す治療法です。
インプラントと聞くと上部の人工歯をイメージする方が多いですが、実際は歯の根本に埋め込む人工歯根のことを指します。
インプラントには一般的にチタン製のものが使用されるため、金属アレルギーの方でもアレルギーを起こす可能性が低いものが採用されています。
チタンアレルギーがある方はカウンセリングの際に事前に相談しましょう。
歯の根本に埋め込まれたインプラントは、時間をかけて顎の骨にくっつきます。インプラントが固定されるのは、こうした原理からです。
骨とくっつくまで時間がかかるため、入れ歯やブリッジと比べると治療期間が長くなりやすいですが、治療後は長い期間にわたって快適な口腔環境を実現できる魅力があります。
ただ、外科的な手術が必須となるため、治療に向いていない方もいらっしゃいます。カウンセリングの際にしっかりと相談し、入念な検査を受けることが大切です。
入れ歯やブリッジの違いは?
入れ歯やブリッジは、インプラントと同様に失った歯の代用を取り付ける治療です。
冒頭にて、インプラントは入れ歯やブリッジの弱点をカバーするような機能性を持ち合わせていると申し上げました。
では、インプラントは入れ歯やブリッジとどのような違いがあるのでしょうか。それぞれに確認していきましょう。
入れ歯との違い
インプラントと入れ歯は、歯を失った場合に代用歯を取り付ける治療法のひとつですが、その実現方法には大きな違いがあります。
インプラントは人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。そのため、取り外すことはできません。
一方、入れ歯は失った歯の上に被せるように人工歯を乗せ、隣の歯にフックをかけて支えます。取り外しが可能ですが、インプラントのように歯根があるわけではありません。
そのため、入れ歯と違ってインプラントの方が自然な感覚で咀嚼したり、発音したりできるようになります。ぐらついたり、義歯との間に食べかすが溜まったりはしません。
また、取り外しの必要もないため、食後に毎回取り外して洗浄する必要もありません。普段のお手入れは、自然な歯と同じ歯磨きなどで十分です。
定期的に歯医者に通院してメンテナンスを受ける必要はありますが、長く維持していくためには欠かせないことですので怠らないようにしましょう。
ただ、入れ歯は治療期間が短く、保険適用であれば治療費用も比較的安価になりやすい傾向があります。
外科的な手術を受ける必要もない点も踏まえると、インプラントに比べて手軽に治療を受けられる点がメリットとして挙げられるでしょう。
ブリッジとの違い
ブリッジも、歯を失った場合に代用歯を取り付ける治療法のひとつです。入れ歯とは違い、両隣の歯を削って一塊の繋がった人工歯を装着します。
入れ歯のようにフックで固定せず、両隣の歯を支えにして被せるため、審美性が損なわれない魅力があります。
しかし、健康的な歯を削る必要があるため、歯を多く残したいと考えている方には不向きです。
その点インプラントであれば、失った歯の部位で独立した治療が可能です。人工的な歯根があるので支えも必要ありません。
他の歯に負担をかけることがなく治療できる点で、ブリッジとインプラントには大きな違いがあります。
インプラントのメリット
インプラントは、代用歯の治療方法の中でも特にメリットの多い治療法といわれています。具体的なメリットは以下の通りです。
- 健康な歯への影響が少ない
- 自分の歯に近い感覚で使える
- 見た目の印象が良い
健康な歯への影響が少ない
インプラントでは、入れ歯のように隣の歯にフックをかける必要がありません。また、ブリッジのように他の歯を削って支えてもらう必要もありません。
なぜなら、インプラントは失った歯の場所にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療方法だからです。
周囲の健康な歯を削る必要がないため、健康な歯に負担をかけることなく治療を完結できます。
歯科医療では、健康な歯を維持することが何よりも大切です。ほとんど影響を与えずに代用歯を取り付けられるインプラントは、歯科医療の観点から見ても良い治療といえるでしょう。
自分の歯に近い感覚で使える
ブリッジや入れ歯は他の歯によって固定されているとはいえ、結果的には上から人工歯を被せているだけです。インプラントのように歯根があるわけではありません。
そのため、咀嚼や会話の際にぐらつきや違和感を覚えてしまうことは少なくありません。
実際、入れ歯やブリッジの違和感からインプラントへの移行を検討される方も多くいらっしゃいます。
人工歯根を埋め込んだインプラントは、自分の歯に近い感覚で使うことが可能です。食事をする際も、お話をする際も、歯を気にせず楽しめます。
見た目の印象が良い
インプラントは非常に審美性に優れている治療法です。自然な歯と変わらない見た目を再現できるのが魅力です。
しかし、入れ歯やブリッジは固定している金具やバネが見えてしまうことがあります。そのため、気にされる方は人前で笑ったり食事をしたりできなくなってしまう方もいらっしゃいます。
