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「多汗症」とは?治療やチェック方法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「多汗症」とは?治療やチェック方法についても解説!

手のひらや足の裏にたくさん汗をかく・汗の量が多く生活する上で困っていることがあるなど、汗に関する悩みを抱えている人はもしかしたら多汗症かもしれません。

今回は多汗症について特徴や原因を詳しくご紹介します。治療法や予防法についても詳しくみていきましょう。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

多汗症の特徴

多汗症の特徴

多汗症はどのような症状を指すのですか?

  • 一般的に汗をかきやすい脇以外にも手のひらや足の裏などをはじめ、頭皮・顔・関節部分などに多くの汗をかく病気です。多汗症にも種類があり、手のひらや足の裏だけにたくさんの汗をかくなどの局所性多汗症と体中にたくさんの汗をかく全身性多汗症に分けられます。また、症状の度合いも人によってさまざまです。
  • 軽度:手のひらが汗で濡れるがしずくにはならない
  • 中度:手のひらに汗のしずくができる・手を握ると汗が流れ出る
  • 重度:手を開いたままでも汗が流れ落ちる
  • このように局所性の場合は手のひらにかく汗の状況をみて重症度を判断します。手のひらの汗を基準に判定していきますが、手のひらよりも足の裏に汗をかくという人もみられるため、汗をかきやすい部分で考えてみるとよいでしょう。

汗かき体質とは違うのですか?

  • とくに全身性多汗症は汗かき体質と思われがちですが、汗かき体質とは異なります。
  • 汗は体温が上がっているとき、主に気温が高い・運動しているときに体から分泌されます。汗は体から出て蒸発させることで体を冷やして体温を下げるという働きをしていますが、全身性多汗症の汗は体温を下げるために発汗するものではありません。
  • 気温が高いときに限らず多く発汗したり、緊張・ストレスを感じたときは滴るほど汗をかいたりするなど大量の汗をかきます。普段の生活で適温にも関わらずたくさんの汗をかくという人は全身性多汗症かもしれません。

多汗症になると日常生活も難しいのでしょうか?

  • たくさんの汗をかきやすいことで日常生活に支障をきたすこともあるのがこの病気の特徴です。日常を送る上で生活に支障が出るほどの具体的な例をみていきましょう。
  • 手に持ったものが汗で滑る
  • 裸足で歩くと汗で滑る
  • 書類などを持つと紙が湿り変形する
  • 汗をかき服が濡れて頻繁な着替えが必要
  • 生活する上で上記のような状況が頻繁にみられます。人間は手のひらや足の裏に汗をかきますが、これは体温を下げるための冷却目的などですべり止めになる程度の発汗です。手や足の汗で滑ることが多いのは多汗症状で、生活する上で悩みの種となります。
  • また、紙が濡れるほどの発汗は学校でテストを受けるときや書類を扱う仕事をする際に支障が出ます。紙幣や切符を持ったときも同様です。服が濡れるほどの汗をかき頻繁に着替えをしなければならない人もみえ、多汗症は日常生活に大きな影響を与える疾患といえます。

多汗症の原因と治療法

多汗症の原因と治療法

多汗症の原因はなんですか?

  • 交感神経が敏感で神経節が過度な働きをすることにより、異常な発汗をしてしまうことが原因とされています。しかしはっきりと断定した原因は解明されておらず、この働きが起こる要因としては精神的な緊張や脳細胞による異常伝達の可能性が高いです。また、身内に同じ症状がみられるという人が多く、遺伝の可能性もありますが詳しくはいまだわかっていません。
  • このような原因がわからない生まれつきのものを原発性多汗症といいます。しかし多汗症は原発性のものだけではありません。事故・ケガなど外傷によって手や足の末端神経が損傷した際に発症することもあり、他疾患や薬の副作用によって引き起こされることもあります。
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 更年期障害
  • 結核
  • 敗血症
  • 甲状腺機能亢進症
  • パーキンソン病
  • 他疾患とは上記のようなものが挙げられ、外傷や他の病気によって引き起こされたものを二次性多汗症または続発性多汗症といいます。原発性は幼少期に発症しやすく、継続した症状がみられる人が多いです。二次性は更年期障害などがきっかけになるため、年を重ねてから発症することも稀ではありません。

多汗症が疑われる場合、何科を受診すればよいのでしょうか?

  • 基本的には皮膚科を受診しましょう。手のひら・足の裏・頭・顔など、汗をかきやすいのがどの部位であっても皮膚科で診断してもらえます。
  • しかし多汗症の発症が他疾患によるものだと分かっている場合は、通院している内科などで相談してください。
  • 更年期障害で汗をかきやすくなったという場合は、婦人科を受診してみましょう。

多汗症の診断方法を教えてください。

  • まずは問診を行い患者さんにどのような状況で汗をかきやすいのか・どの部分にどの程度汗をかくのかなどを医師が確認していきます。
  • 問診では症状の度合いを確認するHDSS(自覚症状)スコアチェックを使用することが多いです。
  • 1.発汗が気にならない
  • 2.発汗が気になるが我慢できる
  • 3.発汗が気になり生活に支障が出る
  • 4.発汗がかなり気になり生活に常に支障が出る
  • 日常生活でも困るほど汗が出てくるという人は4番にあたり、数字が大きいほど重度といえます。
  • また、ヨード紙法という手のひらの汗の量を確認する診断方法もあります。紙に開いた手を乗せて色が変わった部分を確認し、色が変わっている部分が多いほど重症という判定です。機器を使用して汗の量を測ることもあり、一定数値より高ければ多汗症という診断になります。糖尿病などの他の疾患によって発症している可能性がある場合は、血液検査を行い診断していきます。

治療法にはどのようなものがありますか?

