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点状角質融解症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

点状角質融解症の概要

点状角質融解症(てんじょうかくしつゆうかいしょう)は、細菌が原因で足の裏などに小さなくぼみや白色化が生じる皮膚の病気です。

足の裏の角質層に小さな点状のくぼみが多数でき、不快な悪臭をともなうことが多いのが特徴で、ヒリヒリとした痛みや軽度の不快感を抱く場合もあります。長時間の歩行や運動後に痛みやかゆみを訴えるケースもみられます。

点状角質融解症は夏季や高湿度の環境で発症しやすいです。
汗腺が活発に働きスポーツなどを頻繁に行う年齢層である、思春期から若年成人で多く発症しやすい傾向があります。また、発症者は男性が多いとされていますが、女性が発症しないわけではありません。

点状角質融解症

点状角質融解症の原因

点状角質融解症の原因は、足の裏に存在する「コリネバクテリウム」「デルマトフィラス」「ミクロコッカス」などの常在菌の増殖です。常在菌は元々皮膚に存在している菌で、本来であれば問題を引き起こすことはありません。しかし、長時間にわたる高湿度の環境になると、急激に増殖します。増殖した細菌は、角質層を破壊する酵素を分泌し、角質の一部を溶かします。その結果、皮膚の表面に小さなくぼみが生じるのが点状角質融解症の発症メカニズムです。

汗や湿気が常在菌の増殖を促進するため、高湿度の環境下や汗をかきやすい状況にある人は点状角質融解症を発症しやすいです。たとえば、夏場や湿気の多い季節に、長時間の労働やスポーツをする人は、発症リスクが高いと言えます。また、梅雨などの季節的な要因も発症リスクを高めます。

さらに、通気性の悪い靴や靴下の長時間の着用、衛生状態の悪さ、免疫力の低下なども発症原因になります。

点状角質融解症の前兆や初期症状について

点状角質融解症の初期症状としては、主に足裏の皮膚の表面にあらわれる小さな点状のくぼみが挙げられます。小さな点状のくぼみは、針で刺したような細かい穴で、病状が進行すると足裏全体や複数箇所にあらわれるようになります。痛みなども弱い最初の段階では、本人が症状に気づかないケースも少なくありません。不快な悪臭を家族などから指摘されるケースが多いほか、触って異変に気づいたり、歩いたときに足の裏にザラつきを感じたりして症状を自覚することが多いです。

症状が進行するにつれて、くぼみが拡大していき、足の裏に違和感が生じるようになります。とくに、長時間の歩行や立ち仕事の後には、不快感に加えて軽度の痛みがともなうこともあります。また、くぼみだけでなく、皮膚全体が白っぽく変色する場合もあり、この段階まで症状が進むと悪臭や違和感を含め、本人が症状を自覚できないことはまれです。

点状角質融解症の検査・診断

点状角質融解症の検査・診断では、視診で皮膚の状態を確認します。足の裏にあらわれた小さなくぼみや穴を確認し、患者の症状や病歴を聞き取ります。ただし、点状角質融解症はいわゆる水虫(真菌感染症)と間違われやすいため、点状角質融解症の症状の特徴に合致しているかをじゅうぶんに注意しながら、視診・問診が行われます。

視診・問診で確定できない場合は真菌顕微鏡検査や最近培養検査を行う場合があります。

真菌顕微鏡検査

真菌顕微鏡検査では、点状角質融解症と真菌感染症とを鑑別するために、皮膚の一部を軽く削り取り、顕微鏡で観察して真菌の有無を確認します。水虫などの真菌感染が確認されない場合、点状角質融解症である可能性が高くなります。真菌感染が見つからない場合でも、細菌による過剰増殖が原因であることを明らかにするために、細菌培養検査が追加で行われることがあります。

細菌培養検査

くぼみの表面から皮膚を一部採取し、増殖させることで原因菌の有無や種類を確認できます。コリネバクテリウムやデルマトフィラスなどが検出された場合、点状角質融解症の確定診断が可能です。

点状角質融解症の治療

点状角質融解症は細菌増殖が原因のため、主に外用の抗生物質による治療がとられます。間違われやすい真菌感染症の治療に使われる抗真菌薬は、点状角質融解症の治療では効果がないため注意が必要です。しかし、水虫を合併しているケースでは、部位に応じて外用薬を使い分ける場合もあります。

また、抗生物質の治療と並行して、足の衛生環境の改善を行うことも重要です。足の清潔さを保つために、汗をかいたり蒸れたりした場合はきちんと足を洗う、長時間にわたって足が蒸れる靴や靴下を履き続けない、靴や靴下を濡れた状態で使わないといった対策が効果的です。

点状角質融解症になりやすい人・予防の方法

足が蒸れやすい環境にいる人や、長時間靴を履き続ける人は点状角質融解症になりやすい人だといえます。とくに、普段から積極的にスポーツをする人や立ち仕事が多い人は、汗をかきやすく、足の湿度が高くなりがちです。細菌が繁殖しやすくなり、点状角質融解症のリスクが高まることに注意しなければなりません。また、通気性の悪い靴や靴下を長時間にわたって着用することも、点状角質融解症の発症につながります。

予防法としては、足を常に清潔に保ち、足裏の蒸れを避けることが重要になります。毎日、足をしっかり洗い、足を乾燥させる習慣をつけるようにしましょう。また、汗をかきやすい環境を避けられない場合は、吸湿性の高い靴下を選び、通気性の良い靴を履くなどの工夫も有効です。

また、履き替え用の清潔な靴下を準備する、複数の靴をローテーションで履く、といった対策も、点状角質融解症の有効な予防策となりえます


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