インプラントは、埋め込んだ人工歯根の金属的な部分はほとんど見えないようになっているため心配する必要はありません。
歯並びを良くする効果も期待できるため、見た目の印象が良くなります。
インプラントのデメリット
様々なメリットのあるインプラントですが、以下のようなデメリットもある点に注意してください。
- 費用が高額
- 手術が必要
- 治療期間が長い
1つずつ解説していきますので、治療前に押さえておきましょう。
費用が高額
インプラント治療は、一般的に他の歯の治療に比べて費用が高額になりやすい傾向にあります。なぜなら、インプラント治療は入れ歯やブリッジのように保険適用ではないからです。
他にも外科的な手術が必要な点・多くの検査を要する点・技術力の高さを求められる点・特殊な器具が必要な点など、様々な要素が絡み合っています。
ただ、インプラント治療は入れ歯やブリッジなどの治療と比較して、長期的な視点から見ると経済的であるという評価もあります。
入れ歯やブリッジは場合によっては長持ちしないことがあり、作り直しが必要になる度にお金がかかるからです。
インプラントの場合は長期的に維持できるのに加え、年齢を重ねるごとに口腔環境に変化があっても、パーツを変更することで対応できます。
最初の費用は高額ですが、将来的な観点からも考えて検討すると良いでしょう。
手術が必要
インプラント治療には、手術が必要というデメリットがあります。
インプラントは、人工歯根を歯肉と顎の骨に埋め込むため、局部麻酔や全身麻酔を使用して手術を行います。
また、手術後は痛みや腫れなどの副作用が起こることもあるでしょう。別途痛み止めが処方されるので、痛みが強いときには服用するなどして対処が必要です。
外科的な手術には、感染症のリスクも指摘できます。歯科医院選びの際には、こうした安全面の配慮に抜け目のない歯科医院を選びましょう。
治療期間が長い
インプラントは、入れ歯やブリッジよりも治療期間が長くなりやすいです。
入れ歯は1〜4ヶ月程度、ブリッジは2週間〜1ヶ月程度であるのに対し、インプラントは3ヶ月〜1年程度かかります。
ここまで治療期間が長くなりやすいのには、骨との結合期間が必要な点が影響しています。
インプラントを埋め込む手術自体は1時間程度で完了しますが、そのインプラントが顎の骨と結合するのを待たなければいけないのです。
インプラントが自然な歯と変わらない咀嚼力を実現できるのには、上記のようにインプラントと顎の骨が結合されているからです。
この結合にかかる期間には個人差があり、特に顎の骨が薄い上顎は治療期間が長くなりやすい傾向にあります。
治療期間が長いと、仕事や生活に支障をきたすことがあるでしょう。しっかりとスケジューリングをした上で治療を受けることが大切です。
費用の目安
インプラントの費用の目安は、1本あたり30万円から100万円程度が目安となっています。
具体的には、インプラントのメーカー・材料・手術の難易度・歯科医師の経験や技術力などによって異なってくるため、詳細は別途確認するようにしましょう。
基本的に、インプラントの治療では保険が適用されません。入れ歯やブリッジのように3割負担にはならないため、全額負担になることに注意してください。
歯は私たちが快適に日常生活を送るために欠かせない存在です。費用だけで決めず、他の要素と併せて判断するようにしましょう。
予算がある場合は、カウンセリングの段階で医師と相談しておくとスムーズです。
インプラントの手術方法
インプラントの手術方法は、大きく2つに分けられます。手術を1回だけ行う1回法と、2回に分けて行う2回法です。ここではそれぞれについてご紹介します。
1回法
インプラント治療における1回法とは、言葉の通り1回だけ手術を行う方法です。
歯茎を切開した後にインプラントを埋め込み、ワンピースインプラントと呼ばれるインプラント体を埋め込みます。
このときに、アバットメントも連結させた状態でインプラントと骨の結合を待ちます。これにより、2回法よりも早く人工歯を取り付けられるのが特徴です。
アバットメントとは、人工歯を取り付けるための部品です。結合を待つ治療期間中はアバットメントの一部が露出した状態になります。
治療負担を軽減しやすいメリットがありますが、顎の骨の量が十分にあり、硬くないと実現が難しいです。
2回法
2回法は、インプラントと骨の結合期間を跨いで、歯茎の切開を2回行う手術方法です。
まず初めの手術で歯茎を切開し、インプラントを挿入して骨との結合を待ちます。2回目の手術でまた歯茎を切開したら、人工歯を取り付けるためのアバットメントを取り付けます。
1回法よりも治療負担が大きくなりやすいですが、顎の骨量が不足していたり、硬さが十分でなかったりする場合にも適用できる点がメリットです。
どちらの手術方法にするかは、医師の判断に従いましょう。
インプラントの寿命
インプラントは、他の代用歯の治療方法と比べて寿命が長いという特徴があります。正しいケアとメンテナンスを行っていれば、10年後でも維持できている可能性が高いです。