  • 軽症の場合まずは塩化アルミニウムという塗り薬が処方されます。汗が出やすい部分に塗ると発汗を抑えられますが、効果は薬の濃度にもより個人差も大きいです。濃度が高ければ効果も期待できますが、皮膚の炎症など副作用が出る可能性も高まります。
  • 脇のみの多汗が気になる場合はエクロックゲルという塗り薬での治療法も可能です。外用薬以外の治療として、水の中に手をつけて微電流を流す方法もあります。この方法はイオントフォレーシスといい、15〜20分の通電を行うため週に1回ほどの通院が必要です。また、自律神経を調整する薬を服用することで、改善が見られる場合もあります。その他には神経遮断手術という治療法もあり、手術を行い交感神経が過度に反応しすぎないように施し発汗を抑えます。脇汗が気になる方は、外用薬以外にボトックス注射も1つの治療法です。脇にボトックスを注射しアセチルコリンという成分の活動を抑制します。
  • また、もう1つの治療法がボツリヌス療法です。発汗がひどくみられる部分にボツリヌス菌が作る毒素を注射することで、神経から出る発汗作用への信号を遮断します。注射量は微量で毒性は非常に弱いため、全身に影響することはありません。簡単で有効的治療法に感じられますが、効果は半年ほどと短く短期間しか得られないため、一時的な発汗を抑える治療法になります。

多汗症の治療に保険は適用されますか?

  • 多汗症に処方される塗り薬エクロックゲルやボトックス注射は保険が適用されます。しかし塩化アルミニウム外用薬の処方は保険が適用されません。塗り薬で軽度の多汗症でも処方してもらえますが自費治療になります。
  • イオントフォレーシス治療や神経遮断手術も基本的に保険が適用されないため自費での治療になります。ですが重度の多汗症には保険が適用されるため、保険適用になるかどうかは医師に相談してみましょう。
  • ボツリヌス療法は自費治療で保険適用ではありません。

多汗症かも?と思ったら

多汗症かも?と思ったら

多汗症のチェック方法はありますか?

  • 汗に関する悩みがある方はセルフチェックを行ってみましょう。
  • 暑くないのに汗が出る
  • 手のひらや足の裏が汗で湿る・濡れる
  • 緊張や不安を感じると多くの発汗をする
  • 脇や背中部分などの服が汗で濡れる
  • 汗で服が濡れて頻繁に着替える
  • 紙を持つと汗で変形する
  • 日常生活をきたすため汗が気になる
  • 寝ているときは
  • 家族が多汗症
  • 上記の項目に当てはまる人は多汗症の可能性があります。多汗症は日常生活で悩みの種となることも多いですが、病院を受診する人は少ないとされています。チェックを行い複数当てはまるようであれば悩みを抱え込まずに病院を受診しましょう。

予防法はあるのでしょうか?

  • 交感神経の働きが影響しているとされているため、交感神経の働きを優位にする原因を取り除くことが予防になります。
  • ストレスや緊張などを強く感じる・溜め込むことは症状を発症させることになるため、ストレスを溜めずリラックスする時間を日々の中で確保しましょう。酸味が強い・辛いものを食べると誰しも汗をかきやすくなりますが、多汗症の方はより多くの汗をかいてしまいます。そのため刺激のあるものはできるだけ控えるようにし、バランスの良い食生活を心がけましょう。カフェインが入ったコーヒー・紅茶・緑茶も大量摂取は交感神経を刺激してしまうため、過剰に摂取することは避けてください。
  • 生活習慣を見直すことも大切です。朝起きて夜寝るというリズムの良い生活を送っていないと、自律神経の失調へつながるため注意しましょう。

汗をかかないように水分を控えるのは効果がありますか?

  • 汗をたくさんかかないように水分を控える人もいますが、水分はきちんと摂りましょう
  • 水分を控えていると汗の量が減るのではと思われがちですが、汗の量が減るのは一時的です。病気が改善されるわけではなく体内に必要な水分が足りていないためであり、むしろ熱中症や脱水症状になる危険性があります。
  • 特に夏や冬の暖房が効いた室内など、暑いとき人間は汗を利用して体温調節をします。うまく発汗できなければ熱中症など他の疾患を発症する恐れもあるため、水分はきちんと摂取しましょう。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • 多汗症は汗が多いという症状から、日常生活が困難になるなどさまざまな精神的苦痛を引き起こしやすい疾患です。
  • 発汗によって常に多くのストレスを感じ、うつ病になるなど他の疾患を引き起こすことも稀ではありません。汗でお悩みの方はまずは皮膚科を受診し診断を受けましょう。
  • 適切な治療を受ければ改善する可能性もあるため、悩みを抱え込まないようにしてください。

編集部まとめ

編集部まとめ
症状や原因について詳しくみてきましたが、生まれつきである人も多く幼少期から汗の悩みを抱えているという人も少なくありません。ご自身が多汗症だと知らない人も多く、隠れ多汗症は数多く存在しているといわれています。ご紹介したセルフチェックを行い、当てはまるようであれば早めに病院を受診しましょう。
予防する方法は今すぐに始められることばかりなので、悪化を防ぐためにも毎日の生活を見直し予防に努めましょう。

この記事の監修医師