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痛風腎
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

痛風腎の概要

痛風腎とは、血液中の尿酸値が長期間高い状態(高尿酸血症)が続くことで、結晶化した尿酸が腎臓にたまり、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。

痛風腎は初期には目立った症状がなく、静かに進行します。発見が遅れ、治療を受けないまま放置すると、最終的には腎不全になる可能性があります。

痛風腎の発症には尿酸だけでなく、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病も大きく関わっています。これらの病気を発症していると、腎臓へのダメージがさらに大きくなり、腎機能の低下を早めてしまいます。

痛風腎の原因

痛風腎の主な原因は、血液中の尿酸値が高い状態が長期間続くことです。尿酸は体内の細胞や、食品に含まれるプリン体という物質が分解されてできる老廃物です。通常は腎臓から尿として排出されますが、尿酸が多すぎると腎臓で処理しきれなくなり、結晶化して腎臓にたまっていきます。

高尿酸血症を引き起こす原因としては、生活習慣、生活習慣病、遺伝、薬の服用などが挙げられます。

生活習慣

プリン体を多く含む食品(レバー、魚卵、干物など)の過剰摂取やアルコール(とくにビール)の大量摂取は高尿酸血症の原因となります。また、肥満や急激な体重変動、過度の運動や激しい身体活動、水分摂取不足、ストレスなども尿酸を増やす一因です。

生活習慣病

高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病も痛風腎の発症や進行に関わっています。これらの病気により腎臓の血管が傷つきやすくなり、腎機能の低下を早める恐れがあります。

遺伝

尿酸の排泄能力には個人差があり、遺伝的に尿酸が排出されにくい体質の人がいます。家族に痛風や高尿酸血症の人がいる場合は注意が必要です。

薬剤

利尿薬や免疫抑制剤などの薬剤は尿酸値を上げる可能性があります。とくに高血圧の治療に使われる利尿剤は尿酸値を上げやすいため、痛風や高尿酸血症のある方は医師と相談して薬を選ぶことが大切です。

痛風腎の前兆や初期症状について

痛風腎は、初期段階だとほとんど症状がありません。病気が進行すると、夜間に何度もトイレに行きたくなったり(夜間頻尿)、尿の量が増えたり(多尿)することがあります。

他にも、軽度のタンパク尿が検出されることもあります。タンパク尿は見た目での判断は難しく、自覚症状はほとんどありません。

また、血圧が上昇しやすくなることも特徴です。高尿酸血症は血圧を上げる作用があり、腎機能の低下も血圧に影響します。

腎機能が大きく低下すると、むくみや疲れやすさ、食欲不振などもあらわれるようになります。

痛風腎の検査・診断

痛風腎の診断には血液検査、尿検査、画像検査などが実施されます。

血液検査では尿酸値が重要で、7.0mg/dL以上だと高尿酸血症と診断されます。さらに腎機能の状態を確認するために、クレアチニンや尿素窒素(BUN)、腎臓のろ過機能をあらわす推算糸球体濾過量(eGFR)なども測定します。

尿検査では、尿中のタンパク質や潜血(尿に血が混ざった状態)、尿酸結晶の有無を調べて腎臓の状態を確認します。また、24時間分の尿を集めて尿酸の排泄量を測定し、高尿酸血症の原因が尿酸の産生過剰か、排泄低下かを判断することもあります。

必要に応じて、超音波検査やCTなどの画像検査が行われます。超音波検査をすると、結晶化した尿酸が腎臓部分で明るく映ることがあります。また、他の腎臓の病気と鑑別が必要な場合は、腎生検が行われることがあります。

痛風腎の治療

痛風腎では、高尿酸血症を改善しながら他の病気の治療を行います。

薬物療法

尿酸値を下げるために、体内での尿酸の生成を抑える薬と腎臓からの尿酸の排泄を促す薬が使われます。

腎機能が低下している痛風腎の患者には、主に尿酸の生成を抑える薬が使われます。ただし尿酸の排泄を促す薬は、腎機能が低下した状態では十分な効果が得られにくくなります。

また、尿をアルカリ性にする薬も使われることがあります。尿酸は酸性の環境で結晶化しやすいため、薬で尿をアルカリ性に保つことで結晶化しにくい状態をつくります。

生活習慣の改善

食事ではプリン体の多い食品やアルコールを控えめにします。肥満の方は少しずつ体重を減らすことで、尿酸値の改善が期待できます。急激な体重減少は逆効果になるため注意が必要です。

また、水分を多めに摂ると尿の量が増え、尿酸が薄まります。さらに、運動は体重管理や血圧改善に効果的ですが、激しい運動だとかえって尿酸が増えやすくなるため、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動が推奨されています。

基礎疾患の治療

痛風腎の患者に多い高血圧や糖尿病、脂質異常症などの治療も大切です。

高血圧は腎臓の血管に負担をかけるため、血圧管理を徹底します。ただし、一部の降圧剤は尿酸値を上げることがあるので、医師と相談して適切な薬を処方してもらいましょう。

糖尿病がある場合は、高血糖が続くと腎臓の細い血管が傷ついてしまうため、血糖値のコントロールを行います。

痛風腎になりやすい人・予防の方法

痛風腎を発症しやすいのは、高尿酸血症や痛風の既往がある人です。とくに痛風発作は高尿酸状態が続いているサインであり、腎障害が進行している可能性があります他にも高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病がある人や家族に痛風患者がいる人、ビールをよく飲む人、プリン体の多い食品をよく食べる人も注意が必要です。

予防には定期的な健康診断を受け、尿酸値が高ければ早めに対処しましょう。バランスの良い食事を心がけ、水分をたっぷり摂り、軽い運動をすることが大切です。

すでに高尿酸血症と診断されている場合は、薬を服用し、定期的に尿酸値をチェックしてコントロールしましょう。

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