データとしては、上顎で80%〜90%前後・下顎で95%前後となっています。上顎の場合は骨が柔らかかったり、骨の量が少なかったりすることが多いため、少し数字が悪くなります。
10年で上記の数値ですので、20年、場合によっては一生維持できる可能性もゼロではありません。
もちろん日々のお手入れや定期的なメンテナンスは必要ですが、正しく使えば寿命は伸ばせるでしょう。
治療が受けられないケース
前述のように、インプラントの治療が向かない方もいらっしゃいます。ここでは治療が受けられないケースについてご紹介しますので、該当しないか確認してみてください。
1型糖尿病になった方
1型糖尿病をお持ちの方は、体の免疫力が低下しやすい傾向にあります。骨も弱くなりやすいため、顎の骨と結合させるインプラント治療は向きません。
インプラントは手術が必要であり、術後には腫れや痛みが原因で十分な食事を取れないこともあるかもしれません。
その状態でいつものようにインスリン注射を打ってしまうと、血糖値が下がりすぎてしまうリスクが指摘できます。
2型糖尿病の方で血糖値をしっかりコントロールできていれば治療できることもありますが、担当医との連携が必要になるため、カウンセリングの際に必ず伝えましょう。
ただ1型糖尿病の方は絶対的禁忌症に分類されるため、インプラント治療は受けられないと考えておいてください。
免疫不全に罹患している方
免疫不全に罹患している方も、インプラント治療を受けられないケースに該当します。
免疫不全の状態は、治癒力が低下している状態です。そのため、感染症のリスクが高まる可能性が指摘できます。
インプラントの手術では、口腔内に穴を開ける手術が含まれるため、一定の感染症のリスクがあります。万が一のことを考えても、免疫不全の方は避けるべきでしょう。
服用している薬が骨の代謝へ影響を及ぼすことも考えられ、インプラントと顎の骨の結合にもリスクがあります。
インプラントを希望されても実現できないことが多いため、他の治療方法を検討しましょう。
重度の歯周病を抱えている方
歯肉に埋め込むインプラントの治療において、歯肉を下げて炎症を起こしてしまう歯周病は大敵です。
軽い歯周病であれば、完全に治療をしたうえでインプラントの手術を行います。
しかし、重度の歯周病を抱えている場合には、インプラント治療が受けられないかもしれません。インプラント治療の失敗率や、感染症のリスクが上がるためです。
チタンアレルギーの方
一般的に、インプラントに使用されているのはチタンです。チタンは、金属アレルギーを引き起こす可能性が非常に低い金属として知られています。
しかし、チタンアレルギーを持っている方は別です。チタン製のインプラントの治療は受けられません。
ただ、インプラント治療にはチタン以外にジルコニアを使った治療を受けることも可能です。カウンセリングの際にチタンアレルギーがあることを伝え、医師の指示に従いましょう。
妊娠中の方
レントゲン・麻酔・手術など、インプラント治療では妊娠中の方には好ましくない治療が多く行われます。
術後の抗生物質や痛み止め薬なども妊娠中の方には向かないことが多いため、インプラントは授乳が終了してからにするようにしましょう。
子供
インプラントは、長期間に渡って代用歯の役割を担います。そのため、まだ成長途中である子供には向きません。
顎の成長に合わせて歯も動くことが多いため、インプラントが邪魔になって悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
インプラントは成人してから受けるようにしましょう。
インプラント治療を検討しているなら
様々なメリットがあるインプラントですが、前述のように治療を受けられない方がいたり、手術に高度な技術が必要だったりする面があります。
インプラント治療を検討しているのであれば、歯科医院選びが大切です。以下のようなポイントを押さえて選ぶことがおすすめです。
- カウンセリングがしっかりしている
- 事前説明で不安を解消してくれる
- 実績や知識がある
インプラント専門の歯科医院もあるため、そのような歯科医院を選ぶのも1つの方法です。こうして情報を集めながら比較して決めると良いでしょう。
編集部まとめ
インプラントは、第三の永久歯と呼ばれるほど自然な歯と変わらない状態を取り戻せる治療法として、需要が高まりつつある治療方法です。
歯を気にせず快適な生活を送れるようになるなどの多くのメリットがありますが、治療費が高い・手術が必要といったデメリットもあります。
入れ歯やブリッジよりも治療のハードルが高い部分もあるので、そのような精神的な面もサポートしてくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
参考文献
- 入れ歯やブリッジとの違いは|公益社団法人日本口腔インプラント学会
- インプラント 歯を失ったら|歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク
- 口腔インプラント治療指針2020|公益社団法人日本口腔インプラント学会
参考サイト